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男装お嬢様の冒険適齢期  作者: ONION
第2章 侍女の生活
70/124

2-34 侍女と水上戦

 神暦720年 大人の月27日 地曜日



『―――今日は快適な船旅を保障しますよ。何事も無ければ。』


 船長の言葉を思い出す。

 それなりに信用できる人には見えたので、少なくとものっぴきならない何かが起きたのだろう。


「お姉様…。」


 悲しげにこちらを見つめるマリオンの頬に手を当ててから、私は困り気味に微笑む。


「ごめんなさいね、マリオン、もう帰らないと。都合が合えばまた来る…と言いたいけど、貴方達がお屋敷の夜会に招待されるほうが早いかしらね。」


 そう別れの言葉を紡ぐ間にも、事態は動いているようだ。

 ノックと共に扉が開かれ、1人の衛士が姿を現す。

 彼は敬礼の後に伯爵に報告する。


「報告いたします!コムナ川上流の開拓村リュローにて、ほぼすべての住人が失踪する事件が発生しました。物陰に身を隠していた住民の証言によると、夜間に賊が川から村を襲い、住人を根こそぎ拉致した模様。現在、水軍と騎士団が協同し捜索にあったっております。」


 それを聞いて伯爵は厳しい顔で頷く。


「わかった。騎士隊には必要な処置を取る様に伝えよ。また、近隣領及びヴァレリーに早馬を飛ばし、警戒を呼びかけよ。」


「はっ!」


 指示を受け、衛士が退出する。

 そして伯爵はしみじみと呟いた。


「ふむ、緊急事態とやらはこれの事かな?であれば、早めに戻るのがよかろう、ユーリア嬢。」


「はい。慌しくて申し訳ありません。」


 私が頭を下げると、伯爵は気にするなと笑顔で頷く。


「まぁ、これに懲りずにまた来てくれ給え。マリオンも喜ぶ。」


「はい、必ず。奥様も、お世話になりました。」


「ユーリアちゃん…気をつけてね?って、なんだか楽しそうね。でもあまり無茶をしては駄目よ?」


 奥様にそう言われて、初めて何かを待ち望んでいるかのように浮つく自分の心に気付く。

 いかん、いかんな。

 落ち着かなきゃね。


「はい、注意します。では。」


 皆に一礼して、扉に向かう。

 そしてマリオンとジョゼに軽く手を振ってから、外に出た。



 廊下を足早に歩く私のすぐ後ろを、ジャックさんがついてくる。


「イングリット様は既に港へ向かわれたようです。」


 川港までは約半マイル(740m)…走って5分刻弱…いや、人ごみがあるからもう少しかかるか?


「ユーリア様、玄関の前に馬を用意しております。港まではそちらをお使い下さい。」


 ああ、それなら途中でイングリットにも追いつけるかも。


「そう、助かるわ。」


 こちらの感謝の意に、黙礼で答えるジャックさん。


「港に着きましたら、適当な所へ繋ぎ置き下さい。後程、馬丁を向かわせます。」


「わかったわ…でもいいの?馬を放っておいて。」


「あまり早くはありませんが、気性は大人しく利口な馬を用意させています。放っておいても自分で厩に戻る程度の物を。それに…リース家の焼印(ブランド)が押された馬を、どうこうする愚か者はこの街にはおりません。」


 それもそうか。

 もし町の外に連れ出そうとしても、城壁で止められる事になるだろう。


「わかったわ。じゃぁ、またね。」


 玄関脇に控えた従者が、私の歩みに合わせて扉を開ける。

 それに片手を上げて答えると、玄関前で馬丁が保持した手綱を受け取り、用意された馬に飛び乗った。




 私達が港に到着したとき、既に船は出港の準備をほぼ終えていた。

 もやい綱も最後の一巻を残して解かれており、その綱にも水夫がついていつでも離岸できるようになっていた。


「ユーリア、すぐに出るわ。急いで!」


 途中で拾って、私の後ろに乗っていたイングリットが叫びながら馬から飛び降りる。

 私も馬から降りて適当な柵がないかと見渡して…1人の荷運びの男と目があった。

 私よりもいくつか年上だろうか?

