高校デビューは甘くない 1話
最近ではぼっちの生活にも慣れてきて、それはそれで楽しい日々を送っているから安心してくれ
まぁ、その代わり友達の数もガクンと減っていって、今じゃ一日中誰とも話さない日なんてザラにある。
だが中学のときもそんな感じだったし今となってはこれが俺の本来の姿だったのだと思って納得している
高校デビューして自分は変わったつもりになっていたけど自分の根幹を成している部分は結局変わってなかったということなのかもしれない。
家に帰ったらゲームしたり、アニメ見たくなるし、外面だけが変わっていた、高校デビューとはそんなものなのだろう。
なんか、一日中しゃべらないおかげかこうして思考を巡らせて過ごすことが多くなってきた気がする。
今までは他人から見える自分のことしか見ていなかったせいだろうか。
そこで、最近考えているのは、マンガであるような、いじめられている子や自分と同じようにハブられていく人がいるときに、俺みたいなぼっちは助けることが出来るかということ。
俺の考えではそういことができるのは自分の地盤の固いイケメンだけなんだろうなということ
なぜならイケメンは友達もたくさんいて、部活もやって、女の子とも仲良くて、もし助けるのに失敗しても喪うものなんてほとんどないから
ただし、イケメンに限るとは、イケメンは地盤が固いから何しても大丈夫ってことなんだろうな
マンガでは助けた男と助けられた女が恋をするっていう展開がありがちだけど、その逆は見たことがない
よって、俺のような、ぼっちという立場の人間をわざわざ助けようなんて思うカワイイ女子はいない
つまり、俺は高校卒業までぼっち確定
あ〜悲しきかな、夏の過ち みつお。
つい、俳句のようなものを詠んでしまった
話をちょっと戻すが、逆にぼっちの女の子をイケメンではなくぼっちの俺が救うことはできないだろうか
利点としては、ぼっち同士で集まることによって新たなコミュニティーを作ることができる
そして、その居場所があるということはそれだけで充分価値があり、互いに心を休めることができる点で利益がある
それに、仮に失敗したとしても俺のようなぼっちは失うものがない
そう、ノーリスク、ハイリターン
素晴らしい。………が1つ欠点があるとすればそれはぼっちはぼっちどうしで群れようとはしない
それぞれぼっちとしてのプライドがあるから
それに俺にはそんな女の子に話しかける勇気さえないだろう
まとめると、ぼっち同士の集まりに利益はあるが勇気がないと実行不可能
つまり、自信も勇気も信頼もあるイケメンに助けられた方が女の子としては嬉しいわけで
俺のようなゴミに助けられても迷惑であるということ
ノーボッチ・グッドライフ
そんなくだらない思考をしている間に授業は終わり、昼休みの開始を告げるチャイムがなった
「キーンコーンカーンコーン」
あー、もう授業終わったのか、今回は全く集中できてなかったな。
次は昼休みか…
昔は苦痛だったけど最近はこの時間が一番楽しみになってきた
ぼっちになったばかりのころはこの時間が辛すぎて早弁して寝たふりかますことが多かったけど、一ヶ月くらいたって教室から出てウロウロしてると素晴らしい場所に出会った。
変な想像するなよ、別に女の子のスカートを覗きまくれるスポットとかじゃないぞ!
そこは、ズバリ屋上だ!
本来なら屋上は鍵がかかっていて普通は入ることはできないんだけど、そこの鍵が幸運なことに番号式の南京錠だったんだ。
俺はそれから6桁の番号を毎日1からやり続けて一ヶ月後に奇跡的に空けることができた。
その時は人間やれば出来ないことはないと実感した。
ちなみにその番号は114514だった。
ここの校長はホモかよ
そんなこんなで屋上の鍵を開けた俺は毎日昼休みの時間は決まって屋上で過ごしている。
そして今日も当然屋上に行こうと思う。
屋上は教室を出てすぐ左の階段を登った先にあるのだがバレてしまえば俺だけのプライベートなスペースでなくなってしまうので細心の注意を払って行く。
今はみんな購買に向かっているところだがその一部はトイレに行く。
だからそのトイレに行く奴のふりをして階段を登りそこから加速して屋上のある方に向かう。
これが鷹宮式忍術「影の薄さも相まって一瞬で居なくなるの術」!
