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ゴブリン退治

 ギルドを出るとまだ太陽は燦々と輝いていて、夕暮れには早いことが伺えた。時間の概念も基本的に地球と同じらしい。それどころか、暦の数え方まで一緒なのには流石に驚いた。いくらスマホゲーの世界だからと言って、普通異世界なら別になっているだろうに。


「さて、今はお昼だから今日中にさっきのクエスト終わりにしちゃおうね。ここからさっきの丘とは逆の方に行けばグローリアスの森が広がっているわ。ゴブリンはその辺りを縄張りにしていることが多いから、ちゃっちゃと片づけてきましょ」


「わかった。どれくらいで着くかな?」


「まあ、あたしなら走って十分くらいだけど……ユウゴの足に合わせて歩いて一時間かからないくらいかな」


 う、ううむ……また歩くのか。現代人には一日正味三時間歩くってのは結構しんどいぜ……

 ラッキーなことに、実際にグローリアスの森に到着したのは体感で三十分ほど歩いたくらいだった。



「到着、っと。奥の方に行かなければそんなに強い魔物も出てこないから、この辺りを探してみましょ」


「ああ、わかった。……そういえば、何であの時男達が襲ってきてたんだ?」


 探索の際にただ無言になるのも辛く、聞きそびれていた悪漢達の事を聞いてみる。


「ああ、たまにいるのよ。あたしの踊りを見て熱狂的になっちゃう人達。ナンパくらいなら別に軽くあしらうからいいんだけどね。度が過ぎるとああやって追いかけてくるのよ。ほんっと、嫌になっちゃう」


「あー……でもイロリナは強いんだな」


「そうでもないわよ? レベルも低いし。ちょっと素早く動けるくらいだけど、高レベル相手には自信ないかな」


「そうなのか? 俺には気づいたら男達をひれ伏せさせてたのしかわからなかったけど」


「ま、一般人に毛が生えたくらいの相手ならね。一応、冒険者だし――そこ、いるわ」


 急に小声で話しかけてきたので視線の先を窺うと、そこには確かに醜悪な姿をした小鬼がいた。


「ゴブリンか。よく雑魚として扱われるが、実際には一般の人間よりも膂力はあり、その打撃攻撃には注意が必要だ。稀に高い知性を持ったゴブリンロードやゴブリンメイジなんていう亜種もいるが、そいつらには今のお前じゃ敵わないだろう。ゴブリンだけを狙って、クエスト達成してこいよ」


 出立前にサントスが教えてくれた情報だ。目の前のゴブリンはまだこちらに気付いていない。ボーっと木を眺めて佇んでいる。木の実でも探しているのだろうか……?


 俺は『百花繚乱』に手をかけると目の前のゴブリンの後方に準備をする。幸い、森が身を隠すのに有効に働いてくれた。


 ……初戦闘だ。いくら初心者向けの低難易度と言っても怪我をする可能性だってある。ステータスだってLUKが異常なだけでそれ以外は軒並み普通だ。


 慎重に、そして迅速に……


「――っ!」


 奇襲を成功させるよう声を出さずに突撃した。ゴブリンはこちらに気付いて一瞬怯んだが、その時には既に俺の剣が相手の首筋に刺さっていた。


「ア、アゥ……」


 ゴブリンは最後に一鳴きすると、スゥーっと姿が消えていった。


 あ、あれ?

 こんなもんなん?


 反撃とか、想像してたのと全然違うような……


「やったね! まず一匹やっつけたわ。さ、どんどんいこう!」


 イロリナに促され森を徘徊しているとゴブリン達には次々と遭遇した。だけど……


 結果から言って、楽勝だった。

 ゴブリンのほとんどが俺の攻撃を受けきれず一撃でダウン、稀に急襲を受けることもあったが、『百花繚乱』で受け止めると痛みも全然感じなかった。

 調子に乗って棍棒やら剣やらを持ったゴブリン――後で聞いたらゴブリンロードだったらしい――にも挑んだが、やっぱり一振りで地に伏した。


「なんて言うか……やっぱり七ツ星は凄いね」


「あ、やっぱり装備の力なのかな?」


「そりゃそうよ。いくら初心者向けの相手とはいっても、普通の装備でゴブリンを一太刀でやっつけようとしたら、相当な実力差が無いと出来ないわよ」


「ふーん、そう言えばさ、やっつけた魔物ってみんなこうやって消えてくのか?」


「魔の力が弱い低位のものはね。相手が強いと消えずに残るって聞いたことはあるけど、見たことは無いわ」


「そしたら、どうやって討伐を証明するんだよ?」


「星よ。倒した魔物の記録が星に残るから、それで証明になるの。あんまり恥ずかしいところに出来ていると可哀そうねぇ」


 イロリナはニヤニヤとこちらを見て笑う。どこを想像しているんだ、どこを。


「まだ見つかってないだけで体のどこかにあるんだろう? きっと背中かどっかにあるんだ」


「お尻だったりして……ギルドでお尻丸出しとか……」


 そ、それは嫌だなぁ……

 っていうか、それだったらギルドに登録しようとしないんじゃないだろうか。俺だったら避ける。


「ふふっ、まあ今日はこれくらいでいいんじゃない? 五匹の予定が十匹以上やっつけてるし。ゴブリンロードも狩ったし。レベルも上がったんじゃないかな。帰って識石を見てみましょ」


「ん? まだ大丈夫だぞ?」


「まだ大丈夫はもう駄目と隣り合わせよ。それに、そろそろ戻らないと夜になっちゃうわ。夜は魔物の動きも活発化するし、あたしの稼ぎにもならなくなっちゃうじゃない」


「……稼ぎ?」


「えぇ、ジョブの方よ。村に戻ったら見せてあげるわ」


 ああ、踊りか。確かに、踊り子は夜になってから活動するイメージだもんな。


「ユウゴの踊り、酷かったんだから。あたしに喧嘩売ってるのかと思うくらい。しっかり見て勉強しなさいよね」


「あ、すいません……」


 確かに、あれは酷かっただろうなぁ……でも、イロリナの踊りが見れるのか。凄く綺麗だろうな。

 俺は期待に胸を膨らませながら村へと戻っていったのだった。

ゴブリンの数を数え間違えていたので修正しています。

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