表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

ポクローク星編 梟惑の襲撃

リツルンは、ただ一人で厳重に守られた城へと足を踏み入れた。

恐怖は確かにあった。それでも――強者になるためには、この道を通らねばならない。

その覚悟だけが、彼の背中を押していた。


だが、現実は非情だった。

まだ力が足りない彼は、あっという間に敵に捕らえられ、暗く深い地下牢へと放り込まれる。

そこは、終わりのない苦痛が待つ絶望の檻。

彼の試練は、今まさに始まったばかりだった――。

四日間の航行の末、ついに視界に変化が現れた。

宇宙船の窓から見えるのは、巨大な赤い星。表面が不気味に光り、まるで煙を吐いているかのようだ。


「ここが……ボクオーク星か……」


リツルンは額に汗を浮かべた。こんな恐ろしい星を目にするのは初めてだ。胸の奥で鼓動が速まっていく。


星全体が無数のトゲで覆われている。遠くに見える山脈さえ、刃物のように天へ突き立っていた。

発見されないため、都市から遠く離れた荒地に着陸するしかない。

着陸した瞬間――


ガキィィンッ!


船体を鋭いトゲが突き破らんとする音が響き、全員の心臓が跳ね上がった。


「……ここの地面、本当にやばいな」

モディアクが険しい表情で言う。

「防護服なしで歩けば、骨まで貫かれるぞ」


だが、彼は準備を怠っていなかった。

一晩中かけて作り上げた七着の防護服を取り出す。それは船内の特殊な金属と防御繊維を縫い合わせたものだ。

鋭いトゲを防ぎ、さらに現地の住人の体型に似せた擬装機能まで備えている。


装備を着込み、ようやく彼らは赤い大地に降り立った。

空気は重く、どこか鉄の匂いが漂っている。


「……あれ、見ろ。鉱夫だ」


視線の先、背中に小さなトゲを無数に生やし、岩のように硬い筋肉を持つ男が岩壁を叩いていた。


ゴンッ……ゴンッ……


彼に近づき、リツルンは鼓動を抑えつけながら声を絞り出した。

「……あの、目覚めの剣は、どこに……?」


鉱夫はゆっくりと動きを止め、冷たい視線を投げる。

そして、遠くの巨大な城を指さした。


「……あそこだ。ハリ将軍の城だ」


それだけ告げ、再び岩を砕き始める。


「ありがとう!」

全員が深々と頭を下げ、その場を後にした。


都市に入ると、円形の建物が蜂の巣のように連なっていた。

どの家も赤い光を放ち、鋭いトゲで支えられた檻のようだ。


「なんだよ……この街……」

リツルンが思わずつぶやく。


その時だった。


――ふわりと、強烈な香りが鼻を突いた。


「……っ! この匂い……ヤバい!」


ヴェンジ・ロックの目が輝く。

気づけば彼は全力で走り、路地の先にある屋台に飛び込んでいた。

そこには、湯気を立てる巨大な料理が……!


「やっべぇ……超うまそうじゃねぇか!」


「お、おい店長! この料理、どうやって作ったんだ!?」


ロックが目を輝かせ、身を乗り出して叫んだ。

幸い翻訳機があるので会話は問題ない。


だが――彼らは今、剣を盗みに来ているのだ。のんびりグルメ談義をしている場合じゃない。それに、この星の通貨なんて持っていない!


