宿にて
イルジオが資料を覗き込むとそこには魔物の姿が描かれた絵とその魔物の説明らしき文がページを埋め尽くしていた。
そしてその魔物はどれもイルジオのそしてニクとシュトナの知識にもない魔物であった。
一見、黒い人間のような姿であり、しかし説明を読むと大木ほどの見上げるような大きさもある魔物であったり、鋼のような体毛に鉄の鎧を容易く切り裂く爪と牙を持った獅子の魔物であったり、と種類は様々であったが恐ろしく強いという点ではどれも共通していた。
ただその情報は古代語で書かれており、主にシュトナが訳してくれたものの、シュトナも流石に全てを正確にわかった訳ではなかった。
この様子だと王国の調査隊はこの資料の内容は全く理解できなかったであろう。
資料室には調査隊が実際に調査して書き上げた報告書の写しもあり、それを読んでみるとどうやらこの数百年間これらの魔物が出現するほど深いところまでは行ったことがないようであった。
一通り資料を読んだあとイルジオ達は一旦図書館から出ることにした。
外へ出るとすでに夜になっていたため、イルジオ達はその日は情報収集を終わりにして宿をとって休むことにした。
宿の部屋に入って荷物を置き、少しくつろいだ後イルジオがある話をきりだした。
「さて。情報収集とは別に二人に話しておきたいことがあるんだが、いいか?」
イルジオが真剣に話し始めたためニクとシュトナは佇まいを正してイルジオの声に耳を傾ける。
「宿を三人で一部屋とったことから察しているかもしれないんだが……」
イルジオがそこで言葉を切ると誰かがごくり、と喉を鳴らす音が部屋に響いた。
「実は………………そろそろ俺の手持ちの金が無くなりそうでな」
そう。イルジオ達は密かに金欠、という問題を抱えていたのだ。
そもそもイルジオは師匠から多少のお金をもらっただけであり、ニクも今までは親からお小遣いをもらっていたので今はほとんどお金を持っていない。そしてシュトナは帝国に捕まった時に持ち金が全て没収されていた。
救いといえば帝国がイルジオのお金を見逃していたことぐらいであろう。
そんなわけで、イルジオ達には今お金がほとんど残っていなかった。
「そ、そうよね。お金が無いと魔宝刃探しどころじゃないわよね」
「ん。確かに今の私達にはお金がない」
「まあ、そういうわけだから明日は別行動にしようと思う。ニクとシュトナは引き続き情報集めを頼む。俺は明日一日金になりそうな魔物を狩ることにする」
こうしてイルジオ達は別行動にて資金稼ぎと情報収集の二つを翌日の目標としたのであった。




