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剣の王と七つの魔宝刃  作者: 水無月 平
魔剣エラディオン
20/27

想い

 


 反撃を開始したイルジオは魔貝の明かりを頼りにニクとシュトナすれすれまで死の塵を斬りはらい、二人の魔力が奪われるのを防いでいった。



 しかしそれでも、ニクとシュトナが魔法を使おうとした途端全方向からその一点めがけて死の塵が集まっていき魔法が完成する前に邪魔されるため魔法が使えず、だんだんと魔貝に溜め込まれていた光もなくなっていった。



 このままだと魔貝の明かりも無くなって最悪の状況に戻ってしまう。



 その状況にイルジオの焦りがつのっていき、イルジオは必死で打開策を考えていた。



(斬っても斬っても死の塵が減っていく気がしない。このままじゃジリ貧だぞ…………こういう時こそ魔宝刃の力で突破したいところだが……)



 この状況を打破できるものを探していたイルジオは魔宝刃の力でどうにかできないかと考えた。



 霊剣レムナントの変幻自在の力。シュトナの霊視にいわくこの夢幻の魔宝刃は扱う者によって姿かたちが変化するという。



 それはイルジオが剣身を瞬間的に伸ばしたことであり剣を握らずに宙で操ったことであるのだろう。



 今まではそれ以外のものを試せなかった。

 霊剣に特別な性質を加える時には強くイメージを固める必要があり、それが中途半端になると斬れ味も落ち、ただの鈍になってしまうのだ。

 そして霊剣の変化の型を増やしすぎると一つ一つのイメージがもろくなり結果的にどの形をとったとしても力が弱くなってしまう、という恐れがあった。



 しかし今までの性質では現状を打開することができない。

 そのため新たな性質の霊剣をこの短時間に明確なイメージで固める必要がある。



 ならば今イルジオに必要なのはどのような刃なのか。



 イルジオは今の自分にとって必要な力を強く想像した。自分のその想いを霊剣が汲み取ってくれると信じて。



 イルジオのその想いに応えるかのごとく徐々に霊剣の存在感が増していく。



 死の塵はその脅威を感じてか霊剣に群がったがどうにもできない。

 死の塵は力のかたちが明確になった魔力を直接奪えない。だからこそ魔法という意味を持たされた魔力を一度元のただの魔力の塊に変換させるのだ。



 しかし魔宝刃である霊剣の力は魔法ではないのだ。

 そのため、死の塵は霊剣をどうすることもできないでいた。



 その間にもレムナントの力が高まっていき、そしてそれがいよいよ頂点に達したかと思った瞬間、イルジオはレムナントがなにか一つの殻を破ったような感覚がした。



 それはレムナントが新たな刃を生み出した感覚。



 イルジオは霊剣の他の形をほとんど無意識で作り出していた。それが今回は意識的に霊剣の力を引き出したのだ。



 そしてその殻を破る感覚と同時にイルジオは自分に必要なレムナントの姿を想像しながらその剣を振るった。



無限の刃(レムナント)!」



 イルジオのその一振りで無数の死の塵が斬り裂かれた。



 その本来の力を引き出すことさえできれば霊剣レムナントは決まった形や長さだけでなく、その数さえも自由にできるのだ。



 増やした刃一つ一つを同時に制御する必要があり、斬れる範囲も元々の間合いまでではあるが、イルジオはその力を完璧に操って死の塵をけちらし、十回も剣を振るわないうちに死の塵は跡形も無くなっていた。



 いくつもの刃を、一度で最も多くの死の塵を斬りそれでいてニクとシュトナに当たらないようにする、などという芸当はイルジオだからこそできたことだろう。





「そんなこともできたんだ……」


「すごい……」



 一瞬の出来事にニクとシュトナはぽかんとしてイルジオの方を見た。



「ああ、また新しい力を引き出せたみたいだ。ただ、同時に色々な性質をもった形はとれないみたいだがな」



 ニクとシュトナの言葉に頷いたイルジオは先程、剣を振るった中で気づいた今の霊剣の限界を語った。


 やはり一度に複数の力を使おうとするとそのイメージが保てなくなるようで、伸ばした剣身をいくつも出す、などはできないようだった。

 それをイルジオはどうやら今の戦いの時に試したらしい。



 そしてイルジオは再び進み出す前にニクとシュトナに向かって話しかけた。



「なんとかなったと言えばそうなんだが、今の戦いはかなり危なかった。これから先は更に危険も増えてくると思う……」


「何が言いたいのかしら?」


「イルジオ……」


「…………これ以上進むとお前らを守りきれなくなるかもしれない。そこまで魔宝刃に固執する理由があるわけでもないし探索はここまでにしても良い」



 イルジオの提案にニクは悲しみと悔しさが混じった顔をし、シュトナは怒ったよような表情を浮かべた。



「イルジオ……私はイルジオの足枷になるためについてきたわけじゃない。私はイルジオの助けになるためについてきの。自分の身は自分で守れる!」


「私もニクと同じ気持ちよ。確かに私はニクほどは戦えないし、守られる必要が無いとは言えないけど…………それでも、わたしもイルジオの足は引っ張らないわ! それに私は魔宝刃を諦められない理由もあるし」



 足手まといにはなりたくない、と言うニクと最後に照れ隠しを付け加えるもそれに同調するシュトナを見て、イルジオは自分以外の二人が強い気持ちを持っているのを知った。



「ニク、シュトナ…………わかった。最後まで三人で探索を続けよう」



 イルジオの言葉にニクとシュトナは嬉しそうに笑い、それにつられるようにイルジオも笑った。



 そうして、三人はいっそう絆を深めて黒き森の探索を進めていった。



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