深まる謎
俺と平川は階段を駆け下りたが途中でバシャッ、バシャッ。冷たい! 水? 水が溜まっていた。仕方なく引き返す。
『どうしよう、キョウジ。これじゃ進めない』
『待て、水が溜まってるって事はここは1階かもしれん。窓から逃げられるぞ』
『窓には鉄格子が着いてる、簡単には……。キョウジ、上の階に行ってみよう』俺と平川は階段を上がる。
『うっ……頭が痛い!』
『大丈夫か?』
『記憶が断片的なんだ。平川、先に行ってくれ』
『分かった』
俺は階段の踊り場で踞る。頭がとにかく痛い。自然と顔の痛みはなくなった。『ったく、なんなんだよ』
『おーい! キョウジ! 人が倒れてるぞ!』
『大声を出すな。頭がガンガン痛い』
俺は上の階に上がると白いスーツを着た男が仰向けで倒れていて、顔には白い布が被せられていた。
『じゃらじゃらと金のネックレスに腕時計、チンピラみたいな奴だな』平川は“それ”に近付き、布を取る。平川は男の顔を見て何か考えてるようだ。
『どうした? 知り合いか?』
『嵐田だ…………』
『誰?』
『中高の同窓生だよ。死んでるのかな?』
『布が動いてなかった。つまり、呼吸をしてない』
『やっぱり死んでるのか』
『…………涙は流さないんだな』
『チンピラ、前科がある奴だ。死んでも誰も困らないだろう。それにこの状況だ、例え大切な人だったとしても泣いてる暇はない』平川はそれのポケットを探る。
『何かあるか?』平川がニタッと笑む。
『携帯電話だ。ガラケーだが、さて、どうかな?』平川は携帯電話を開き、操作する。『ダメだ、シムカードが入ってない』
『小さい物だ。くまなく探そう』
俺達は嵐田を丸裸にしてシムカードを探す。ここの階にはゴミは散乱してないがダメだ、ない。どこを探しても。嵐田というそれは全身アザだらけだった。撲殺か。
『平川、3階に上がろう。ここには死体以外ない』
俺達は3階に上がる。すると、いきなり『誰かー! 誰かー!』と叫ぶ男の声が聞こえた。