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MONONOHU大戦  作者: 月山 李陵
3/4

第三話「控える者達」

色々修正する中で投稿が遅れてしまいました……待ってくださってる方がいらっしゃる事を信じています(笑)

それでは、第三話お楽しみください!

【帝都郊外 武家屋敷の一室】(4/7 11:45)


 目を覚ますと布団の上にいた。重いまぶたのせいでなかなか開かない眼を擦りながら、俺は最後の記憶を思い出そうとした。確か帝都に向かう電車に乗っていて、皇心にはもう着いていた。そうだ……アイツに話しかけられたんだ、「諸行 無常」──思い出した、俺はアイツに最後何か打たれて、帝都駅で意識がなくなった……


 俺は自分の今置かれている状況が全く理解出来なかったが、倒れる以前の記憶はあるので全く問題は無いだろう。(まぁ仮に記憶を忘れてたら思い出す事もないだろう)


 和室の真ん中に敷かれた布団の中に佇み、頭の整理が出来てない状態でぼーっとしていると、突然障子の向こうにシルエットが現れた、思わず身構える。


「目が覚めた?」


  女の声がした。


「誰だ、君は」


「そんな事知ってなんかなるの?」


「いや、ただでさえこんな訳の分からん状況に置かれてるわけだから、君の正体くらい聞いてもいいだろ?」


 暫しの沈黙のあと、ゆっくりと扉が開く。顔と顔を見合わせた瞬間、俺は思わず息を呑んだ。

 白磁の様な透き通る肌、端正な顔立ちに、肩まで伸ばした艶のある黒髪、唖然としたのは彼女が美しかったからに他ならない。


「満足した? あら、酷い顔ね。つまらなくて悪かったわ……」


「いや、そんなことは無い。少し驚いただけだ」


「……変な人。取り敢えずまぁ名前だけ教えておくわ、『我部 希陽香(われべ きょうか)』よ」


「我部」か、恐らくあの「我部家」と関係があるんだろう、


「それでだけど、今からこれに着替えて頂戴」


 そう言って我部が手渡してきたのは一枚の着物だった。


「あ……ありがとう」


 そう感謝し置かれた着物を着始める、こういう時にまさか着付けの知識が役立つとは思わなかったが、全く……人生は何があるか分からないな、そう思いながら俺は死んだ母親に口には出さずに感謝をした。


 しばらく黙りこくっていた彼女が突然口を開く。


「あなた、着付けが出来るなんて……意外ね」


「『意外』とはなんだ、『意外』とは……どんな風な人間に見えてるんだか」


「そうね、とても着付けなんて知識がある程賢くはない人間に見えてるわ」


「お前なぁー! はぁ……もういいや」


 張り合うのが馬鹿馬鹿しくなり、俺はそれ以上言い返すのを止めた。


「まぁなんだ、俺の死んだ母さんの実家が呉服屋でね、ガキの頃よく教わったんだ」


「……そう、ごめんなさい。何だか変な質問して」


「いやいや!いいんだ、それは別に」


 雰囲気が何だか悪くなったので、俺は話題を変える事に努めた。


「そうそう! これ着終わったら何すればいいんだ?」


「私に着いてきて、そうすれば分かる」


「あのさぁ……俺一応高等学府に入学することになってるんだけど、それまでには解放してくれるよな?」


「それはあなた次第かもね。」


 彼女の微笑を含んだ顔と発言が気掛かりだが、取り敢えず着物を着ることに集中することにした。




【帝都郊外 武家屋敷の道場】(4/7 10:00)


 親友の誘いで武覧試合を観に行こうという事になり、僕(沙羅 宗次郎(しゃら そうじろう))は八大武家の一角であり、この国で天君に次ぐ最高権力者である我部太政大臣兼総帥の屋敷に来た。親友の諸行無常は相変わらずボーッとしてるけど、僕は名のある武士に会えるのが楽しみだったため、会場をウロウロしていた。

