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剣の王と七つの魔宝刃  作者: 水無月 平
魔剣エラディオン
16/27

資料室

 


 充分な休息をとったあと町を出発したイルジオ達はジオゼリア王国目指して北へ進んだ。



 国境を越えれば帝国もそう簡単には追ってこれないだろうと思い、できるだけ早く国境を越えたかったため、疲労は回復していたがニクとシュトナの二人はまたイルジオにそれぞれ片手で抱えられることになっていた。



 イルジオが念を入れて木々の中走っている間、ニクとシュトナは魔法談義に興じていて昨日と比べて随分と仲良くなっていた。



「…………つまり古代語は魔法以外にも使われていて、逆に古代語の名称が残っている物はそれだけ昔から存在していた?」


「ええそうよ、ニク。ただ余り多くの人に伝わらなかった場合は昔のものでも古代語の名称が伝わっていなかったりするわ」



 二人の話を聞いていたイルジオは魔法を使ったことも使おうと思ったこともなく、また剣などの得物や己の体で戦うことの方が性に合っていたが、新しく魔法の知識を聞くのは好きだったため質問をして話に混ざった。



「ならもしかすると魔宝刃が古代のものである可能性もあるのか、シュトナ?」


「可能性、というか魔宝刃は古代のものよ? えっと、そういえば言ってなかったかしら……」


「おいおい。初耳だぞシュトナ。古代、てのは千五百年よりもさらに前の話だよな? 俺は魔宝刃はここ千五百年の話だと思ってたんだが。魔王の話と一緒に出てきてたし」


「魔王が魔宝刃を使ったのは確かだけどその魔宝刃はそれ以前から存在してたのよ。あと、魔宝刃のそれぞれの名前にも古代語が使われているんだけどわかっていないのもあってね。それは人の名前なんじゃないかって言われてるわ」



 何気ない会話から以外なことがわかったりなどがあったが、そうして移動すること一日、帝都を出てから二日も経っていなかったがイルジオが凄まじい速さを維持していたため下手に馬車を使うよりもよっぽど進んでいた。

 もちろんその分イルジオは疲労していたためあまりやりたいことではないと思っていたが。



 しかしそのお陰もあってようやく新たに町が見えてきた。今朝出たのが帝国の北端の町とのことだったのでおそらくジオゼリア王国の町なのであろう。



 木々を抜けて街道へ入ったイルジオは走るのをやめて歩き始めた。

 そして町の入り口まで行くとどこかで見たような旗が掲げられていた。読んでみると「王国の国境の町キースへようこそ」と書いてあったそれは帝国の北端の町を連想させた。



「……人が考えることは一緒なんだな」



 イルジオがしみじみと言ったのを疑問の目で見るニクとシュトナだったが町に近づくとイルジオと同じようなことを思うのであった。



 そうして町の前まで来たイルジオ達は今度は顔を知られているわけでも追われているわけでもなかったので魔法は使わずに普通に町へと入っていった。



 町は活気に満ちた様子で、首都でもないのに何か町の産業でもあるのだろうか。

 そう思ったイルジオは通りの露店の店主に質問してみた。



「店主さん。この町に何か特別な産業でもあるのか? 随分と賑やかに思えるんだが」



「なんだ兄ちゃん。さては帝国の方から旅でもしてきたんだな? ここは国境の町にして黒き森調査隊の活動拠点の町キースだ! まあ今の時期は調査隊はいないが何百年もの間何度も拠点に使われていくうちにどんどん発展していったのさ!」



 店主の話を聞きいきなり当たりを引いてしまった、というより帝国の二の舞いにならないように警戒したのが嘘のように簡単に情報が手に入った。



 そのことに三人は喜びつつもどこか拍子抜けしたように微妙な顔を見合わせることになった。



「なんだ、そんな顔をして。まあそれよりこの魔貝のネックレスでもどうだ、兄ちゃん? 二つ買えば安くしとくぞ。ちょうど可愛らしい二人を連れていることだしな」



 店主の言葉にイルジオは情報のお礼と思いネックレスを二つ買った。何気にイルジオ初の買い物であった。



 店主の様子から黒き森については割と開いた感じなのだとわかり、イルジオ達は積極的に情報収集をしていった。




 イルジオ達が情報収集を続けていると一つの有力な情報を掴むことができた。



 なんでも町の図書館の資料室というところに前回の調査隊が王都から持ってきて置き忘れていった古代の頃の資料があるらしい。

 どうせ次回の調査で使うことだし、と取りに来る様子もないらしい。閲覧には許可がいる、とのことだが。



「閲覧の許可、か。おそらく王国の人間じゃなきゃ降りないだろうなあ」



 イルジオがそう嘆くと誰かがさっと手を挙げるのが視界に入った。イルジオがそちらを向くとニクがぴしっと手を挙げていた。



「ニク、まさか……!」


「ん。闇魔法を使う」



 ニクの探究心が暴走してるな、とニクの言葉にイルジオは顔を引きつらせた。隣を見るとシュトナも同じような顔をしていたが実際イルジオもシュトナも古代の資料にかなり興味があったため結局はニクに賛成したのだった。



 そうして隠密の魔法を使ったイルジオ達はこっそりと図書館に入り、例の資料室の前へと来ていた。

 警備がいるわけでもなく図書館の職員に見つからなければいいだけだったため今回は気配を消す中級の闇魔法である。



「汝、己の錠を外せ––––」



 そう詠唱して鍵を開けたのはシュトナの天魔法である。



「––––自前解錠(レイ・チコナライ)


「そんな魔法もあるんだな」


「普通天魔法は風や雷を起こすだけなんだけど"空"の特性を引き出せばこういう事もできるのよ」



 シュトナの天魔法の多彩さに感心したイルジオは今鍵が開いたばかりの扉に手をかけ、ついにそこへと入っていった。



 中に入ってみると資料室は整理が行き届いていて欲しい資料を探すのも比較的簡単そうであった。



 手分けをして探し始めてからしばらくたち、シュトナが何かを見つけたように声を上げる。



「ねえ、二人とも」



 その声に反応しシュトナが持つ資料を覗くとそこには細かな描写の絵とその絵を補足するように書かれた文章があった。

 それを見てイルジオも思わず声を上げた。



「これは…………」




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