プロローグⅢ
注意
・ 文章力が低く読み辛い
・ ご都合主義
・ スローペースな物語の進行
・ 残酷描写あり
以上の事が大丈夫な方はどうぞ
「奪われた装備はシリアルナンバー装備なのか」
「町が見えてきたよ」
アリシアはその質問に答えたくないのだろう露骨に話をそらしてきた。
しかし、それは罪悪感からではないと思えた。
何故なら彼女が悪戯しかけた子供のようなワクワクとした表情を見せているからだ。
こうなっては何を言っても無駄だ諦め、町を見下ろす。
すでに月が昇り辺りが暗闇に支配されても尚も街頭と篝火の優しいオレンジ色が幻想的に町を浮かび上がらせて、人々の生活を映し出している。
「綺麗だよね」
「そうだな」
うっとりとした声色で語りかけてくるものの気が利いた答えを返せる訳も無く陳腐な返答を返した。
「もぉそこはアリシアのほうが綺麗だよの一つも言えないと駄目だよ。お兄ちゃん」
「言えるかそんな恥ずかしい台詞」
そういう彼女の顔は月夜に映し出されたせいか、それとも顔が近いせいか何時もより艶やかで思わずドキリとしてしまった。
「もぉ妹に恥ずかしがってどうするのお兄ちゃん」
「妹って、お前がそう言っているだけだからな。血も繋がってないどころかお前の方が一つ年上だからな」
悟られてて成る物かと平静を装いつつ軽口を叩く。
するとそれを何時もの掛け合い思ったのか、彼女は目元に涙を浮かべる演技を見せる。
「酷いよ。お兄ちゃん小さい頃あんなに一緒に水浴びしたのに」
「勝手に記憶を捏造するな。出会って二年しかたってないんだぞ」
「そんな私とは遊びだったのね」
「それは妹の言う台詞じゃない」
何時ものような笑顔を彼女は浮かべた。
それは、よく知る彼女の顔だった。
他愛ない掛け合いのお陰か平静を取り戻す事が出来た。
「冗談だよ。この景色も名残惜しいけどそろそろ着陸しようか」
彼女が名残惜しそうに見つめていた景色から目を離すと、同時に杖はゆっくりと降下していく。
☆
町の入り口には鉄鎧を着た二人の兵士が立っていた。
彼等は降りて来る俺達に気付いて顔を強張らせ背筋をピンと正した。
「す、すいませんが身分証の提示をお願いします」
どうやら声を掛けてきた彼は相当、緊張しているのだろう。
何故か敬礼をし、杖が降りるきる前に上ずった声で訊ねてきた。
「降りるので、少しまってくださいね」
アリシアがハニカムと兵士は『失礼しました』と謝るが、その動きはまだ硬い。
どれだけ緊張しているのかと声を掛けたくなったが、多分それでは逆効果だろう。
静観し、杖が降りきるのを待つ。
そして杖が折りきると俺達は杖から立ち上がる。
「お待たせしました」
アリシアの何気ない一言に兵士は『お手数かけます』と気を使う。
それが、少し滑稽で悪いと思ったがクスリと笑ってしまった。
「改めまして。身分証の提示をお願いします」
彼女は魔法でから俺は懐から身分証を出し、それぞれ兵士に渡す。
受け取った彼等は確認をし困り果てた顔をした。
「本物だよ。どうするよ」
「どうするって………領主様に連絡するしかないだろう」
兵士達の困惑した呟きが此方まで聞こえる。
その声に、俺達は勇者パーティーの一員だったのだなと再確認した。
これは面倒な事になるだろう。
そう思いアリシアの向き表情で同意を求める。
だが、アリシアには俺の意図が分からなかったのだろうコテンと首を傾けた。
その姿がまた可愛いのだがどうすればいいだろう。
「えっと。中に入っても」
煩悩を振り払うためとでも言うか取り合えず町の中に入れてもらう事にした。
「すいません。どうぞお入りください」
兵士は慌てたように身分証を返してくれ、町の中へと通してくれる。
「まだ、何かやらないといけない事は有りますか」
「い、いえ」
兵士は問いかけに否定をするが顔を顰めたその姿はまだ聞きたい事がある様に思えた。
だが、聞いていいものなのかどうか判断を拱いているらしい。
なんだろう。
