充分な景色
お久しぶりです。はじめまして。楽生日々です。
秋になると、思い出す景色がある。
2年前の、ある日曜日。
雲の多い秋の空、寒い気候の中で、小さなマルシェのボランティアに参加した。
同じ大学から来た子も何人かいたけど、その誰とも交流がなかった私は、ひとりぼっちで受付の業務を行っていた。
そのうち、受付にもう1人つくことになった。
他校の子が、私の隣に座った。
「同級生じゃん。」
自己紹介をしたら、彼は嬉しそうに笑った。
それから、受付の仕事をしながら、彼と話した。
何を話したかは、全く覚えていない。
でも、何かにつけてはけらけら笑い合っていた記憶がある。
私の孤独を埋め、気持ちを温かくするには、それで充分だった。
「ねぇ、呼ばれてるよ。」
マルシェも終わりに近づいてきた。隣にいた彼は、同じ学校の子の方へ向かった。私は、そのまま片付けを行った。
そのまま、彼と話すことはなかった。帰路に着いた私は、ただ温かくなった心を抱いていた。
それ以来、彼とは会っていない。
名前も、覚えていない。
そんな彼と、もしもこの先会えたとしたら、私はどうするのだろう。
「あの時は、ありがとう。」
そう言えたら充分だ。
たった一瞬の出来事だった。でも、とても幸せだった。
そんな恋にも満たない、温かな時間を、秋になると思い出す。
お読みいただきありがとうございました。
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