 今日一番の目的は「八大武家」、天君に時代と共に服属していった王たちを起源とする名門武家の当主様達だ。

 確か歴史書『八大武家実録』に基づく僕の研究(趣味)によると……


『①和那家は外州時代に天君に服属した一族、後に聯合皇国の盟主補佐となる。始祖は和那王(ワナオウ)。現在の氏上は和那翠松(ワナノスイショウ)

 ②我部家は國始時代に天君に服属した仁魏族を祖とする一族、氏上は武士聖院の総帥(代表)を代々世襲する。始祖は捷英王(ハヤヒオウ)。現在の氏上は我部天獄(ワレベテンゴク)

 ③北摂家は皇心時代から天君に使える一族、武家であるがどちらかと言うと文官に近く、太政大臣等を度々輩出する。始祖は振鷺(フサギ)。初めて天津臣から国津守に任命された一族。現在の氏上は北摂善導(ホクセツゼンドウ)

 ④平厳家は大葦原時代に天室から臣籍降下した一族、主に海軍を統括している。一方で政治面では海上貿易商などに太いパイプを持ち、太政大臣を輩出する事も度々ある。始祖は蒼海王(ソウカイオウ)。現在の氏上は平厳相國(ヘイゲンショウコク)

 ⑤鶴源家は大葦原時代に天室から臣籍降下した一族。頻繁に一族の内紛が起こるため、子供を多数の母親に産ませ、その子供達が育つと殺し合わせ、生き残りを氏上とする儀式が時代と共に形成されていった。個人の武力は最も高い一族だが団体行動は難しいため切込隊に所属する事が多い。始祖は八幡王(ハチマンオウ)。現在の氏上は鶴源三十八(カクゲンミソヤ)

 ⑥満尊家は第一次國津時代に鶴源家から別れた一族、主に陸軍を統括している。政治面では第二次國津時代に太政大臣を15代にかけて輩出した。始祖は尊源(ソンゲン)。現在の氏上は満尊寿永(ミツムネジュエイ)

 ⑦天魔家は煉獄の乱で荒れた帝心州を征服し天室を史上最も追い詰めた一族、しかし徳照家の分家、時影氏が反乱を起こして天君に服属させた。離反の危険性を考慮して国津守に任命され他の國津守に封じ込ませている。高い技術力を持つ鉄操衆を配下に持っている事から刀の時代を終わらせようと天君に進言するが受け入れられずにいる。始祖は秀信王(シュウシンオウ)。現在の氏上は天魔煉堂(テンマレンドウ)

 ⑧徳照家は天室の遠い親戚で旧知の関係である。煉獄の乱の際に荒れた帝心州の治安を回復させ、元凶たる天魔家の氏上である天魔煉姜(テンマレンギョウ)を討伐した。その功績から超大陸の彼方の荒れた土地から外州の一部に移り住む事を許された。第三次國津時代になると太政大臣を15代歴任した。始祖は駿台王(スンダイオウ)。現在の氏上は徳照宮光(トクショウミヤミツ)


 だったかな……そんな歴史書に出てくる方々の末裔が目の前にいる、その事実に僕は胸が熱くなった。

 僕は生まれつき身体が弱いので、どんなに武士に憧れても、絶対に武士にはなれない運命だ。だけど今もその夢を捨てられずに有名武士達に会いに行っている。

 一方で友達の諸行は士道学院に通い日々鍛錬しながら武士を目指しているらしいが、そんな奴の背中を見ていると嬉しさ反面嫉妬の情も出てくる。

 諸行はそんな僕の思いを全く知らない様な顔で、


「わりぃ、おれちょっと用事があるんだ、武士の人に呼ばれてんだよ、すぐ戻るからさ、一人で観ててくれよ」


 と言ったので、


「大事な用事なんだろ? 行ってきなよ、僕はここでずっと観てるからさ」


「悪ぃな!」と言いながら諸行は人混みの中に消えていった。


「(まぁ、今日はこんな感情抜きにして純粋に楽しむのがいっか……)」


 そう思い、僕は道場の中に入っていった。




【帝都郊外 我部家武家屋敷 応接間】(4/7 10:30)


