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MONONOHU大戦  作者: 月山 李陵
4/4

第四話「開会式──渦巻く陰謀」

はい、試行錯誤した末にようやく出来ました!第四話!まぁこれからもゆるーく続けていくつもりなので応援よろしくお願いします!


【帝都郊外 我部家武家屋敷 道場内】(4/7 11:15)


「皆様静粛になさってください……それでは、只今より此度の試合の規則を御説明させて頂きます。審判及び進行役を務めさせて頂きますのは私、田中太郎でございます。」


 理路整然とした口調で審判が挨拶をする。

 すると、いきなり壇上の天魔がプルプルと身体をひくつかせながら、


「ブフっ!! 普通過ぎるぅ! ……いかん、我慢出来ん! フヒッ!」


 と、その場の緊張感を一気にぶち壊した。

 審判の名前が余程普通過ぎて面白かったのだろう、その場で目尻に涙を浮かべ、声を押し殺しながら笑いし始めたので、周りがざわついた。


「……あの……天魔様?」


 田中は顔色一つ変えないが、天魔のこの行動に困惑している様で、非常に肩身が狭そうである。

 徳照は先ほどの件も含め、この場の雰囲気よりも右にいる天獄の様子が気になり始めた、案の定彼のこめかみに青筋が立ち始め、表情が怒りを孕んでる様だ。

 彼の様子を見た徳照が天魔を諌めようと左を向いたその瞬間、彼の背後に天獄が高速で回り込み、頭上めがけて手刀を彼に食らわせる。


「いィッ!!!」


 壇上には知らぬ存ぜぬの顔で立つ当主たちと、隣で静かにしゃがみながら頭を抑え悶絶する天魔の姿があった。

 その様子を観客席から見ていた沙羅は天獄の超スピードに驚き、口をあんぐりと開けながら目を見開き、壇上を見つめていた。

 壇上にいた和那は、彼が天獄の動きを見切っている様子を見て、心底驚いた。

「(まさか総帥の動きを見切るとは……あの子供、なかなかやるな。)」


 そんな中、


「ゴホン……えー、話の続きをさせていただきます」


 田中は咳払いをし、彼らの様子を一瞥した後、話を再開した。


「ルールは至って単純です。

 ①どちらかが気絶するまで闘う

 ②戦闘手段徒手空拳、あるいは支給された木刀のみ

 ③特待生は4人選出される

 以上の三つです」


 彼は天獄の方を向き、続けて言う。


「それでは我部様、開会の挨拶をお願い致します」


 彼は田中の顔を見た後に頷き、壇上から選手と観客を見渡す。それから深呼吸の後、話を始めた。


「本日はお集まり頂いた観客の皆様に感謝の意を表します。皆様も御存知かと思いますが、数年前に我が国は始祖鬼との武力衝突によって始まった戦争に、惨敗を喫しました。不利な講和条約を結ばされ、皇国史において類を見ないこの状況下で、ここに居られる全ての方が各々で気づかれたと思います。『この国の刀が既に錆びきっていた』という事実に……しかし! 恐れるとことはありません! 今、親愛なる天君はこう思われています、『早急にこの国に新しい刀が必要である』と……此度の試合は前述の刀の素材、すなわちこの先の国を守る若者たちを見つけ出すための手段であり、皆さんの不安材料を取り消す場でもあるのです! そして今、私の目の前にいる選手達に言いたい。『これは試合では無い』と。全ての試合が終わった時、此処に存在するのは観客と我々、そして勝者と敗者である! 勝者は刀、即ち自分をを敗者である砥石で研ぐことになる、これ即ち此度の試合の真理である。選手の皆、決して忘れないで欲しい! これは試合ではなく戦争であるという事を! そして、観客の皆様! 安心して頂きたい! 『未来は明るい』と!! ……第三十二回武覧試合の開催を此処に宣言する!!!」


 天獄は天を仰ぎ深呼吸をした後に、数分間にわたる演説を開会宣言で終え、


「以上、開会式演説並びに、開会宣言でした。」


 と締め括った。

 一瞬の静寂の後に、会場全員が歓声を挙げ拍手喝采が沸き上がった。


 遂に──武覧試合が始まった。




【帝都郊外 我部家武家屋敷 道場の裏手】(11:35)


