プロローグ ~出会い~
内容が変わっています。
一緒だと思わずに見てもらえると嬉しいです。
「はぁ、不幸だ……」
俺こと、水無月 蓮は、ごく普通の私立の高校に通う平凡な学生だ。
そんな平凡な高校生が何故、不幸だなどと呟いているのか。
理由を語るには、時間を少しずつ遡っていく必要がある。
『あ、もしもし、蓮ちゃん?
今から組織をぶっ潰そうとしてるから、ナビをしてくれないかな』
『今から、この場所にある組織をぶっ潰してきてよ』
などという、家の都合――というか親に無理矢理付き合わされていたせいで、全然、出席日数が足りてなかったからだ。
具体的に不足している分の日数をいうと、30日ぐらいだ。
ちなみに組織をぶっ潰すなどという、大変危険な言葉が親の口から出ていたが、親は二人とも警察に所属している。
警察の中の特殊な組織に入ってるって言ったほうがいいのかな。
でまぁ、その手伝いに俺が参加することがあるってわけだ。
危険な手伝いをしてると考えてもらったら良いだろう。
まぁ、そんなわけで、俺もその特殊な組織のメンバーの一人に入れられているというね。
自分で言うのはなんですけど、確かに身体能力は高いですよ?
だけど、息子を危ないところに出してもいいのかよっていう。敵さんが拳銃を使ってくるときとか、結構、危ないんだよ。
麻酔弾入りの拳銃を持たされていたから、捕まえることが出来たけども。
――話が逸れてしまったな。
つまり簡単に説明すると、留年してしまったってことだ。
ついさっきまでソレ関係で先生に呼ばれていた。
「……まぁ、そんなわけで明日からまた1年生なわけですよ」
今までの疲れをとるかのように大きなため息をつく俺。
口調と同じように、表情も暗かった。
「さて、せっかく近くまで来たんだしコンビニでアイスでも……」
『お嬢ちゃん、可愛いね』
『ちょっとお兄さん達と遊ばない?』
『いやぁ、ちょっ離してよ!!』
学校からの帰りにアイスでも買いに行こうと、コンビニの前を通ろうとしたとき、真横の横断歩道で男2人が女の子――かなりの美少女の腕を無理矢理掴んでいるのを見てしまった。
――これは助けるべきだよね。見てしまったからには。
そう決心し、足元に落ちていた空き缶を男に向かって本気で投げる。
「いたっ!? ……だ、誰だ!?」
男に当たった缶は近くに置いてあったゴミ箱に入った。
……すげぇな、俺。こんな芸当が出来るなんて。
ぶっちゃけ奇跡だからもう1回やってできるとは思わないけど。
男は女の子の腕を離し、缶が投げられてきた方向を見てくる。
すると、必然的に缶を投げた俺と目が合う。
「ちょっと手が滑っちゃいました。すみません、お兄さん?」
さわやかな笑顔をしながら謝る俺。
「ほんとにすみませんね。気にしているであろう、ハゲ頭にあたってしまって」
だが、言ってることは残酷だ。
俺は心に思ってることが、確実に口に出てくるからな。
あー、困った困った。
「テメェ……、よくもやりやがったな!! それに俺はハゲてねぇ!!」
「本当にすみませんって、大丈夫でしたか。その髪の毛が実はヅラだった人さん」
「な、なんでわかるんだ!?」
あ、口を滑らした。
頭の中で予想していた通りの展開に、思わずほくそ笑む。
「あ、すみません。まさか、本当に……ふっ、ヅラだったなんて……」
「……お前、ヅラだったのか」
口を滑らしたことにより、一緒にナンパしていた男から引かれていた。
ずっと一緒にしてたんだけど、今、初めて気づいたんだろうな。
「ぜってぇ、殺してやる」
「おー、怖い怖い。間違って頭にぶつけちゃっただけなのにな。
仕方ない、相手をしてやるよ。ほら、殺す気でこいよ」
「言ったな、ひぃひぃ泣かせてやる。……がはっ」
おっと、ごめんなさい。
その言葉にちょっとキレちゃって、懇親のストレートをぶつけてしまったよ。
本気の拳を受けた男は、俺に鳩尾を殴られ、地面に転がって悶絶している。
……あれだよ。ひぃひぃ泣かせてやるとか、ふざけるんじゃねぇよ。
出来るもんなら、してみやがれ。
一撃で伸されるような雑魚に俺を泣かすことは出来ないだろうけどな。
「さぁ、アンタはどうするんだ? 俺は警察に知り合いがいるから、
お前らにでっち上げの理由をつけて捕まえさせるってこともできるんだぜ」
「す、すみませんでした!! すぐに退散しますので、許してください」
「……謝る相手が違うだろ。俺に謝る前に、彼女に謝れや」
「は、はい!!」
完全に俺の言葉にビビッてる男は、全身の力が抜けたかのように、地面にへたり込んでいる彼女に謝りに行った。
「あぁ~、ホント無駄な時間を過ごしてしまったな」
喧嘩を吹っかける前に置いてきた鞄を持ち、今度こそ、コンビニに向かう。
「……待ってください!!」
向かう直前、絡まれていた女の子が後ろから俺にしがみついてきた。
……あっ、やばっ。当たってるんだけど。
でも、これで注意とかすると逆に殴られるよな。ラノベとかでも注意して、逆に攻撃を喰らうってパターンがあるから、……よし、黙っておこう。
下心がなかった。というと嘘になるけどな。
仕方ないじゃないか、思春期の男なんだからさ。
「どうしたの?」
「あの、お礼がしたいの」
助けたお礼なぁ……。
「いや、別にそんなの要らないけど」
「……じゃあ、せめてお名前を」
ああ、めんどくせっ。どうにかして振り切ろうか。
「あぁ!? アレはなんだ?」
「何?」
少女は正直に俺が指差したほうを向いた。……今だ。
「……じゃあな、お嬢さん」
「あっ、ちょっと待って………」
そういって全力で走り去る。
……あぁ、くそ。コンビニに行けないじゃないか。
――side out
「……行っちゃった」
コンビニ前の交差点で立ち止まる少女。
その視線の先には少し大人びている少年がいた。
「あの子、どこかで見た気がするんだけどどこでだろう?」
そんなことを言いながら少女は少年とは別の方向に歩みを進める。
そのときだった…………
「ん? 何これ」
足元に何かが落ちてあり、気になったので拾って見る。
そこには【私立聖華高等学校 水無月蓮】と書かれていた。
「水無月……蓮……」
助けてくれた彼の名前がわかったことで、彼女は嬉しくなっていた。
「……これって、私が明日から通う学校じゃない。
もしかして彼もこの学校の生徒なのかな」
これでお礼が出来る。
そんなことを思いながら少女は、帰路を歩いていく。