死んでも生きても、異世界は疑わしい
初めまして。!七星名無しと申します
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20XX年、12月某日の夜。
俺の人生における最大の転機――いや、第二の人生の始まりは、この日だった。
――だが、話は少し遡る。
◆
「ったく……もう朝かよ」
カーテンの隙間から差し込む光と、耳障りな鳥のさえずり。
目を開けた瞬間に理解する。ああ、今日も仕事に行く気がしない。
――ま、休むか。
「すみません、はい……まだ体調が優れなくて。ええ、明日には復帰しますので……はい、失礼します」
通話を切ってスマホを放り投げ、ベッドに沈む。
ふぅ。休むのは簡単だ。
最近の俺の唯一の趣味――いや、もはや生活の支え――は、異世界転生ゲームだった。
発売当初は社会現象レベルで流行ったらしいが、今やプレイ人口は激減。
それでも、このゲームだけがクソみたいな日常に、わずかな変化を与えてくれる。
思えば学生時代の俺は、それなりに優秀だった。博士課程だって狙えた……かもしれない。
だが、気づけば今の俺は借金まみれ。
母親は俺が生まれてすぐに病死、父親は行方不明。
日々の生活は、正直地獄だった。
「……ま、とりあえず今日もゲームするか」
◆
夜も更け、腹が減ったのでコンビニに向かう。
わずかな所持金をかき集め、部屋を出ると、階段から向こうのドアが開く音がした。
「あ、こんばんは。えっと……」
「遊佐です」
「こんばんは、遊佐さん。最近ここに引っ越してきました。森と言います」
「本当は挨拶くらいしたかったんですけど……仕事が忙しくて、すみません」
「あ、いえ。別に大丈夫です。では」
――行っちゃった。
人と話すのが苦手な俺は、こういう些細なやり取りすら面倒くさく感じる。
◆
コンビニに入り、いつものカゴにお菓子とカップ麺を放り込む。
レジに並んでいたその時――
バゴッ。
何かがぶつかった。振り向くと、ボロボロの制服を着た女子高生が通り過ぎていく。
歩き方もどこかおかしい……精神的に、かなりヤバそうだ。
……まあ、俺には関係ない。
しかし、その少女が道路の真ん中に立っているのを見た瞬間、流石に目を疑った。
「……何やってんだ、あいつ」
無関心でいるつもりだったが、正面から車のヘッドライトが飛び込んできた。
速度は30キロ程度。ブレーキは間に合わない。
……いや、関わるか?
人が目の前で死ぬ。それを見殺しにしたら警察沙汰だろうか。
別にどうでもいい。生きる意味も、やりたいことも特にないし、刑務所も悪くない。飯も出るだろう。
――そう思った瞬間、俺の体が勝手に動いた。
◆
「クソッ、出血が酷い! このままだと出血性ショックだ!」
「輸血だ! 早く!」
「身分証がありません! 血液型が不明です!」
「何だと……クソッ!」
ピー――
心電図の電子音が響き渡る。
「23時52分。遊佐聡、死亡確認」
……死んだらしい。まあ、予想通り。
不思議と恐怖はない。ただ、少しだけ、「なんであの子は助かったんだろう」と思う。
◆
「――おい、そこの者」
誰だ。暗闇の中から声が聞こえる。
何かが顔に触れた瞬間、世界が光に包まれた。
「やっと起きたか。何時間待たせるんだ」
目の前には、影に隠れた男。
「えっと……ここは天国? それとも地獄?」
「驚かないんだね。ここは人間界で言う天国だよ。君は死んだ」
……そうか、死んだらしい。まあ、別にどうでもいい。
「でも君の死に方は特別だ。人を庇って死ぬなんて、何百年ぶりかな」
「……で、あんたは?」
「ああ、僕? 管理人のエリザールさ。よろしく」
「……何者だ」
「神に近い存在、ってところかな」
「で、俺はどうなる」
「異世界に転生してもらう」
「……は?」
「君たちの世界で言う“異世界転生”だね」
「ゲームかよ……」
「いや、まあそうとも言える。君の死に方への“ご褒美”だ。人生、リスタート」
……本当に起きるとは思えない。半信半疑すぎて、軽く笑いそうになる。
「本当に? 俺、赤ん坊からスタートとか言われても信じられんんだけど」
「大丈夫。魔法や基礎知識は最初からインプットされる」
「……ほんとか?」
「任せて」
ポータルが開く。光が弾け、俺の体が吸い込まれる。
本当に転生するのか? いや、まだ信じられない……。
でも――動かされるままに、俺は流されていく。
流れの先に、ほんのり見えた異世界の地平線。
……いや、マジでここ、現実か?
疑心暗鬼のまま、俺の第二の人生が始まる――らしい。
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