師匠を訪ねて(出発前段階編)Ⅲ
注意
・ 文章力が低く読み辛い
・ ご都合主義
・ スローペースな物語の進行
・ 残酷描写あり
以上の事が大丈夫な方はどうぞ
アリシアへのお仕置きは、オーソドックスに王道で攻める事にした。
アリシアよ後悔するがいい。
隣に座っているアリシアの手を握り彼女の目を見つめる。
彼女は視線に耐え切れなかったのだろう頬を染め、視線をそらした。
「えぇ。それは魅力的な話ですね。もし良ければ今夜ご一緒しませんか」
そんな気障な台詞を耳元でつぶやくと彼女の染まった頬がさらに真っ赤になり、視線も俯いた。
だが追撃の手を休めるつもりは無い。
握っていた方の手を離し、そのまま彼女の頬まで持っていく。
彼女の体がビクリと震えた。
「もっと可愛らしい顔を見せてください」
俯いた彼女の顔をクイッと此方へ向ける。
「ごめんなさい。もうしないから許してぇ」
両手で顔を隠しながら彼女から泣きが入った。
「これに懲りたら。もう、そっち方面ではからかわない事」
「わかったから。こっちを見ないで。なんでこんな時だけ気障な台詞が吐けるのよ」
彼女は文句を垂れながら、俺から背を向ける。
「そ、そういえば。おにいちゃんも師匠のところまで付いて来てくれるのよね」
「そのつもりだったが駄目だったのか」
「ううん。駄目じゃない」
彼女の照れ隠しの問いかけだったのだろう。
「だけど、付いて来たって詰まらない話しかしないよ」
詰まらない話か。
彼女にとって詰まらない話と言えばなんだろうか。
考え一つ思い当たる。
「お見合いの話とかか」
「なんでそうなるの」
彼女はノールックからチョップを何度もかまして来る。
「あるわけないじゃん。私にそんな話が」
「チョップはやめてくれ」
するとチョップが止む。
からかい過ぎたか少し言動がおかしくなってしまってる気がする。
「だけど、無い話ではないぞ。なんたって俺等は勇者パーティーの一員だったからな」
「それってそんなに凄いの」
「内情を知っている俺等からしたら凄いとは思わないが周りの人から見たら凄い事だろうさ」
「なんだか腑に落ちない」
「まぁなんだ。お前を囲いたい貴族なんて掃いて捨てるほど居るのは解るだろう」
「だから、私を嫁にしたい貴族が多いと」
彼女は心底嫌そうな声を出している。
まぁ気持ちは解らなくも無いが、正直な所で言うと他人事だ。
「おにいちゃんはどうなの」
「俺にはそんなの無いだろう。世間では荷物持ちの男程度にしか認識されてないよ」
「なんかずるい」
何とでも言うがいい。
これは、何時も面倒な事を押し付けられるポーターとしての数少ない特権だからな。
これぐらいの、得が無いとあいつ等の世話係なんて出来たものじゃない。
あいつ等の小間使いにされた上に貴族まで追っかけられるとかどんな悪夢だよ。
「まぁそう言う訳だから、少しは気をつけたほうがいい」
「解った。今度からお兄ちゃんと付き合ってますって言う」
「おいおい。そう言うのは禁止って言っただろう」
「禁止されるのは、そう言うのでからかう事だけだもん。弾除けに使うのは禁止させられて無いもん」
屁理屈まで持ち出してごね出した。
「変な噂がたつぞ」
「いいもん。勇者との関係を噂されるよりはずっといい」
「勇者と比べられてもなぁ。嬉しくないんだが」
「お兄ちゃんはもっと喜んでもいいのに」
まったく彼女は俺にどんな期待をしているのか。
よく掴めない。
「その件は置いてく。それで、話は変わるがアリシアの師匠ってどこに入るの」
「本当に唐突だね」
「そういやぁ聞きそびれてたなぁって思ってさぁ」
「良くそれで、貴族相手にあの返しが出来るんだから度胸あるよね」
「お褒めに預かり光栄です。で何処なんだ目的地」
「花の都フラワーガーデン」
