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おせっかい姫は嘆かない  作者: 高月望
4/11

見た目は大事です


「まずは見た目からね」

 おせっかい姫こと春川先輩は、僕のことを頭の先から足の先までをじっくり観察するように見ると、そうつぶやいた。

 確かに今の僕の姿はあまりいいものではないだろう。髪の毛は伸びたい放題で、入学式から今までほったらかしだ。特に前髪が伸びていて、顔を隠している状態だ。さらに制服は大きくなるだろうということで、少し大きめの制服を購入したため、ダボダボ感は否めない。

「友達作りだけじゃなしに見た目は大事だよ。第一印象が良くないとだめなんだから」

「はぁ、そうですよね…それなら明日にでもちゃんとしてこようかな…」

「明日じゃダメ。善は急げって言うでしょ」

「なら、どうするんですか?」

「ふふふ、秘密兵器がいるわ。だから大丈夫、ね、友」

 不敵な笑みを浮かべ、春川先輩は付き人のように後ろにいる立花先輩に声をかける。立花先輩は呆れた顔で、僕に近づいてくる。そしてまじまじと僕を見つめる。かなり近いので僕は、ドキドキしながら固まっていた。ある程度見終わると、立花先輩はバッグをとりだした。

「大丈夫そう?友」

「ああ、すぐにでもできるよ」

 立花先輩はバッグの中をごそごそとかき回しながら、何かを探している。そしてお目当ての物を見つけたようで、何かをバッグから取り出した。それはハサミのようである。

 まさかと思い、僕は後ずさるが、いつの間にか後ろには春川先輩が来ていた。これでは逃げることができない。

 ハサミをチョキチョキいわせながら、立花先輩が近づいてくる。

「あの~まさかとは思いますけど、ここで切るんじゃないでしょうね」

「ここじゃなければ、どこで切るんだ」

「やっぱり~」

「大丈夫だよ。友の腕は世界一だから」

 春川先輩はそう言い、僕の体を羽交い絞めにする。これで僕は身動きが取れなくなった。羽交い絞めされているので、春川先輩と体が密着する。胸の感触を背中で感じ、僕は赤くなる。

「なに顔を赤くしてるんだ?奥村、あきらめろ。動くと耳まで切るぞ」

「…はい…」

 僕はおとなしく、抵抗することをやめた。すると春川先輩は満足したのか、僕の体を離してくれた。僕は言われるがまま、おとなしく硬直していた。くしとハサミを持った立花先輩が近づいてくる。僕は目をつぶる。

 じょき、じょき、じょき……

 ハサミが僕の髪を容赦なく切っていく。さようなら、僕の髪……

 数分後。

「よし、出来たぞ」

「どれどれ~わぁ、いいよ、すごくいいよ、奥村くん」

 僕は恐る恐る、目を開ける。春川先輩はうれしそうにしているし、立花先輩は満足そうにうなずいている。いったいどんな風になったのだろう。不安がよぎる。すると、立花先輩がバッグから鏡を取り出し、渡してくれた。僕は鏡をのぞきこむ。

 そこには、前髪が切られたことにより隠れていた顔が姿を現した、自分の姿が映っていた。さらに、伸び放題だった後ろの髪もある程度切られて、すっきりした感じになっていた。こうして、全体的に長めだった僕の髪は、程よい長さになり、いい感じになったのである。

「どうだ、奥村。これでいいだろ」

「はい!ありがとうございます」

「よかったね、奥村くん」

 春川先輩は自分のことのように喜んでいる。その様子に僕も照れながら喜ぶ。これで友達づくりの第一歩が始まったのだ。

「それにしても立花先輩、器用ですね」

「そうだよ、友は何でもこなせちゃうすごい人なんだよ。だから、私もよく助けてもらうんだ」

「別に大したことじゃないよ」

 そう言って立花先輩はバッグに道具をしまう。なぜかわからないが、彼女がかっこよく見える。再び、彼女はバッグから新たな道具を出してきた。あのバッグは何でも入っているのだろうか。不思議だ。次に取り出したのは針と糸だ。

「奥村、脱げ」

「はい?」

 いきなり何を言うんだこの人は。すると立花先輩が急に襲ってきた。

「ぎゃあ~」

 抵抗むなしく身ぐるみをはがされてしまった。もうお嫁にいけない…

「制服のすそ上げをするんだよ。アイロンがないから、不格好になるかもしれないが、まぁ、今よりはましになるだろ」

 そういうことか…下着姿の僕は黙って立花先輩の作業を見つめる。春川先輩はというと、僕のほうを見ないように目をそらしていた。きっと恥ずかしいのだろう。

 そしてまだ数分後。

 僕はすそがぴったりになった制服を着る。

「うわぁ~ぴったりだ」

「これで見た目は完ぺきだな、ほのか」

「そうだね、準備は万端だね」


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