第一話 おやぁ?
「おやぁ?」
そう間抜けに声を上げたのは、小柄な少女であった。
身長が156㎝、おそらくは中学生だろうか。
肩のあたりで揃えた甘栗色、大きめの瞳。誰もが見た目で愛らしいと思うほどの美少女だった。
その少女は、畑を耕すために農機を運びだそうと、物置のシャッターを引き上げたのだが、そこに農機は存在しなかった。
代わりにあったのは、敷かれたコンクリートを切り取ったかのような穴である。
見事なまでに真四角だった。
「昨日まではあったよね? 耕耘機……」
前日には確かに存在したものが、今日にはまったく見当たらない。
気になるのは畳二畳分ほどの穴なのだが、この穴も前日には存在していなかった。
「まさか、地下から耕耘機を盗んだ!?」
「何でそんな発想になるのよ。まったく馬鹿なんだから……」
「おぅ、ゆかり。いたんだね」
「穴の底に落ちているとは考えないわけ? 兄さん、いい加減に大人の考え方をしようよ」
美少女でなく美少年だったようだ。
ゆかりと呼ばれた少女は兄とそっくりの顔立ちで、ポニーテールがよく似合っている。
二人揃うと双子の姉妹と言ってもおかしくはない。
「けどね、ゆかり。万が一にも地下から耕耘機を盗んだとも……」
「ないから。二十三歳にもなって、なんで考え方が幼稚なわけ? 少しは大人の思考をしなよ。だから未だに彼女ができないんだよ」
「ほっといて!」
美少年ではなく、成人の好青年だった。
だが、どう見ても外見は女子中学生である。両手を握りながら頬をぷぅ~とふくれる姿は、とてもではないが成人男性のものでない。
明らかに生まれてきた性別を間違えたとしか思えない。まさに神の悪戯である。
「それにしても、こんな穴は昨日までなかったよね。兄さんはどうなの?」
「ん~……自転車をしまったときにはなかったよ? 一晩で穴が開いたことになるよね」
「……これ、もしかしてダンジョンじゃない?」
「まさかぁ~。戦時中に掘られた防空壕の穴じゃないの?」
「確かにそんなものも子供の頃まで残ってたけど、こんな綺麗に穴が開くわけないじゃない。それに、階段があるみたいだけど?」
「えっ!?」
薄暗くてよく見えなかったが、目が慣れてくることで難易は階段があることに気付く。
だが、これがダンジョンとなると問題であった。
「兄さん、スマホなんか取り出してどうするの? 行政に連絡?」
「違う。拓ちゃんにTell」
「なんで馬鹿に連絡するのよ……。普通は【探索者ギルド協会】でしょうに」
「えぇ~? 見せてあげようよ。きっと三分でここに来るよ」
そう言いながらも登録してある電話番号を指でクリック。
しばらくプリティでキュアキュアな曲が流れていたが、ようやく通話可能となった。
幼馴染みである【佐山 拓巳】の気だるげな声がスマホから聞こえてくる。
『あ~……昴かぁ? こんな朝っぱらからなんのようだよ。俺は徹夜明けなんだ』
「ごめん、拓ちゃん。バイト明け?」
『いや……朝までエロゲーやってた。バッドエンドは嫌だが、全画像をコンプリートしたぞ』
「バイトは!? 夜勤担当だったよね?」
『だから寝ようとしてたんだろ。んで、何のようだ?』
「んとね、物置にダンジョンの入り口ができてた。どうしたらいいと思う?」
『なにぃ!?』
突然通話が切られた。
そして三分後。
「どこだぁ、どこにダンジョンの入り口が!!」
「「服を着ろぉ!!」」
よほど急いできたのか、幼馴染みはパンツ一丁だった。
なぜかティッシュの箱を抱えている。
「拓にい……今まで何してたの? 何でテッシュの箱なんて持ってるの?」
「なにって……言わなくても分るだろ? 紳士の嗜みだ」
「うん、普通なら通報されるね。ご近所さんはみんな理解があって良かったね」
「昴、お前も男ならわるだろ? ティッシュは友達だ」
「僕がティッシュだったら、拓ちゃんには使われたくないなぁ~」
昴も男だから、拓巳が一眠りする前に何をしていたのかは分る。
しかし、拓巳の意見には同意したくない。
「んで? 肝心のダンジョンはどこだよ」
「物置の奥だよ。昨日までは耕耘機があったんだけどね」
「あぁ~、アレか。うん……【日本探索者ギルド協会】に連絡しろ。万が一にもモンスターが出てきたらヤバい」
「電話番号、知らないよ。拓ちゃんは知ってる?」
「知らん」
半裸で胸を張って言い切る拓巳。
清々しいまでに変態であった。イケメンなのに残念すぎる姿であった。
「役に立たない男共ね。私が連絡を……」
――ウゥ―――――――ッ!