 よく日に焼けた肌は健康的に盛り上がり、力仕事を生業にしているように伺える。

 丁度いい。


「この馬をお願い。領主の館まで連れて行けば、今夜の飲み代ぐらいは出ると思うわ。もし忙しかったら、適当な馬止めの柵にでも繋いどいて。」


 そう言いつつ、手綱を押し付ける。


「お、おい!」


 急に手綱を渡され、うろたえて情けない声を上げる男。

 あー、あんまり馬の扱いには慣れていないのか?


「何かあったら『ユーリアに押し付けられた』と言っておけば大丈夫だと思うから。じゃぁ、お願い!」


 それだけ伝えると、私は桟橋目がけて走り出し、そのままの勢いで渡し板を走り抜ける。

 そしてその直後、出港合図の笛の音が響き、もやい綱が解かれ、船が岸を離れた。




「バルボロさん、遅くなって申し訳ありません。」


 船に乗り込んだ私は、まず船長に遅れたことを侘びだ。


「いや、大丈夫だ。だが…状況のほうは聞いてるかね?」


 私は頷いて、「船を使った人攫いと。」とだけ答える。

 それに頷いた彼は、苦みばしったその顔に躊躇いの表情を浮かべる。


「状況によっては荒事となる…あるいは陸路で帰ってもらったほうがよかったかもしれん。」


 確かに、馬を借りでもすれば門限までにヴァレリーに帰る事は可能だ。

 だがその場合も私1人で帰る訳にはいかないだろう。


「いえ、大丈夫です。何かあっても、自分の身程度なら守れると思います。」


 私の言葉に、彼はうんうんと頷いた。


「先ほどの立会いを見させてもらったが…確かに、馴れないデュサックをあれだけ扱えるのなら十分な腕はあるようだ。いいだろう。とりあえずは私の目の届く範囲にいるように。手が空いたらイングリットを付けよう。」


 彼がそう言っている間に、船内からその彼女の声が響いてくる。


「野郎共、気合を入れな!いくよ!!」


「「「「そぉーれいっ!!」」」」


 彼女の号令と共に合図の太鼓が響き、櫂手達がタイミングを合わせて櫂を漕ぐ。

 そして船は川の流れに乗って加速しだした。

 まずは全員で漕いでスピードに乗せ、後は3交代で漕ぎ続けるとの事だ。




「まずは現状の確認だ。」


 川の流れに乗って進み続ける船の上、船長の元に副長や幹部達が集まり作戦会議が開かれる。

 もちろん、その中にはアントンさんを連れたイングリットの姿もあった。


「まず襲われたリュロー村だが…コムナ川の支流のリュロー川を遡った所にあるのは知っての通りだ。そして拉致された村人は老若男女合わせて30人弱と見られる。」


 30人…開拓村としてはこんなものか?


「ですが船長、あの川は川と言うよりゃ葦沼で、小船ならともかくうちらじゃよう近づけねぇ場所では?」


 年配の水夫の言葉に、船長が頷く。


「ああ。だが小船では捕えた村人やそれを制圧できる兵員を運ぶのは難しい。よっておそらくは…喫水が浅く、積載量の大きい竜頭船(ロングシップ)が使われたのではないかと思う。」


