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神妖軍団 vs 漂流軍団──二つの強大な軍団の激突

神妖軍団は惑星の各地へと四散した。だが、その行く手を遮るのは――次代九王軍の最有力と噂される強豪、漂流軍団。


龐 vs 貝昆斯芬克

新吉蘭&モディアック vs 奎隆特


立倫でさえ魔の手から逃れられない。仲間と再び会うため、ただ「生き延びる」ことを胸に、それぞれの戦場へ――。


やがてこの騒動は各地の強者を呼び寄せ、「神の子」普皇・レスタまでもが姿を現す。

S46・密森星で起きる出来事は、のちに歴史を塗り替える引き金となる。

神妖たちは広大な密森星にばらばらに散らされていた。遠方へ飛ばされ、今はただ――互いを見つけ出し、この場を脱出することだけが目標だ。だが、密森星は途方もなく大きい。仲間を見つけるのは容易ではない。


彼らを吹き飛ばしたのは、漂流軍団ヒョウリュウぐんだんだった。銀河では「将来、九王軍になり得る人気の新鋭軍団」と噂される存在だ。あの一撃のあと、漂流軍団の団長は部下に命じて神妖の身元を洗わせた――なぜ彼らを攻撃したのか、何を企んでいるのかを探らせるためだ。


だが、調べてみて団長は驚いた。狙った相手たちはなんと九王軍に関連する者たちだったのだ。驚きのあとは興奮が来る。――「これはチャンスだ。彼らを潰せば、我々が九王軍に名を連ねられる」そう思ったのだ。さらに調査で、わずか数日で“単独皇帝級”の敵を撃破したという少年、立倫リツレンの名が出てきた。瞬く間に頭角を現したその“超新星”は見込みありと判断され、団長は命令を変える。


「リツレン以外は、手加減無用――皆、抹殺せよ!!」


漂流軍団の自信の源は数の多さにあった。強者が無数にいると信じ、神妖軍団に致命的な一撃を加えられると確信していたのだ。


だが、団長の胸にはもう一つ違う動機があった。それは、母を救うための切なる思いだ。数日前の電話で、彼の母は震える声で言った――「ここ数年、きちんと眠れていない。数分しか眠れない日々が続いて、本当に辛いのよ……」 その言葉が彼の胸に刺さった。母を思う気持ちは深く、彼は“母を助けたい”という一念でこの遠征に臨んでいたのだ。


――一人の男の私情と、軍団の野心が重なるとき、歯車は動き出す。


一方、リツレンは広大な草原を進んでいた。周囲には奇怪な生物が群れている。巨大化した人間のような者、立って歩く“犬頭”の存在――どれも知能は決して高く見えない。実のところ、それらは生体実験所の“失敗作”に過ぎないのだ。リツレンの頭の中はただ一つ、仲間と合流する方法だけだ。


歩を進めると、忽然として巨大な鋼の生体兵器が立ちふさがった。高さはおよそ五メートル。リツレンを見た途端、その瞳孔が光を放ち、稲妻のような速さで彼をはじき飛ばした。十メートルほど吹き飛ばされたリツレンは、生体の非凡さを悟り、即座に全力で逃走を開始する。光速に近い速さで走っても、その機械体はなお追いすがる。


そのとき、上空から幾つかの手榴弾が投げ落とされ、鋼鉄の生体は爆裂に飲まれて土煙と化した。投げた一団が降りてきて、リツレンに招待状を差し出す。だがリツレンは、「もう帰るべき居場所がある」として丁重に断った。彼らは逆ギレもせず、むしろ根気強く誘い続けた。中には「ポウ(龐)はもう死んだ」と嘘を混ぜて勧誘する者までいたが、リツレンは十三歳にしてすでに判断力がある。仲間のことは信じて疑わず、そういう嘘に乗るはずがない。


誘った側は、遠方に報告の電波を飛ばす。彼らが連れてきたのは傑倫布ジェレンブ――漂流軍団の第四隊長だ。ジェレンブはリツレンを「得がたい素材」だと見込み、自らスカウトに切り替える。彼は言った。


「君は将来性に満ちている。漂流軍団に来ないか?」


リツレンは違和感を覚え、逃げ出す機を窺う。しかし相手の手は素早く、力も整っている。すぐに捕まるのは分かっている。そこへ一隻の飛行船が横付けされ、ジェレンブは強引にリツレンを抱え上げて乗せてしまった。身体が宙に上がると、リツレンの鼓動は早まり、頭は冷静に次の一手を考える――彼は、今、自分の頭の回転を相手より速くするしか生き延びる道はないと悟っていた。


【龐 VS ベクンスフィンク 地震二重奏の戦い】


ポウは吹き飛ばされてから、一時間も空を漂ってようやく地面に着いた。気がつくとそこは小さな孤島で、四方は果てしない海。背後には深い密林が口を開けている。彼は藪をかきわけ、島の奥へと踏み込んでいった。


