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京都夢現〜儚い無限の命〜  作者: ありあ
7/12

雨降る朝に妖しい瞳 壱

 「ただいま」

 カランコロンと音を鳴らしながら先程のバー、儚夜のドアを開けた神奈。後ろに蓮花も着いていく。

 「ここが私達の溜まり場だ。なに、ゆっくりしていけばいい」

 エプロンを着なおしながら、神奈は蓮花にそう言う。それを聞いて、涼介が顔を上げた。

 「ってことは神奈さん、」

 「ああ。私達と共に戦ってくれるらしい」

 その一言で先程のゴーグルの男、美琴と名乗った少女も蓮花の方を向いた。その顔は皆嬉しそうな顔である。

 「マジで!?それは嬉しいわー!」

 男が椅子から立ち上がり蓮花の方へと歩いてくる。立っているところを見ると、かなり背は高いらしい。

 「俺は長谷川翔。翔でええから」

 翔はそう言うと、ゴーグルを外し(と言っても上に上げただけである)ニッと笑った。爽やかな顔つきに、人当たりの良さそうな目はゴーグルを付けていなくても断然良いルックスをしている。

 「その、はい、よろしくお願いします!」

 少し人見知りな蓮花にとっては上出来な挨拶だった。

 「私、さっきも挨拶したけど、梅村美琴!美琴でええよ、よろしく!」

 逆に全く人見知りをしなさそうな美琴は平均からすれば小柄な方だろう。しかも活発そうな服装と見た目と相まって、中学生にまで見えてしまう。

 「改めて挨拶しておこうか。このバーの店主、出雲神奈だ。よろしく」

 神奈は蓮花が座ったカウンター席に水を注ぎながら改めての自己紹介をする。蓮花は水を一口含み、名前を整理した。

 「俺は黒木涼介。この猫はヤマトだ。よろしく」

 涼介ももう一度自己紹介をする(蓮花が涼介の自己紹介を聞くのは入学式以来だ)。

 「あ、えと、白石蓮花です!ふつ、ふつつかものですがよろしくお願いします!」

 蓮花は自分が自己紹介していない事に今更気付き、慌てて挨拶をした。

 「歓迎するよ、蓮花。まだ妖怪と戦う力はないかもしれないが、一人の仲間として」

 神奈がそう言いながら微笑んだ。この女性は恐らく何をしても絵になるのであろう。蓮花からすると羨ましい限りである。

 「あ、そういえば、黒木君、放課後なってからめっちゃ性格とか変わったんなんで?さっき後で教える言うたやん」

 蓮花はなんとなく引っかかっていたことを思い出し、唐突に涼介に質問する。

 「ああ、それは......」

 涼介はそう言いながら妖気を体から放出する。脳から出てきた未知のエネルギーを体中に循環させ、それを外に出していく。すると、ヤマトの体からも妖気が発せられてきた。

 すると。

 「っぷはぁ!こんな感じ!蓮花ちゃんが知ってる俺ってこんなんやろ!?」

 そこには先程の涼介ではなく、普段学校で見る、ちょっとふざける、元気な涼介がいた。

 「自己紹介すると、俺はヤマト。実は俺と涼介は、妖気を使って体を入れ替えることができるねん」

 涼介もといヤマトは、信じられないようなことを言った。人格が変わる、ということではなく、なんと猫と人格を入れ替えていたのだ。

 「びっくりした?こんなん普通できひんもん。俺は涼介と契約したからできんねんけどな。」

 「その、契約って何?」

 契約、という言葉は無論蓮花も聞いたことはある。例えば、会社同士の商談契約であったり、契約社員などといった、いわば約束のようなの、とか考えていたが、アニメによく出てくる悪魔との契約、といった方がしっくりきそうだ。

 「うーん、俺は人の妖気を食わない。代わりに涼介から妖気を貰う。涼介は俺を退治しない。代わりに俺は妖気をあげるっていうのが今の契約。で、そうやって妖気を渡しあいっこしてたら二人の体を入れ替えれるようになってな。あれはホンマにビビった」

 その時の事を思い出したのか、ヤマトは軽く吹き出した。蓮花はある程度理解して、頭の中で整理を始めていた。

 「元々涼介は京都の人ちゃうから関西弁ちゃうねん。せやから俺が学校では出てきてるんよ」

 「え、じゃあ学校ではずっとヤマト君が出てるん?」

 「ヤマトでええって。そ、涼介はずっと俺の体使ってる」

 なんだか蓮花は少し面白くなってきた。学校では人当たりの良い、普通の生徒が実は猫の妖怪とは、妖怪が増えた日本でもそうあることでもないだろう。

 「ちなみに教えておくと、こんな芸当は人間と妖怪でしか出来ない。人間が出す妖気と大気中を覆う妖気は少し違う物らしくてな。大気中の妖気が乱れて出来る妖怪と、人間のペア、もしくは人間の妖気の暴発した妖怪と大気中の妖気の乱れで生まれた妖怪の間でしか人格移動は出来ない」

 カウンターから神奈が説明を加えてくれたものの、蓮花にはさっぱり理解不能だった。

 「ところで翔。お前、今日は彼女とデートじゃなかったのか?」

 「ん?いや、明日やで。今日は蓮花ちゃんの歓迎パーティ開かなあかんし」

 「そうそう!蓮花ちゃん、ここで夜ご飯食べて行き!」

 どうやら翔と美琴がさっきから話していたのは歓迎パーティの話らしい。幸い、一人暮らしの蓮花には門限は無く、予定もなかった。

 「おい待て、料理を作るのはまた私か?」

 「当たり前やん!私、神奈姉の作る料理めっちゃ好きやし!」

 「なんだ、面白そうな話をしてるな。白石、どうする?」

 いつの間にか体を取り戻したらしい涼介までパーティ賛成派だ。

 「はぁ、仕方ない......蓮花、お前の好きな食べ物を教えてくれ。翔が材料を買ってきてくれるだろう」

 蓮花の最初のここでの仕事は、歓迎パーティを楽しむことのようだ。

 「じゃあ、エビフライ、食べたいです!」

 「解った。翔、材料を頼む」

 「あいよ。じゃあ飛ばして行くし、居るもんメールかRINEで送っといて!」

 翔がバーから出ると、すぐにバイクの排気音が聞こえる。バーの前に止まっていた大きなバイクは彼のらしい。

 「まあ、たまにはこんなのもいいだろう」

 そう言う神奈の顔も、楽しそうであった。


 涼介の説明がやっと大まかに出来ました。満足です。

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