雨降る朝に妖しい瞳 弐
蓮花が儚夜の仲間達と出会って一週間。
彼女は新たな仲間達に馴染みつつあった。
あの虹色の夕日を見た日の夜のパーティは蓮花にとって最高のパーティだった。神奈の作る料理は飲食店を経営しているだけあって素晴らしい出来だった。そして蓮花にとって久しぶりの大人数で食べる食事は最高のものとなり、そのパーティで彼女は皆と馴染むことが出来たのだ。
そして、現在蓮花と涼介は高校最初のテスト期間に入り、儚夜で勉強中なのだ。
外は早くも梅雨の時期に差し掛かろうとしているのか、雨が降っている。
「これはもう少し止みそうにないな」
煙草を吸いながら神奈が呟く。蓮花と涼介も外を見ると、雨足はどうやら強くなっているらしい。
「で?お前達はどうなんだ、勉強」
煙草を灰皿に押し付けながら神奈は二人に訪ねた。蓮花の顔は少し歪み、涼介の顔は無表情のまま、変わらない。
「あまり良くなさそうだな、蓮花は」
「分かります?」
「なんとなくな」
蓮花のため息が聞こえてきそうな顔を見て、神奈は苦笑した。涼介も少し頬を緩ませた。
「じゃあ、どうだろう?気分転換に妖気を使う練習でも」
新しい煙草に火を付けながらそう提案した。蓮花は三日前から妖気を扱う練習を始めたのだ。
「はい、やります!」
ちょうどいい気分転換になりそうな予感もし、蓮花はやる気だ。涼介も勉強の手を休め、ヤマトと水を飲む。
「じゃあまずはいつものやつから。妖気を放出するのを五分続けようか」
そう言いながら神奈も妖気を放出し始める。妖気が見えない者からすると何も見えないが、妖気が見える者には神奈の周りを淡い紫色の陽炎が揺らめいているように見える。
「リラックスして。何度も言っているが妖気は脳波の様な物だ。だからイメージすることが最も重要だ。そう、力を抜いて」
蓮花の体からも妖気が少し放出される。色でいうと銀色に見えるその妖気は、神奈のものよりかは小さいものの、確かな存在感があった。
「いい感じだ。そのまま五分行くぞ」
「はい!」
ヤマトがゴロゴロの喉を鳴らす。どうやら蓮花の飲み込みの早さに舌を巻いているらしい。
「本当、覚えるの早いな、あいつ」
蓮花は必死にイメージしているのか、目を閉じて集中している。銀色の妖気は時折揺らぎ、乱れはするものの、なんとか五分持った。
「よし、五分だ。随分覚えが早いな」
この成長の早さには神奈も驚いていた。普通、五分間妖気を持続させるのは二週間程かかるものだ。蓮花は妖気のコントロールと元々の妖気の器の大きさ、そしてイメージ力が強いのだろう。
「じゃあ今日は少し妖気を使った妖術について教えようか。涼介、ヤマト、お前達も手伝え」
「了解です。って言っても俺やることあります?」
そんな涼介の問いを完全に無視して神奈は立ち上がり、妖気を放出する。そしてその妖気は彼女の右手へと移動していった。
「これが妖気。脳から生み出されたエネルギー、みたいなものだ」
神奈は右手をぶんぶんと振る。
「しかし、妖気というものはこのままではただのエネルギーでしかない。これを外に干渉させるための術、それが妖術だ」
そう言いながら神奈は右手を下ろし、握り拳を作った。すると、妖気は弾け、次に神奈が手を開くとそこには小さな火傷の跡があった。
「とまあ、こんな感じだ」
「いや、こんな感じだじゃなくて!大丈夫なんですかその手!」
涼しい顔をしている神奈に対し、青ざめた顔をしている蓮花。涼介はそれを見て笑っているだけである。
「この干渉にも当然基本があって、次に系統術があるんだが、とりあえずは基本から教えていこうか」
「本当に大丈夫なんですかそれ!?」
そのまま続けようとする神奈には常識が通じないのか、と蓮花は一瞬考えたのであった。
「で、基礎だが、まず妖気を壁にして身を守る防護術。妖気を体に循環させ、身体能力を拡張する運動術。何かモノに妖気を送り込み、強度やそのモノの性能を上げる型式術。この三つが基礎だ」
神奈がそう説明するも、蓮花からするとテスト前にテスト教科が一つ増えたような感覚だ。理解しようとはするものの、さっぱりだった。
「例を見せようか。涼介、私に妖気の弾を撃ってくれないか」
涼介は自分が必要な理由を理解し、妖気を練り上げる。椅子から立ち上がり、妖気の塊を胸の正面辺りで留めた。
「本気でも?」
「構わん」
涼介は自分の胸の前にある妖気を左手で弾いた。すると、その妖気はかなりの速度で神奈へと向かっていく。
「危ないっ!」
蓮花は目を見開いた。
しかし、その弾は神奈に当たらなかった。寸前で妖気の壁に阻まれた様に見える。
「これが防護術だ。こうすれば分かり易いか?」
相変わらずの涼しい顔て神奈が尋ねる。
「し、心臓に悪いですよ......てか涼介君も手加減しな!怖いやん!」
涼介も涼しい顔だいる。どうやら神奈が無傷で止めることをわかっていたらしい。
「で、次に運動術だ。これはまあ簡単にやってみると」
そう言うと神奈は片腕てま逆立ちをして見せた。そのまま片腕で体を浮かせ、着地するところまで。
「軽くやるとこんな感じだ。これもイメージ力が重要となる最後の型式術は生憎室内で見せれるものでは無いのでな。まずはここから始めようか」
神奈と蓮花の妖術特訓が始まろうとしていたその時。
カランコロンと音がなり、一人の客が入ってきた。
妖術とかそういうの大好きです。
最後の客は誰なのでしょうか。




