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金神星編 マーティンの大混乱!

本来なら金神星でひと休みするつもりだった神妖軍団。

だが、運命の悪戯か、そこに現れたのは依頼を受けたマーティンだった――。


未来に計り知れない可能性を秘めたこの都市を守るため、神妖軍団は立ち上がる。

たとえ、ついさっき死海から解き放たれたばかりだとしても……決して退くことはない!

ロックは料理人として、いましがたの大勝利を祝おうと、大鍋を振るって山ほどの料理を作った。

リツレンが最初の一口をかみしめた瞬間――もう終わりだった。彼は完全にノックアウトされ、一口、また一口と箸を止められない。戦場帰りの空腹も手伝って、龐たちさえががつがつと平らげていく。これも当然のことだ。ついさっきまで命を賭けた戦いをくぐり抜けてきたばかりなのだから。


食事の途中、ドメグがふと窓の向こうを見て言った。

「ねえ、向こうに金色に輝く星が見えるよ」


みんなが望遠鏡をのぞくと、そこには噂の“金神星”――人気のショッピングゾーン《黄金峡谷ゴールデンキャニオン》がちらりと映っていた。モディアックが確認すると、全員の興味は一気に引き寄せられる。噂の“富豪峡谷”を見に行こう──今は特に急ぐ用もない。ならば行ってみよう、というわけだ。到着までは――およそ二十七時間の航行だという。到着までは寝るか、ただ待つかしかない。


時間はあっという間に過ぎ、目が覚めると飛行船は金神星のすぐ近くまで来ていた。

着陸の際、船庫の駐機代を見て全員が息を呑む。二千恒元だと? 確かに高い。だが、この星でしか味わえないものがあるなら、それもまた価値だ。船を停め、降り立てば――すでに黄金の光が辺りを包んでいる。


だが、光の裏側には別の気配が忍び寄っていた。


そう耳に入ったとき、彼は武器屋の中にいた。店内の銃も刀も、すべてが純金で作られている。無駄な装飾は一切なく、潔く美しい金属光を放つ。だが、値札を見ると――一振り五万恒元。マーティンはためらいなくその商品を置き、店を出た。ちょうどそのとき、依頼人から連絡が入り、二人は秘密の場所へ向かうという。


リツレンが黄金峡谷に踏み込むのは最初で、これほど大量の金を見たことがない仲間たちは興奮を抑えきれない。モディアックが説明する。

「この星は形成の段階で、重力が周辺の金を含む隕石を引き寄せた。何千万年もかけて蓄積された結果――宇宙でも有数の富の星になったんだ」


彼らは黄金でできたレストランに入る。内装も厨房もみな金仕上げで、ところどころに配された色合いがさらに豪華さを際立たせる。席に着くと、ロックはメニューを眺めて目を丸くした。平均的なステーキが一枚80恒元だという。安い――この豪華さからは考えられない値段だ。


全員がステーキとドリンク、デザートを頼む。運ばれてきた皿には金箔が散りばめられ、ステーキは肉汁たっぷり、口に入れれば柔らかくとろける。金箔は派手だが、不思議と料理に合う。飲み物は特筆すべきところはないが、デザート――リツレンと同じ頭の大きさのアイスクリームが四十恒元で、それがまた濃厚で舌に香りが広がる。


その間、セストン・マーティンとその依頼人は大通りへ向かい、狙いを定めた。《万豪大楼ワンハオビル》──黄金峡谷の創設者たちが住む場所だ。そこは功労者や要人のための居住区で、最上階こそ創設者ヴィーギンのフロアだった。エレベーターで最上階へ上がり、マーティンは高圧水で扉をこじ開ける。ソファに悠然と座るヴィーギンの姿が目に入る――その刹那、依頼人が銃を連射した。ヴィーギンは辛うじてかわすが、防具もなければ反撃する余地はない。弾は乱れ、ヴィーギンはその場に倒れた。