響いてくるサイレンが、ちょうど家の前で止まった。
そして二人の警官が敷地内に入ってくる。
「いたぞ! お前か、半裸で走り回る変態はっ!」
「ちょっと事情を聞かせて貰おうか。そこの少女二人に何しようとしたんだ?」
「少女……もしかして僕のこと!?」
「兄さんと私以外に誰がいるのよ。結婚するか性転換するか、どっちかに早く決めて欲しいわ。紛らわしいから」
「なんてことを言うのぉ、僕は男だからねぇ!? 性転換する気はないからねぇ!?」
妹に変な認識を持たれ、昴は本気で泣いた。
対する拓巳は、というと――。
「は、離せぇ!! 俺がなにをしたぁ!!」
「そんな格好で何をする気だったんだ? 車の中で少し話をしようか」
「ん? これはダンジョンか……。【探索者ギルド協会】に連絡しておくか……。君達にも事情を聞かせて貰うから少し待っていてくれ」
「パンツ一丁でいたら犯罪なのか!? 官憲は横暴すぎるぞォ、訴えてやるぅ!!」
「拓ちゃぁ――――――――――ん!?」
警官二人に捕まり、拓巳はドナドナされていった。
彼の格好はやはり通報レベルであったようで、ご近所さんの誰かは見逃すことはなかったようだ。理解ある人達以外にも常識人がいたようだ。
こうして拓也は警察から厳重注意を受けるのだった。
今年の夏の日差しは、やけに暑いように感じられた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「それで、君達の名前は? 年齢も教えて欲しい」
「【大山ゆかり】、十五歳よ」
「ふむ……未成年か。見て分かるが、危険な男だったようだな」
「いや、拓ちゃんは昔からあんなだから。この辺りでも生暖かい目で見られているし」
「なるほど。周囲からも奇人扱いだったわけだね。それが犯行に繋がったか……」
「あれぇ、失敗した!?」
拓巳を弁護するつもりが、素直にいつもの感想を言ってしまう。
その結果、拓巳の立場は更に悪くなって行く。
「次に君の名前だが」
「【大山 昴】、二十三歳。拓ちゃんの昔からの幼馴染みかな」
「二十三歳!? 成人してんの!? なるほど……勢い余って幼馴染みを襲いに来たのか」
「いや、僕は男! 男だからねぇ!?」
「な、なんだとぉ!? クッ、幼馴染みの青年も襲うのか……見下げ果てた変態か!」
「ただの馬鹿だから、別に変態ってわけじゃ……あれ?」
「兄さん……弁護しようと思ったけど、拓にぃの普段からの行動を鑑みても、適切な言葉が浮かばなかったんでしょ」
妹の指摘に反論できなかった。
昴の幼馴染みである【佐山 拓巳】は、普通に見てイケメンの部類に入る。
少しワイルドな顔立ちで、いかにもスポーツマン風。スタイリッシュなファッションでキメれば、間違いなくモテることだろう。
しかし、彼の普段の格好は緑のジャージである。ギターを持って歌い踊るあのコンビと同じジャージだ。そのうえ筋金入りのオタクである。
子供向けのアニメに留まらず、R18指定のアニメも購入し、アーケードゲームからエロゲーまで手を出すほどの逸材だ。
コンビニのバイトもアニメグッズを購入するためだけに始めるほどだ。
そんな拓巳は夏場、パンツ一丁で近所を歩くなど奇行が目立つが、ご近所さんからはさほど問題視されていない。
だが、ここ数年で近所も様変わりし、住宅も増えてきた。
中には別の地方から引っ越してきた者もおり、その人達に通報されたのだろう。
知らない人から見れば、ただの変質者にしか見えない。
「今頃の季節は、いつも『服を着ろ』と忠告しているんだけどなぁ~」