「竜頭船!?ってことは、下手人はデル・シールの海賊…の奴隷狩ですかい?」


 デル・シール国…ラヴォリ(この)国の南西、ブレンツ帝国のその向こうにある島国だ。

 耕作面積が非常に少ない山地と砂漠の島国で、漁業と竜頭船という船を使った交易を主な産業にしている…が、一部の商人が海賊化する事も多々あると聞く。

 竜頭船は喫水が浅く、川の上流まで遡れる上に短距離であれば担いで移動できるので、海賊に使われると予想外の箇所から襲われる事もあるので厄介だと聞く。


「まだ確定はしていないがそれが一番疑わしい。ブリーヴの物見が、我々が港に入った直後に下流へ向かう2隻の竜頭船を目撃している。」


「2隻?となると…船員は合わせて5、60人ですな。」


「帝国との国境沿いや王都周辺は警備が厳しいからな…おそらくはそれを避けて、遥々こんな上流までやってきたのか…舐めやがって。」


「入れ違いとなると…2刻程度の遅れね。日没までに追いつくのは…少し厳しいかしら。」


 口々に意見を述べる水夫達の中、日の高さを確認するイングリットにつられて、私も空に目をやる。

 下流から吹く風が向かい風になるため、帆はたたまれていた。


「となると他の船との連携次第か…上手く情報が伝わっていればいいんだが…。」


 1人の水夫の呟きに、「宜しいですか?」と手を上げて発言権を求める。

 船長の頷きに、会釈して報告する。


「拉致の報告を受けたブリーヴ伯は、隣領とヴァレリーへの早馬を指示していました。ですので、他の領の協力も期待できるものと思われます。」


 私の言葉に、船長は再度大きく頷く。


「おお、そうか。ならばとりあえずは安心だな。貴重な情報だ、ユーリア嬢。あとは…全力で竜頭船を追うのは当然だが、物見を密にするように。奴等は船のまま上陸して、こちらをやり過ごす可能性がある。やり過ごされてさらに別の村を襲われでもすれば、他所の水軍の笑い物だ。」


 船長の言葉に、水夫達から疎らな笑い声が上がる。

 ふむ、だとすれば…日没までが勝負か。

 日が暮れてしまえば、いくら見張りを立たせても見逃す恐れがある。


「櫂手頭、日没までには追いつきたい。漕ぎ手を2交代にして、日没まで全力で漕げ。…できるな?」


 船長の命令に厳しい表情で、だがしっかりと頷くイングリット。

 2交代とはいえ櫂手に無理をさせろとの命令だが、櫂手は戦闘要員でもある。

 追いついても、疲労困憊して竜頭船を制圧する事ができなければ意味が無い。

 頭の中で配置やローテーションについて考えを巡らし始めた彼女を他所に、私は船長に声を掛けた。


「船長、追いかけるのは櫂走のみでですか?」


「ああ。生憎と向かい風なので帆は使えんが、相手も条件は同じだ。あとは漕ぎ手の腕次第だが、私は常日頃から漕ぎ手達を鍛え上げているから、その点の不安は無い。とはいえ…今回は時間との勝負だな。」


 厳しい表情で考え込む船長。

 だが私は、微笑を浮かべて口を開いた。


「でしたら…追い風が吹けば助かりますよね?」





 帆に風をはらみ、櫂が水を掻いて斧犀号(アクスライノー)は川面を疾走する。

 下流へ向かう周囲の船が皆、向かい風に帆をたたんで川の流れに身を任せるのみであるのに比べ、その速度差は圧倒的だ。

 私は船尾近くの樽に腰をかけ、『科戸風の命(ブレスウインド)』に命じて帆を広げたマストに風を当て続けながら、腕輪を足に着け替えていた。


「領主の館に精霊使いがいると聞いて、羨ましく思ってはいたのだが…まさか私の船に精霊使いが乗る日が来るとはな!」


 妙にテンションの高い船長が嬉しそうに呟く。


「おかげで櫂手を十分に休ませる事ができる。はははっ、いける、いけるぞ!」


 まるで玩具を手に入れた子供のように笑う船長。

 私が半目で眺めていると、やっと自分の浮かれっぷりに気付いたのか、咳払いをして平静を取り繕う。


「あー何だ、風や潮を正しく読めるというのはいい船乗りの条件なのだが、風や潮すらも操る精霊使いは滅多に見れなくてね。」


 そしてちらとこちらを見る。

 うん、口角を抑えきれないのか、ぴくぴくと痙攣している。


「オウトライネンの船乗りには森妖精(エルフ)海妖精(マーマン)が偶にいるのだが、カノヴァスの水夫では望むべくも無い。昔…『大戦』期には、森妖精とも協力して『魔軍』に当たったので、そう珍しい話ではなかったと聞いてはいるのだがな。」


