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第一二話 主人公洗脳物語 

今、一体春斗くんは何をされているのだろうか?

水蓮寺くんと村紗くんに顔の原型がわからなくなるまで殴られ続けているのか、もしくは八雲くんに毒電波を飛ばされて苦しめられているのか・・・両方か...。

僕はというと、何処から持ってきたのかわからない椅子に縛り付けられ、これまた何処から持ってきたのかわからないノートPCでヘッドホンをつけられ大音量でホラー映画を見させられている。ちなみに多々良くんは僕が後ろを向かないように僕の顔を固定している。


『あっ、映画終わったよ?』

『じゃあ、次はこれです!』

『いや、助けろよ!!ぐぁ!』




『それじゃ、次は朱祢ちゃんに質問をしようかしらね?』

『ひっ!?』


ど、どうする!?逃げようにも椅子に縛り付けられて身動きができないし、春斗くんは......くっ、他に、他に逃げる方法は...。


『逃げようとしても無駄ですよ?さぁ、洗いざらいすべてしゃべってもらいます』

『洗いざらいって...、一体ぼ...俺が何をしたっていうんだよ!』

『・・・“何をしたか”ですって?いいわ、教えてあげる!朱祢ちゃんは、朱祢ちゃんは!春斗と二人っきりで抱き合ってたじゃない!うわーん!!』


水蓮寺くんが村紗くんに抱きつき「朱祢ちゃんが汚されたー!!」と嘆いている。そんな大袈裟な...それに実質的には男同士だったからセーフ(?)でしょ。


『ていうか、抱き合ってたんじゃなくてキスをしてたんだけどね...』

『『『『え?』』』』

『紅、お前はなんていい子なんだ...がくっ...』

『呼ばれて飛び出て、どうも!雛森伊折です!』

『うわ!なんか出た!』


部室の窓から貞子のようにぬるりと雛森さんが入ってきた。あれ?ここ4階...。


『ふっふっふっ、あかねっち~、いや、ブラッド!すべて聞いたっすよ~』

『だから!ブラッドって呼ぶなって!』

『あ!朱祢ちゃん!』

『え?』


「あ!」と口を手で塞いでも時すでに遅く、雛森さんが勝ち誇った顔で僕に顔を近づけてくる。


『あっれ~?どうしてあかねっちがブラッドに反応してるっすか~?ん~?』


くっ・・・!ウザイ...!というか、なんでブラッドになったんだっけ?んー?......あ!そうか、【こう→くれない→あか→赤と言えば血→ブラッド】・・・しょうもなっ!!


『というわけで!あなた達の部長は貰っていくっすよ♪椅子ごと』


雛森さんが椅子に縛り付けられた僕を軽々持ち上げ、廊下の反対方向にある動画撮影部の部室に逃げていく。


『チッ!逃がすか!!...ぶへ!?』


みんなが雛森さんのあとを追おうとしたが、床に転がっている春斗(もの) に足を引っ掻けて転んでしまった。何か、ものスゴイ音が聞こえてくるんですけど...。

僕はというと、動画撮影部へと連れてこられノートPCの前に固定させられている。


『さぁ!何で女の子になっているのか、説明してもらうっすよ』


説明って言われても...、言ってもいいのかな?・・・いいのか、別に喋っちゃダメとは言われてないんだし、それに、教えた方が僕としても気が楽になるしね。


『実は、かくかくしかじかで...』

『「かくかくしかじか」じゃわからないっす、ちゃんと説明するっす』

『あ、はい、実は・・・』





『そんなことがあったんすか...』

『ちなみに朧という悪霊が俺に取り憑いている』


事情をすべて話したからか、気持ちにゆとりができ、いつもの口調に戻る。


『“俺”...ふふ、やっといつものブラッドに戻ってきたっすね』

『紅な』

『あかねっち~』

『紅な』

『あ!そうそう、ブラッドに見てもらいたい映像があるっす』

『だから紅だって...というか、なにしてるの?』


雛森達が一斉にサングラスと耳栓を装着して、俺にヘッドホンを着けてきた。


『お、おい!何でみんな離れていくんだよ!雛森、一体何が始まるんだよ!』

『大丈夫っすよ、怖くないっすよ、ほら画面を見るっす』


たぶん何を言っても無駄だと思い、仕方なく画面を見つめる。

画面には今は亡きアナログ放送で常に流れている砂嵐が映し出されており、ヘッドホンからはとても甲高い音が右から左にいったり来たりしている。

なんでだろう...、見てても何も起こらないのに...、めがはなせない...、あ、れ...、どうしてだろう...?あたま...が...ボーッとす...る...。


『・・・』

『ふふ...ははは...』

『雛森部長...?』

『やった...やっと達成できた...!色々と状況は違えど、やっと...!ふふ...動画撮影部にようこそ...雛森朱祢ちゃん...』

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