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高校デビューは甘くない   作者: 黒抹茶先生
7/9

高校デビューは甘くない 6話

GWあたりとは、何だったのでしょうか

約束は破る為にある。とか誰か偉い人が言っていた気がするのでセーフだと信じています笑


次話は来週の火曜日までにはあげたいと思っています

約束は破る…いや、頑張って約束守ります笑



 


 体育の後、ホームルームを終えてみんなが教室で談笑したり部活動に向かう中、俺はすぐに帰宅の途についた

 体育の疲れが残っているせいか、家までの道のりが少し遠く感じる

 あんなに本気でバスケをしたのは久しぶりだったな。

 デビューがバレる前はよくバスケして遊んでたのに最近はボールに触れることすらなかった。

 もう少し体を動かさないとな。

 そんなことを考えながら歩いでいるうちに家の近くまで来ていた。


 ウチは二階建ての一階部分がカフェになっていて、二階は生活スペースになっている家だ

 家の外装はレンガ風な感じで落ち着いた雰囲気で一階のカフェも住宅街に馴染んでいる

 そんなカフェは代々、鷹宮家でやっていたわけではなく親父と母親が2人で始めたらしい

 俺が3歳くらいの頃だったからあんまり記憶に残ってないけど、店の宣伝やらなんやらと子供の世話があったので当時はすごく忙しかったと両親は言っていた

 ただ、今も同様、昔から大人しい子だった気がするので、自分のことでそんなに迷惑はかけていなかっただろうと思っている。

 最初こそ大変だったらしいが、段々と地元の人に愛されるようになってきて、今では大繁盛とまでは言わないが、そこそこ客で賑わっている程度にはなっている



 家に着いた俺は表から入らずに店の裏口から家に入った

「ただいまー」

「おかえりー」

 親父がカウンターから応えた。

 店に親父しかいないということは、母親はおそらく買い物に行っているのだろう

 俺はそのまま階段を上って二階にあがり荷物を置いて、もうすぐ八雲が来るので、簡単に着替えを済ませて一階へ降りた

 俺はそのまま親父のいるカウンターの中へ入ってコーヒーの準備をした


 これは、友達が来るときは一階のカフェの部分で遊ぶことが多いので、自分で淹れるのだったら友達に無料でコーヒーをあげていいというルールがあるのが理由だ。だから、友達が来るとき少し前にこうしてコーヒーを準備している