『大戦』から700年…今では人族の中では精霊術はほぼ途絶えてしまっている。


「貴女、何時の間にこんなの覚えたのよ。魔術が使えるってのは聞いてたけど。」


 イングリットの問いに、記憶を漁る。

 そういえば、精霊が使えるようになってから何度か飲んだけど、話題にはしていなかったわね。


「ついこの間よ。だから私はまだまだ駆け出し。風を少々操る事しかできないわ。」


 私は気だるげに答える。

 長時間精霊を操ると、結構疲れるのだ。


「それでも大した物だよ。おかげで、ほら。」


 そう言って船長が指差す先に…うっすらと何かが見えるような気がするけど…。


「船長!前方に竜頭船!数は…2隻です!!」


 見張りの水夫が叫ぶ。

 たしか彼は大山塊の出身で、目はいいが泳ぎは苦手とか言っていたわね。

 何時だったか『川風亭』で一緒に飲んだ記憶がある。


「よし、総員警戒態勢!信号手は停船信号を送れ!甲板員、畳帆開始!ユーリア嬢、風を止めてくれ。」


 船長が次々と指示を飛ばす。

 船内がにわかに慌しくなるなか、私は科戸風の命に命じて、風を止ませる。

 信号手が旗で停止を命じ、相手の船にも動きが見える…が、竜頭船の櫂は動き続け、返答も無いようだ。


「船長!停船信号に応答ありません!」


「いよぉし!だったら力尽くだ!!総員戦闘態勢!櫂手1班は武装して甲板、あとは持ち場に着け!!」


 船長の号令の下、船員達が慌しく動き始める。

 というか、言葉遣いが随分と荒くなってない?

