夕日は人に無限を魅せる 壱
第一章 夕日は人に無限を魅せる
二〇一五年、五月。長期休みも終わり、学生達は休みにボケつつ、慣れ始めた新しい学校、クラスへと足を運ぶ季節である。
桜も既に散り、街並みも春から夏へと装いを変えつつある日、京都の公立高校に通う一年生の少女、白石蓮花は授業を聞く傍ら、窓から外を眺めていた。
人を襲う「妖怪」の存在が認められ、日本の風景は少し変わってしまった。妖怪を祓うことが出来るのは「妖気」であり、人が神経を集中させることができれば脳から妖気が僅かだが放出される。その集中をして妖怪を人から遠ざけるのは、寺や神社の役割とされた。その為、日本は何年か前より神社や寺等が大きく成りつつある。元々京都には神社や寺が多いのだが。
蓮花はこの街並みが好きだった。小さな頃は祖母に連れられ神社へとお参りに行き、「ずっと幸せでいたい」と子供ながらにお祈りをしていたものである。
そんな小さな蓮花は高校生へと成長し、大きな目とふっくらとした唇、流れるような黒い髪を背中まで伸ばした見た目は、かなり人の目を引く、美人となった。
勿論学校でも目をひかれる存在ではあるのだが、蓮花はそれをずっと迷惑に感じていた。
嫌われたくない。
蓮花が人を迷惑に感じる理由、それは妖気が目に見えることである。
本来、妖気や初期の妖怪は目には見えない。妖気とはいわば流れる空気である。その流れを見ることが出来るのは、脳から放出される妖気が常人より高い、少し前の言い方をすれば「霊感がある人」だけである。
蓮花はその妖気の放出量が普通以上であり、今まで何度も妖怪を見てきた。無論、妖怪が人のエネルギーを吸うところも。
蓮花は自分が見えていることを知られ、避けられることを恐がった。人は普通から外れている人を避ける。だから、自分から人を避けているのだ。
蓮花はその避けているクラスメイト達をふらっと見渡した。授業に集中する者、隠れて携帯をいじる者、居眠りをする者と様々だが、蓮花はとある男子生徒の背中で目を止めた。
彼、黒木君だっけ?
朧げな記憶から名前を掘り出したものの、大事なのはそこではない。
彼の肩の上に黒い猫の妖怪がいるのだ。
黒猫は肩の上でゴロゴロと喉を鳴らし、彼はその様子に気付いている様子もない。
「え?」
蓮花は思わず声に出してしまった。
その時授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、全員が一斉に椅子から立ち上がる。礼の合図とともに先生へ挨拶し、各々がやりたいことをし始めた。
蓮花もとりあえず無干渉でいいや、と考え、読みかけの本へと手を伸ばした、その時。
「ヤマトが見えるん?」
件の男、黒木が話しかけてきた。
「ヤマト?」
突然話しかけられ、更に唐突な話に蓮花はびっくりしてしまった。
「あの猫。ヤマトっていうんやけど」
なんと黒木が聞いてきたのはあの猫の話である。蓮花は更にびっくりしつつも、
「う、うん。見えるけど、あれって妖怪?」
黒木はその答えを聞くと、少し笑いかけて、
「今日の放課後、暇?ちょっと話があるねんけど」
この誘いにもし乗らなかったら、蓮花の青春はまた違う物となっていただろう。
蓮花の長くて短い、高校生活が始まろうとしていた。
舞台は京都なので関西弁です。かくいう私も関西の人です。
まだまだファンタジーっぽくないですね。頑張ります。