「拓にぃは『暑いのに服なんか着ていられるかぁ!』って言って、毎年パンツ一丁だから……。今まで良く通報されなかったわよね」
「つまり、毎年あんな格好で過ごしていると? 彼に常識はあるのかい?」
「常識はあるけど、人の考えと少しズレてる気がします。常識の基準って人それぞれですよね?」
「変な性癖とか、性的な行為を強要するようなことは?」
「ないですね。風俗店に行くお金があるなら、フィギュアを購入する資金に充てますよ。そんな度胸があるとも思えない」
つらつらと事情聴取に応じる兄妹。
後は警察の判断に任せるしかない。しかし何気に酷いことを言う昴。
「しかし……あの格好は」
「いつものことだし、皆、慣れちゃっているんですよ。田んぼで作業する人達も、普通に立ちションくらいはするよ? けど、誰も注意なんてしないし」
「それは、お年寄りだからじゃないのかい?」
「通報したのは、最近になって新しく引っ越ししてきた人だと思うわよ? 昔からこの辺りに住んでいる人達は、皆、知っているから」
「【水戸ダンジョン】の影響で、住宅が増えたしね。一攫千金を狙って探索者を目指す人達が多いから……」
「その探索者の犯罪が増えてきているから、警察の仕事は面倒なんだよ。ダンジョン内で犯罪が行われたら調査なんてできないし。死体も残らないからね」
ダンジョンで人が死んだ場合、遺体はダンジョン内で消えることになる。
中には悪質な者もおり、保険金目当てや虐めなどの暴力行為をダンジョン内で行うのだ。
そうした犯罪を食い止めるために、ダンジョン内ではドローンに監視カメラを取り付け、探索者の行動を監視している。
どういうわけか、監視用ドローンはダンジョン内だとバッテリーが切れることもなく、半永久的に稼働し続ける。しかも壊れることもなくモンスターも襲わない。
原因は未だに謎のままだが、ドローンは大量にダンジョン内に飛び交っていた。
「まぁ、警察に注意をされたら、いくら拓ちゃんでも、これから気をつけるようになるかな?」
「無理じゃない? だって、拓にぃよ?」
「変な理解力があるね、君達……」
警察も呆れるほど、幼馴染みの奇行におおらかなご近所さん。
何はともあれ、この事情聴取は一時間ほどで終わるのだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
パトカーが帰ると、昴達はダンジョンの入り口前に集まった。
新たに発見されたダンジョンは、入り口付近でモンスターに襲われることもあり、不用意に侵入してはならない決まりがある。
調査員が調べ、ある程度の安全を確認した後に入り口を壁で囲むのだ。
無論、探索者が入れるように扉もつけられているが、内部に入るためには電子ロックを開くカードキーが必要となる。
その管理をするのが、ダンジョンが出現した敷地の所有者で、同時に家族全員が探索者の資格を強制的に取得させられる。
「……拓ちゃん」
「なんだ?」
「確か、ダンジョン内で探索者は、レベルに応じて超人的な強さになるんでしょ? けど、モンスターがダンジョンから地上にあふれ出したとして、僕達が戦えるの? 地上に出ると能力が使えないんだよね?」
「いや、【暴走】が起きたとき、探索者は一時的に制限が解除されるらしい。どんな理屈かは知らんが、地上でも戦えるようになる」
「そうなんだ……。けど、なんでそんなに詳しいの?」
「俺は、ゲームやグッズを購入するにもバイトでは金が足りないと理解した。だから探索者を目指そうと思ってたんだよ。会社勤めなんて無理だしな」
「なるほど……」
ダンジョンが出現して以降、地球は就職難民が大量に現れた。
