夕日は人に無限を魅せる 参
自転車をカラカラと押して涼介の後ろについていく。涼介はときたま鞄を掛ける肩を変えつつ、どこへ向かっているのかは未だに蓮花には教えてくれない。
「どこに行くん?」
耐え切れず蓮花はもう一度聞いた。
「お前、どうして人を避けてるんだ」
涼介は質問には答えず、逆に質問をした。
「え?」
空は紅く染まってきている。西から差し込む光が、涼介と蓮花を照らした。
「この一ヶ月、お前まともにクラスの奴と話してないだろ。最初の自己紹介もずっと下向いてたし」
朝とは違う雰囲気のまま、涼介は淡々と言葉を並べる。蓮花の質問には答えてくれない。
「だってさ、その猫ちゃんも妖怪やろ?そんなのが見えるとか、嫌われるかもやし......」
「ヤマトだ。別にだからといって嫌われるわけでもないだろう」
涼介の言葉に、蓮花の心の底が少し、痛む。
「......私は、それで嫌われちゃったの」
小さな、本当に小さな声で蓮花は呟いた。涼介は聞こえているのか聞こえていないのか解らず、ただ歩き続ける。
「ちなみに俺が向かっている先はとあるバーだ。あと三分程で着く」
涼介は蓮花の質問にやっと答え、蓮花は少し安心した。どうやら自分の事もきちんと見てくれているようだ。
「なあ、朝とちょっと雰囲気が違う気がするんやけど、なんかあった?」
蓮花はもう一つの気になることを質問した。本当はまだまだ質問はあるのだが、これが一番気になっていた。
「ん?あぁ、後で説明するよ。それでいいか?」
ふいに涼介が後ろを向いた。鋭い目は相変わらずだが、夕日と笑っている頬を見ると、この男が優しく、悪い男ではないことと、恐らくモテるのであろうことが解る。蓮花はその笑顔をついまじまじと見てしまい、頷くことしか出来なかった。
ふいに辺りを見回すと、かなり人通りは少なくなっている。和風な建物と洋風な建物が並び立ち、まるで異世界の中に紛れ込んだような雰囲気の路地だ。
「着いたぞ」
涼介は真っ白な壁をした、西洋風の建物の前で止まった。蓮花は自転車を止めて、その建物をきちんと見た。看板にはこうか書いてある。「BAR 儚夜」
「なんて読むん?」
漢字が読めず、涼介に訪ねる。
「ほうや。多分当て字だろうな」
涼介は木製のドアに手をかけ、ゆっくりと押す。カランコロンという音をたてたのはカウベルだろうか。そのまま涼介は店に入っていった。
「......え?私は?」
取り残された蓮花。ドアの脇に自転車を止めなおすと、止めなおしたすぐそばに大きなバイクがあることに気付いた。少し威圧感まで感じるバイクから逃げるように、そしてドアの中には誰がいるのか、涼介は何故私をここまで連れてきたのかという好奇心も混ざり、ドアを開けた。
カランコロンというカウベルの音が聞こえ、バー、儚夜の中へ。
まるで新しい世界へ踏み出すように、蓮花は一歩を踏み出した。
バーの名前は当て字です。意味はありません。
涼介の性格が変わっているのは次辺りで説明したい。
次から内容を増やして投稿していこうと思います。
そういえば、チャリは自転車のことです。