 武覧試合は天津道における「選種の祭」にあたる、四月七日に毎年開催される精鋭の卵を見つけるための儀式である。

 その儀式がもうすぐ始まろうとしている中、未だに来ない男に苛立ちを持つ男が一人いた。


「遅い! アイツはどこで何してるんだァ?!」


 我部天獄、その人である。


「まぁ落ち着かれよ」


「そうそう、喚いても()()()が来る訳では無いでしょう……」


 和那翠松と徳照宮光が口を揃えて天獄をなだめた後に、平厳相國が天獄に向かって言った。


「我部殿よ毎年の事です、天魔殿が時間を守らないのは」


 ある種の達観した表情を見せる相國に、


「本当に申し訳ない、あやつは昔からあんな感じでなぁ……」


 と、焦りながら話す天獄の状況を見かねた満尊寿永は


「どうでしょうか?この時点でもう始めるってのは。」


 と提言したが、天獄の途端の反論によってその案は即座に却下された。


「それはならん、『武覧試合』は八大武家の名の元で行うものなのだ!」


 そんな彼の思いに水を差すかのように、鶴源三十八がこう言った。


「この試合の必要性が全く分からん、だいたいぬるいのだ。真剣で試合をしてこそ本当の戦いというのに」


 北摂善導は三十八の発言に不快感を顕にしながら、

「鶴源、そんな汚らわしい考えを持つのはお前だけですよ。野蛮な同族殺しの一族め……」


 と言った。その雰囲気に危険を感じた天獄が


「おい善導!馬鹿なことを言うんじゃねぇ!お前なぁ……」


 そう言って善導を諌めようとしたその瞬間、三十八は自分を中心として半径約5mほどの剣域を一気に広げ、殺意を善導に向けた。

 そして一瞬のうちに刀を抜こうとしたが、三十八の刀は善導には届かなかった。何者かが三十八の腕を掴んだのだ。

 殺気立った眼で三十八が睨みつけたのは、皆が待ち望んだ男、天魔煉堂だった。


「よぉ、皆さん。おまたせしたのぉ! すまぬすまぬ!」


 この状況下で、尚且つ軽いテンションで言うもんだから益々皆の導火線に一気に火がついた。


「こんのぉ! バカもんがァ!! 誰のせいだと思ってんだ!」


「まぁまぁ! そんなに怒るなよ天獄! ちょっとした用事があったんだよぉ!」


「毎年毎年、全くお前はいい加減にせんかい!」


 それから数分間、天獄は煉堂をガミガミと説教した。ようやく怒りが収まると、天獄は大きく溜め息をつき、口を開いた


「まぁいい、皆やっと集まったな。それでは我々は道場に向かうとしよう、慶生!屋敷の警備体制を強めておけ。」


 警備強化を命じられた阿蘇はすぐさま応接間を出て行った。

 そして彼らは屋敷の裏手から道場の舞台裏に入り、壇上へ向かった。

 壇上に上がった天獄の姿を見た途端に、その場にいた選手や観客は一斉に静まり返り、全員が天獄の方を向く。

 壇上に上がった彼は大きく深呼吸をし、前をまっすぐ見つめたかと思うと、いきなり野太い声で、


  『第三十二回武覧試合開催を此処に宣言する!!』


 と言った。


 そして、会場の銅鑼が鳴ると同時にその場にいた人達の歓声が沸き上がった。

活動報告の方に「八大武家」の詳細を書こうと思いましたが、もうこの際沙羅宗太郎君の発言としてしまいました……。うん、効率的!

さて、話は変わりますがこの先どうなるのでしょう……武道と希陽香達は何処へ行くのでしょう?!

次話もお楽しみに、それではまた逢う日まで。


P.S.

誤字脱字はご指摘頂けると嬉しいです。

厳しいご感想もお待ちしておりますのでガンガン送ってきてください!

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