2-03 侍女と覚醒
神暦720年 王の月18日 岩曜日
3人で食堂に向かう。
少し早めの時間帯とはいえ、食堂には…ぱっと見で50人程度は居るだろうか?
主に女中が中心の下級使用人や鎧姿、鎧下姿の騎士や従騎士で混雑していた。
見かけない侍女たちは、今頃は仕える方の食事の対応で大忙しなのだろう。
「とりあえずトレーを持って、あっちの列に並んで受け取りね。量の増減や、具材の増減はある程度なら聞いてもらえるけど、やりすぎると嫌な顔をされるわね。」
立ち止まって説明をするナターシャを他所に、マリエルは一目散に列に並んで、こっちを手招く。
私達は顔を見合わせ噴出すと、その後に続いた。
「まぁ、メニューは大抵が具の多いシチューに季節の果物、後はパンね。たまに甘い物が出るときがあるけど、何故か全員に行き渡らないから早い者勝ちね。」
説明の後半で、マリエルが顔を背けてあらぬ方を見ている。
さては、甘い物が出た時には何度も並ぶ口だな?
数の多い女中や似た格好の侍女ならともかく、ローブ姿の魔術師見習いなんて目立って仕方がないだろうに。
「飲み水は最近はコムナ川の支流から上水を引いてるからきれいだけど、昔の本流の水を使っていた頃の名残で自家製のエールなら飲み放題よ。」
彼女の説明に食堂を見回せば、厨房女中の後ろに柄杓の置かれた樽と、水差しがいくつも置かれている。
そんなこんなのうちに自分たちの番が来たので、順番に厨房女中に盛ってもらう。
私はシチューとパンを多めに。
ナターシャは特になし。
マリエルは『シチューの人参なしで』と言った結果、年配の厨房女中に「そんなんじゃ大きくなれないわよ!」と叱られる事になり、ごっそりと人参を盛られて涙目になっていた。
「ううっ、酷いわ。ここまで人参を選り集めれるなら、人参を外す事だって出来る筈よ…。」
8人掛けの長テーブルで、私の正面に座り相変わらず涙目でシチューをつつくマリエル。
私と私の左に居るナターシャは我関せずで食事にかかっている。
うん、大人数を相手にするだけあって、豪快な大鍋料理だが味は悪くない。
利用者に騎士や貴族の令嬢が混じるだけあって、材料もそれなりの物を使っているようだ。
もっとも、贅沢に慣れ、金のある騎士なら巡回のついでに外で食べるのだろうが。
水差しでもらって来たエールは水代わりに飲まれていたとあって、苦味も酒精も弱めで、多少物足りなくはある。
美味しいお酒を飲もうと思ったら、外に繰り出すか外から持ち込むしかないか。
「おやお姉さん、見ない顔だね。新しく入った人かい?」
声に振り向けば、そこには1人トレーを持った少年…の面影を残した青年がいた。
きれいに整えられた顎まで垂れるサラサラの金髪、端正な顔ににこやかに微笑を浮かべこちらの反応を待っている。
咀嚼していたシチューの具を飲み込み軽く会釈すると、彼は背の高い身体をかがめ、大げさな身振りで自己紹介を始める。
トレーを片手に持ったままで…器用な事だ。
「やぁ、はじめまして。僕はニコラス・マトー、この家で従者をやっているんだ。君の名前を聞いてもいいかい?」
大仰なしぐさに釣られ、口を開きかけたとき、横から伸びてきた革長靴が彼の腰を押しのける。
「おいコラ、ニコル。この御方にちょっかい出すんじゃねぇ。」
押されてよろけるニコラス。
だが、数歩で立て直した所を見ると、一応加減はされていたようだった。
食事をひっくり返してももったいないしね
その横を見れば、そこには見覚えのある顔が…。
がっしりとした体格に、どこか幼さの残る朴訥そうな顔…。
「ええっと…テオドールさん?一日ぶり…意外とすぐに会ったわね。」
私が声をかけると、彼は凄むために歪めていた顔に満面の笑み浮かべ、
「はっ!ヴァレリー騎士団従騎士、テオドール・ジャリエであります。覚えていただき、光栄であります!」
と背筋を伸ばす。
「何だよ、堅物のテオが珍しくしゃしゃり出てくると思ったら、知り合いかよ。」
腰をさすりながら、ニコラスが不満げに言う。
「お前はもう少し相手を見て声をかけろ。お嬢様の滲み出る気品が分からんのか?」
テオドールさんが息巻く。
うわ、やめて!この私に気品とか!!
