第8話 ~夕食会~
「……遅いな、あいつら。どこでなにやってるんだか」
あれから20分ぐらいで、親子丼と味噌汁を作り終えたのだが、
優奈達が帰ってこない。もう一時間は過ぎてるってのに。
……どこまで遊びに行ってるんだ?
ガチャ
「ただいま戻りました」
おっ、噂をすればだな。
「おかえり」
「お邪魔します」
なら、帰って。と言おうとしたけどやめた。
てか言ったら空気的に酷いことになる。
「おう、まぁゆっくりしてけ」
「あっ、兄さん。今、晩御飯を……」
優奈が急ぐ様子でキッチンに行こうとするが、
俺は優奈と佐倉をソファーに強制的に座らせる。
「バーカ、今日は俺が作るって約束だったろ」
「そうでしたね。すみません、色々あって忘れてました」
まぁ、確かに色々あったな。
留年して新しいクラスになったはいいが、佐倉と事故とはいえキスしちゃったし。
それにかなりの距離を走り終えてからの、女子の目つきが少し変わったし。
……ホント、初日から色々ありすぎだな。これから持つかな俺。
「まぁ、確かにそうね。
私なんかいきなりキスしちゃったし」
「そんな言い方するなよ。
アレはアクシデントだろ」
キッチンに行って料理を温める。
「うぅ~、まぁ、そうなんだけと。初めてだったのにな~って」
「……そんなの言うんだったら、俺も初めてだっての」
「「えっ!?」」
おい、コラ。
何だ、その反応……。
てか、何でお前も驚いてるんだよ優奈。
「えっ、でも兄さんは、篠崎深琴さんとキスしたんじゃ」
はっ?俺が生徒会長とキスしただって?
「私も、噂でそんな事を聞いたけど」
「へぇー」
噂を流したやつを見つけたら、絶対にそいつが嫌がる噂を流してやる。
「……そ、それにキス以上の事もしてるとか//」
前言撤回、そいつを見つけたら殺す。
泣いて謝ってもな。
「でも、キスをした記憶もないならこの噂はデマね」
「当たり前だ」
そんな経験したこと、一回もないしな。
「……とにかく話を戻しますけど、本当に付き合ってないんですね?」
「おう」
戸惑うことなく、優奈の質問に答える。
……でも、一体どうしたんだ?
今日……いや、佐倉と帰ってきてから様子が違うような気がする。
なんかピリピリしてるような。
「……気のせいかな」
「何が気のせいなんですか?」
おっと、口から出ちゃってたみたいだ。
「何でもない」
と言うと、優奈はわからないというように首を傾げる。
おい、その仕草はやめろ。
……可愛すぎるから。
「………」
そんな感じで、優奈と話していたら不意に佐倉の視線を感じる。
「佐倉?」
「……なに」
声をかけると、少し不機嫌そうな声で返事をもらう。
てか、俺が何したってんだ。
「あのさー、「名前」……へっ?」
「だから名前よ、名前」
いや、言ってる意味がわからないんだけど。
「あー、もう!これから私のことは名前で呼びなさいって言ってんの」
あぁ、そういうことね。了解っす……。
「理恵」
「わ、わかればいいのよ。わかれば///」
頬を赤くさせながら言う理恵。
それにしても……
「さっきのが、地のお前か?」
「あっ、その……あれは」
俺が何気なく言った言葉で、理恵の頬がさっきよりも赤くなる。
「まぁ、どうでもいいけど。俺はどっちかで言うと、さっきのお前のほうが好きだぜ」
理恵に微笑みながら言う。
すると言われた本人……理恵は、
「………/////」
ゆで上がったタコと間違えそうなぐらい顔を真っ赤にして絶句していた。
あれ、なんでそんなに怒ってるんですか?
俺、そんなに悪いことした。
「なぁ、優奈」
「……何ですか?」
気になったので、何故か若干、不機嫌な優奈に聞く。
「なんで理恵は怒ってるんだ」と。
すると優奈は
「……兄さんは天然の女誑しですね」
そう言って、キッチンに向かって行った。
……女誑しってなんだよ。
次回の更新予定日は、8月1日を予定しています。
ですが、少しでも遅くなったりする場合は
【活動報告】に書きますのでご覧ください。