父の涙
誰にでもある青臭い思い出。
二十歳のころ、私の心無い言葉で父を泣かせてしまった。
今更そのことを話題にもできず、未だ謝ることができない。
私が子供の頃から、父はとにかく出張が多く、ピーク時は年の1/3が不在だった。
当時一人暮らしをしていた私を、やはり出張のついでに父が尋ねてきたので、長年ずっと抱いていた疑問を父にぶつけた。
「お父さん、浮気したことあるよね?子供の頃からずっとそうじゃないかって思ってたんだ。
ううん、大丈夫、わかってるから!お父さんのことだから面倒になる素人には手を出さないってことくらい。
もちろん一人の人と長くなんて思ってないよ!
その場その場で後腐れない、接待で会った水商売系の人だよね!!」
今まで慌てた姿など想像もしたことのない父の、本気の動揺ぶりを見たとき初めて自分の失敗に気付いた。
本当に「冷や汗」というのはあるものだなぁ……、としみじみ思う私の前で、「今はお母さんだけだから!お母さんだけだから!」と繰り返すことしかできない父の目には、うっすら涙があったように思う。
まだまだ娘の私に夢を持っていただろうに、男親の持つ「娘幻想」と一家の大黒柱たる誇りを、完膚なきまで叩き壊してしまった。
愚かな好奇心に負け父に詰め寄ってしまったが、やはりあと5年は胸のうちに潜めておくべきだったと、今も後悔している。
私がやさぐれたのって、最近のことじゃないんじゃ……( ̄▽ ̄;)
こんな娘になっちゃってごめんね、お父さん。
それでも父はイイトシぶっちぎりの娘がかわいいようです。