「あ?あっ何だ、リボン付きか。女中とおんなじお仕着せだから気づかなかった。」
と、こっちはこっちで私が新入りの女中だと思っていたようだ。
何も知らない新人女中相手に後腐れなく火遊びでも…と考えていたのだろうか?
「ドンファン坊やのニコルに堅物のテオじゃない…ユーリアと知り合い?」
「そっちは山出しのナターシャに魔術師のちっこいのか。お嬢様、この者達とは?」
うん、丁度私が挟まれる感じだ。
そんな間にも、席を立ったマリエルが「お前もか!お前もか!!」とテオドールさんの足に蹴りを入れ続けてるが、気にも留められていない。
「ナターシャは同室でマリエルは同郷。テオドールさんは街で知り合ったわ。」
「おお、左様ですか。しかし、ナターシャのようなガサツな女が、お嬢様に悪い影響を与えなければよいのですが。」
「そう?ユーリアとは結構気が合う所が多いし、なんだかんだで同類だと思うんだけど?」
ナターシャはテオドールさんの嫌味にも涼しい顔だ。
「な、そうなのですか、お嬢様?」
テオドールさんが驚き振り向く。
物盗りを撃退したり、衛士とも気さくに話すところを見ているはずなんだけどな。
ひょっとして、伯父上の関係者とのことで記憶の中で美化されているのだろうか?
「まぁ、私だって辺境の田舎者で、お転婆じゃ人後に落ちない自信はあるわ。」
意味もなく胸を張ってみる。
本当に意味もない。
「そ、そうなのですか…。ところでお嬢様、私のことはよろしければテオとのみお呼びください。」
「そう?でも貴方のほうが年上でしょう?」
「いえ、お気になさらずに。そうしていただければ幸いです。」
「そう。だったら、私もユーリアでいいわ。それに、ここだと貴族の令嬢も多いし、お嬢様といえばナターシャだってそうでしょ?」
「まぁコイツは…別に構わないと思うのですがね。」
「ならテオ、ついでに僕も紹介してよ。どうせだから、一緒に食事でもしながらさ。」
そう言って、ナターシャのさらに左の席に腰を下ろすニコラス。
それを見て、テオドールも一言断ってからマリエルの隣に座る。
「えー、それでは…コイツはニコラス。見ての通りの顔をした、軽薄なやつです。」
「うわ、ひっで。でも間違っていない所がどうしようもないな。」
言われた本人はへらへらと笑っている。
「まぁ従者をやっているだけあって見た目もいいし、足腰も強い。護身程度なら剣も使えます。」
従者といえば、主人の乗る馬車に従って走ったり、伝書人として離れた場所にいる相手に走って手紙を届けたりもする。
距離があったり急いだりする場合は早馬を使うが、場合によっては山賊の襲撃などにも対処する必要があるし、主人に付き従うときは護衛も兼ねるから最低限の剣の腕は必須だろう。
剣の腕と聞いて、ニコラスにも多少の興味を覚える。
「ふーん。じゃぁ騎士団の修練にも参加しているの?」
「いや、あれは無理だって。月1回ぐらいの屋敷の使用人向けの訓練だけだね。」
ニコラスが慌てて首を振る。
なんだ、参加してないのか…というか、そんな講習があるなんて初耳だ。
まぁ私だったら月1程度じゃ物足りないだろうけど。
「ユーリア様も参加されるので?」
まだ言葉が硬いな…まぁ、堅物呼ばわりされてるんだし、しょうがないのかな?