初めは何の変哲もない原生林だったが、内陸へ進むにつれて様子が変わり始める。やがて古びた遺跡群が姿を現し、まるで失われた古代都市の残骸のようだ。中心には巨大なピラミッドがそびえ、長い歳月に荒廃しながらも威容を保っている。


龐は外周の階段を上り、頂上へと向かった。最後の段まで来て――しかしその先に階段はなかった。上にもう一層あるはずなのに、行き詰まってしまう。違和感を覚えた彼は一度一階へ戻り、階段裏の扉を見つけて中へ入った。


中にあった光景に、龐は言葉を失った。外側から見るとただの粗末な石造りに見えた建物だが、内部は金でびっしりと装飾され、今でも淡く輝きを放っている。一階はかつてのレストランらしく、床には皿の欠片が散らばっていた。二階に上がると、応接間のような空間が現れ、時を経たはずのテーブルの花が瑞々しく残っている。


龐の目は壁の一角にある、まるでエレベーター口のような小さな扉に留まった。覗くと確かにエレベーターのボタンがある。試しに押すと、驚いたことにそのエレベーターはまだ動くのだ。行けるのは一つの階だけらしい。扉が開くと、そこは寝室だった。ベッドのシーツは新しく、まるで最近まで誰かが使っていたかのようだ。


テーブルの上に一冊の書類を見つけ、龐は好奇心からそれをめくった。表紙には大きく「奴隷計画」と書かれている。ページを読み進めると、内容は衝撃的だった。


――「戦わない多くの人間を攫い、奴隷として酷使する。睡眠もろくに与えず、食事も十分ではない。報酬はない。作業場は一万キロ離れたムー大陸に設ける。そこで超大型の遊園地、名を『夢幻王国』とする。」――


龐は読み飛ばしながら声を上げた。「はあ!? 奴隷計画だと? あの夢幻王国って、さっきのテーマパークのことじゃないのか!?」


胸の内に怒りが燃え上がる。幼い頃から束縛を嫌ってきた彼は、“働かされる者”への同情と憤りを同時に感じた。彼はこの証拠を持って、すぐに夢幻王国へ戻ろうと考えた。しかし現実が突きつける問題がある――ここからムー大陸まで一万キロもあるのだ。


そんなことを考えていると、頭上から飛行船の音が響いた。顔を上げた瞬間、誰かの拳が直撃した。龐の顔面を殴りつけ、地面には亀裂と穴が次々と生じていく。連続する衝撃は、彼が相手の前に立ちふさがるまで止まらなかった。


龐はその人物を問いただす。名を問うと、相手はゆっくりと笑って答えた。「ベクンスフィンクだ。お前を倒しに来た。そうすれば、俺は九王軍になれるのだよ――」 彼は高らかに嘲笑した。自信に満ちたその笑いは、たとえば世間を嘲るかのようだった。


龐は鼻で笑って返す。「小さく見積もりすぎだな、お前は……」 彼の表情は冷たく、言葉の端に含まれるのは、燃えるような闘志だった。


――こうして、古代の遺跡での出会いは、二人の激突の序章となった。


二人は言葉も交わさず、すぐに激突した。

ベクンスフィンク(貝昆斯芬克)もポウ(龐)も、**震力流能しんりょくりゅうのう**を操る者――同じ属性同士のぶつかり合いは、初動から互いに簡単には傷を与えられない。しかも双方とも、その領域の最前線に立つ猛者だ。


ベクンスフィンクは足元に震動を生み出し、それを踏み台に一気にポウの目前へ跳躍。鋭い蹴りを叩き込む。だがポウも黙ってはいない。彼は震波で受け流し、蹴りの衝撃をねじ伏せる。衝撃は壁をいくつも突き破り、破壊の軌跡を残す。


ポウが追い縋ると、ベクンスフィンクは腰の刀を抜き、戦闘の構えを取る。ポウは遠慮なく拳を振るい、刃が衝突する。強大な震波が空間でぶつかり合い、周囲の木々や建築は次々と倒壊する。しかし二人はそこに屹立していた。互いの力が拮抗し、剣と拳、波動の応酬がしばらく続く。


やがてポウの体力がじわりと削られる。隙を見逃さなかったベクンスフィンクが一閃――ポウの右手の平を切り裂いた。血が噴き出す。だがポウは諦めない。痛みに耐え、戦闘を左手に切り替える。


怒涛の攻勢をしかけるベクンスフィンク。繰り出した技の一つ「縱向波じゅうこうは」が、ポウの頭をくらわせる。ふらついたところへ更に斬撃が襲いかかる。ポウは左手で受け止め、そのまま力を込めて振り下ろす。地面に大きな亀裂が走る。斬撃の慣性で、ベクンスフィンクは刀ごと弾き飛ばされ、強烈な衝撃を浴びる。


ポウは流れを掴むと、ベクンスフィンクの頭を地面に押しつけ、震波を強め続けた。地面は徐々にへこみ、ベクンスフィンクは極度の苦痛に顔を歪める。必死に抵抗し、意地でポウの腕を掴むと、残りの力を振り絞り相手を放り投げた。空中での昇龍拳を叩き込もうとしたが、ポウは予めそれを察して手で受け止め、再び相手を地面へ叩きつける。着地と同時に地面へ追い打ちをかけ、巨大な円形の穴が刻まれた。


