第7話 ~推薦競技、決定!~
「あっ、水無月君だ。おはよー」
「おう、おはよう」
翌日。お見事とこの話を聞いた人、全員に言われるような寝坊をしてしまったので。急いで学校に向かっていたのだが、登校中、クラスメイトの1人に出会ったので、軽く挨拶をして一緒に登校することにした。ここまで来ると、遅刻上等だ。
……ん? 昨日、あれからどうしたんだって。結論から言うと、何もなかったです。
普通に夕食を食べて、理恵が家に帰って終了という何も面白いことはないので語りもしません。
そして現在は、偶然出会ったクラスメイトの女の子と一緒に登校中っと。ちなみにクラスメイトの女の子の外見を言うと、桜色のセミロングで、軽くウェーブがかかっている。そして男なら誰でも気になる部分は………Cくらいかな?
「あっ!」
「っ!?」
不意にクラスメイト(仮定)の女の子が声をあげる。
彼女の声に驚きつつも顔に出すようなことはしなかった。そこでボロを出すとバレると思ったからだ。もしかしたら最初からバレていたのかもしれないけど、結果が決まっていない限り足掻くというのが俺の信条みたいなものだから。
「どうした?」
「水無月君って、自己紹介のときいなかったから。私の名前、知らないよね?」
「まぁ、そうだな」
聞いていなかったら、知るわけないだろうな。
……いや、先生に聞いてたとかだとおかしくはないか。
「私、【相川奈緒】よろしくね。水無月君」
「よろしく。相川」
1つだけ言うとしたら、仲良くなったってことぐらいだな。
ガララッ
「……すいません」
「遅れてすいませんでした」
無事、何事もなく教室につくことは出来たのだが、学校についた時間が8時40分だったため遅刻確定。
……つまり10分遅れだ。
「お前ら、遅刻した理由を言ってみろ」
「「寝坊です♪」」
不機嫌な先生が少し怒り気味で言ってくるが、俺らは気楽に言いきる。
「お前らな~。まぁ、いいだろ。席につけ」
「了解です」
俺が席につくと、同時に相川も席につく。
「さて、全員そろったから言うが、さっそく学校行事として、来週に球技大会がある。親睦を深めるという意味もあるが、優勝したクラス全員に図書カード五千円分がもらえる――」
先生が言い終える前に、教室に感激の声が響きわたる。
それにしても勝ったら五千円の本が買えるようになるのか……良いかも。
「こら、お前ら。これから続きを話すから静かにしろ」
その言葉を聞いた後、全員が静かになる。……そんなに欲しいのか、図書カード五千円分。
まぁ、かく言う俺も欲しいけどな、換金してもいいし本を買ってもいいからな。
「で、その競技は、各クラスで決めることになっている。そして、一番要望が多かった競技になるっていうことだ」
――まぁ、大抵のことは去年と同じだよな。
それにしても、球技大会か。どんな競技がいいかな?
球技大会のお決まりっていうか、定番で言ったらサッカーや野球、バスケとかだよな。
「で、球技をお前らに決めてほしいんだが、何かあるか?」
うーん、どれがいいんだろうな。
サッカーでもいいし野球やバスケでもいいしな。
ぶっちゃけ、どれをやっても面白いし。
そんな感じでみんな、考えていたのか、無言だったのだが。
「先生、サッカーでいいんじゃないっすか?」
と、男子クラスメイトAの言葉をきっかけに……。
「ええーっ!! サッカーより野球にしようぜ」
「いやいや、そこはバスケだろ」
てな感じにみんなして意見を言い合う。
クラスの女子達はあまり騒がない大人しい性格の子ばかりなのだろう、あるいは今もずっと騒がしくしている男連中のせいか。
あいつらがうるさくしてるせいで首を突っ込めない。自分の意見を言えないって人が多数いるだろう。
そんなことを思っていたら、おもむろに川村先生がすぐ近くまで来た。
「……蓮、纏めてくれ」
本人は心底、めんどくさそうな表情をしながら言う。
「なんで俺が纏めないといけないんですか!?」
「いやいや、お前しか適任がいないんだ。現会長に頼りがいのあると言われたお前しか……」
“それに、うるさいのは嫌いだろ?”
確かにうるさいのは嫌いだけどさ。だからと言ってまとめるという意味がわからないんだが。
でも、まっ、先生に貸しを作れるならいいかな。
「先生、貸し1ですよ?」
「ああ、なんでもいいから頼む」
先生の良い返事を聞けた俺は喧しい教室の中、自分の席を立ち、先生に貸しを一つ作れると気分よく教卓に向かう。
「お前ら、静かにしろ」
女子達をびびらせない程度に中くらいの力で黒板を叩く。
中くらいに抑えたというのに俺が黒板を叩いた音は、教室内へ響き渡った。
うるさいほど騒いでたみんなが、水を打ったかのように静まりかえる。
「さて、静かになったところで纏めるが、案として出てきたのはサッカーと野球とバスケとドッチだよな?」
静かにさせた元凶――今の状態なら怒らせてはいけないものを怒らせてしまったといったところだろうか。
まだ相手のことをあまりわかっていない相手を怒らせてしまったと思ってるんだ。どこに怒りのスイッチがあるかどうかわからない地雷原。それが今の俺だろう。
俺をこれ以上怒らせないためだろう、男共は首をぶんぶんと縦に振る。
「……で、これは全て男共の意見だが、女子は何か意見あるか?」
「水無月君。私は、バレーボールがいいと思います」
「私も」
男共の意見を片手間にまとめておきながら、さきほどから意見を出していなかった女子達に意見があるかどうか煽っておく。
そしてその結果、一人の女の子が出してきた“バレーボール”という意見に何人もの女子が乗ってくる。
バレーボールか……。
女子からすると、これが一番楽というかやりやすい競技だよな。
女子バレーボール部なんてものがあったりするし。これは俺の偏見だけど、男でバレーボールをする人って少ない気がするな。俺が通ってきた学校に男子バレーボール部がなかったからだろうけども。
「他に意見があるか?」
黒板に新しく出てきた女子達の意見、バレーボールと書きながら他に意見がないか聞き出す。
「じゃあ、この中から決めようと思うが……。先生、もとから決まってる競技ってなんですか?」
「おっと、それがあったんだったな。すまんすまん」
まったく悪びれた素振りなく、ただ単に謝ってくる。それが言葉だけ、もしくは形だけの形式に思えてムカつく。
どうせ、この人のことだから、俺がちゃんとこのクラスを纏め上げることが出来るのか試してるだけだろ。
この人はまじめにやれば、どの先生よりも賢い先生なんだ。こんな程度でたまるか。
「そうだな、野球とバレーとドッチボールはあったな」
「……それじゃあそれ以外はないと」
すでにこの3つの競技があるんであれば、サッカーかバスケの2択しかないな。
「そうだな。それ以外は無い」
「なら、話は早い。サッカーかバスケ……どっちがいい? 多数決で残りの競技を決める。それじゃあさっそく多数決を取るぞ」
多数決をとった結果――。
「ということで、後は先生にお任せします」
それだけ言い残して自分の席につく。
「……すまんな、蓮。助かった。ウチのクラスの推薦競技はバスケットボールっということで報告しておく」
――ちなみに推薦競技っていうのは、読んで字の如く、クラスが推薦する競技のことだ。
「ふむ……」
しかし、バスケか。
バスケに決まったらバスケをするのも良いかも。
野球やサッカーなら体育でかなりの頻度でしてるけども、バスケなんて体育館での競技だからあんまりする機会がないんだよな。