第8話 生徒会長
「これで今すぐに決めておかないとっていう問題は終わったな。お前らが賢いおかげで問題なく決めることが出来たな。サンキュー」
球技大会の推薦競技を決め終えた後、クラス委員だの色々決めることがあったが比較的簡単に決めることが出来た。
その間、うちの担任が働いたのはまったくなかった。
ほとんど俺が頑張って決めましたとも――。
うまく話を回し時間を短縮させてすべての問題を解決させた俺が、クラスを纏め上げる立場に最適だと思ったのだろう。クラスメイトからも担任からもクラス代表になれと推薦された。
それに対して俺はめんどくさいからいやだと言ったのだが、満場一致で強制的に決定されたというわけだ。
「じゃあ、残り10分間は自由時間だ。あんまり騒ぐんじゃねぇぞ」
俺が簡単かつ最速で話し合いを終わらせたため、本当なら授業1時間分の50分を使って決めるはずなのだったが10分前には終わっていた。
意外にもクラス委員や推薦競技を決めるのが早かったからだろう。
担任である川村先生は、残りの時間を使っていつものように屋上にサボリに行くな。
「……ああ、そうだ。すっかり忘れてたぜ」
教室から出る直前、先生は思い出したかのような声を出して教卓に戻る。
そして教卓につけられている引き出しの中から封筒と小箱を取り出し……。
「蓮、これを持って2年A組に行ってくれ」
俺に向かってそんなことを言ってくる。
――はいっ!?
なんで俺がそんなことをしないといけねぇんだよ。ってか、俺の前のクラスメイトがいるクラスじゃねぇかよ!!
「ちなみに、生徒会長命令だそうだ。クラスでの決め事が終わったら、至急、2年A組にコレを持ってこいと」
「……マジかよ」
なんで俺なんだよ、他にもいるだろう。とも思ったがあの人の性格を思い出し考えるのをやめた。
生徒会長でもあるあの人は突拍子なく色んなことをしてくるから、何を言っても無駄だろうしな。
「……それにしても、なんで至急じゃないとダメなんですか?」
「さぁな、俺も詳しくは聞いてないから知らねぇ」
先生から封筒と小箱を受け取る。
怪しいものが入ってたりしてないよな、この小箱。
封筒はなんとなく大事な書類が入っているのだろうなとは思ったのだが、小箱を怪しく思いながら俺は教室を出て2年A組の教室を目指す。
≪2年A組、教室前の廊下≫
「はぁ、なんか急に帰りたくなってきた。ってか、リアルに腹が痛い」
これが嫌な予感ってやつか。
教室前廊下に来てから本当に急に腹が痛くなってきた。
「でも、俺を呼ぶってことは、俺に用事ってことだよな。あの人だから本当に用事かどうかも怪しいけど」
神経質になっているからだろう、かなり腹が痛いがそれを我慢してドアをノックする。
コンコン
「失礼します」
ノックをしてから教室に入ると、お前なんでここにいるの? 的な目を前のクラスメイト達からされた。
俺だって知るか……。
なんでここにいるのかわかんねぇもん。
まぁ、このクラスに所属している2年生で生徒会役員……それも、生徒会長になっちまうとんでも生徒会長さんに呼ばれたからだけどな。
「えぇっと、なんでしょうか? 水無月君」
声をかけてきた人を見てみると、黒いスーツを着ている女性だった。
この服はどう見たって制服じゃないから先生か。ってか、なんでこっちに川村先生はきたんだろうな。
普通は生徒と同時に上がるだろ。
他のクラスを見ても変わってなかったし、この言葉にデジャヴを感じるな。
「……すいません。ちょっとこのクラスに用事ができましてね」
「はぁ、用事ですか?」
それだけ言って、俺は後ろのほうの席に座ってる人のところに向かう。
「ちょ、水無月君!?」
そして俺を呼び出した生徒の机に封筒と小箱をいきおいよく置く。
「おお、もう終わったのか。早かったな」
「……おかげさまでな。テメェが川村先生に『水無月はリーダシップがあるからオススメしますよ?』的なことをいってくれたからな」
ある程度、生徒会長の声に近づけて言ってみる。特に理由はないけどな。
「いやいや、私が言ったのは『いやぁ、あいつの統率力は凄いですね』と褒めただけだぞ?」
「――さいですか」
つーことは、あの先生が自己解釈してそう考えただけなのか。
まったくあの先生のせいでめんどくさいことになっちまったじゃねぇかよ。
なんで、クラス代表なんていうめんどーなことをしなくちゃいけねぇんだ。
「では、これで用事は終わったので失礼します」
「おい――」
そういって俺は、2年A組の教室を出る。
後ろで生徒会長が何か言っていたが、気づかない振りをしながら。