間一髪、ベクンスフィンクはその場を離脱する。素早く走り、飛行船へ飛び乗り、脱出を図った。ポウは追撃の体勢を整えたが、追いつけない。こうして、ベクンスフィンクはポウの目前で逃げ去ったのだ。


この一連の一戦はすぐに《世界事》の戦闘板へ掲載された。大騒ぎには至らなかったものの、神妖軍団側の関連部隊や漂流軍団の仲間たちの注意を引くには十分だった。やがて、両軍の“下部”部隊はそれぞれの首領を助けるため、密森星へと急行することになる。


その中には、「神の子」普皇・雷斯塔(普皇・雷斯塔/プーファン・レスタ)の名も含まれていた──。



【新吉蘭と莫迪亞克の共闘 vs 奎隆特クィロント



新吉蘭は、敵の二隊長――奎隆特と激しくぶつかり合っていた。

奎隆特が操るのは《軟糯流能》。周囲のあらゆる物質を柔らかく変化させ、さらに自在に形を操る恐るべき力だ。


「クソッ……!」

新吉蘭は歯を食いしばる。石畳がヌルリと形を変え、鋭い槍のように飛びかかってくる。かろうじて避けるが、反撃の隙がまるでない。奎隆特の流れるような攻撃に、焦燥だけが募っていく。


そして次の瞬間――。

「上かッ!?」

頭上に、十本もの巨大な槍が生まれ、今まさに串刺しにしようと迫ってきた!


――その刹那。

「よっと!」

凄まじい衝撃とともに体が弾き飛ばされる。視界の端に、頼もしい笑みが映った。

「モディアック……!」

モディアックが駆けつけたのだ。新吉蘭の落下地点から十八キロ先で戦っていたはずの彼が、この窮地を見逃さなかった。


仲間の背中を感じた瞬間、新吉蘭の胸に熱いものが込み上げる。

「……来てくれたか!」

「おう、友のピンチを見捨てられるかってんだ!」


二対一となったことで、さすがの奎隆特もわずかに気圧された。しかし、その眼光はまだ死んでいない。

「調子に乗るなよ……!」


奎隆特が操る「重刺」は一撃必中の恐怖。モディアックも気を抜けば一瞬でやられる。しかし、その攻防の中――。

「今だ……!」

モディアックが好機を見た。甦醒の剣を構え、かつてハリーが見せた必殺の連撃――《萬花斬》を繰り出す!

「喰らえぇッ!!」

無数の斬光が閃き、奎隆特の右腕が真っ二つに裂けた――かに見えた。

「なにっ……!?」

しかし、次の瞬間、柔らかく溶けた腕はヌルリと元の形を取り戻す。


「効かねぇ……!」

さらに奎隆特は両腕を広げ、無数の龍を呼び出した。黒き龍が大地を揺らしながら突進する。

「ちっ……厄介だな!」

二人は即座に飛び退き、距離を取る。


その時、ふと二人の脳裏に同じ記憶が閃いた。

――かつての訓練で編み出した連携技。

互いに視線を交わし、短く頷く。

「いくぞ……『無情蜘蛛網』!」


「頼んだぞ、新吉蘭!」

モディアックが疾風のごとく背後に回り込む。それを察知した奎隆特が、巨大な拳を生み出し叩き潰そうとした瞬間――。

「――放電ッ!!」

新吉蘭が雷を解き放つ。空気が弾け、青白い光が奎隆特の全身を貫いた。

「ぐっ……があああッ!!」

痙攣で動きが止まる。


「今だッ!!」

モディアックが跳び、無数の斬撃を繰り出す。《斬巢》――蜘蛛の巣のように交差する刃。その中心に、奎隆特の身体が縫い止められた。

「終わりだ……!」


新吉蘭は更に雷撃を高める。

「七千万ボルトォォ!!!」

轟音とともに、閃光が世界を塗り潰す。奎隆特の肉体が弾け飛び、焦げた匂いが漂った。


それでも奎隆特は、最後の執念で拳を振り上げようとした。しかし――。

「もう立つな!」

モディアックの剣が唸り、一閃。奎隆特の左腕が宙を舞う。


膝をつき、力尽きた巨体が崩れ落ちた。

「……勝った……のか?」

荒い息の中で、新吉蘭が呟く。隣でモディアックが笑う。

「ああ……勝ったんだよ、相棒。」


――こうして、新吉蘭とモディアックは、「萬物手」奎隆特を打ち倒した。


この一編を書いている時、僕はもう必死にペンを走らせていました。書くスピードは信じられないほど速かった。だって、興奮が止まらなかったんです。頭の中で長い間温めてきたアイデアが、一気に溢れ出したんですよ!どれだけこの章を書く日を待ち望んでいたか、想像できるでしょう!!!

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