そのうち慣れるでしょう。
「私は…参加したいけど、したらしたで休みを減らされそうね。」
どうせだったら騎士団に混じってしっかりとやりたい。
「我々従騎士もよく指南役の補助として駆り出されるので、参加されるのでしたら手ほどきなどいたしますよ?」
従騎士とはいえさすがに騎士団に所属するだけあって、お嬢様に剣で劣るなどとは思いもしないのだろう。
「ええ、そのときはお願いするわね。」
考えをおくびにも出さずに、にこりと微笑む。
これは手合わせが非常に楽しみだ。
「うわ、こえー。なんかあのお嬢様の笑顔がすごくこえー。」
テオドールとの会話の横で、ニコラスが身を引きつつ、マリエル達と声を潜めて話す。
「うん、あれは暗い喜びに目覚めた時の顔よ。故郷では、幼馴染の胸を見つめながらあんな顔をしていた。ナターシャも気をつけて。」
「それってどうなのよ…とは思うけど、身の危険があるの?やっぱり私も警戒するべき?」
3人でなにやら話している。
まぁ仲が良いのはいい事だ。
「まぁ影で何言われようと別に構わないんだけどね…。とりあえず用心したほうがいいとは自分でも思うわよ?」
その、何だ。
以前どこぞの酒場で酔っ払いが「女の子のおっぱいには、夢がいっぱい詰まっているんだーっ!」と叫んでいた事があったが、自分もそう思う。
自分にとっては悪夢に近いものかもしれないが。
その状況に陥ると、自分がよく分からなくなるときがある。
まぁ用心するに越した事はないだろう。
「あー、そう…なの?」
うん、ナターシャが引いている。
まぁ、彼女の性格だとそれも長くは続かなそうだが。
色々と駄弁っているうちに料理も冷めてきた。
あれこれと話しをしながら、皆が食事を片付ける。
まぁ食堂も本格的に混んできたし、そろそろ席も埋まりそうだ。
何時までも席を占有しては迷惑だろう。
「ま、とりあえずはこれからよろしくってことで。」
席に着いている皆を見回すと、皆が苦笑半分で頷いている。
皆一癖も二癖もありそうな連中だが、毒にも薬にもならなそうなお嬢様の仲良し集団に付き合わされるよりかは退屈せずに済みそうだった。
食堂でテオ達と別れ、宿舎に戻る。
次は入浴だ。
既に日は落ち、廊下の所々にキャンドルランプの明かり灯るが、さすがに数は少なく進行方向の目印程度にしかならない。
「着替えを持って私も行くから、浴場で合流ね。先に上がらないでよ!」
マリエルはこちらの部屋に寄って凍える大河を預かった後、そう叫んで自室に着替えを取りに戻った。
いったい着替えの用意にどれだけの時間をかけるつもりなのだろう。
少し呆れながら私達も着替えを用意し、キャンドルランプ片手に廊下に出て、渡り廊下を向かおうとしたところで、相方に声をかけられる。
「ユーリア、こっちよ。食堂を通って、手にもった着替えとか風呂上り姿とかを注目たくはないでしょ?」
言われてみれば確かにそのとおりだ。
そういえばこっちの階段は使っていなかった。
私はくるりと身を翻して、ナターシャの後を追う。
宿舎の一階は…階段前と東西の廊下に1箇所ずつしか明りがないため非常に薄暗い。
上級使用人が使う2階には東西2箇所ずつあったのだが…これが格差か。
1階の使用人棟との間は吹きさらしとなっていて、外を通る場合、建物を大回りせずとも行き来できる。
これも非常時の用兵を考えての事だろうか?
