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ステータスチェック

「ごめんね、あなたが何も企んでいないのはすぐにわかったんだけど……後ろから妙な気配を感じたから一芝居打たせてもらったの」


「いや、こちらこそ助けてもらってありがとう」


「まあこっちもあなたを利用させてもらったから、御礼は言わなくてもいいわよ。それより、本当にこんな所で踊ってるってどういうことなの?」


 さて、どうしたもんか。正直に話せば恐らくまたあの怪訝な眼で見られるんだろうな……かといって上手い言い訳も見つからないし……


「まあ、言いたくないなら無理に言わなくても良いけど」


 沈黙することがどうも触れられたくない事と気付いた様で、イロリナは話を濁してくれた。有難い。ついでに彼女の出所に関しても聞いておこう。上手くいけば町に出られるかもしれない。


「踊りに関しては気にしないでくれると有難いな。ところで、君はどっちから来たんだ? 全く気配を感じ取れなかったけど……」


「ああ、あたしはこのガルランの丘を下ったところにあるパーシェス村から来たのよ、あなたは?」


 また返答に困る……ここはわからないことにしておくのが一番か。


「よく覚えていないんだ……気づいたらここにいたんだけど……」


「あらあら。じゃあ名前もわからない? 自分のステータスを確認したこともないかしら?」


 ステータス!

 そう、それだ!!

 そのステータスが見られなくて困っていたんだ。彼女はステータスの確認方法を知っているようだし、教えてくれないかな。


「いや、見たこともない。ステータスを見れば名前もわかるのか?」


「ええ、名前や年齢なんかは明記されているから……ここじゃ見られないんだけどね」


「そうなのか……」


「その落胆ぶり、ほんとに記憶喪失みたいねぇ……しょうがない、乗り掛かった舟だ。あたしがパーシェスまで連れて行ってあげるよ。そこでステータスを確認して、名前を調べると良いよ」


「ほ、本当かっ?」


「ええ、丁度今日は戻るところだったし、構わないわ。それと、あたしはイロリナ。いつまでも君呼ばわりされるのも嫌だし、イロリナって呼んで」


「ああ、わかった。宜しく、イロリナ」


 そう名前を呼ぶと彼女は自らの右手を差し出してきた。


「ま、袖振り合うも多生の縁よね。短い間だろうけど、よろしく」


 短い間にしてほしくないんですが……

 俺はおずおずとその手をとり、しっかりと握手を交わしたのだった。




 道中、俺はイロリナに色々と質問をしていた。この辺りの地理関係や人種の事、それに日常的な常識についてなどだ。


 その結果、この世界はやはり『エレファン』に酷似した世界だとわかった。

 というのも『エレファン』同様に世界は五個の大陸に分かれており、大陸毎にそれぞれ栄えている種族が違う事。そしてここは人族が栄えている大陸であることを教えられたからだ。


 『エレファン』では種族として人族、獣人族、妖精族、鬼人族、竜人族の五つがありそれぞれの大陸を縄張りにしていた。この世界でもほぼ同様の勢力関係になっているらしい。


 余談だが、『エレファン』にはジョブ制度もある。種族専用のユニークジョブがあり、基本ジョブはどんな種族でもなれた。確か人間族はユニークジョブが一番多く設定されていたと思う。低いステータスを補うのにジョブの力を利用するのが人間族のやり方だとかなんとか。

 また、ジョブによっては装備できない道具も有り、ガチャ産だったりすると悲惨なことになるのだが…… それはさらに蛇足になるので置いておこう。


 ちなみに、イロリナは踊り子の恰好をしているが、運営の事前情報によると彼女はユニークジョブ『舞姫』に相当しているらしい。そのスキル等は実装初日であったこともありよくわかっていないが……多分支援系だと思う。踊りだし。



「さて、そろそろ村に着くけど……他に何か質問は?」


 はい! 彼氏はいますか!?


 と言ってはいかんだろう。めっちゃタイプだけど合コンではないのだ。真面目な話をしよう。


「さっき言っていたステータスはどこで見れるんだ?」


「それなら冒険者ギルドの識石に触れればすぐわかるわよ。まだ明るい内に町に着けそうだし、先に確認しましょうか」


 そう言って、彼女はパーシェスの村へと歩みを進めていった。

 やっぱり、冒険者ギルドもあるのか……

 まあ、『エレファン』の世界でもプレイヤーは冒険者って設定だったし、現実に冒険者が多い世界ならギルド化していてもおかしくは無いか。




 パーシェスの村はそんなに大きな規模の町では無いようだった。丘から目視してもわからない程度の規模だ。恐らく、戸数も二桁あれば良い方だろう。


「あんまり栄えている村じゃないんだけど……素朴で良いところよ」


「ああ、何となく、悪い人間はいなさそうだ。それで、冒険者ギルドって何処なんだ?」


「せっかちね……こっちよ」


 言われるがままに付いていくと他の家よりも若干大きな規模の家の前に案内された。門の前には羽付き帽子が描かれた看板が掛けられている。


「ここがパーシェスの冒険者ギルドよ。この看板は全世界共通だから、覚えておくと良いわ」


「へぇ、なんで羽付き帽子なんだ?」


「なんでも大昔の大冒険家に肖ったって言われているけど……詳しくは知らないわ」


 伝説じゃ御飯は食べれないし、と夢のないことを言いながら彼女は門を開け中へと入っていった。

 冒険なんて浪漫の塊だろうに。


「さて、じゃあ早速ステータスを見てみましょうか。サントスー、識石借りるわよー」


「おー、勝手に使えー」


 受付の奥から男性の声が聞こえる。俺たちの他には誰もいない。

 しかし、この規模の村で冒険者ギルドをやっていて経営が成り立つのだろうか……


「まあ、この村の規模じゃ確かに利用者は少ないけど……今はまだ明るいからね。他の冒険者連中は外で頑張ってるんじゃないかな」


 キョロキョロやっている視線に気づいたのかイロリナが教えてくれた。


「あー、成程ね。それにしても勝手に使っていいもんなのか?」


「まあ、あたしが冒険者だからね。同行者のステータスをチェックしたからって厳しい罰則は無いわよ」


「そういうもんなのか。で、どうすればいいの?」


「そういうもんなんです。じゃ、この石板に手を乗せて、そうそう、それで『ステータスオープン』って言えば石に表示されるはずよ」


 言われるがままに石板に手を乗せ

「『ステータスオープン』」

 と言うと、石板に文字が刻まれていった。なるほどー、言葉だけじゃなくて道具も必要なのね。


「出てきた、出てきた。あ、文字読める? 読んだげよっか?」


「えーっと、大丈夫。読めそう」


 一瞬不安になったが書かれている文字は地球で使われてた日本語とアルファベット、それに算数字だった。日本のスマホゲーが基と考えると何となく納得してしまう。


「えーと、名前は『ユウゴ』、レベル1。あとはアルファベットと数字がいくつか並んでるな」


「そうね、あなたは『ユウゴ』さん。レベルが1で……何これ……」


 イロリナの顔が青ざめている。何かおかしな表記があっただろうか。もう一度、ステータス表記を確かめる。


Name:ユウゴ

Age:20

Level:1

Job:旅人

Type:人族

HP:50

MP:10

STR:8

VIT:7

DEX:4

AGI:6

INT:3

CHR:5

LUK:65536


 いや、一つだけやけに値が多すぎるんですが……何故に……? 

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