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異変

 俺たちはパーシェスの村に戻ってくると冒険者ギルドに向かわず宿をとることにした。クエストの達成報酬を貰って、イロリナへの借りを返しておきたいところだが、肝心の俺の星のありかがわかっていないからだ。


「とりあえずここは支払っておくから、部屋に行って鏡見てきなよ。星が無いと達成報酬貰えないから」


「悪いな……あとで返すからな」


「あったり前よ!」


 手持ちの金が無い俺に代わってイロリナが宿代を支払ってくれた。勿論、部屋は別だ。指定された部屋へ向かい、ローブを外して肌着を脱いでみる。体の前面には見つからず、背面を鏡で確認してみた。


 ん、これか。六芒星の真ん中に小さな三角が一つ。三角形が沢山で非常に見辛いが星には違いない。左の肩甲骨の下の辺りにぽちっと出来ていた。


「どうかなー? 見つかった――って何で上脱いでんのよ!! ばかぁ!!」


 いきなり部屋に入ってきたイロリナに凄い勢いで鍵を投げつけられる。


 ガツン、と凄い音がして俺はその場に蹲った。




「ご、ごめんね? まさか裸でうろついてると思わなくて……」


 結局、AGIが俺の十倍近いイロリナの素早さで投げつけられた鍵は、ありえない速度で俺の頭に直撃し、数分の間俺は綺麗な川でその橋渡しと話す夢を見ていた。

 川の向こう側に行きたかったが『文無しに乗せる船はねぇよ』と断られた所で目が覚めた。


「あ、ああ。俺もすぐに服を着なくて悪かったから……でも、もうあんなに思いっきり投げないでくれよ?」


「う、うん。そ、それで星は見つかった?」


「ああ、この左の肩甲骨の下の辺りに――」


 そう言いながらローブに手をかけたあたりで


「いやいやいや!! 脱がなくていいから! 見せなくていいからぁ!!」


 と、必死に止められた。


「さっき初心だって馬鹿にしてたのは誰だったっけ……?」


「う、うるさいなっ! 見つけたなら早くギルドに言って済ませちゃおうよ!!」


 別に脱ぐつもりも無かったのだが……意外にもイロリナは男慣れしてないみたいだ。

 まあ、見られるのは平気、みたいなもんなのかな?




 イロリナの提案に従って、冒険者ギルドに向かうと既に日は暮れ始めていた。大体六時くらいか? 正確な時計が無くてしっかりわからないが……綺麗な夕日だ。


「お、帰って来たな。その様子じゃ上手くいったみたいだな。どうだった?」


 ギルドに入るなりサントスが迎えてくれる。今は夕暮れで先程よりも人はいるがサントスのカウンターは空いていた。


「ああ、上々だったよ。確認してくれるか?」


「おおよ。んじゃ、星だしな」


 そう言われて、ローブを取ろうとすると


「いや、服の上からで大丈夫だからよ。星の位置を教えてくれや」


「あ、そうなの? この辺だよ、この肩甲骨の下あたり」


 先に言っておいてほしい。危うくまた裸になるところだったじゃないか。


「また難儀なところについてんなぁ……よっと」


 俺の背中を触りながらサントスが何やら呟いている。ぼぉっと淡い光が彼の手から漏れ出すと、どうやら戦っている記憶を読み込んでいるようだ。時々、ほぉ、とか、ふーん、とか言っているかと思えば、


「お、おいぃ!! あんだけロードとは戦うなっていったよなぁ!?」


 急に鬼の形相になって俺につば飛ばしてきた。汚いなぁ、もう。


「いや……戦うつもりじゃなくて、棍棒持ってたやつがロードだってわからなかったんだよ」


「ああ!? ゴブリンの知性が付いたやつがロードだって言っただろ! ったく、そんで逃げ帰って来たってわけか……」


あれ?