「先生!遅くなりました」


 ガヤガヤと人の声が響く広場から抜け出してきた諸行無常は、裏手で待ち合わせを約束していた士道学院の担当教官「安田 雅之(やすだ まさゆき)」に向かって急ぎ足で歩きながら声を掛けた。


「いや、構わんのだが……それより少し話いいか?」


 何やらマズそうな雰囲気で、安田が誰も傍にいないのに口に手を当てながらコソコソと言った。

 そんな彼の様子に違和感を感じつつ、諸行は快諾した。


「え? ……えぇ、良いですよ!」


「あのだなぁ……」と低いトーンで安田は口を開いた。


「あの子、屋敷に運んだ彼の事な、今年の合格者って事は伝えてたよな。履歴書によると武術は勿論、剣すら握ったことはないそうだぞ……とても武覧試合に出場して他の奴らと対等に戦えるとは思えん! 何とか我部の奴を説得してくれないか?」


 アイツの話か……と思った諸行は、安田の嘆願が教官として至極当然だと思いつつも、自身の家が仕える我部家の姫の性格を鑑みた結果、一つの結論を出す。


「希陽香様は一度決めたら曲げないお方、難しいかと……」


 そう言った彼の顔を見つめて、安田はガックリと肩を落としながら、


「そうか……まぁ仕方ない。後で彼には謝罪と謝礼金でも渡しておこう」


 と言うもんだから、これは教官として如何なものか、と思い、


「先生、それ賄賂じゃないですか!」


 と諸行は反論する。


「いいんだよ! 世の中綺麗事だけじゃ生きていけねぇんだからさぁ!」


 大人の汚さ全開で発言する安田に彼は、


「(この人……大丈夫か?)」


 と思うと同時に、「(こんな大人にはなるまい……)」と心に誓った。




【帝都郊外 我部邸から離れた場所に位置する建物】(11:43)


 建物の一室に男二人組が何やら怪しい動きをしている。一人は高身長で一人はガタイのいい中肉中背の様だ。


「『アラハバキ』の同血反応がこの周辺に見られた……恐らく我部邸の中であろう……」


 聞いたこともない言葉を発しながら対象の特定先を一方の男に伝えた。


「本当か? 仮に特待生になれば、ややこしい事になるやもしれん、どうする?」


「我部邸の内部に対象が存在する」という情報を聞いた男は、計画の実行の難易度が一気に上がる事実に戸惑いを見せる。

 背の高い男はそれでもなお、毅然とした雰囲気で


「いつものように手速く証拠を遺さずに殺すだけだ」


 と言葉を発する。

 暫く沈黙が続いた後、横にいる男は


「今日もアレは用意してあるのか?」


 と、なにかしらの存在を確認した。

 背の高い男は手に持った鞄を一瞥し、


「無論、この中にある」


 とモノの存在を示す。そして彼は鞄から一枚の札を出した。『操呪の札』、即ち陰陽術式の記された札である。


「さて……会場の誰かに使用するか。おい! 札の開門術式を組め」


 そう指示すると、もう一人の男が床に向かって指でなにかし始める。すると徐々に光を帯びた床から鉄砲のような物が出現した。


「準備完了。あとは填装して撃ち込むだけだ……さぁ、お務めを果たして頂くとするか……」


 建物内から見える位置にある我部邸、その道場裏にいた諸行に狙いを定め、術を唱えカウントダウンを始める。


「操呪術式 展開……3……2……1」


 次第に鉄砲が光を帯びていき、


「発動……」


 男の声と共に──引き金が引かれた。

 放たれた術式は時間の経過と共に矢のように形を変え、諸行の背中に撃ち込まれる。動きが止まりカクっと頭を垂れながらフラフラと歩き始めた。


「操呪反応確認、洗脳完了」


 背の高い男はそう呟くと、相方に次の段階の指示をする。


「よし、お前は残って同血反応の元を感知、その後印を付けておけ」


 頷き、了解の意を示した相方は、


「分かった、『全ては黄泉不知(よみしらず)のために』」


 と謎の台詞を言った後、周辺の片付けを始める男の様子を確認し、直ぐに向き直して窓から対象の場所を感知し始めた。


「『全ては黄泉不知のために』」


 そう言って背の高い男は部屋から出ていった。




【帝都郊外 我部家武家屋敷内】(4/7 12:02)