 荒事の最中はそうなのか…それともこれが地なのか。

 イングリットも櫂手に指示をするために船内へ駆け込んでいく。

 と、イングリットの後に続いていたアントンさんが、慌てて引き返してきた。


「嬢ちゃん、矢が来るから、樽の蓋を盾にしときな。」


 それだけ伝えると、直に引き返す。

 私は座っていた樽から立ち上がり、その蓋を見てみると…それは樽の蓋サイズだが、しっかり補強された盾でもあった。

 …気付かなかった。

 周りの船員達が次々と蓋を外して持っていく中、私は彼の忠告を有難く受け止めてそれに習う。


「船長!畳帆完了!!」


「よし!まずは手前の船にぶちかまして船足を落とさせてから、奥の船に突っ込むぞ!操舵手、村人が乗っているから衝角を当てるなよ。櫂だけを狙っていけ!!」


 船室からはイングリットの号令と、太鼓の音が聞こえてくる。

 櫂が一斉に水を掻き、船はぐんぐんと速度を上げる。


「弓手は今回は手を出すな。村人に当たると不味いからな!投石器(カタパルト)もだ!!」


 船の甲板、前部の中心上には投石器が1基備え付けてある。

 だが、今はその傍に水夫はいない。


「ユーリア嬢はそこから動くなよ。それとも、船室に隠れとくか?」


 ニヤリと笑って問う船長に、こちらも笑みを返す。


「大丈夫よ。何なら切り込み隊に参加してもいいわよ?」


 それを聞いて大きく笑う船長。


「まったく、大した度胸だ。これならイングリットと気が合うのも納得だ。さて、そろそろ矢が来るぞ!操舵手、左舷からだな?よし、左舷、櫂収納準備!!」


 見る見るうちに後ろの船との距離が迫り、竜頭船の乗員が矢を放つのが見える。

 私は『科戸風の命』にそれを逸らす様命じると、矢は途中であらぬ方へと向きを変える。


「ユーリア嬢の魔法か?有難い。副長、斬り込み隊は任せるぞ。まず奥の船を制圧して、それから手前のだ。」


 最早、手前の船の船員の顔がわかるほどに近づいていた。

 相変わらず矢を撃ち続けてくるが、こちらに届く物はなく、射手たちの当惑が見て取れる。

 あちらの水夫は…ほとんどが上半身裸で、つけていても革チョッキ程度だ。

 まぁ、暑い国の出身だからなぁ。

 それに対して、こちらはほとんどの水夫がいつの間にか革の鎧を装備していた。


「よし、左舷櫂収納、総員衝撃に備えろ!盾を頭上に、おらっ、ぶちかませ!!」


 衝撃と共に、左舷側が手前の竜頭船の右舷側をこすっていく。

 相手の櫂は半分ぐらいが折れたが、残りは持ち上げられ難を逃れる。

 そしてその櫂がこちらの船の舷側に振り下ろされる。


「おら、しっかり耐えろ!本命は次だぞ!!」


 船長の激励の中、竜頭船を追い抜き、次の獲物に向かう。

 振り向けば、櫂をへし折られ、混乱している船の中ほどに村人らしき人影が見えた。

 待っていなさい、すぐに助けるわ。


「よし、切り込み用意!」


「行くぞ野郎共!!」


 船長の号令の後、副長の気合が飛ぶ。

 奥の竜頭船が見える右舷に集まり、盾を頭上に掲げる船員達。

 対して海賊達は逃げるのを諦めたのか、櫂をすべて持ち上げての迎撃体勢だ。


「ぶちかましたら櫂手2班は武装して甲板へ。」


「櫂手2班了解!」


 船内への扉からイングリットが首だけ出して答え、すぐにそのポニーテールと共に引っ込んだ。

 さぁ、いよいよよ!


「覚悟決めていけよ!そら、ぶちかませ!!」


 次の瞬間、船が大きく揺れた。




 腰を落として衝撃に耐え、揺れが弱まった所で身を起こした。

 船の右舷側では、乗り込もうとする船員を、海賊達が櫂を振り下ろして阻んでいる。

 そしてそれに対して、こちらの櫂手も櫂を叩きつけて守りを崩そうとしている最中だ。

 ふむ、このままじゃ埒が明かないわね。


「船長、援護します。」


 私はそう叫ぶと、『凍える大河(フローズンリバー)』を引き抜いて右舷側へ駆け出す。

 そして一番こちらの戦力が厚い箇所を確認すると、それに対する海賊達に狙いをつけた。


『奴ら打ち抜け、氷の矢よ―――マルチプルターゲット・フリーズアロー』


 フォースアローの6人分の対象拡大と冷気属性付与。

 久しぶりに精神力をごっそりと持っていかれる感覚に、足元がふらつくがぐっと堪える。

 だが、その甲斐はあったようだ。

 対象となった海賊達は、ある者は腕を凍りつかせ、またある者は冷気に凍えて動きを鈍くし、またある者は冷気に視界を塞がれその場で膝をつく。

 うわ、顔面に直撃を食らって気道が塞がれたのか、甲板に倒れてもがいてるのもいる…流石にアレは敵ながら同情するわ。

 それに対して船員達はこれ幸いと一点に押し寄せて海賊達の防御線を突破、氷の矢を食らった手負いの海賊達を容赦無く仕留めた後に、甲板上のそこかしこで無事な海賊と白兵戦を繰り広げている。

 こちらの船員達はカトラス中心なのに対して、あちらは斧を使う者が多い。

 確かあの形状は…相手の船に乗り込むときにも使える物だった筈だ。


 だが戦いの趨勢は最初の時点では拮抗していたが、既に決定的にこちらに傾いている。

 そしてこちらの船室からは、今尚手の空いた櫂手が次々と飛び出してきている。

 これは…制圧も時間の問題ね。


 そんな事を考えながら、もう使うことはないかと『凍える大河』を鞘に収めていると、イングリットも船室から飛び出して来る。

 だが、甲板に上がった彼女の表情はすぐに驚愕に歪み、その喉からは警告の叫びが放たれた。


「衝撃に備えて!!」


 次の瞬間、斧犀号は衝撃と共に激しく揺れ動いた。


デル・シールの海賊≒南国バイキング


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読んでいただき、ありがとうございました。

次の話を楽しみにしていただけたら、幸いです。


ご意見、ご感想などありましたらお気軽にお寄せください。

評価を付けていただければ今後の励みになります。

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