第23話 突然の訪問 part 3
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」
店員さんのお決まりの台詞を聞きながら、俺達は店を出る。
「なっ、普通に買っていいんだよ。他にも買っている人がいただろ?」
「う、うん。私もあんなにいるものだと思わなかった」
まぁ、これからは一人で買えそうだな。
さっきからずっと、頬を赤くしてる意味はわからないけど。
「ええ、こんなにみんなが買ってるとは、思わなかったし。女の子は買わないものだと思ってた」
「それが偏見って、言うんだよ」
「ごもっともです……」
俺の言葉を聞き、少し反省したのか、小さくなっていた。
「まさか、蓮に正論を言われるなんて……」
「そっちかよ!!」
まさかの答えに、全力でツッコム。
俺だってな、正論ぐらい言うさ。5回に1回は……。
そこっ、少ないとか言うんじゃない!!
正論なんて何回も言うものじゃないだろ。個人的な意見だけど、正論ばっか振りかざすのは、どうかと思うし。
「……まあ、そんなわけで、買う人は買うんだよ。買いたいと思ったら買う。それで良いじゃないか」
「うん、そうだね。今日はありがとね、蓮」
「……おいおい、何、終わらせようとしてるの」
これで買い物は終了。お疲れ様といったオーラを出す、理恵の手を引き、この場に留める。
「えっ……でも、買い物は……」
「だから、それはお前の用事だろ? ちゃんと俺の用事もあるから付き合ってよ」
ジーパンのポケットからチケットを2枚取り出し、理恵に見せつける。
「……映画の前売り券?」
「そっ、とある人から貰ったんだよ。『私は忙しくて彼氏と行けないから、蓮ちゃん。彼女と行ってきなさい』って」
とある人とは、実はウチの母親のお友達だったりする。
あの人……、ちょくちょく俺にちょっかいをかけてくるからな。
ちなみに、そのお姉さんは、若かったはずだ。彼氏さんと同じ屋根の下で過ごしてるらしい。
……ウチの父親情報だが。
両親共々、なにかと俺に下らない連絡をしてくるからな。正直、要らない情報だらけだ。
「か、か、彼女!?」
顔をトマトみたいに真っ赤にさせる理恵。
「あ、悪い……。なんていうか、その」
いきなり彼女扱いしたら、そりゃあ、大人しい理恵でも怒るよな。
理恵が顔を赤くしているのは、俺に対して怒っているからだろう。
「ふふっ……」
あたふたと慌てている俺を見て、理恵は笑いを堪えていた。
「……笑うなよ」
本人は笑っていることに気づかれてないと思っているだろうが、あいにくと俺は気づいていた。