地上から多くの資源が消滅し、経済に大打撃を受けてしまったのだ。倒産する企業も増え、あわや国が崩壊すると差し迫ったのを救ったのが、【北海道大迷宮】を攻略していた探索者達であった。
ダンジョン内から多くの資源を持ち帰り、それが経済を立て直すきっかけとなる。国民の多くが探索者を目指し、無職や浮浪者もダンジョンに挑むようになった。
ひとたび動き出すと怒濤の如く事態は流れ、各地に出現した新たなダンジョンに挑むようになる。世界中で似たような事態が起こった。
これによって何とか日本の――いや、世界の経済は持ち直した。
しかし、依然として危ういのは確かである。
「どのみち、お前もフリーターだろ。探索者として一稼ぎした方がいいんじゃないか? 幸い、自宅にダンジョンができたんだしな」
「そうだね。ゆっくりレベルを上げて、攻略を目指してみるのもいいかな」
「私はパァ~ス。モンスターとなんて戦いたくないし、死にたくないもん」
「だが、レベルは上げておけ。でないといざという時、死ぬぞ?」
中国には二つのダイダンジョンがあった。
規模は【サハラ大迷宮】と同規模の【上海大迷宮】と世界最大の【チベット大迷宮】である。そしてこの二つの迷宮から【暴走】が起こる。
中国は国土の三分の一が魔物に荒らされ、魔物が跋扈する危険地帯を国内に持つこととなった。迷宮の独占を主張し、諸外国と対立していた矢先にこの事態となったのだ。
大迷宮近辺は魔境と化し、今では誰も近づくことができない。モンスターも強く、年々魔物の生息領域が広がってゆくほどだ。
幾度も空爆を敢行するも、生き延びたモンスターは更に強くなり牙を剥く。世界がダンジョンの恐ろしさを知った災厄であった。
「生き延びたのは探索者をしていた人達だけで、普通に暮らしていた人達は逃げ切れず、全員がモンスターの餌食になったらしいぞ? 空爆で難民ごと焼き尽くしたという話も聞いたな。情報統制で表向きは否定しているけど」
「オークやゴブもいるのかな?」
「おっ? そこに食いつくか。さすがは相棒、エロモンスターは確かに存在するぞ」
「ゆかり……身を守るために強くなることを勧めるよ。僕は、妹がモンスターに性的な酷い目に遭わされる現場など見たくないから」
「あんたら、私をダシに変な妄想をしてない!?」
「「いや? 純善に身の安全を心配しているだけだぞ(よ)?」」
実の兄はともかく、拓巳はかなりエロい想像をしているとゆかりは感じた。
現に彼の口元はニヤニヤと変な笑みが浮かび、不愉快極まりない。
オタク気質からエロモンスターにロマンを感じているようだ。
「そうね……拓にぃの期待に添えるような『クッ、殺せ……』なんて台詞を吐くつもりはないし、真っ先に他人を犠牲にしてでも逃げられるくらいの強さは欲しい」
「なにぃ!? 馬鹿野郎、『クッ、殺せ……』は男のロンマンだろ! それを否定するお前は鬼かぁ!!」
「何で私が拓にぃの期待に応えなくちゃならないの? 私に酷い目に遭えと? そんなことを思える拓にぃの方がよっぽど鬼じゃない!」
「拓ちゃんがクッ殺さんになれば? さすがにゆかりをオカズにするようだったら、僕は拓ちゃんとの縁を切るからね?」
「チッ……仕方がない。昴で我慢するか。男の娘も需要があるからな」
「僕は男だよぉ!? まさか、普段から僕をオカズにぃ!?」
本気で縁を切ることを考える昴。
幼馴染みはどこまでも欲望に忠実だった。
「ところで、ダンジョン出現の報告だけど……」
「あぁ、それなら警察の人が連絡してくれたぞ? 車の中に連行された後真っ先に【探索者ギルド協会】に連絡したからな。水戸支部からだとそろそろ来る頃合いだな」