 まぁ、デビューがバレる前までは他にも友達がいっぱい来ていたんだけど、バレた後には八雲以外はほとんど来ることがなくなった…

 親もおそらく、俺が学校で何かあったであろうことには気づいているのだろうけど、気を使って何も聞かないでいてくれる

 そういうところには地味に感謝している

 そんなことを考えていると、携帯が鳴った

 八雲が来たのだろう

 俺は淹れたてのコーヒーを2つ持っていつもの奥の席に向かった

 八雲はすでに席に座って待っていた

「お待たせ致しました、ご主人様。ご飯にしますか、お風呂にしますか、それとも…わ…た…」

「いきなり、うっせぇよ。てか、他にも客いるのになにしてんだよ」

 俺がコーヒーをテーブルに置いて腰をくねられせたポーズをしていると、脳天にチョップされた

「痛っ」

 俺は頭を抑えながらも、八雲と向かいの席に着いた

「で、話って何だよ?」

 八雲が単刀直入に今日読んだ件について聞いてきた


「はー…えーと、実はさぁ…非常に言いづらいんですけど………あの極道ヤンキーの笹野葉先生の…下僕にさせられました。」

「ぷっ」

 八雲がコーヒーを吹き出しそうになっていた

「八雲、こっちは笑い事じゃないんだけど!」

「ハッハッハッ、すまん、すまん、つい、な。お前もあの委員長みたいに七三にすんのか?」

「まだ、バカにしてんじゃかよ!ホント他人事だと思いやがって…」

「まぁまぁ、悪かったって。とりあえずコーヒーでも飲めって」

「分かったよ。って、俺が淹れたやつだし!」

 とりあえず、俺と八雲は落ち着くためにコーヒーを一口飲んだ

「で、どうすんだよ?下僕らしく生きていくのか?」

「うーん、今んところはそんなにこき使われてる訳じゃないからなんとも。仕事は委員長に任せてこじんまりと生きていくしかないかな〜」

「まぁ、お前ぼっちだし目立たないように生きていくのは得意だろ」

「お前もな。」

「うるせぇ」

「…ただ、今回の事件のきっかけは遠回しに俺がぼっちだったってことにあるんだよ。なんて理不尽な。好きでぼっちやってるわけじゃないのに」

「…」

 八雲もぼっちが原因のことで色々と思い当たる節があったのだろう

 八雲も急にテンションが下がり、俺と八雲しばらく黙っていた


 少し間が空いて八雲がぽつりと口を開いた

「なぁ、俺たち、何が悪かったんだろうな。マニュアルでもくれれば良かったのにな。こういう時はああすべきみたいな。」

「まぁ、そうだよな……。それがあればこんなになることもなかったのかもな」

 その時、ふと、俺は奈良花と話し合ったことについて思い出した。

 何か新入生で高校デビューする子達のためにできることか……

「なぁ、八雲。その…マニュアルって俺たちで作れないかな?」

「はぁ?」

 八雲は突然何言ってんだよって顔をしていた

「そうだ、八雲にはまだ話してなかったっけ…」

 奈良花のことについて話すか迷ったが、八雲なら言いふらす友達もいないだろうと思った俺は最近の出来事について話すことにした。


「えーと、何から話せばいいかな、まず、最近屋上でぼっち飯してたら転校生の奈良花にバレて…」

「お前、まだあれやってたのかよ…」

 八雲が茶化してきたけど、無視してそのまま話を続けた

「んで、その奈良花は転校デビューで錦のグループ入っちゃってて、今はは結構大変らしい…」

「よりによってデビューで錦のところとか…」

「そんな奈良花と新しく入ってくる高校デビューする生徒に向けて何かできることはないかって話してたんだよ」

「んで、それがさっきの話しと何の関係があんだよ」

「ここまで、言っても分かんないかな〜、要するにデビュー失敗勢の俺たちの実体験を元にマニュアルを作って今年高校デビューする子達に配ろうってこと」


 それを聞いた八雲は、少し黙って考えてから、口を開いた

「…ほう……なるほど、だいたいは分かったが、ただ、それで俺たちに何の得があるんだ?」

 そこを突かれると痛い、正直いうと俺たちが得することなど1つもない。

 なぜなら、新たにデビューする子達を救ったところで俺たちの状況は変わらないからだ

 ただ、これはおそらく後々八雲の為にもなると思う

 俺は少し考えてから口に出した

「それは……何とも言えない…ただ、これ以上俺たちみたいな被害者を増やしたくない、それだけだ」

 まぁ、最悪八雲に断られても奈良花のためにも自分のためにもやる決意はしていた

 それを聞いて八雲はしばらく手を顎に当てて考えていた


「……まぁ、別にアイデア出すくらいなら手伝ってやってもいいけど…」

 その言葉を聞いた瞬間俺は思わず立ち上がってしまった。


「おお!ありがとう八雲!助かる!」

「んな、別に大した助けになんないと思うぞ」

 八雲が少し照れて、頭をポリポリかいていた

「いやいや、デビュー失敗で同学年の

 女子全員から嫌われる人のアドバイスとか絶対役に立つでしょ」

「おい、お前バカにしてんだろ」

 八雲は立ち上がって容赦なく脳天にチョップしてきた

「痛っ!」

 周りの視線が集まったので恥ずかしくなって、俺は頭を抑えながら八雲と同時に席に座り直した


「って、具体的にはどうすんだ?配るって言っても高校デビューをする新入生にピンポイントで配らなきゃいけない訳だし」

「…そう、問題はそこなんだよ。何か効果的な方法はないかな、やっぱSNSで広めてあとは暗号形式で解読してもらうとかか…」

「まぁ、それも1つの手段だと思う…けど、新入生の全員が全員SNSをやってる訳じゃないし、そのやり方をするなら、なるべく暗号の元となる媒体は新入生全員に広く行き渡った方がいいんじゃないか」

 俺と八雲は机に肘をついてコーヒーを飲みながら考える

「んー、全員に行き渡るものか……。あ!そういえば、部活紹介のチラシって入ってきた時に全員に配られたよな!」

「…確かに、言われてみればそうだった気がする。それならとりあえず全員に行き渡るな。ただ、そうなると部活を作る必要が出てくるな…」

「部活…か…、今んとこ、メンバーは奈良花と八雲、俺を含めて三人か…他にも作るには顧問の先生や空き教室もいることになるな…」

「そこができないとどうしようもないな…」

 俺と八雲は徐々にアイデアを固めていったが最後の一手で詰んで諦めかけていた


「先生か…」

 俺は思考を巡らせるためにもコーヒーを一口飲んだ。

 ん、先生?