なんとも徹底している。
その吹きさらしを抜け、使用人棟への扉を開いたときに、丁度そのむこうから手をかけていたのか、開かれた勢いで扉の隙間から1人の女中が飛び出してきた。
前のめりに泳いだ上体、右手は扉のノブから外れ、左手には大量の布類を抱えていた。
スローモーションで流れる視界の中、驚いた表情の女中と視線が合う。
そしてその表情が、これから訪れるであろう痛みに備えて歪んだところで、私は咄嗟に持っていた着替えを放し、しゃがみながら右腕で彼女の胸前を下から掬い上げた。
そして彼女の胸前を支点に身体を返し、背中から私の胸に収める。
ぐ、肩甲骨が鳩尾に…。
私は涙を軽く浮かべながら彼女に無事を尋ねるが、その言葉は「ダ、ダイゾウブ?」としか出なかった。
「えっ…あ、大丈夫です。」
そばかすの残ったふっくらとしたかわいらしい顔に、驚きの表情を浮かべ私に抱きすくめられる女中…薄い栗色の髪の毛を三つ編みにして、それを後頭部に纏めている彼女も少し涙目だ。
「二人とも大丈夫?大丈夫なら、早めに落とした服をハタいたほうがいいわよ?」
ナターシャが忠告してくれる。
出来れば拾うのを手伝って欲しいが、彼女の両手も着替えとランプで塞がっている。
ここは吹きさらしの通路だ。掃除してあるとしても、屋敷内に比べれば砂埃も多いし、風が強ければ枯葉も飛んでくるだろう。
「悪かったわね、急に開けて。」
「いえ、私も気づかなくて…。」
一旦ランプを地面に置き、彼女の持ち物を拾う。
ランプがあると、体の陰になったところはかえって暗くなる。
なので女中用のお仕着せ…と思い手に取ったら、肌触りが違った。
一緒に落ちている白いリボンからして…客間女中用と掃除女中用のお仕着せ、それも3着分ぐらいだ。
「あら、これは?」
私が尋ねると、彼女は慌てたように落としたものを拾い集める。
そして一言詫びると、使用人棟に駆け出していった。
「え、今のは?」
私が状況を把握できずに呆然としていると、ナターシャがささやく。
「あー、彼女ね、一部の上級使用人にいいように使われてるのよ。大方、洗濯物を取って来いとか言われたんでしょうね。私としては気に入らないんだけど、相手が子爵令嬢を中心としたグループだから、あまり強く出れないし…バートン夫人にも報告は上げてるんだけどねー。」
なんとも不満げなナターシャ。
故郷には弟妹が多いといっていたので、保護者的感覚で見ているのだろう。
「あーあ、何とかしてやりたいんだけどねー。」
と言いつつ、ちらちらとこちらを見ている。
まったく、わざとらしい。
「まぁ手は貸してもいいけど、そのうちね。状況もよく分からないし、何より新入りじゃ碌に取り合ってもらえないわ。」
とりあえず、手を貸す事だけは約束する。
まぁ、困っているようだったら私も何とかしてあげたいとは思う。
まったく、自分の面倒も見れずに、何のための行儀見習いだ。
それだったら私もアンジェルを連れてきたのに。
気を取り直して落とした着替えを拾い上げ、浴室に向かった。
「ここが浴室。男子用の浴室は東側だし、リネンへの廊下との境には扉があるから、廊下から宿舎への扉の間は男子立ち入り禁止よ。」
扉を開けて中に入ると脱衣所になっており、入り口側の壁には棚が据え付けられ、蔓で編まれた脱衣籠が置かれている。反対の壁際には洗面用の流しもある。棚は…20程度か。
「洗面所はここと宿舎の厠のところね。朝は混むから、寝る前に水差しに水を汲んでおいて、洗面器で済ますのがおススメね。」
ちなみに洗面所の水は掃除女中が昼間に汲むらしい。
ランプの火を吹き消し、早速服を脱ぐ。
帰るときは脱衣所備え付けのランプから火をもらおう。
下着姿になり髪を解き、下着も脱ぎ去る。
すると、横から感心したようなため息がかかる。
「私もよく動くほうだと思ってたけど、貴女はそれ以上ね。」
ナターシャを見ると、彼女はこちらの身体をじろじろと眺めていた。
彼女の身体は痩せても太ってもおらず、だが引き締まった健康的な肉付きをしている。
胸は身体の割には大きいと言える…くっ。
「引き締まって鍛えられてるから…腰の細ささえなければ、まるで少年の身体のようね。」
彼女は含み笑いを浮かべながら、こちらの腹筋をつつく。
畜生、こんな腹筋よりも胸が欲しい。
浴室に入り、洗い場に座る。
湯船から洗い場の前まで樋が伸びていて、樋についた仕切りを開ける事で湯を出し桶にためてかぶる。
そして備え付けの煮詰め椰子を泡立てて、身体をこする。
さすがに備品で石鹸は置いていなかったか…。
お金持ちのお嬢様なら自前で用意するかもしれないが、私はこれで十分だし、横を見ればナターシャも煮詰め椰子を使っていた。
と、ナターシャと反対側の洗い場に、マリエルがやってきた。
少女のような痩せた身体に、成長途中の小さなふくらみ…数年前に見たままだが、私よりもあるのが妬ましい。
彼女は掛け湯もそこそこに身体を洗い始めるが、よく見れば綿ぼこりが髪の毛についている。
「マリエル、頭に埃がついてるわよ?よく洗い流しなさいな。」
私の言葉に、マリエルは首をかしげる。
「えっ、埃…?ああ、三日前に本棚を掃除したから、その時のね。」
ちょっと、今なんて言った?