あー…なんか自分で言っててちょっと悲しくなってきた…
俺は屋上の入り口であるドアの前にたどり着いた
よし、ここまで来れば誰にもバレることはないだろう
屋上には相変わらず番号式の鍵がかかっているので
いつも通り114514を入力して開けて扉を開ける。
ドアを開けると日の光が射して澄みきった青空がバッと目の前に広がった。
「眩しっ!」
今日、こんなに晴れてたのか
しばらく下向いて過ごしてたから天気なんか気にしてなかったわ
しかし、こんなに良い天気だと屋上での昼休みはワクワクするなー
そんなときは……ぼっち飯に限るぜ キラ☆
そりゃ〜、あれよ、1人のほうが景色をぼんやり眺めながらご飯食べれるし……
だいたい、マンガみたいにみんなが使える方が今時珍しいよ
俺は念のために周りに人がいないか、確認した
よーし、今日も相変わらず人はいない…っと
じゃあ、いつものところで食べるか
俺はそう考えて、屋上にあるコンテナみたいなヤツの裏の日陰で食べることにした。
今日のごはんは何んだろな?
俺は勢い良く弁当の蓋を開けた。
そこには黄色い物体が一面に広がっていた。
おおっとー、今日もオムライスだー!4日連続だー!これは嫌がらせなのか、家族からもいじめられたら、俺はどこに行けばいいんだー!
最後の居場所である家を失った俺はこうして悟りを開く為に天竺を目指すのであった。
と、まぁ、冗談はさて置き
なんか、最近妹がオムライスの練習をしているのか毎度毎度、俺の弁当がオムライスになる現象が発生している
それはそれで可愛いのだが流石に4日連続となると体がオムライスへの拒否反応を示し始めている。
最近ではオムライスを見るだけで鳥肌が立つこともあるほどだ。
早く妹の空前のオムライスブームが去ることを切に祈っている。
ん?、待って、もしかしたらだけど練習の理由って誰かに作ってあげるためなのか?彼氏でも出来たのか⁈
妹に彼氏?そんな馬鹿な〜
ないない、だってまだ中学生だよ
俺が中学生の時は彼女なんていなかったし、もはや友達すらいなかったもん、それが当たり前だよね
それに中学生で付き合ってるとか不純異性交遊だろ
もしそんなことがあったら許さんぞ、性の喜びを知りやがって
そういえば言っていなかったが、俺には全く似てないが可愛い可愛い妹がいる。
身長はやや小さめの細身で髪はショートヘアー、そしてアクセントに貧乳
もし血が繋がってなかったりしたら100パーセントあるあるな展開へと直進している自信がある程のレベルだ。
しかし、残念なことにバッチリと遺伝子が反映されており妹の裸の姿をみても俺の息子は全く反応しない。
だから俺は将来遺伝子の研究を行い、血の繋がりを持つ兄弟でも結婚することができる世界を作ろうと思っている。
っと、まぁ話は逸れたが、要するに俺には妹がいて、妹は毎朝弁当を作ってくれる神である
よって、俺は今日も文句を言わずにオムライスを頂かなければいけない。
Q.E.D証明終了
「ギィーッ」
俺が必死にオムライスを食べていると変な音がした。
んんっ⁉︎ 何か入り口の方から音がしたけど
ま、まさか誰か来たのか?
でも、待てよ…どうやって開けたんだ?
屋上に入るのには、6桁の鍵を開けなきゃいけない
それに、鍵は俺が持ってるし……
ん?……あ、俺が持ってる
ということは今鍵かかってないってことアルか。
ゔあぁぁぁぁあぁぁ
なんで俺この欠陥に気づかなかったんだよ⁉︎
俺が屋上にいる間って鍵かけれないじゃん!!!
なんで気づかなかったんだよ俺、バレたら人生終わりだぞ、ぼっちで高校中退とか今後生きていける自信がねぇよ
あー、でも、ただ焦ってもしょうがないな
ひとまず落ち着こう、落ち着け俺
バレなければどうということはないっていうことわざもあるぐらいだし
要はバレなきゃいいんだ。
それに、来たのが先生だったらヤバいけど生徒ならワンチャンバレずにいける気がする。
とりあえず様子を見てみよう
誰だ?入ってきたのは?
