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充分な景色

作者: 楽生日々
掲載日:2025/11/24

お久しぶりです。はじめまして。楽生日々です。

秋になると、思い出す景色がある。


2年前の、ある日曜日。

雲の多い秋の空、寒い気候の中で、小さなマルシェのボランティアに参加した。


同じ大学から来た子も何人かいたけど、その誰とも交流がなかった私は、ひとりぼっちで受付の業務を行っていた。


そのうち、受付にもう1人つくことになった。

他校の子が、私の隣に座った。


「同級生じゃん。」

自己紹介をしたら、彼は嬉しそうに笑った。


それから、受付の仕事をしながら、彼と話した。

何を話したかは、全く覚えていない。

でも、何かにつけてはけらけら笑い合っていた記憶がある。

私の孤独を埋め、気持ちを温かくするには、それで充分だった。


「ねぇ、呼ばれてるよ。」

マルシェも終わりに近づいてきた。隣にいた彼は、同じ学校の子の方へ向かった。私は、そのまま片付けを行った。


そのまま、彼と話すことはなかった。帰路に着いた私は、ただ温かくなった心を抱いていた。


それ以来、彼とは会っていない。


名前も、覚えていない。


そんな彼と、もしもこの先会えたとしたら、私はどうするのだろう。


「あの時は、ありがとう。」


そう言えたら充分だ。



たった一瞬の出来事だった。でも、とても幸せだった。


そんな恋にも満たない、温かな時間を、秋になると思い出す。


お読みいただきありがとうございました。

よかったら評価・コメントをよろしくお願いします。

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