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初ガチャ

「いや、LUK高すぎでしょっ! 何なのよそれっ!!」


 イロリナが悲鳴にも似た叫びをあげている。そう言われてもな……特別何もしてないし、貰ったチートは貧乏神で、ステータスがむしろ下がりそうなもんだけど。


「有りえない……有りえないわよ……こんな数値見たことないわ……シスイだってこんな尖ったステータスしてなかったわ……」


 今度は呆然と壁に向かって話しかけている。そろそろ戻ってきて説明してもらおうか。


「おーい、この石板からもう手を放してもいいのか?」


「えっ? あ、ああ、もう大丈夫よ。というか、ユウゴのステータスおかしくない……? ちょっとあたしもステータス見てみようかしら……」


 そう言うと俺の手を退けて識石へと手をかざすイロリナ。

 い、今ちょっと手が当たった!! しかもいつの間にか名前呼びされていて照れるな……

 なんて考えていたら識石に彼女のステータスが表示された。


Name:イロリナ

Age:18

Level:5

Job:舞姫

Type:人族

HP:150

MP:100

STR:20

VIT:18

DEX:50

AGI:80

INT:30

CHR:900

LUK:15


 あれ?

 イロリナって年下だったのか。てっきり年上かと思っていたが、服装と妖艶な雰囲気のせいで勘違いしていたらしい。ってか、彼女も尖がったステータスが一個あるなぁ……


 CHRって、あれだろ?

 大方、『魅力』とかその辺だろ?

 Jobも運営の情報通り、踊り子じゃなくて舞姫と表示されてるし、魅力たっぷりってことなんだろうな。まぁ、納得だが。


「おかしく……ないわね。この間と多分変わってないと思うわ……」


「なぁ、俺のLUKってやっぱり異常なのか?」


「そうね……はっきり言って、桁が違うわ。あたしのCHRだって高い方なのよ? なのにその五十倍以上ってなんなのよ? 馬鹿にしてんの?」


「してない、してない!」


 だからその物騒な剣をしまってくれ。というか、計算早いな。


「……このステータスの見方はわかる?」


 イロリナははっきりと渋い顔をしており、納得はしていないようだが、どうにか剣を納めてくれた。そのまま話も戻してくれて何よりだ。


「何となく。多分STR、VIT、DEX、AGI、INT、CHR、LUKがそれぞれ腕力、耐久力、器用さ、敏捷性、知性、魅力、運の良さ、ってあたりだろう?」


「そうね、大体あってるわ。で、ユウゴは異常に幸運ってことになるわね」


 おー、ゲームまんまだな。この辺は変わりないみたいで良かったぜ。しかし、何でこんな異常な数値が……


「こんな数値初めて見たわよ……でも、これだけLUKが高いなら、一回試してみるのもアリかも……」


 イロリナが可愛らしくニシシと笑っている。否、嗤っている。なんか企んでるな?


「何やらせようっての?」


「そんな難しい事じゃないわよ。今回はあたしが石貸して上げるからさ、あそこで運試ししてくれない?」


 そういってカウンターを指すイロリナ。そこには等身大の像が置かれていた。


「あ、あれは……」


「ん? 知ってるの?」


 知らないでか。あれこそ『エレファン』の諸悪の根源。

 ……曰く課金製造機、曰く打ち出の小槌、曰く歩くマネーウォーリアー……散々な言われようをしているがやめられない、止まらない。『エレファン』のガチャ演出に使われている像ではないか。

 ちなみに、像の前にある剣を突き刺すことでガチャの演出がスタートする。

 その時の光の色で星の数や属性なんかがわかるのが『エレファン』の演出だった。


「どっかでしたことあるのかな? その時はどうだった?」


 一万爆死したばっかりだよ、コンチキショウ!!


 とは言えないな。今、この場においては現実で、俺はこの世界ではまだガチャをしたことが無い。

 正直に言えば転生してきたとバレる。いや、バレても問題なさそうだけど、説明するのが面倒だ。


「……いや、気のせいだった。知ってる像に似てたけど、違ったみたいだ」


「あ、そうなの? まあ古い神様を象ったなんて言われてるから、似たようなのがどこかにあったのかもね」


「それで、あれをどうするんだ?」


「あれはね、この輝石を五個使って装備品と交換できる『ガチャ』って像なんだよ。何が出るかはやってみてからのお楽しみ」


 まんまガチャじゃねーか。でも、今のLUKなら確かに当たりを引けそうな気はするな。


「それで、俺に当たりを引かせたいってことか?」


「そう、ユウゴのLUKの高さなら何か良い物が出るんじゃないかな、って。外れだったとしてもまあ気にしなくていいよ。輝石五個くらいならちょっと働けばすぐ返せるって!」