俺が覗いた先には1人の女子生徒が立っていた。
ただ、太陽の光が眩しくて顔まではっきりと見えなかった
俺がボーっと眺めていると
その生徒は少し周りを見渡して、ラッキーとばかりに大きく背伸びをした後とぼとぼと真っ直ぐ進んでフェンスまで行き、フェンス越しに外を見ながら何かブツブツ言っている
俺はその独り言を聞こうと少し近づいて耳を澄ましてみた
「あぁ〜、もうマジなんなよ、あいつら。今までは友達だよ〜♪とか言ってたのに遊びの誘い断り始めたら急にノリ悪いとか言い出して。ちょっとならいいんだけどあいつら多すぎ‼︎毎日のようにカラオケかスタバ行って、あいつらの金銭感覚どうなってんの。どこぞのブルジョワかお前らは!こっちは一般市民、バイトあるって言ってんでしょ‼︎、あぁー、ホント!失敗したー、あいつらと関わるんじゃなかった。私のイケイケな女子高生ライフを返してー‼︎」
彼女は屋上のフェンスを蹴りながら愚痴を言っていた
その声は当然、近くで隠れていた俺にも丸聞こえだった
えっ、えぇっー⁈最近の女子高生ってこんな殺伐とした状況で生活してんのかよ。怖杉内俊哉。
それに比べてやっぱ、ぼっちは平和だよな〜、最後までチョコたっぷりだし。
ぼっちなら、そもそもこういう人間関係のトラブルが起こらないからね
いっそ世界平和の象徴になって崇められたりすればいいのに
そしたらきっと世界は丸くなって、良くなる、私はそう思う。みつお。
って、そんなことよりまずは状況整理だ
屋上に入ってきたのは先生ではなく生徒でしかも女子
見つかったら死亡することは確定しているが、昼休みが終わるまでバレなければ生存できる可能性は高い
よって俺がすべき行動は、ひたすら隠れること!
まるで黒○のバスケかっていうくらいに存在を消すしかない
幻のシックスマンになるんだ!
ミスディレクション‼︎
俺は隠れながらにちょっと覗いてみると彼女はフェンスにもたれかかって空を見上げていた
なんか…あいつどっかで見たことある気がするんだけどなぁ〜、ん〜思い出せん…
まぁ、この際誰でもいい
早く帰ってくれ、頼む、最悪お金払うから、お願いします!
そう俺が念じていると
「ボトッ」
俺の隣に置いてあった飲みかけのペットボトルが倒れた。
い、あ、あ、あ、あぁあーーーー
なんで、おれの念能力はこんなところでしかも最悪のタイミングで開花しちゃうんだよ〜!
念じたら通じるのかよ⁈、しかも神にじゃなくて物に⁈
終わった、終わった俺の人生終わったー
てか、元々終わってたか てへぺろ
俺はもう全てを諦めて、死を受け入れた、(社会的な)
しかし、俺はその時思い出した、さっきの独り言を………
待てよ…屋上にまで来て言うってことは恐らく人に聞かれちゃマズイやつだろうな
てことは、もしかしてさっきの独り言を交渉の材料として突きつければ何とかここで起きたことはなかったことになるんじゃないか。
よし、決めた。もし見つかったら真っ向から立ち向かってやろうじゃないか
俺は高校デビューを成功しているだけあって普通に女子とも喋れるから大丈夫なはず……
そう俺は決心して、とりあえず屋上の鍵をポケットにしまった。
「あれ、何か音したけど誰かいるの?」
そう言って女子生徒は俺が隠れているコンテナ的なものに近づいてきた。
そして彼女はコンテナの裏をのぞいた俺は彼女と目が合った。
彼女は俺の顔をじっと見ている
俺はその瞬間思い出した、あいつだ、最近来た転校生だ…
最初の頃は地味な感じだったけど、最近クラスでトップの女グループとつるみ始めてから髪の毛も染めて、ギャルっぽい格好してるんだった
そんな奴がなんで、こんなところに…
それにさっきの独り言…もしかして…
俺が少し思考にふけていたせいか、少し間が空いてしまったので転校生が俺を睨んでいる
「ご、ごめん、今かくれんぼしてるんだ!