「貴女…いくら魔術師と言っても、若い娘なんだから毎日身嗜みを整えなさいよ。」
「あはははは…ユーリアからお小言を貰っちゃうとはねぇ。まぁ自分でも駄目だとは思うけど、課題とかお師様の言いつけとかこなしてると時間が不規則になっちゃうし、集中しすぎてごはんを食いっぱぐれたとかも普通にあるからね。」
「そんなんじゃ、身体壊すわよ?」
「んー、まぁそうなんだよね。でもこれからは、なるべくユーリア達と食べるようにするわよ?」
まぁそれなら大丈夫か?
食事の際にはなるべく声をかけるようにして、いざとなったら引きずってでも食事に連れて行こう。
彼女は軽いからそれも楽だろう。
身体と髪を洗った後、洗い髪を頭上で纏めて、私は湯船に浸かっていた。
身体の前で両膝を抱き、口元まで湯に沈め、浴室の中を眺める。
ナターシャの張りのあるおっぱい。
調理長の形は崩れだしているが暴力的なおっぱい。
客間女中の控えめだが形の整ったおっぱい。
洗濯女中の躍動的で豊満なおっぱい。
マリエルの、成長が止まった…すこし歪なおっぱい。
下働きの少女達の発育前のおっぱい。
歳若い料理女中のまだ発育途中のおっぱい。
数多くのおっぱいが私の前を通り過ぎてゆく。
神は何故人の胸に大小を授けるのか。
何を代償にすれば、私はそれを手にすることが出来るのか。
どれ程までこの手を伸ばせば、それを手に入れることが出来るのだろうか。
「あん、ちょっとユーリア!?突然何よ?」
私は無心にそれを揉み続ける。
「あー、ユーリアが壊れた…。」
どれだけ練れば、柔らかなそれを手にすることが出来るのか。
「あらやだよぉ、この娘ったら。こんなおばさんの揉んでも、張り合いもないだろうにねぇ。」
どれだけ捏ね上げれば、それを形作れるのか。
「な、何をなさるのですかっ!?ひゃんっ!!」
どれだけ鍛え上げれば、それを作り出せると言うのか。
「ちょっと、次は私!?んふっ!」
どれだけ慈しめば、それは育つのだろうか?
「わっ、今度はこっちに来た!って、ユーリア、痛い!」
ああ、わが神、わが神、どうして私を見捨てられたのですか。
「わたしたちのほうには来ないねー。」
「わたしたち、まだおっぱいないからねー。」
「ちょっと、騒がしいけど何事?」
「ポーレット、ひゃっ!来ちゃ駄目、逃げて!!」
「ふふふふ…ふははははははっ…ひゅーほほほほほほほほほほっ!」
何時しか私は、涙を流しながら笑っていた。
―――女の子のおっぱいには、夢がいっぱい詰まっているんだーっ!
そしてそのまま、何時までも笑いながら、その求めるままに夢へと向かってその手を伸ばしていた。
その日、ヴァレリーの執政館女子使用人浴場にて、一匹の魔物が生まれた。
その魔物は、数多の乙女達を餌食に暴れまわり、暴虐の限りを尽くしたが、神の雷にて退治され、世界に平穏が訪れた。
だが、いつの日か魔物は再び世に解き放れ、再び世界に厄災をもたらすだろう。
―――タレイラン家魔術師見習い、マリエルの日記より抜粋。
==============================================
設定:暦について
1年…12か月、各30日
1月 炎の月
2月 知恵の月
3月 玉座の月
4月 王の月
5月 剣の月
6月 技の月
7月 官の月
8月 大人の月
9月 子供の月
10月 水の月
11月 供物の月
12月 聖者の月
曜日…1巡り(1週間)は8日
光曜日
炎曜日
水曜日
森曜日
風曜日
岩曜日
地曜日
闇曜日
となります。
読んでいただき、ありがとうございました。
次の話を楽しみにしていただけたら、幸いです。
ご意見、ご感想などありましたらお気軽にお寄せください。
評価を付けていただければ今後の励みになります。
誤字脱字など指摘いただければ助かります。