ドラッグ
俺は考える。おそらく、複数犯だろう。こんな大がかりな事をやってのけるんだ。とんでもないサイコ野郎共だろう。
カランカラン、金属音がした。
『キョウジ、高間の手が……』
『どうした?』俺は高間の手を見る。あれ? どういう事だ!? ドリルが刺さってない、地面に落ちてる。傷痕もない。
『治った!? ……やったー“ワンダーi”のお陰だ』
『ワンダーiってなんだ?』俺は初めて聞く言葉だ。
『ワンダーiとは理想像を作り出すと言われてる』平川が訳の解らない事を言った。
『理想像を作り出すってどういう事?』
『ワンダーiという薬を飲むと脳が活性化され、嘘のような事を現実に出来るらしい。我が政党はその薬の使用を禁ずる活動をしてる』
『眉唾物だな。しかし、高間の手は治った…………因果関係はあるのか?』
『ワンダーiは画期的な薬だよ! 平川、ワンダーi推進派の政党に鞍替えして保険適応にしようよ』高間はすっかり元気になったみたいだ。
『高間、まさかワンダーiを使って漫画を描いてないだろうな?』
『行き詰まった時だけだよ』
『副作用を考えろよ。強烈なモノだぞ?』
『平川、そのワンダーiって薬の副作用はなんだ?』
『脳が壊死する…………それに世間には出回ってない劇薬だ。高間、どこで手に入れた?』
『開発者の肉弾子博士と仲良くてね。それでちょっとお裾分けを』
『バカ! ……ゲホッ』平川はまた血を吐く。
『最近、博士と連絡が取れなくなってさ』
『それより今はお前だ、平川。毒薬でも飲まされて、時間差で効いてきたか?』
『かもしれない…………苦しい』
『仕方ない、平川の為に1錠遣うか』高間はポケットに手を入れる。
『やめてくれ……世界の秩序が乱れる』
『……ない』
『僕のポケットに何か入ってる』金田は手探りで胸ポケットから錠剤を取り出す。
『これはワンダーiだよ〜。金田、今、飲ませてやるからな』
高間は金田の口に錠剤を1つ入れる。
『高間、これで治るのかよ? 苦い!』
『飲み込んで。それから目が見えると強く念じるんだ。時間が掛かるかもしれんが必ず治るから』
『あと何錠ある? 平川にも飲ませないと』
『私は要らない! ゲホッ、ゲホッ』
『1錠しかない。キョウジだったかな? お前が飲んだら?』
『脳が壊死するなんて嫌だよ。それに平川のが重症だ』