第二話「帝都道中異常なし」
1日で2話書くという……目が疲れた……。まぁ良かったら読んでクレメンス。
寒いギャグですいません。
それではお楽しみください!
【帝都行き龍車客室内】(4/6 18:10)
「まぁそこに座ってや」
武道は皇心駅構内で出会った少年にそう言われ、やたらと高そうな座席に腰を下ろした。
「あ、自己紹介まだやったな、ボクは『諸行 無常』っていうもんや! 宜しくな!」
「こっちは荒覇吐 武道だ、宜しくな……」
やたらグイグイくる諸行に戸惑いながら彼は自己紹介を済ませた。人間関係の基本だぜ!
それから四十分近く諸行から質問攻めされた。解放されたと思ったら次は諸行自身の事を話し出すもんだから武道は諸行のお喋りを呆れを通り越して天賦の才と思う事にした。
そんなこんなで二人客室で談笑して二人は親交を深めているその最中であった。
「なぁなぁ武道君! 実家はなにを(ガタン!!)……?!」
客室の外で大きな音がした。ドアにぶつかったんだろうか……。
「なんかおかしいな……」
ボソッと諸行が呟いた。
「え?! どういう事?」
「何かがぶつかったのは確かやけどドアの下の方からしか音がせぇへんかった。考えられる可能性として荷物や子供がぶつかったという事があるけどこの龍車には荷物輸送車両は着いてないし子供も乗ってはいたけどどれも乳幼児やった。これらの可能性を考慮すると緊急事態やってことが分かるんや。あと微かに血の臭いがする」
武道は驚いた、ひょうきんな奴と思っていた諸行が、案外そうでは無さそうだったからだ。
間髪入れず、武道は落ち着きを取り戻し脳内でシュミレーションした上で、現状の実力で自分が無力であると判断したした。
「諸行、すまんが現状俺は何も出来そうにない」
「かまへん、僕も同じや。でもなぁ的確な判断をせなあかん、こんな時君はどうする?武道君」
この時自分の中の違和感の正体に気付いた。武道は一時間前、諸行の客室に行く途中、そう──歳が五歳程の子供を見ていた事、そして自分が諸行を通した情報しか持ってない事実を。もし仮に彼が悪意を持って武道に接していたら、その時は騙されている可能性を考慮せざるを得ない事になる。そして暫しの沈黙の後、武道はいつもより重く感じながら、口を開いた。
「諸行、おれは何もしないことにする。現時点で俺はお前から得た情報を基礎に対策を練る事しか出来ない。これは非常に危険だ……そう、率直に言えば……」
お互いに重苦しい空気が流れる……
「俺はお前を、信用出来ない」
諸行は武道を見つめて、
「それは……どういう事や? 武道くん、ボクが信じられへんのか? 人の命がかかってるかも知れないんやで!? 冗談も程々にしいや……」
静かだが明らかに苛立ちを込めた声調でそう言った。
「それは帝都に着いて下車する時に分かる。例え知らないフリをしたとしても俺は見捨てたわけじゃないし、仮に人が床に倒れて血を流していたとしても知らぬ存ぜぬで貫き通す。俺は知らなかった……いいな?」
「はぁ……分かった、分かったよ」
今までお喋りだった諸行が大きく溜め息をつき、その後すぐに黙りこくった。こういう奴がキレると怖いんだよな──と年相応な事を考えながら武道は車窓を眺め始める。暫くして彼も前の席に座り、それからは先程までの喧騒が嘘のように、静かで重苦しい時が流れた。
【帝都御所 大政殿】(4/6 16:30)
「武士聖院 総帥補佐官 阿蘇 慶生殿、入られよ」
目の前の門に向かって名乗ると同時に太鼓の音がなり門が開いた。顔を下に向けたまま御簾の目の前に辿り着くまでゆっくりと歩く。
「面を挙げられよ」
侍従長の「十条 神継」がそう言うと同時に阿蘇は御簾の向こうの天君に顔を向けた。
「天君、お久しゅうございます」
御簾の向こう側なので表情がよく見えないが、その厳かな雰囲気には王たる威厳が備わっていた。
「阿蘇よ、よく来てくれた……ところで本日の目的は何か……」
「単刀直入に申し上げさせて頂きます。軍拡法案の報告で御座います。太政大臣曰く、来月の国会予算委員会でこの案が三院で順次可決されれば、即刻軍拡政令を幾つか発令致す、との事です」
十条が苦虫を噛み潰したような顔をした、阿蘇は理由を知っている、彼は民間企業や人院議員と深いパイプを持っており、武士聖堂院に対して明らかな敵意を持っているからだ。そんな彼にとって今の阿蘇の発言は筆舌に尽くし難い怒りを孕む要因に十分なり得た。