「【組合】と【協会】が重複してない? そもそも【国際探索者ギルド連盟】との区別がつかないんだけど」
「それはな、【国際探索者ギルド連盟】は国連が立ち上げた情報統括組織で、【日本探索者ギルド連盟】は国連から各国に置かれた支部みたいなものだ。【探索者ギルド協会】は各地に点在するダンジョンの分店でダンジョンの監視役かな? 下請け組織とも言うけど」
「その評価は正しいですよ。まぁ、私どもは日本の公務員扱いですがね」
「「「だれ? どちら様?」」」
眼鏡、七三分けの中年男性がいた。
その背後には探索者とおぼしき武装集団と、大勢の作業員の姿がある。
「申し遅れました。私は【探索者ギルド協会】から派遣されました福島という者です。本日は新たに発見されたダンジョンと、管理などのご説明などに伺った次第ですが……」
「その辺のことは俺が調べてある。別に問題はないぞ?」
偉そうにふんぞり返る拓巳。
しかし、パンツ一丁の姿が痛い。
「拓ちゃん、無駄に行動力があるよね。けどさぁ~、そろそろ服を着ようよ!」
「問題ない。ご苦労様です、福島さん」
「いえいえ、これも仕事ですので。それで、その穴が新たなダンジョンですか。ふむ……入り口からして小規模ダンジョン。地下五十階層くらいですかね」
「そこまで分るんだ……」
「ダンジョンの入り口の大きさは、ダンジョンの規模に比例しますからね。北海道やサハラの入り口は、かなり広いですよ? 出現時、ビルが地下に呑み込まれましたから」
「昔、テレビのニュースで映像が流れてたな」
「あっ、僕も記憶にある」
「さて、詳しいお話をする前に、こちらの作業も始めましょうか」
福島が両手を叩くと、作業員と探索者達が一斉に動き出した。
「先ずはダンジョンのレベルだ。新しいダンジョンだから、気を引き締めていくぞ!」
「入り口の大きさから見て、【暴走】の心配はあるまい」
「だが、強力なモンスターだけが出てくるかも知れん。それも厄介だ」
「工具を持ってこい!!」
「装甲壁は何番にしますか?」
「建物の大きさから、23番が妥当だろ! 手分けして作業をしろ、今日中に終わらせる!」
喧騒と共に、各自が一斉に作業に入った。
探索者はダンジョンのモンスター調査だけでなく、ダンジョンの難易度を調べるのが役割だ。作業員達はダンジョンの入り口周囲に防壁を構築し、不用意に侵入できないよう措置を計る。
民間人の中にはダンジョンの出現を報告せず、ゴミ捨て場として利用する者もいるのだ。
特に粗大ゴミなどを捨てる者が厄介で、ある企業はダンジョンに産業廃棄物を捨てていた例もある。このゴミを吸収したダンジョンは、生物と機械が融合したようなモンスターが出現し、探索者を苦しめるほどに成長してしまった。
その脅威を防ぐ目的もあり、ダンジョンの入り口は厳重に封鎖せねばならない。
「では、お話を始めたいのですが……家に上がってもよろしいでしょうか?」
「あっ、すみません。気付きませんでした……」
昴は福島を家の広間に案内する。
大山家は昔からの農家で、家の敷地は結構広い。
昔は大家族だったので、無駄に部屋が余っていた。玄関の直ぐ傍に八畳間があり、良く客をもてなすときに使われていた。
無駄に広いテーブルが当時の名残として今も残されている。
樹齢五百年の一枚板でできたテーブルなので、重量もかなりあったりする。
「ゆかり、麦茶をお出しして。あと、お茶菓子は……」
「いえいえ、お構いなく」
そして、ダンジョン管理者と探索者の説明会が始まった。