「あ、そこはくれるんじゃないんですね?」


「当り前じゃない! あくまで、『貸し』よ、『貸し』」


 意外とがめついところがあるんだな。この世界で輝石をどうやって集めるかは置いといて、俺もこのLUKで何が出てくるのか楽しみではある。


「わかった。じゃあその石、貸してくれ。やってみる」


「オッケー。じゃあ受付まで一緒に行きましょ」


 そういってカウンターへと向かう。ちなみに、あれだけ騒いでいたのに受付のお姉さんは微動だにしていなかった。多分、時々ステータスを見て驚く人間がいるのだろう。日常茶飯事なんだ、きっと。


「いらっしゃいませ。イロリナは久しぶりね、今日は何回するの?」


「久しぶりね、マーシャ。今日は私の代わりに彼にやってもらおうと思って。だから一回で良いわ」


「あら、助っ人を連れてくるなんて珍しい。それも男の子なんて、明日は雪かしらね」


「もう! 別にそういうのじゃないわよ!! ほら、ユウゴも! これ使って早くやってみて!!」


 どうやら二人は知り合いのようだ。それも、かなり仲の良い。ふざけあってはいるが、お互いに本気でいがみ合っているようには感じない。


「えっと、じゃあ俺がやります」


「はい、じゃあここに石を入れて。入れ終わったら像の前にある剣を深く突き刺してください」


 この辺もゲームまんまなんだな。演出とかも一緒かな?


「よし、じゃあ気合を入れて……」


 何にせよ、転移してから初ガチャだ。否が応でも期待してしまう。何か良いの出ろ、何か良いの出ろ……


「せーのっ!!」


 掛け声と同時に剣を突き刺す。像の眼が七色に光った。


 七色……?

 あれって最高ランク確定じゃなかったか……?


 ゆっくりと像の口が開き、眩しい光があたりを包んでいく。

 ようやく光が収まった所で、像の前に一本の小剣が残されていた。


「い、今の光は……」

「間違いなく、虹色だったわよね」


 声に気付いて振り返ってみると、イロリナ、受付のお姉さん、二人とも揃って口を開けて呆然としている。

 こらこら、年頃の女の子が口を開けたまま棒立ちなんて、みっともないからやめなさい。


 俺は小剣を拾って二人の元に戻っていった。

 小剣の柄の部分には星が刻み込まれている。一、二、三……全部で七個。確か実装されていた最高レアが七ツ星だったから、やはり最高ランクだったらしい。でも名前がわからんな……受付のお姉さんに聞いてみるか。


「あの、これはなんていう剣なんでしょう?」


「ひゃい!? し、調べてみます!!」


 そう言うと、彼女は小走りでカウンターの奥に入ってしまった。

 イロリナは……駄目だ、まだ表情が固まってる。

 よくわからんが、何人もガチャしてれば七ツ星の装備なんて出るんじゃねーの?

 確率が一パーセントを切っていたとしても、一万人に一人くらいは出るはずだけど……


「お、お待たせしました。それは『百花繚乱』という剣のようです」


 カウンターからお姉さんが戻ってきた。ふーん、『百花繚乱』かぁ。鍔の部分に花の模様が沢山あしらってあるし、そこが由来かな。


「ユウゴ!!」


「は、はいっ!?」


 いきなり大声で話しかけられてびっくりした。いつの間にかイロリナはこっちに戻ってきていたらしい。


「その剣、ちょうだい?」


 ……目が据わってますよ、イロリナさん……


「ねぇ、良いでしょ? 私の石でやったんだし。それにその小剣が欲しくてずーっとここで『ガチャ』してたんだもん!! お願い、ね? だめ?」


「……元々イロリナの石だし、別に俺はこれ狙ってたわけじゃ無いし、良いよ?」


 あっさり承諾してしまう。やばい、イロリナ、マジ天使。あんな上目遣いでおねだりされたら無理だって。

 別に下心はないが、鼻の下は伸びてるかもしれない。できるだけ無表情を装って小剣をイロリナへ向ける。


「あ、ユウゴさん。それはだめです。盗難防止に個人の武器には認証がかかっていますから。認証が無い者が触ろうとすると弾かれます」


「えぇ!? じゃあ、これ俺専用なの?」


 ゲームにそんな機能なかったよなぁ……?

 トレードは確かに出来なかったけど……


「いえ、例外的に他の人間とクランを組むことで装備を共有することが出来ます。もしイロリナにその剣を渡すならクランを組んでいただかないと……」


「あたしはすぐにでも組むわよ! というか、あのLUKを見た時点で、無理矢理にでも引っ張っていくつもりだったし」


 あ、そうなんだ。でも、イロリナは日本にいた時から追い求めた逸材。どうにか仲間になってほしいと思っていたし、まさに一石二鳥だな。いや、本当に、下心とかないから、な?


「じゃあ、今度こそよろしく頼むよ。イロリナ」


「ええ、こちらこそよろしく。あ、剣を貰ったからってすぐいなくなったりしないからね? あたし、そこまで薄情じゃないから!!」


 お願いだから、変なフラグを建てないでほしい……

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