まだ全部見ていないみたいだ。


「いや、やっつけたよ? 全部見てみて」


「はぁ? そんなわけ……ある……」


 俺に文句を言いながらも記録はしっかり見てくれていたようだ。きっちりゴブリンロードも仕留めているし、ちゃんと記録されていただろ。


「いや、頭が痛いぜ。何で今日登録したばっかの新人がゴブリンロードを狩ってきちゃうんだよ。こういうのは順序ってのがあるだろーよ……」


「え、何か不味かったのか?」


「不味くはねえけどよ……これ、初級者一人じゃ勝てない相手だぜ? わかる? 初心者じゃなくて初級者が勝てない相手なんだよ。それを一人でやっつけるってことは、悪くても中級者並みってことになっちまうだろ……」


 まあ、相性もあるだろうけど、そうなるのかな。


「ユウゴは『百花繚乱』を持ってるからね。それくらいならチョロイんだよ、きっと」


 さっきまで黙っていたイロリナがフォローしてくれる。そうだな、きっとこの武器が強いんだ。


「ああ、七ツ星か……やっぱ強いんだなぁ……」


「そ、それで、今回の報酬はどうなるの?」


「ん、そうだなぁ……とりあえずゴブリン退治の報酬が銅貨十枚に輝石一つ。それから、これだけゴブリンロードが三体、ゴブリンメイスが二体、おまけのゴブリン五体か。これなら銀貨五枚ってとこか。それと、クエスト内容を十二分に上回ってるからな、星も付いてくるんじゃないか?」


「お、やったね、ユウゴ。星貰えるってさ!!」


 星って……ああ、何かランク分けみたいになってたっけ?


「んじゃ、そこに立って。そう、そこだ。んで、どう? 何か感じない?」


「んー何も……おわっ!?」


 指定された魔法陣の様な物の上に立っていると急に左の背中が熱くなってきた。ジンジンとして何か不快だ。


「お、やっぱり星貰えたな。どれ、何個になったかな……」


 俺の背中に手を当てながらそういうサントス。何個って……直接増えるの?


「お、一個飛ばしで三ツ星になってるぞ。これならレベルが上がればすぐクランが組めるな」


「やったね!! 早くレベルあげなきゃね、ユウゴ!」


「そ、そうだな。っていうか星ってそんなに簡単に貰えるもんなのか?」


 ふとした疑問にサントスは答えてくれた。


「うーん……最初の内は簡単に増えるんだよ。四ツ星あたりから段々増えにくくなってくる。今の所最高で七ツ星だな。八ツ星になると何かとんでもない報酬が貰える、なんて言われているけど、まだそうなった奴は見たことも記録にも残ってねえんだ」


「ちなみに、あたしは五ツ星だよー」


 うん、知ってる。その割にレベル低いけどな。どうせモンスターはあんまり退治してなかった、とかそういうオチなんだろ。


「そうなのか。じゃあ、みんな八ツ星になるのを目指してるのか?」


「そうでもないよ? 単純に箔が付くから星が多い方が良いって言うけどね。あたしなんか踊ってたら勝手に星が増えていったし、強さとは直接関係ないみたいだから」


「ああ、それでも何かしらの功績が無いと星は増えない。だから、ギルド内でもクランを組む条件に星を入れているんだ。何にもできないリーダーじゃパーティが困っちまうからな」


 確かに、そうだろう。統率できない奴が頭になってもどう立ち回っていいかわからず内部から瓦解する。そんな上司も、会社も、見た記憶がある。


「それとよ、星が増えると褒章に輝石を渡す決まりなんだ。その分星の登録料で銀貨一枚貰ってるけどな……だから、今回の報酬は銀貨三枚に銅貨が十枚、輝石が星二つ分で十五個、クエスト達成で一個、合わせて十六個だな。ほらよ」


 そう言うとこちらに小袋を二つ渡してくる。中身を確認すると確かに言われた通りの内容がそれぞれ入っていた。


「じゃ、イロリナに借りてた分の銅貨と石な。あ、宿代は?」


「ありがと。宿代は部屋に戻ってからでもいいでしょ――それより、ステータス! 見に行ってみようよっ! もしかしたらレベルも20超えてるかもっ!」


 しっかし、本当にぶれないな。そこまで『百花繚乱』が使いたいか……確かに、軽くて使いやすい良い剣だけどな、コレ。


「わかった、わかった……」


 そう言って、今日の朝と同じように識石に手を翳す。


「ステータス、オープン」


 しばらくすると、今朝同様に俺のステータスが表記されていった。


Name:ユウゴ

Age:20

Level:8

Job:冒険者

Type:人族

HP:92

MP:17

STR:22

VIT:25

DEX:12

AGI:16

INT:10

CHR:18

LUK:16


 Jobがちゃっかり冒険者になってんな……

 数値は、おー、軒並み二桁になっとる。って、あれ……LUK、下がってない……?


 横を見るとイロリナも不審そうに識石を見つめている。見間違いじゃないみたいだ。


 何ぞ、これ……?

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