「行くぞ! 恥をさらすな、このバカ!」

カイとビリーがロックを強引に引きずり、彼の名残惜しそうな視線を店に残してその場を去った。


そして、ついにたどり着いた。


漆黒の城。

雲を突くほど高く聳える壁、まるで地の底から引き抜かれた黒曜石の山だ。周囲には無数の兵士が巡回し、その圧迫感に誰もが息を呑む。


「正面突破? 無理だな!」

シンジランが吐き捨てるように言った。

「突っ込めば一瞬で叩き出されるに決まってる!」


モディアクは顎に手を当て、じっと壁を見つめた。

「上から……いや、ダメだ。あの壁、鋼鉄より硬い」


沈黙が落ちる。全員が行き詰まり、重苦しい空気が漂った――その時。


ポンが腕を組んだまま、ゆっくりと振り向き、リツルンを見た。


「光速だ」


「えっ……?」

少年は思わず声を漏らす。


ポンは真っ直ぐ彼を見据え、言った。

「光速の特性を使えば、誰にも見えずに潜り込める。――リツルン、お前が行け」


空気が一瞬で張り詰める。

全員の視線が十三歳の少年に集中する。心臓がドクンと鳴り、膝が震えた。


だが、胸の奥に小さな声が響く。


――僕は、もう逃げない。

――冒険者になったんだ。

――ここで勇気を見せるんだ!


「……やってみせ


彼は決意し、息を整えると、光の速度で姿を消した。



城内――。

リツルンは何度も廊下を駆け抜け、部屋という部屋を探したが、剣の姿はない。

額から汗が滴り落ち、息は荒い。

「くそっ……どこだよ……!」


その時――

「誰だっ!?」


兵士がこちらを覗き込んだ。

リツルンの背筋に冷たいものが走る。次の瞬間、全力で駆け出した!


警報が鳴り響く。

「侵入者だ!!」

真紅のランプが回転し、城全体が混乱に包まれた。


リツルンは通信機を握り、叫ぶ。

『バレた! 城がヤバい!』


仲間たちがそれを聞いた瞬間――迷いはなかった。

「もう隠れる意味はねぇな!」

全員が鎧を脱ぎ捨て、堂々と敵兵と激突した。


二人、三人、瞬く間に地に沈む兵士たち。

「くそっ、間に合え!」

仲間たちは警報が鳴り響く中、大門が閉じる瞬間に滑り込み、正面からの戦いが幕を開けた――!



リツルンはまだ走っていた。

体力は限界に近い。

だが――


「……あった……!」


目の前に広がる豪華な部屋、その中央にそれはあった。

――目


彼は震える手で通信機を取り、仲間に知らせた。

『剣を見つけた!』


モディアクの声が返る。

『よし、どこかに隠れてろ! すぐ行く!』


リツルンはベッドの下に潜り込み、息を殺した。

だが、時間が過ぎても誰も来ない――。


ガチャリ。


扉が開く音に、心臓が跳ね上がる。

現れたのは――全身から凍りつくような威圧を放つ男。

彼が手を伸ばし、剣を掴んだ瞬間、リツルンは悟る。


――ハリ将軍だ。


「……ハリ……!」


思わず声が漏れた。

ハリの動きが止まり、ゆっくりと後ろを振り向く。


息が詰まる。喉が凍る。


その時――

「リツルンッ!!」


モディアクとカイが飛び込んできた!

モディアクはためらわず銃を抜き、ハリの頭を狙って引き金を引く――!


だが、甘い。

ハリの剣が一閃、銃弾を弾き飛ばし、次の瞬間、暴風が巻き起こった。

二人は壁まで吹き飛ばされる!


「強すぎる……!」


ハリが剣を掲げると、その刃から赤いオーラが噴き上がる。

だが、背後から影が迫った――ポンだ!

彼の拳がハリの後頭部を打ち抜く!


だが、それでも――倒れない。


次の瞬間、大量の兵士が雪崩れ込んできた。

銃口がこちらを狙う。

仲間たちは互いに視線を交わし――一斉に爆発するように動いた!


「うおおおおおッ!!」


戦場は一瞬で火花と血飛沫に染まった――!



「全員、武器を捨てろ! 動くな!!」

外から現れたのは――地球人。

その傲慢な態度に、リツルンの中で何かが切れた。

「……死刑だと……!?」


ゴッ!!