ここにいること黙っといてくれないかな?」
俺は動揺しながら咄嗟の意味不明な言い訳を言ってしまった、しかし転校生は無視してじーっと俺を見て言った
「あれ…君って確かクラスでいつも1人でいる子だよね、こんなところで何してるの?」
あれ、俺の話聞いてた?
がっつりスルーされてるよね、しかもなんか可哀想な子を見る目で見られてる。
そんな目で見ないでー、死にたくなるからー
なんかもう、正体もバレたし、どうにかしないとホントに俺の人生詰むかもしれん
とりあえず相手が誰かは分かったし、弱みも分かったけどこれからどう交渉すればいいんだろうか、相手の機嫌を損ねたら一発で終わりだぞ
まずは落ち着け俺、落ち着いて状況を整理しよう
要するに彼女は転校生で、確か名前は奈良なんとか
そして彼女は偶然屋上が空いていたので入ってフェンス越しに愚痴を言っていた
それは恐らく彼女が所属しているグループについてだろう
そしてそれを俺は聞いていた
それでこの状況の大元の原因である屋上の鍵を開けたのは俺
つまり、俺が圧倒的に不利…
そして、このままだと後手後手に回って、最終的には先生にチクられるかもしれん
ならば、ここは強気に攻めるしかないな
「べ、別に何でもいいだろ。そっちこそ何してるんだよ、最近錦のところのグループでハブられてる転校生」
そう言って俺は相手の痛いところをつきつつ、俺はお前を知ってるぞっていう感じを醸し出しつつ返してみた
「うっ、うるさいわね! こっちだって色々あんのよ。てか、何で分かったの?もしかして聞いてたの?、変態なの?、ストーカーなの?」
なんか勢いついでにすごい悪口言われてる気がする
そんで見た目もヤンキーみたいだし、そのうち友達の何とか君に言うからねとか言われてボコられそうで怖い
「ち、違ぇよ!それに変態でもねぇし、ストーカーでもねぇよ!てか、あんなに大きい声で聞こえないと思ったのかよ」
「あっ!やっぱ、聞いてたんじゃん‼︎お巡りさんーここに盗聴変態ストーカーがいまーす」
「しーっ、大きい声出すなって、誰かに見つかったらどうすんだよ」
「元はと言えばそっちが、私に大きな声出させるような事するのが悪いんじゃん!」
「…なんて、理不尽な!……」
「それで?、話どっからどこまで聞いてたの?」
さっきより彼女は距離を詰めて聞いてくる
「確か…最初のところから私のイケイケな女子高生ライフを返してーとかなんやら言ってるとこまで」
「それ、全部じゃん⁈、よくそんな堂々と言えるね⁈」
「いやまぁ、でも…別に聞いてなくても最近の様子見てたらお前が錦達と上手くいってないのは分かるぞ」
俺がそう言うと彼女は少し俯いて口籠っていた
「…やっぱりか」
すると、彼女はそれから何かが吹っ切れたように大きく背伸びをした
「ん〜、そっか〜バレちゃってたのか〜。バレないように色々と気を使ってたんだけどな〜。
…てか……普段も見てるんじゃん変態。」
彼女はそう笑顔で答えたがさっきの様子とは違い少し弱気な感じがした
その時、俺はふと思った。
俺は事件の後こんな風に独りになっているとき誰かに助けてほしかったのではないだろうか
あのとき、俺は急に態度を変えていく周りの奴らに絶望して疑心暗鬼になって誰も信じられなくなった
それで学校にいる間、みんなは俺の悪口を言っていると思って休憩時間はずっとトイレに籠ったりしていた
それがしばらく続いて、死にたいとさえ思った。
それでもなんとか生きようと思えたのはごく僅かでも態度を変えないやつがいたり、家族がいつも通りに接してくれたりしたからだ
もしかしたら彼女もこれから、転校してきたばかりで唯一の友達である錦達に裏切られて、それに同調するように周りの奴らも見方を変えて、俺と同じような思いをするかもしれない
俺の勝手な被害妄想でもいい、誰かに話を聞いてもらうだけでもきっと救われた気持ちになるはず
その気持ちを知っている俺が彼女の力になってあげるべきなのではないのか
俺はそう決心して話しかけた
「あの、俺で良かったらはなs…」
しかし、その時突然風が強く吹いて俺の言葉は彼女に届く前に風に流されてしまった
彼女はそんな事など気付いておらず突風でスカートが捲れないように抑えていて、心なしか俺の方を睨んでいる
俺は見てないことアピールするために首をブンブンと横に振った
しばらくすると彼女は無罪を認めてくれたのか、ふっと息を吐いて、乱れた服装を直した
「ねぇ、そういえば屋上って、確か立ち入り禁止だったよね。どうやって入ったの?」
彼女はすっかり忘れ去られていたことを突然質問してきた
「え、あ、えーと……」
なんて言い訳する予定だったっけ
てか、鍵どこやったっけ?
