プロローグⅡ
注意
・ 文章力が低く読み辛い
・ ご都合主義
・ スローペースな物語の進行
・ 残酷描写あり
以上の事が大丈夫な方はどうぞ
「どうしてお前がいるんだ。アリシア」
思わず肩を掴み少し前まで一緒に居た彼女の名前を呼ぶ。
「私も追い出されたんだよ」
彼女は浮かんでいる杖に座った語るが、とても追い出された人が取るような表情ではなかった。
どちらかと言うと、開放されて清々したとでも言わんばかりの楽しそうな表情だった。
いや。だが今はそんな事はどうでも良い。
それよりも気になるのは、勇者が彼女を追い出した事実だ。
そんな事有りえるのか。
「あの自称フェミニストが、お前を追い出したのか」
俺は彼女に訪ねる。
確かに彼女と勇者の仲は悪い。
そのため、何時も勇者達の起こす行動には彼女は無関心を貫いていた。
だが、そうだからと言って攻撃の要である彼女を追い出すとは思えない。
ましては、あの自称フェミニストが女を手放すとは到底思えない。
「自称フェミニストか面白い表現だね。だけど、あれは唯の節操なしな女好きの猿に過ぎないよ」
彼女は悪びれる様子も無く笑顔で毒を吐く。
どう見ても勇者パーティーに居た頃の彼女だ。
その彼女の物言いに安心し気持ちが和らぐ。
「さすがにそれは言いすぎだろう」
「どうだろう。あの猿は口を開けばハーレムだとか言って、仲間の聖女と聖騎士を誑かしたじゃない」
彼女の表情には蔑み或いは諦めか、その様な物が見て取れる。
まさに彼女の言う通りなのだから何とも言いがたい。
「そこは否定できないな………」
「しかもそいつ。あろうことか私さえも襲おうとしてきたし」
彼女はよほど嫌な思いをしたのだろうか。
鳥肌を立て自分の体を守るように肩を抱き締めている。
「どうしたんだそれ」
俺が加入する前の話なのか聞いた事無い話に要らぬ興味が沸いた。
「あの猿が裸で突撃してきたから思わず何を握りつぶした」
思い出してしまったのか、ごしごしと自分の両手を服で拭き始める。
「あの感触がいまだ忘れられなくてね」
潰したのが嫌なのは解るが、男として言わしてもらえれば潰される体験は嫌だ。
想像するだけで股がキュッと縮こまる感覚を覚える。
「さすがにそれは酷くないか………」
「いや。急所を見せびらかすアイツが悪い」
そう言う彼女の目はゴミを見るよな目をしていた。
「それに、あんな邪魔なもの取ればいいんだ」
「いやいや。無理だろう」
「そうだよ。何で気付かなかったんだろう取っちゃえば被害者も出ないし急所も減る。まさにウィンウィンじゃない」
まさに、名案を思いついたかのような顔をしているが正直な所、勘弁してほしい。
聞いてるだけで痛くなるし、取られた勇者を想像するだけでこう吐き気を覚える。
そんな下らない話をしていると唐突に突風が吹き彼女の銀色の長い髪を棚引かせる。
………ん?