「阿蘇殿……いくら太政官府の政令とはいえ、そう数ヶ月に何令も発令されたら国の内政が乱れます。慎重に御判断なさるのがよかろうに……」
と、十条は嫌味たらしくほざいた。
「失礼ながら十条殿……侍従長とはいえ口を慎まれよ。貴方の属する天従省に内政関与権はございません。天君の日々の暮らしの安寧を維持される事のみ勤められよ」
「ぐぬぬ……!」
こめかみに青筋を浮かべながら十条は矢継ぎ早に反論をしようとしたが、
「二人とも止められよ、天君の御前であるぞ」
「「!!」」
背後から聞き覚えのある声がした。
「ふふふ……天君、私は十条殿の言い分も聞き入れるべきと存じます」
その発言に気分を良くしたのか、十条はその地位に相応しくない下卑た表情で挨拶をした。
「これはこれは……和那御親兵総長、どうも……」
和那 翠松御親兵総長。
八大武家の和那家の当主であり、帝都の守備を主な目的とする天君直轄部隊の「御親兵」を統括する地位に就いている。
「それにしても阿蘇は言い過ぎだ。十条殿の言うことにも一理ある。十条殿、阿蘇が申し訳ない、しかしご理解頂きたいのだ。我々の国家が有史以来最大の危機に直面している事実を」
「勿論、それは私も理解しております和那様。私もこの国を愛する人間の一人でございますから」
双方の熱が表向きは収まった様だった。
「和那よ、ようやってくれた。二人とも熱くなりすぎて朕では止めかねる……」
「ガッハッハッ!! しかし天君、私の力では御座いません。ひとえに天君の威光のお陰で御座います」
「うむ、そうであるか、嬉しいぞ和那よ。して阿蘇よ、軍拡の件承った。ただ少々慎重に事を進めるよう我部にも釘を刺しておいてくれ。」
「はっ、仰せのままに」
天君はそう言うと十条侍従長を引き連れて御簾の更に奥の部屋に消えていった。去り際に十条が小馬鹿にしたような顔で阿蘇を見た。
阿蘇は腸が煮えくり返りそうだった。侍従長という立場で無ければ切り殺していた所だった。
「チッ……古狸が……」
阿蘇は門を出て馬車乗り場に向かうまでカリカリしながら歩いた。その様子に、見かねた和那は、
「まぁそう怒るな、若さ故お前には難しいやもしれんが……」
そう言うと彼は、
「私が若輩物と言いたいのでございますか……?」
半目で和那を見た。
「いやいや、決してそなたを軽んじている訳では無いぞ! この若さで総帥補佐官だ、実力あってこそということは誰の目にも明らかだ…ぞ…?」
和那は焦りの色を浮かべながら、両手を胸の前で振り彼の言葉を否定した。
「まぁなんだ……今のお前の様な組織の頭でも尻尾でも無い立ち位置が最も世知辛いよな、分かるぞ……うん、よーく分かる!」
「貴いお家柄、八大武家の一角たる和那家当主の貴方様に言われても説得力がありませんな……。私はここで失礼します」
阿蘇を思いやる和那の言葉にとびっきりの嫌味をたっぷり添えて返すと、すぐさま馬にまたがり阿蘇は小さくなって向こうの方に消えていった。
「おう! そうか……ハハハッ! ……はぁ……」
眉をヒクヒクさせて無理やり笑った後、深いため息を着いて和那は御親兵鎮守府へ馬車で帰った。
【帝都行き龍車客室内】(4/7 00:15)
帝都に龍車がついた。車内の事件から約六時間が経過していたが依然としてその重苦しい雰囲気は漂ったままであった。帝都駅に着くと二人はまとめた荷物をもちお互い目を合わせ、唾を飲み込む、そして武道が扉のノブに手をかけようとしたその時であった。
ガララッ!
突然ドアが開き、武道はドキッとして体を揺らす。そして直後に、目の前の異様な光景に一瞬思考が止まった。
彼の目の前には、軍服を着た男三人が立っていた。すぐさま思考を再開始し、そこの男達にどくように頼もうと思った矢先の事だった。背後から首筋に何か打ち込まれ、身体のバランスが取れなくなった。薄れゆく意識の中で彼が最後に見たのは、注射器を持った諸行だった。
どうでしたかな?冷静に判断し客観的にものを捉えることが出来る主人公の武道、まぁ最後の最後で詰めが甘いですよねぇー。
この先どうなるんでしょうか、私自身も書いて皆さんにお見せするのが楽しみです。
それではまた次の話も見てくださいね!
有難うございます。