ふたりは広播室へ移動し、街中に向けて告げる。

「この都市は一時間以内に全て破壊される――」


その声には嘲るような笑いが混じっていた。神妖しんよう一行は一瞬にして異変を感じ取る。果たして彼らは本気なのか? その問いはすぐに答えを得る。


同時に、空からは激しい豪雨が降り始めた。

モディアック(モディアック)はその瞬間、直感で悟る――これはマーティンの仕業に違いない、と。マーティンの流能は水神流能だ。さらに彼はこう付け加えた。マーティンはただの放浪戦士ではない。依頼を受け金を得れば戦う、プロの傭兵だ。今回の騒動も、どこかの依頼主からの指示だった可能性が高い。


事の深刻さを察したモディアックは周囲を見回し、マーティンを探した。ついに「万豪大楼ワンハオビル」の屋上に、マーティンとその依頼人の姿を見つける。美しい街が破壊されるのを黙って見ていられない――モディアックはマーティンに雷を一閃放った。


だが、マーティンは軽々と右へかわすだけで弾丸を避け、そのままこちらに視線を向けると――まるで自分たちが恐ろしい存在であるかのように駆けだした。屋上を走り、建物を飛び越えて屋根伝いに身を翻す。神妖たちも建物を縫うように追う。


ポウが拳を振るうと、失った重心の隙にマーティンは屋根から滑り落ちる――捕らえられるかと思われたその瞬間、マーティンは己を水に変え、するりと床面を伝って下へと逃げた。水体と化した彼にはどんな通常攻撃も効かない。瞬く間に大楼の下へと消え去り、追手は捕らえ損ねる。


しかし依頼人は屋上に残されていた。彼女は震えながら捕らえられ、問い詰められると、ついに事の真相を吐露した。


「二年前――私と妻子は、この街に希望を抱いてやって来たの。けれどある日、創設者のヴィーギンとその仲間たちが“射撃遊び”を始めた。普通の遊びならまだしも、彼らは人間を標的にしていたの。私の家族は――皆、撃ち殺された。あのときの楽しげな笑い声で、幸せだった日々は一瞬で引き裂かれたのよ。」


その話に、一同は胸を締めつけられた。だが今や最優先は黄金峡谷を守ることだ。モディアックは周囲にいた人間たちに声をかけ、運良く十人ほどの協力者を募ると、ポウは事情を説明して動員した。皆が心を一つにしてマーティンの捜索を開始する。


だが呼び声が響いた――マーティンが、自ら最上の屋上に姿を現した。彼は街を見下ろす王のように立ち、既に手の内に入れていた。やはりマーティンは準備をしていた。彼は半径千キロメートルの雨水を自在に操り、巨大な津波を形成して一気に押し寄せてくる。高さはおよそ五十メートル。黄金峡谷は瞬く間に混乱と逃亡の渦に飲み込まれた。


だが、立ち止まる者たちではない。救うと決めた者は退かない。ポウは「滅世烈拳・万里灰」を放ち、空中にそびえ立つマーティンの足元を揺るがす。やがて建物は崩れ落ち、津波も地震の影響で暴走の形を変える。マーティンが地面に落ちた瞬間、新ジランが天空から二千万ボルトの雷を正確に叩き込んだ。水でできた体はたちまち煙を上げ、電流は体内を引き裂くように走っていく。マーティンの苦悶は尋常ではなかった。


依頼人は必死に止めようとしたが、止められない。モディアックは甦醒の剣を手に取り、止めを刺そうと一歩踏み出す。だが、刃が振り下ろされようとしたその瞬間――マーティンの姿は、その場から忽然と消えていた。皆は呆然と立ち尽くす。


数千キロメートル離れた広大な海のただ中、マーティンは生き延びたことに密かに歓喜していた。だが任務は終わっていない。彼は「決して失敗しない男」の名に恥じぬよう、再び黄金峡谷へと戻る覚悟を固める――その心には、以前にも増して冷酷で恐ろしい決意が芽生えていた。


