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第七話 西沢家の日常 

朝というものはなんとも言えぬ気だるさが全身を襲う、俺だけではないと思うが。

そういう時は新聞を取りに外に出て新鮮な空気を吸い、気分を変えてからソファーで新聞を読む、これが俺の朝のにちじょ......


『あっ!お姉ちゃん、おはよ~』


剣道着に防具、面を着けた妹だったものが綺麗な正座をして座っている…新聞読もっと。

あっ、犯人捕まったんだ...。


『え!いやいやいや!ほらほらほらほら!あるでしょ!...えっ!ちょっ!何その格好!...てきな...』

『・・・』

『もう...まだ怒ってるんでしょ...昨日お姉ちゃんのモンブランに...桂馬刺しちゃったこと...』


バン!と新聞を閉じる。


『まぁ、食べられなくなった訳じゃないから、別にいいけどさぁ...』

『わぁ...』


凛が嬉しそうな顔をする。


『て...よかないわ!人が楽しみにしてたモンブランに!なになに!何なの!意味わかんないよ!何で桂馬刺しちゃったの!』

『いや~カッコいいかなって...』


新聞を棒の様に丸める。


『面!』

『っぅ!』


頭を押さえている凛を横目に、冷蔵庫を開け、奥の方にある「ドリームラーメン」と書かれた箱を取り出し自分の部屋に向かう。

ったく...バカ凛、1日10個限定のモンブランだったのに...凛も高一になったんだし、人の痛みくらいわかると思うのに...まぁ、今の俺はそんな妹の愚行を許そうではないかというキャパを持ち合わせているので、ある!

バタン!と扉を閉め、「ドリームラーメン」の箱を開ける。

何故なら、密かに隠しておいた1日5個限定のショートケーキがあるからで・・・


『王ぉぉぉぉ手ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


本来イチゴが置かれている場所に将棋の王将が置かれている。


『羽生ぅぅぅぅぅ!!』

『羽生!!羽生!!羽生!!』


イチゴ!昨日の夜から楽しみにしていた1日5個限定の!!俺の!!俺の!!イチゴ!!

俺は部屋から飛び出し、一階へと猛スピードで向かった。

階段を三段上から飛び、リビングに飛び込んだ。一回頭から回転し、起き上がるが、勢いは止まらず壁に肩がぶつかりようやく止まる。


『イチゴは!ここのポゼッションのスウィーーーーーーツはああああ!?』


凛は流し目になり手を大仏の様に構えた。


『フッ......ナームー』


ソファーの上に置かれた棒になっている新聞を再び丸める。


『胴!』

『っぅ!』


丸めた新聞を落とし、王将が刺さったケーキを片手にその場に座り込む。


『うわーーん、もうバカ凛、イチゴの無いケーキなんて、もはやパンじゃん!うぅ、うっく、ただの、甘い、パンじゃん!うっく、うぅ、パンッ...なって......』

『ハッピバースデイトゥーミー』

『ハッピバースデイトゥーミー、ハッピバースデイディア、わたし♪...ハッピバースデイトゥーミー』


ケーキの上の王将を凛が持ち上げると紙が現れ、そこには「誕生日おめでとう!!!私」と書かれていた。


『凛...っ』

『お姉ちゃん...』


床に落ちている丸めた新聞を掴み、凛を叩く。


『っぅぅ!』

『あんた誕生日じゃないじゃん!』



****


『あっ、お姉ちゃん、忘れてたけど、お母さんが「制服を作ってきなさい」って言ってたよ』


あの後凛にケーキを買わせにいって、何とか和解、買ってきたときの「許してヒヤシンス」が納得いかないが...。


『うへぇー...本当に転校生扱いにする気なんだ...』

『そりゃ~今のお兄ちゃんはお姉ちゃんだからね~』

『・・・っ!お祓いすれば元に戻るとあれほど......はぁ、もういいや...それじゃ、ちょっと行ってくるよ...』

『うん!いってらっしゃい!』




家から歩いて数分の所にある学生服専門店「学生服の厄」...何か...すごく不幸になりそうな店名だな...とりあえず入るか...。


『...いらっしゃいませ......』


店内には色々な学校の学生服がマネキンに着せられて展示されている。

マネキンの間からエプロンを着けた我が部の部員、八雲由紀が相変わらずの不機嫌顔をして現れた。


『相変わらずやる気無さそうな挨拶だな、八雲君?』

『うぇ!?ちょっ!?な!?何で部長がお店に...!?』

『単純明快、ここの店の常連ってだけだが?そんな事より、制服を作って貰いたいのだが』

『制服?どうしてだ?』

『いや、ほら、俺男だったからさ、女物の制服なんて持ってないだろ?、だから作りに来たんだが...』

『...変態......』

『あ?何か言ったか?』

『別に...ほら、それじゃ色々測るから、こっち来て』



『どこか破れたらうちに来るがいい、直してやる...一万円でな...』

『高っ!...まぁ、また寄らせてもらうよ...』


はぁ...今日は何か色々疲れたな...学校の事を思うと更に......はぁ...帰ってケーキを食べよう...

制服の入った袋を片手に、家へと帰る。




家に戻り、すぐにケーキが入った箱を冷蔵庫から取り出し、箱を開けると...

ショートケーキに...桂馬が刺さっている...


『ゆ...許してヒヤシンス...』

『しゃらくせーよ!!!』

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