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高校デビューは甘くない   作者: 黒抹茶先生
4/9

高校デビューは甘くない 3話

 ゲーム屋行ったはいいものの、流石に人気のゲームだった様でもう売り切れていた

 あーあ、こんなことなら予約でもしとくんだった

 こういうシリーズもののゲームって意外と1からやったことなかったりする人多いんだよな〜

 そのくせ新作が出た時だけ、いかにも昔からやってましたーっていう感じだすんだよ、まぁ、別にいいんだけどね

 もちろん、俺はちゃんと1からやりたい派

 でも結局、昔のクリアするまでに時間かかり過ぎてやる頃には毎回ブーム去ってるんだよね、それで話に乗れなくてぼっちのままっていうね

 あっ、そういえば、まだ前作最後までクリアしてなかった気がする

 早く帰ってやろ

 って、待てよ買い物して帰らないと…

 あ〜めんどくせぇ〜

 確か……近くにスーパーあったよな

 俺はゲームのことはひとまず置いといて妹に頼まれた買い物を済ませて帰ることにした


 スーパーフレンズ…か、なんかぼっちには優しくなさそうなネーミングだな…

 俺が着いたのが5時くらいだったのでてっきり主婦の買い物時で混んでると思っていたけど思いの外すいていた

 スーパーに買い物なんて、いつぶりだろ

 昔はよく妹と一緒に親の買い物に付いてって試食とかしてたなぁ〜

 懐かしいな〜。

 なんか試食のソーセージって妙に美味いんだよな

 絶対あれって違う商品食わせて売ってるだろ、デパ地下とかの高いやつ

 って、そういえば、買う物何だっけ?

 確か…ベーコンと、牛乳と…キャベツと……あと、なんだっけ…

 まぁいっか、買い物してたはそのうち思い出すだろ

 俺はとりあえず買い物カゴをカートに乗せて野菜コーナーに向かった


 キャベツってどれが良いんだっけ?

 こういうのって結構分かんないこと多いんだよな、ネギは先が綺麗だとか、玉ねぎはなんちゃらだとか

 確か…キャベツは重い方が良いんだっけ、中身詰まってそうだし…

 俺はとりあえず両手で持って重さを比べてみた

 ん…変わらない。

 これ、どっちが重いとか普通分からんだろ

 主婦はどうやって見分けてんだよ

 俺がそんな風に考えていると隣にジャージ姿に帽子とメガネという地味な感じの女の子がやって来てキャベツを見分け始めた

 彼女はまずは周りの葉を見て、それから芯が白いものを選んで、最後に重さを比べて重いものを選んだ

 おおー、こうやって選ぶんだー

 俺が感心して見ていると隣の女の子と目が合った

「ゲッ…、何で…あんたがこんなとこにいんのよ⁈」

 ん?どちら様だろうか?

 俺には全く心当たりが無いのだが……

 俺が不思議に思ってじーっと見ていると彼女は気付かれてないことに苛立ったのか帽子とメガネを取ってみせた

「あっ、奈良花…、な、なんでこんなところに⁈、てか…その、格好…」

「ただの買い物よ、悪い⁈そっちこそ………って、待って、今なんて言った?」

「や、あの、その、奈良花って普段そういう格好なんだな〜って」

「………あ、いやぁーーーーー!」

 彼女は持っていたキャベツを落として胸元を抑えながらしゃがみこんだ

「危なっ」

 俺は反射でなんとか落ちそうになったキャベツをキャッチした

「セーフ。」

 奈良花はしゃがんだまま下を向いて立ち上がろうとしないでいる

「おい、大丈夫か?」

「ん〜、もう見ないでー、恥ずかしい‼︎死にたいー、いっそ殺してー」

「いやいや、別に裸じゃないんだしそんなに恥ずかがることないだろ」

「ん〜……」

 俺は励まそうとしたが奈良花はまだ立ち上がらない

「なんだよ、そんなに普段の格好見られるのが恥ずかしいのかよ?」

「……」

 どうしてこいつはこんなに普段の格好見られることを嫌がるんだ?

 別に学校とは違って普段は地味でダサいジャージ着てても大丈夫だr……

「って、まさか、お前……」

 俺は閃いてしまった、奈良花が転校してきた当初は普通の格好だったのに今は学校ではギャルの装いをしていること、そして普段はダサいジャージでメガネをかけていること…その二つが表す事柄を…

「もしかして…お前って、高校デ…いや転校デビュー……だったのか?」

 奈良花はしゃがんで俯いたまま首を縦に振った

 お、おー、なんか…すごい展開になってきたな、おい

 と、とりあえず、こんな場所で泣かれても困るし移動しよう

「おい、奈良花、ここじゃあれだし…まずは場所を移そう」

「うん」

 彼女は力無くそう答えた。

 俺たちは近くに公園があったのでひとまずそこに移動することにした


 公園に着くとこんな時間だからだろうか子供はひとりもいなかった

 閑散とした公園は夕陽に照らされて普段とは違った幻想的な雰囲気を醸し出していた

 俺たちはとりあえず近くにあったベンチに並んで座ることにした

 空気が重く、俺が言い出せずにいると奈良花がゆったりと口を開いた

「ねぇ、高校デビューとかってどう思うかな?」

「ん〜、難しい問題だなー……ただ…俺は、その行為自体悪いことだとわ思わない。むしろ、良いことだと思う。」

 奈良花は俺の答えが意外だったのか不思議そうな顔をした

「どうして、そう思うの?」

「だって、今までの自分を否定してまで新しい自分を生み出すってすごいことだろ。

 それに、今までとは違う自分で常に生活するって難しいし、苦しいことだから…」

「…ふ〜ん、否定しないんだ。

 でも、高校デビューって、猫被って生活してるようなものだよ。そんな人が身近にいたら普通嫌じゃない?みんなは本当の自分で接しているのに、私だけ、自分の作ったキャラに合わせて思ってもないこと答えてるんだよ。ずっと嘘ついてるんだよ。」

「でも、それってお前の本心なんじゃないか?