どうしよう、どうしよう、とりあえず適当な言い訳するしかねぇ
「それは……確か元々開いてたっぽい
先生が鍵閉め忘れたんじゃないかな…?」
「あっ、そうなんだ。なら、良かったたまたま開いてて、少しはストレス発散できたし閉め忘れた先生には感謝しないと」
彼女は何かスッキリしたのか少し笑顔になっていた
「ブブッ!」
その時突然、俺の携帯にメールが来た良くやったAmazon!
ラッキー!とりあえず話をごまかして今日のところは退散しよう!
「あっ、ゴメンちょっと電話かかってきたかも
先帰ってて良いよ、先生には後で伝えておくから」
そう言って俺が携帯を取り出そうとした時にさっきとっさにしまった鍵がポケットから落ちてしまった
ん?あ、う…うああああぁぁーー!うひぃーーーーーーー!神よ!なんて無慈悲な!何でこう不幸が重なるんだ、なんで日だ!!
ここまで上手く誤魔化せてたのに!
バレたら俺の人生The.endだよ、分かってんの⁈
ただの普通の高校生は降りかかる数々の災難を華麗にかわせるとお思いで⁈
無理、無理よ無理無理!
神さまは乗り越えれる困難しか与えないんじゃなかったかよ
そんな風に慌てている俺を見て彼女はニコっと笑った。
「あれ〜その鍵って……屋上の鍵だよね〜
もしかして〜、もしかしてだけど鍵を開けたのって先生じゃなくて君なんじゃないかな〜
先生に言っちゃおっかな〜どうしよっかな〜」
彼女の笑顔は悪魔のようだった
いや、悪魔だった
一瞬そのギャップにときめきそうになった俺の純情を返してくれ
今はとりあえず土下座でも何でもして黙っててもらうしかない
そうでないと俺の人生終わってしまう
よって、すべきことは
「見逃してください、お願いします!」
そう、俺は誠心誠意込めて極上の土下座をして許しを乞いた
すると、彼女は俺の全力の土下座に驚いたのか、思いの外軽い感じで返してきた
「いやいや、そんな、冗談、冗談だってば。
ただ…黙っててあげるかわりにちょっと約束して欲しいことがあるだけ」
「約束?まぁ俺にできることなら全力でするけど…」
「じゃあ、決まりね。
私は屋上のこと黙っててあげるから
代わりに私が屋上で言ってた愚痴のことは秘密にしといて、あと…できたらでいいんだけど…たまに屋上に来て、また愚痴聞いてもらってもいい?」
そう言って若干上目遣いでお願いしてくる彼女は、正直少し可愛いかった
普通の高校生ならイチコロだろ、しかし俺はデビュー失敗したぼっち、自分の立場を理解しているから調子に乗ったりはしない
「べっ、別にいいけど……」
「ありがとう、約束だからね!」
そう言ってバイバイと手を振って彼女は今日一番の笑顔で教室へ戻って行った。
なんだったんだよ、あいつ…
見た目はチャラいくせに、なんか、こう、違うんだよな〜
まぁ、しかし久しぶりの女子との会話はなかなか良いものだね
おじさん楽しかったよ。
なんて、変なことを考えていると昼休みの終了を知らせるチャイムが鳴った
あれ、ヤバい次の授業始まるじゃん、急いで行かないと遅れる
俺は気持ちを切り替えて食べかけの弁当を片付けて教室へ戻った