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あの星空の下で  作者: 神城 奏翔
改正後
33/38

第6話 ~夕食会~



「……遅いな、あいつら。どこでなにやってるんだか」

家に帰ってきてから飯を作り終えたのは、30分後のことだった。

 親子丼に味噌汁と作り終えたのだが、それを食べてくれるはずの優奈達(あいつら)が帰ってこない。俺が家に帰ってきてから1時間は余裕で経っていた。

(……ったく、あいつらはどこまで遊びに行ってるんだ?)

ガチャ

「ただいま戻りました」

 おっ、噂をすればだな。やっと帰ってきやがったよ。

 出迎えなくても上がってくることは知っているので、そのままリビングでくつろいでおく。

 すると、俺の予想通りに優奈達はリビングまで上がってきていた。

「おかえり」

「お邪魔します」

 邪魔するんなら帰ってという、鉄板ネタで返そうかと思ったが、だから何なんだ。という話になりそうなので、言うのを控える。

「おう、まぁゆっくりしてけ」

「あっ、兄さん。今、晩御飯を……」

 優奈が急ぐ様子でキッチンに向かおうとするが、俺は優奈と佐倉をソファーに強制的に座らせる。

「バーカ、今日は俺が作るって約束だったろ」

「そうでしたね。すみません、色々あって忘れてました」

 ――まぁ、確かに色々あったな。

 留年して新しいクラスになったはいいが、佐倉と事故とはいえキスしちゃったし。

 それにかなりの距離を走り終えてからの、女子(みんな)の目つきが少し変わったし。

 ……ホント、初日から色々ありすぎだな。これから持つかな俺。




「まぁ、確かにそうね。私なんかいきなりキスしちゃったし」

「そんな言い方するなよ。アレはアクシデントだろ」

 キッチンに向かい、すっかり冷えてしまった料理を温める。

「うぅ~、まぁ、そうなんだけど。初めてだったのにな~って」

「……そんなこと言うんだったら、俺も初めてだっての」

「「えっ!?」」

 おい、コラ。何だ、その反応は……。

 てか、何でお前も驚いてるんだよ優奈。

「えっ、でも兄さんは、篠崎深琴(しのざきみこと)さんとキスしたんじゃ」

 はっ? 俺が生徒会長とキスしただって?

「私も、噂でそんな事を聞いたけど」

「へぇー」

 噂を流したやつを見つけたら、絶対にそいつが嫌がる噂を流してやる。

「……そ、それにキス以上の事もしてるとか」

 顔を真っ赤にしながら佐倉は呟く、赤面するぐらいなら言わなきゃいいのに。

 佐倉の赤面と同時に俺はこうも思った。

 ……前言撤回、噂を流したやつを見つけたら殺す。と。

「でも、キスをした記憶もないならこの噂はデマね」

「当たり前だ」

 そんな人生ハッピーな思いは一度もしたことありません。

 俺だって思春期の男だから、そういう美味しい思いはしてみたいと思ってるけどな。

 ただ、あのクソ会長が相手というのは絶対にいやだ。



「……とにかく話を戻しますけど、本当に付き合ってないんですね?」

「おう」

 戸惑うことなく、優奈の質問に答える。

 その様子を見た俺は、いきなり変わった優奈の様子を不信に思う。

 今日の優奈……いや、佐倉と帰ってきてから様子が違うような気がする。

 ――なんか試験前みたいなピリピリ感が伝わってくる。

「……気のせいかな」

「何が気のせいなんですか?」

 心の中でだけ呟いたつもりだったのだが、口に出てしまっていたみたいだ。

「何でもない」

 別にどうでもいいことを考えていたので、察して欲しくない俺は曖昧な答えをだす。

 優奈はわからないというように首を傾げる。

 ――おい、その仕草はやめてくれ。可愛すぎるから。



「………」

 そんな感じで、優奈と話していたら不意に佐倉の視線を感じる。

「佐倉?」

「……なに」

 声をかけると、少し不機嫌そうな声で返事をもらう。

 てか、俺が何したってんだ。

「あのさー、「名前」……へっ?」

「だから名前よ、名前」

 いや、言ってる意味がわからないんだけど。

「あー、もう!これから私のことは名前で呼びなさいって言ってんの」

 あぁ、そういうことね。了解っす……。

「理恵」

「わ、わかればいいのよ。わかれば」

 頬を赤くさせながら言う理恵。

 それにしても……。

「さっきのが、地のお前か?」

「あっ、その……あれは」

 何気なく言った言葉で、理恵の頬がさっきよりも赤くなる。

「まぁ、どうでもいいけど。俺はどっちかで言うと、さっきのお前のほうが好きだぜ」

 理恵に微笑みながら言う。

 これは素直な本心だ。勿論、取り繕ったりしているわけではない。

 元からそう思っていただけのことだ。

 俺の言葉を聞いた理恵は、ゆで上がったタコと間違えそうなぐらい顔を赤くし絶句していた。

 ……あれ、なんでそんなに怒ってるんですか? 俺、そんなに悪いことした。

「なぁ、優奈」

「……何ですか?」

 不機嫌になりつつある困ったときの優奈さんに聞いてみる。

「なんで理恵は怒ってるんだ」と。



 すると優奈は、

「……兄さんは天然の女誑しですね」

 そう言って、キッチンに向かって行った。


 ――女誑しってなんだよ。




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