考えても解らない。
取り合えず行き先でも教えておけば大丈夫だろう。
「そうですか。ならば私は冒険者ギルドに向かいます。アリシアは」
この発言で、ようやく自分が置かれている状況に気付いたようだ。
何か閃いたように俺の顔を見てくる彼女。
「私は魔法ギルドに向かいます」
彼女は兵士にはにかんだ。
「ですので御用が有りましたらそちらを訪ねてきてください」
兵士は敬礼をし『分かりました』と返事をしてくれた。
俺達が町の中を歩き兵士が見えなくなった頃、アリシアが近づいてきて袖をクイクイと引っ張ってきた。
「なんか、面倒な事になってるんだねぇ。お兄ちゃん」
何かと思いアリシアに顔を近づけると小声で語りかけてくる。
「仕方ないさ。有名税って奴だな」
「今でもこんな騒ぎになってるのに私達がパーティーを抜けたって知ったらどうなっちゃうんだろう」
「考えたくない」
思考が拒絶反応を起こすが、これから起きるであろう問題がどうしても頭をよぎる。
何故、俺達は追い出された上にこんな目に有っているのだろうか。
勇者の意地汚い笑みを思い出し苛立ちが募る。
やめだ。やめだ。考えるな。
成る様に成るさ。
「………まぁ、とりあえず俺は冒険者ギルドへ行く。そっちは魔法ギルドに向かうんだろう」
「うん」
「じゃあ、ギルド入り口で待ち合わせるか。先に終わったほうが相手のギルドの入り口前に集合と言う事で」
「わかったよ」
集合方法を決め、互いに用事を済ませるために別れて行動を始めた。
☆
『冒険者ギルド』力ある荒くれものたちが仕事を求め訪れる場所。
しかしここも、こんな時間になると仕事を求めるものは居らず、酒場へと変貌していた。
多くの冒険者達が冒険譚を肴に酒盛りをしている。
そのため、この冒険者ギルドには酒特有のにおいと喧騒が充満している。
しかし、それを注意する職員は居ない。
なぜなら彼女達も冒険者に混じり酒盛りに混じり話に花を咲かせているからだ。
喧しくも楽しい場所だ。
そんな酔っ払いに絡まれないよう極力気配を消し掻い潜り、ギルドの隅までやって来た。
そこには、そんな喧しさも関係なしにカウンターに頬杖を付いている受付嬢が一人居る。
彼女は酒盛りをしている人たちを呆れたように眺めている。
「やぁ。退屈そうだな」
声を掛けると彼女は此方に面倒そうに視線を向ける。
俺を確認すると一点、飛び上がり指を指してくる。
鳶色の目が限界まで大きく広がりそれが少し滑稽だ。
「何であんたがいるのよ」
「何でって」
何処まで話していいのか判断に迷う。
少し考えてみるがやはり、無闇に答えるべき内容ではないと言う結論に至った。
仕方なしに彼女の問いかけは無視し本来の目的を果たす事にした。
「とりあえず。預けた荷物を出してくれ」
懐から身分証取り出しうながす。
しかし、彼女はそれを受け取ろうとはせず口をパクパクしているだけで要領を得ない。
『金髪の彼女が魚のような真似をしている。まさか金魚の物真似か』
いやそんなはずは無いだろう。
多分彼女の理解が追いつけていないだけだ。
「おーい。取り合えずにこれを処理してくれ」
このままでは埒が明かないので顔の前で手を振ってやる。
すると、彼女は気付いたようで、いそいそと荷物を棚から下ろしてくれる。
そして、真新しいリュックサックをドンとカウンターに置くと此方を睨み付ける。
「明日、しっかりと事情を聞かせてもらうからね」
「勘弁してくれよ。今日はとんだ厄日だったんだ」
返答が気に食わなかったのだろう。
視線がより一層鋭くなる。
だが、無闇に説明するわけにも行かない。
どうやって逃げるか算段しなければならないな。
新たな問題に頭を悩ませる事になりそうだ。
「すいません。ヒューイ様はおらっしゃいませんか」
ギルドの扉が開くと俺の名を呼ぶ叫び声が聞こえる。
どうやら俺の一日はまだ終わってないらしい。
お読みいただき有難うございます。
思った以上にスローペースに成っておりますがご了承ください。