 ただ、お前が自分だったら言えなかったことを被り物して言ってるようなもんだろ。

 それに誰だって常に本音で話してるわけじゃない。

 お前の周りのやつだって空気読んで、その場の正解の答えを探して答えることだってあるだろ。」

「そんなん綺麗事だって……

 どうせ、私がデビューって分かってバカにしてるんでしょ!」

「はぁ?なんでそうなるんだよ、俺はそんなこと思ってねぇよ。

 あと、言っとくけどなぁ、高校デビューごときで自分の人格なんてたいして変わんねぇんだよ。

 ただ勇気が無くて言えなかったことが言えたり、出来なかったことが出来たり、それだけなんだよ!

 お前だって、毎日学校の為に普段はしないオシャレな服着て髪の毛整えて、そういう努力して学校来てんだろ!

 なら、そんなこと気にする必要ねぇじゃねぇかよ

 周りで髪染めてるやつだって昔はボウズだったかもしれないし、みんな同じなんだよ…要は、成長だよ!お前も俺も成長しただけなんだよ‼︎」

 奈良花は目を丸くしてポカンと口を開けている

 それにちょっと目の端に涙のようなものが浮かんでいる

 ヤバっ、ちょっと熱くなりすぎたか

 俺が少し反省しているとしばらくして奈良花は元に戻って、口を開いた

「そ、その……ありがと。なんか元気でた…」

 奈良花の顔は夕陽のせいか少し赤くなっている気がする

「まぁ、いいってことよ。俺もお前と同じだから気持ち分かるってだけの話だし」

「俺も? ねぇ、さっきから気になってたんだけど私とあんたが同類ってどういうこと?」

「え?お前知らなかったっけ?俺がぼっちになった話」

「知らないも何も始めて聞いたわよ、そんな話」

「あー、そっか。あれって奈良花が転校してくる前の話か。何から話せばいいのか…」

「いいわよ、全部話しなさいよ。なんかモヤモヤするし」

「そっか、じゃあ、まずは俺が中学校の頃は………」


 そうして俺は、中学校の卒業式の後から高校デビューするために努力して、成功したはいいけど結局バレて、ぼっちの今に至るというところまで話をした


「ふーん、なるほど、どおりで慰めに実感篭ってると思ったわ。」

「うるせぇ」

「でも、あんたも高校デビューなんて驚きね。」

「まぁな、俺だってイケイケな生活したかったんだよ」

「もう、失敗してるけどね」

 奈良花はニコッと笑って俺のことをバカにしてきた。

 彼女は相変わらず俺の悪口言う時は機嫌が良さそうだ

「うるせ、お前も同じようなもんだろ」

「わ、私は、まだ…何とかなるわよ…あんたが言わなきゃバレないわけだし…」

「はぁ?俺が言わなくてもそのうちバレんぞ、それ。だいたい目立つお前が急に一人でいるようになったらそれだけで分かるだろ」

「はぁ。何で、こうなっちゃうかな。

 人選ミスって感じよね。一番手出しちゃいけないところに混ざっちゃうなんて」

「お前みたいに転校してきて失敗するやつなんて五万といると思うぞ。中学の時の田中さんもそんな感じでハブられてたし」

「んー、何で、こういうことは教科書じゃ教えてくれないのかなー!知ってたら私だって上手くやれたのに…」

「まぁ、そうだな、こんなこと誰も教えてくれることじゃないしな…」

 俺と奈良花はベンチにもたれて思いにふけながらゆっくりと沈んでいく太陽を眺めた

「そういえばさぁ〜、もう直ぐ入学式だよね。今年の一年生にも高校デビューしようと思ってる子いるのかな?」

「どうだろうな、でも、少なくとも何人かはいるんじゃないか」

「多分そうだよね。」

「だろうな」

「うん。………ねぇ、私たちで何か出来ないかな?」

「何かって?」

「うーん、分かんないけど、手助け的な何か」

「まぁ、やるっていっても、そんなことできるタイミングなんてないぞ。入って来た瞬間には、もうデビューしてんだし…」

「そっか……。そうだよね。」

 奈良花は少し残念そうに下を向いた

 すると、腕時計が目に入ったのか奈良花は急に立ち上がった

「って、あ!、もう、こんな時間じゃん⁈私、帰るね。バイバイ!」

 もう6時半か。俺もそろそろ帰らないとな

「じゃあな、暗いし気を付けて帰れよ」

「そっちこそねー」

 そう言って奈良花は元気そうに帰って行った


 なんか、今日はいろいろあったな

 まさか、奈良花がデビュー勢だったとはな……意外と見た目じゃ分からんもんだな…

 それに、奈良花は新入生の為に何かしたいらしいな

 方法が無いから何とも言えんが…

 まぁ、とりあえず今日は疲れたし早く帰って寝るか

 そう考えて寄り道せずに俺は真っ直ぐ家に帰った


 俺が家に帰ると珍しく妹が出迎えてくれた。

「ただいまー」

「おかえりーお兄ちゃん。」

 俺がそのまま部屋に行こうとすると鞄を引っ張って止められた

「何だよ」

「頼んでた物は?」

「あ?」

「昼にメールしたじゃん‼︎」

「あ…そういえば…。」

 確か…買い物中に奈良花と会って、公園で話して………そっか、そのまま何も買わずに帰って来たんだった。

「……行ってきます。」

 俺はそう言って、もう一度来た道を戻って買い物に出かけた。









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