少年の拳が地球人の顔面に突き刺さる。

鼻血が飛び散り、男は怒号を上げた。


「捕まえろ!!」


敵兵たちが殺到する中、リツルンは必死に抵抗――だが、捕まってしまった。


その時、背筋が凍るほどの殺気が走る。

――現れたのは、第一剣神・ショウワクだ。


「やっと……見つけた」


ポンの瞳が揺れる。

かつて、絶望を味わった男。

その名を聞くだけで震えた相手が――今、目の前にいる。


「お前だけは……俺が倒す!」


二人の殺気が衝突し、空気が震える。

次の瞬間、暴雪の嵐と炎がぶつかり、戦場は地獄と化した――!


モディアックたちが戦っていたその戦場では、ロックとドメグが将軍ハリーを相手に必死の攻防を続けていた。

だが、神剣を失ったハリーは明らかに焦っている。その手には、あの象徴だった剣がない。目の奥に浮かぶのは、ただの恐怖だった。


――その時だ。


「……神剣、奪還成功だ!」

耳元の通信機から届いた声に、モディアックの胸が熱くなる。


「よしっ……!」


迷うことなく、彼はロックたちを残し駆け出した。新ギランの元へと一直線に――。

息を切らし辿り着いたその先で、彼の目に映ったのは、血だらけで横たわるポンの姿だった。


「ポン! お前、大丈夫か!?」


必死に声をかける。

か細いが、それでも確かな声が返ってきた。

「……まだ……やれる……」


安堵したのも束の間、モディアックは地面に突き立てられた神剣を握り締めると、振り返りざまに叫んだ。

「ロック、ドメグ……待たせたな!」


再び戦場へ――。

戻った彼の目に映ったのは、苦戦しながらも立ち向かう仲間たち。そして、神剣を手にした瞬間、ハリーの顔から血の気が引いていくのが分かった。


「な、なにっ……!」

額に汗を浮かべ、ハリーは一歩後退する。


モディアックは雄叫びを上げた。

「――螺旋風暴スパイラルストームッ!」


突如巻き起こる嵐。空気がうなりを上げ、戦場を切り裂く。

そこへ、ロックの声が飛んだ。

「合わせるぞ――大火炮メガフレアキャノンッ!」


炎と風が交わり、轟音と共に一つの巨大な技となる。

燃焼暴風バーニングテンペストッ!」


灼熱と暴風が戦場を覆い尽くす。

ハリーは必死に耐えようとするが――その力は、あまりにも圧倒的だった。


「ぐ……ぅぁあああああッ!」

咆哮を上げながら、炎と嵐に呑まれていくハリー。

ロックが叫ぶ。

「――これで終わりだッ!」


無限火海インフィニットフレイムが炸裂し、戦場は一瞬にして紅蓮の世界に変わった。

やがて炎が収まった時、そこにハリーの姿はなかった。

長き戦いを続けた将軍、その生涯は――今、終わったのだ。


「……はぁ、はぁ……」

仲間たちはその場に膝をつき、荒い息を吐く。

しかし、束の間の静寂を破ったのは――冷たい声だった。


「――リツレンと、カイが……いない……?」


誰かが呟くと同時に、全員の顔が険しくなる。

その時、遠くから漂う淡い光――それは、幽霊のように揺れるカイの姿だった。


「カイ!? お前……何があった!?」

全員が駆け寄る。

だが、その表情は重く、言葉も沈んでいた。


「……状況は、最悪だ。リツレンが……あの地球人に連れ去られた。名前は――シリア。今、リツレンは地下数百メートルの牢獄に囚われている……!」


その言葉に、モディアックの心臓が凍りつく。

「……なにっ……!?」

彼の胸に広がったのは、焦燥と怒り、そして――恐怖。


「カイ! 場所を教えろ! 今すぐ、行く!」


仲間たちも頷き、新ギラン、回復したポンも含め、全員の視線が一点に集中する。

「――リツレンを、取り戻す!」


次の戦場は、地下深くの暗黒。

だが、その瞳には、もう迷いなどなかった。

みなさん、ごめんなさい。戦闘シーンを細かく書くのはあまり得意じゃなくて、熱く書こうと頑張ったんですけど、やっぱり少し物足りない気がします。

でも、大丈夫!これからもっと上手くなれるように頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