 「なぁ、ちょっと質問していいか?」


 着付けを終え「ついてこい」と言われた俺は、前を姿勢よく歩く希陽香に声を掛けた。


 「何かしら?簡潔に頼むわ……」


 「言われんでもそうする! 一言多い奴だな……」


 そう言いつつ質問続けた。


 「お前さ、『我部』って言うんならあの我部家なんだろ? やっぱ兄弟姉妹は沢山いるもんなのか?」


 彼女はピクッと眉を潜め、不機嫌そうだ。


 「私……基本質問は嫌いなの、家族関連は特に……」


 「あっ……そうなのか! 悪いな、今の質問は聞かなかったことにしてくれ」


 虎の尾を踏んだようだ……俺は質問の内容を詫び、黙りこくった。

 彼女はそんな俺を一瞥して、


 「兄が一人いるわ、まぁ生きてるか死んでるか分からないようなものだけど……」


 と質問に答えてくれた。

 「(ちゃんと答えてはくれるんだよな……)」と思いながら、俺はその彼女の兄について更に聞きたくなったが、これ以上の詮索は危険と判断し、止めておいた。殺されかねんからな……

 そんな事を考えてると、希陽香が一つの門の前で立ち止まり、


 「入ってちょうだい」


 と扉を開け俺を部屋に入らせた。壁一面に木刀が並んでいる。どうやら練習用のものらしい。

 彼女は続けてとんでもない事を突然口にしはじめた。


 「これから貴方には試合に出てもらうわ。家の道場で数十分後に始まるの。」


 思考が止まる。そして、直ぐに再開し、


 「は?! 何言ってんだよ! 俺は剣も握ったことねぇんだぞ!」


 と怒りと驚愕で半々な気持ちを彼女にぶつけた。


 「どうせ入学すれば握る事になるの、今からでも変わらないわ」


 そう冷静に言う彼女に対し、俺は心底恐怖を覚えた。

 「(あ……コイツに逆らうと不味いことになる)」と。


 思考がごちゃごちゃになりそうな俺に対して、彼女は一本の木刀を壁から取って渡してきた。


 「これで戦うの、今から道場に向かうわ……」


 僕は手渡された木刀を見る、いやまてよ、この木刀、よく見たらヒビ入ってんじゃねぇか!


 「お……おい、これヒビ入ってんぞ……」


 「あぁ、別に大丈夫よそのくらい」


 彼女は依然として冷静だった。


 「何が大丈夫だよ! これ使えなくなったらどうすんだよ!」


 「徒手空拳もありだから問題ないわ」


 ──最早、反論の言葉は一つも見つからなかった。


 道場への道程がとても長く感じられ、まるで「このまま廊下が続けばいいのに」という俺の願望が見せた幻覚にも思えた。

 だがどうやら此処は紛うことなき現実である様だ。

 縁側から外に出ると道場がハッキリと目に映る。道場の目の前に来ると、門の前に立つ衛兵に希陽香は何やら説明をしたようで、すぐさま門が開き簡単に入る事が出来た。

 彼女は「道場には入らない」と言った後に、

 「応援しているわ」

 て心にも無い言葉を俺にかけ、そのまま屋敷の方へ去っていった。


 ──武士人生が思いがけない状況で始まった。


いや、天魔さん凄い好きだわ、自分で作ったキャラだけど(笑)

しかしそれにしてもあの二人組は怪しいですね……まぁモデルはあの名探偵のあの組織のあの二人組です。(オマージュですからね!パクリじゃありません!)


まぁそんなこんなで波乱の展開になりそうな第五話は明後日あたりに投稿されるかと思います!

ぜひ見てくださいね!


P.S.

誤字脱字のご指摘や作品の批評も容赦なく頂きたいです。全ては作品の質をあげるためです!ご協力よろしくお願いします!

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