 その時、ふと笹野葉先生との出来事を思い出した

 ん、そういえば、閉じ込められた部屋って何も無かったよな

 それに、笹野葉先生って確か顧問やってなかったはず…、てことは…

「おい!待てよ、八雲‼︎いけるぞ、コレ。空き教室と顧問見つかったぞ!」

 俺は前のめりになりながら言った

「マジか⁈」

「今日、笹野葉先生に部屋に閉じ込められたんだけど、そこは何も使われてなさそうだった。それに笹野葉先生って顧問をやってない。よって、部活はつくれる!」

「おお!って、お前笹野葉に部屋に監禁されたのかよ…」

「ゔっ、頭が…、思い出しただけでも恐ろしい。まさか、こんなところで役に立つとはな…」

「これぞ、不幸中の幸いってやつだな」

  ーーー


「よし、これでプランも固まったし本格的なマニュアル作りと部活紹介のチラシ作りだな」

 そう俺がいうと八雲が諌めるようにして言った

「おいおい、余裕こいてるけどもう入学式までほとんど時間ないぞ」

「え⁈入学式って何日だっけ?」

「今週の土曜だから3日後だな」

「ヤバっ⁈時間ないな。どうするか…」

 思いつくのが遅かったか、この時期を逃すと次は来年になってしまう

 何かないかと俺は必死に考えた

 すると、八雲が

「まぁ、マニュアル作る時間ないなら直接会ってアドバイスするしかないな」と当然のように言った

「…なるほど、その手があったか、確かに直接話せば具体的にどうデビューする予定とかも聞けるしな」

 具体的なアイデアが浮かんできたところで言い出しっぺの奈良花にも連絡することにした

「そうだな…よし!とりあえず奈良花にも連絡してみるか」

「あぁ」


「…」

「…」


「いやいや、八雲連絡してよ」

「はぁ?お前連絡先知らないのかよ。お前が知らないのに俺が知る訳ねぇだろ」

「どうすんの」

「いや、お前、同じクラスなんだし直接話せよ」

「え…ぶっちゃけ最近ちょっと気まずいんだよね」

 公園で奈良花と話してから今日も何度か目があったが少し避けられているような気がした

「知らねえよ、バカ。お前でどうにかしろ。じゃないと進まないし部活の話は無しになるぞ」

「うぅ…八雲…覚えてろよ、この人でなし!」

 俺が明日、奈良花と話さなければいけないということでどうしようかと考えていると店の扉が勢いよく開いて元気丸出し少女が入ってきた。

「ただいまー‼︎」

 カフェなのにこんな挨拶で入ってくるアホはだれかって?俺の妹の鷹宮よもぎです

 俺の2歳下の中2で、今は学校の制服を少し着崩していて、髪型はショートカット、学校でも家でも明るく人気者、俺とは真反対の性格と言ってもいいほどである

 そんなバカ妹は常連客などには覚えられていてさっきのただいまに対しておかえりーとちらほら声をかけられては妹はそれに返事をしている。

 一通り挨拶が終わると俺達のところに向かってきた

「おっ!八雲くんいるじゃん、チワワー」

 なんだよ、そのどっかのちっさくて可愛い犬みたいな挨拶

「おお、よもぎちゃん久しぶりだな」

 八雲が学校では見せないような気さくな感じで答えた

「ねぇねぇ、八雲くん、今日はどうしたの?よもぎの勉強見に来てくれたの?」

「ちげぇよ。俺が呼んだに決まってんだろ。なんで、よもぎがそんなに八雲に懐いてんだよ」

「すまん、鷹宮、俺にもわからん」

 八雲が困った顔で応えた

「ぷぷ、なに、お兄ちゃん、嫉妬ですか〜。それは八雲くんがカッコよくて頭も良いし優しいからに決まってんじゃん」

 俺の頭でブチっと何かが切れるおとがした

「なぁ、八雲?お前の秘密あいつにバラしていいか?」

 俺が半分くらい、いや半分以上キレながら八雲に聞いた

「おいおい、待てって、早まるな、俺の印象悪くなって何の得があんだよ!」

「お兄ちゃん、八雲くんを虐めるのはよくないよ!」

 よもぎが止めに入った

「いじめてないって、ただ、俺は本当のことを…」

 俺がその先を言おうとすると、八雲は突然俺の口を塞いできて、続きを言わせないようにした

「ゔぐっ、や、やふも、はなへっ」

「お前は、とりあえず黙ってろ。ごめんね、よもぎちゃん、今日俺これから用事あるから帰るね」

 八雲は残りのコーヒーを飲み干して、帰る準備始めた

「えー!もう、帰っちゃうの?」

「ホントごめんね、また今度勉強見てあげるから」

「ホントに⁈、やった〜、じゃあまた今度ね!」

 八雲が完全に妹をてなづけていた

「じゃあな、鷹宮。ちゃんと転校生と話しつけとけよ」

 そう言っていつも通り代金を払わずに八雲は颯爽と帰っていった

「クッソ、あのヤロウ覚えとけよー‼︎」

 八雲の姿が見えなくなると、妹が怒りながら話しかけてきた

「お兄ちゃん、ホント、シスコンすぎ!さっきの話、冗談に決まってるじゃん。」

「へ?なんか、仲良いみたいな感じだったけど、あれは嘘?」

「そうだよ、だって今日であったの3回目だし、だいたい会うのってお兄ちゃんと一緒の時だけじゃん」

「あ、そうなんだ、はぁ〜、良かった〜。妹が変な男に引っかからなくて」

 安心して思わず、涙が出そうになっていた

「いやいや、少なくとも八雲くんお兄ちゃんよりはマシだと思うよ」

 俺が安堵していると後ろからグサッと刺された

「マジ?」

「おおマジ。このシスコンバカ兄貴。少しは八雲くん見習いなよ」

 そう言って、妹はちょっとツンツンしながら部屋に帰っていった

 なんだよ、マジで八雲より下に見られてるとは納得いかねぇな

 だって6股だぞ

 今度、こっそりバラそうかな

 そう思いながら、俺はコーヒーの後片付けをしに台所へ向かった





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