「フラワーガーデン?」
「どうしたの」
「いや単純にフラワーガーデンと魔法の師匠の関連性が思い浮かばなかった」
魔法使いが花を観賞しているのだろうか。
それとも花を食べているのだろうか。
わからん。
「そう言うことね。師匠はぎっくり腰で湯治中」
そういえばフラワーガーデンは薬草を使った薬湯が有名だったな。
どっちかと言えば食用花の産地としての方が有名だからすぐにピンとは来なかった。
「で何しに行くんだ」
俺がそう問いかけたときコンコンとノックの音が響いた。
窓から外を眺めるといつしか日は昇っている。
思った以上に時間がたってしまっていた。
「朝食かな」
「朝食だろうな」
話をいったん中断しドアを開く。
「「料理をお持ちしました」」
料理を持っている二人の従業員が愛想よく声を掛けてくる。
「机まで運びますね」
「頼むよ」
従業員達は部屋の中に入り二人分の食事をテーブルに置く。
「ありがとう」
財布から銀貨を取り出し従業員にチップとしてそれぞれに二枚ずつ渡す。
「「ありがとうございます」」
銀貨を嬉しそうに受け取った従業員達はうれしそうにお礼を言った。
「食器は私達が運びますので食事が終わりましたらお声をおかけください」
そう言うと従業員達は一礼をして部屋から出て行った。
「じゃあ食べるか」
俺達は対面同士に座る。
まだ少し恥ずかしいのかアリシアはモジモジとしていた。
しかし、おいしそうな料理を前に吹っ切れたようだ。
「すごいよ。おにいちゃん」
宿にしては凝った料理に彼女は喜んでいる。
「じゃあ食べるか」
そういい、まずは皿に盛られた料理に目をやる。
多分これは、ミートケーキだろうか。
セルクルで形を整え蒸されたひき肉の上に緑色のソースが掛かっている。
崩すのが勿体無いほど綺麗な盛り付けだ。
俺はナイフで切り口の中に入れる。
衝撃だった。
口に入れたとたんホロホロと崩れるひき肉は蒸し方が上手いのだろうか独特のパサツキも無くジューシー。
しかも肉の間にはキャベツが間に挟まっておりそれは最高の蒸し加減でサクリサクリ言い歯ごたえを演出する。
そして何よりもこのソースだ。
このソースは何かの野菜にかんきつ類が混ざっているのだろうか一緒に食べると酸味と同時にフワリと柑橘系のいい匂いが漂い、重いひき肉の油をさっぱりとしてくれる。
これは凄い。
「おいしい」
アリシアも夢中で食べている。
次はスープを飲んで見る。
これも美味い。
鶏がらベースにいくつもの香味野菜がブレンドされたスープなのだろう。
味はこの澄んだスープからは考えられないほど出汁が出ている。
そして何より驚いたのはこの極限まで減らされた塩だ。
うっすらと感じる程度の塩加減のお陰で本来あるはずの鶏がらの旨みや香味野菜の旨みなどがシッカリとつたわってくる。
そして、このパンだ。
このパンこそメインだ。
決して大げさではない。
自家製なのかまだほのかに暖かいパンからは香ばしい良い匂いが漂ってくる。
そんなパンに力を入れて割くとパリッという気着心地がいい音と共により一層香りが強くなる。
そして、それを口に入れると驚くのだ。
このパンは普通より塩気が少し多いのだ。
だが、この塩気こそがたまらない。
この塩気にパンから漂うバターの香りが合わさってより一層美味い。
そして、先ほどの料理が全てはこのパンを引き立てるための料理だと知る。
全体的に少し塩気が薄いと感じるこの料理にこの塩気が少し強いパン。
これが合わさる事で飽きが来ずにいくらでも食べていけると錯覚させられる。
俺達は夢中で朝食を食べていた。
そして気が付くと全て綺麗に平らげてしまった。
お読みいただきありがとうございます。
練習がてら、料理描写をして見ましたがいかがだったでしょうか。