現場に残った者たちは、一瞬「終わった」と思った。だがモディアックは違った。雨は止まない。マーティンがこの星のどこかに残っている可能性は高い。彼は位置を推測する――水があって、しかし近すぎない場所。候補は北方数千キロにあるという「怪物海」だ。探査機を飛ばすと、やはり――マーティンの姿が捉えられた。


だがそこに映し出された光景は想像を超えていた。マーティンは深海の怪獣を百を超える数で従え、さらにその足下には先ほどの津波の十倍はありそうな、計り知れない高さの波を踏み固めている。そんな力をもって再び黄金峡谷に押し寄せれば、都市は一瞬で海底に変わるだろう――だれもが危機を察し、即座に阻止行動を開始した。


彼らは飛船で十数分と経たずにマーティンのいる海域へ到達する。皆で懸命に説得を試みるが、依頼人の懇願も空しく、マーティンは狂信的に任務を遂行しようとする。間近に迫る数百キロの津波。突如、海の怪物が飛行船に噛みつき襲いかかる。ポウが怪獣を撃退し、その隙に新ジランが動いた。


新ジランは雷を操り、そこから一挺の長槍を形成すると、瞬間移動でマーティンの背後へ跳躍した。背中に深々と一突き──雷が再びマーティンの内部へ流れ込み、先ほどの痛みを呼び起こす。だがマーティンは応戦する。彼は海水を凝縮し、無数の水球を生成した。各水球は高圧の水砲となって放たれ、衝撃波のように新ジランへ襲いかかる。新ジランは反撃の間を失い、激しい水圧の前で一時的に押し止められた。


戦いは熾烈を増し、誰もが全力を尽くす。黄金の街を救うため――一行の決意は、さらに強く、さらに熱く燃え上がっていった。


だが、マーティンはあまりにも新ジランに意識を集中しすぎていた。

その背後に、リツレンがいたことに気づかないままだったのだ。


リツレンは光速の如く駆け上がる。子ども時代に積んだ鍛錬が、速度と力を同時に極限まで引き上げていた。

一瞬の間合い、そして全力の拳がマーティンの頭部を打ち抜く――。


「ぐっ……!」

マーティンの口から血が吹き出した。視界は徐々ににじみ、支持を失った身体はそのまま崩れ落ちる。

同時に、怒涛のように押し寄せていた津波もふと静止した。


幸い、人命への被害は出なかった。だが黄金峡谷の一部は水害で痛手を受けていた。

住民たちは被害の現場を見渡すと、自ら手を取り合って復旧に取りかかることを決めた。深く礼を述べる手で、神妖一行へ感謝の言葉を伝える者たちもいた。


中心街区では雨は止みつつあったが、地面にはなお水たまりが残る。

この街にとって、洪水は前例のない災厄だった。


モディアックは現地の有力者たちに向けて静かに語りかける。

「この街は黄金で繁栄してきた。だが、金だけでは未来は守れない。排水やインフラといった“機能”を疎かにしてはいけない──今回の被害は、それが原因だ」


人々は表情を曇らせ、やがてうなずいた。彼らは改めて街の運営を見直す決意を固め、新たなリーダーの選出も約束した。黄金だけに依存するのではなく、町の基盤を整える――それが住民たちの合意だった。


事件の余波が落ち着くと、黄金峡谷の人々は感謝の気持ちを形にする。

彼らは自分たちにできる最大限の恩返しとして、神妖の飛行船に黄金の装飾を施し、金で作られた贈り物の山を差し出した。

それは派手な見た目だけでなく、心からの謝意の証でもあった。


リツレンは静かにそれらを受け取りながら胸に誓う。

「もっと強くなる――仲間も、守れるように」


空は再び穏やかさを取り戻し、黄金の街では人々の足音が復興のリズムを刻み始めた。

戦いは過ぎ去ったが、そこで生まれた絆と決意は、確かに彼らの胸に刻まれていた。

みんなの応援が力になる!これからもよろしくな!

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