おかしくないか。
違和感を感じ彼女を観察する。
「なっなに」
恥ずかしかったのだろう彼女は体を隠すようにし、視線をそらす。
そんな彼女をお構いなしに無視し観察し続ける。
そうして気付く。違和感の正体に。
格好が違うのだ。
黒の生地に金と銀の刺繍が入ったローブはいつも通りなのだが、身に着けていた装備の一部が無い。
トレードマークである黒いトンガリ帽子も黒のマントも無い。
彼女が座っている杖はミスリルで出来た淡い青色の金属製では無く唯の木製。
どうしてこんな事に気付けなかったのだろうか。
観察力には自信が有ったのに。
いや、今はそんな事を悔いてる場合ではない。
事情を聞かなくては。
「なぁ、その格好はどうした。俺が居なくなってから何があった」
「それは、町に向かいながら話そうかな。日も暮れそうだし」
まるで誤魔化すかのように言い、杖の後方をポンポンと手で叩き『後ろに乗れ』と言う合図を送ってくる。
そんな彼女に腑が落ちないが、日が暮れそうなのも事実なため杖の後ろに座る。
「では、町に向けて出発します」
俺が座ったのを確認するとおどけるように言い、ゆっくりと杖を上空へと浮かべ走らせて行った。
☆
上空で彼女の話を聞いて頭の痛みが再発するかと思った。
彼女の話を説明すると。
俺と別れた後、示し合ってたのか二人の新メンバーと合流。
それは、俺の代わりの荷物持ちと、アリシアの代わりの魔法使いだった。
アリシア自身もいつかは追い出されると予想はしていたらしい。
だがここからメンバー内で意見が分かれる。
勇者のアリシアを残す派とそれ以外の追い出そう派だった。
なんと自称フェミニストである勇者だけはアリシアを手放そうとしなかった。
何かと理由を付けアリシアをパーティーにおいておこうとする勇者。
とうとうアリシアが勇者の漏れた本音にキレてぶん殴る。
結果として仲間達からの非難を浴びる。
その末に勇者からではなく仲間達から『出て行け』と追い出された。
その時、仲間達は勇者が俺にやったように彼女を脅し武器類とお金を強奪したらしい。
ちなみに勇者は、説得は諦め静観を決めていたらしい。
推測では帰れずに泣きついて来るなら、それを材料に関係を結ぼうと思っていたのだろうと言っていた。
これが俺が追い出された後に起こった顛末だ。
「あいつら馬鹿なのか………」
これが思わずこぼれた本音だ。
「それで、何か聞きたいことはある」
彼女の問いかけに困惑する。
聞きたいことは有るのだが切り出し難いというか聞き難い。
とりあえず当たり障りの無いところから聞いてみることにする。
「その杖はどうしたんだ」
「この杖はね次元収納魔法で収納して隠してたの。手の内は隠しとかないとね」
彼女は自慢げに言う。
だが、それでは最初からこうなる事を見越していたみたい思えた。
もしかして、加わった当初から彼女はこうなる事を気付いていたのかもしれない。
いや。駄目だ。彼女を哀れむな。
それは、失礼だ。
その事は頭から抜く。
それよりも、次元収納魔法だ。
次元収納魔法と言う単語に真っ先に思い浮かぶのはグラスウルフが沈んでいく光景。
間違いなくあの魔法こそが次元収納魔法だったのだろう。
「それは、俺でも覚えられるのか」
彼女は俺のほうをマジマジと見て『うーん』と唸る。
そうしてして暫く後に、彼女は俺から視線を外す。
どうなんだ。
年甲斐も無くドキドキする。
「素養は有りそうだけど、如何せん魔力量がすくないからね。無理かもね」
辛口の評価だった。
彼女がそう言うのであれば、ほぼ不可能なのだろう。
覚えられれば、あんな泥仕合などしなくて済んだのに。
残念だ。
「そうか………」
「それよりもさ。もっと聞きたい事が有るんじゃない」
その言葉にドキリとする。
それはつまり、彼女は俺が何を聞きたいのか理解していると言う意味だ。
『ならば、聞こう』と意を決しる。
「取り上げられた装備って、渡して良かった物なのか」
「勿論。駄目に決まってるよ」
そう言い俺に笑いかけてきた彼女の顔に背筋が凍った。
それは、彼女の怒りから来るものではなく狡猾に罠にはめる獣のようなそんな感じにも見えた。
ゴクリとつばを飲み込み確信に迫る。
「大切なものだったんだよな?」
「大切なものだったよ。だってあれは魔法ギルドと私を結ぶ絆だったんだもん」
「えっ………」
彼女が言った意味を理解したと同時に彼女に対する寒気の理由に気付く。
再確認した。
彼女だけは敵に回してはいけない。
読んでいただいて有難うございます。
本当に亀速度で進んでおりますがお付き合いください。