華民団の正式な崩壊――これが神妖軍団を怒らせた者の末路だ……
本来、神妖軍団はただ鬼襲賽龐星でゆっくり休むつもりだった。
ところが、命知らずの華民軍団は大軍を率いて攻め込んできたのだ。
三千もの兵を擁していても――勝敗を決めるのは、やはり本当の実力……。
――その時、六人の創造者の一人、ケンディ・セモクヤフィが、顔面蒼白でセンゼの元へ駆け込んできた。
「……大変だ! 三千隻以上の戦艦がこっちに向かっている! しかも、先頭を率いているのは――華民軍団だ!」
センゼはその数字を聞いた瞬間、表情を硬直させた。
「三千……!? くそっ、想像以上だ!」
彼は即座に全軍へ指示を飛ばす。数万体規模の戦闘用生物が次々と召喚され、戦場へと駆け出していく。
「行け! 一匹残らず食い止めろ!」
しかし、華民軍団の艦隊は自信満々に突き進んでくる。だが、彼らは知らなかった。この直後、無数の核弾頭が空を裂き、先頭の戦艦を一瞬で吹き飛ばすことを――。
「なっ……!」
衝撃波と共に、前列の艦隊が火花とともに消え去った。しかし陳桔韓は慌てることなく、口角を上げていた。
「――A計画、発動だ。」
彼が手を振ると、見えない結界が艦隊全体を包み込む。無形の防御フィールドだ。残ったのはおよそ二千八百隻。陳桔韓はさらに命令を飛ばした。
「全艦、最大速度で突撃! 一気に鬼襲賽龐星を突破する!」
次の瞬間、艦隊は怒涛の加速を見せた。しかし、その行く手を阻むかのように、前方の宇宙空間に――六本腕の巨大な巨人が現れた。
「なんだ、あれは……!?」
巨人は六本の腕を広げ、全力で艦隊の進撃を阻止する。しかし――。
「効かねぇな……」
艦隊は速度を落とさない。鬼襲賽龐星は、もはや目と鼻の先だった。
センゼは歯を食いしばり、最後の切り札を取り出す。
「……仕方ない、これを使う!」
彼の手に握られていたのは、全宇宙最強の衝撃波砲。触れたものをすべて粉砕する究極の兵器だ。
「……っ、電力が……足りない!? 充電しろ、急げ!!」
必死に充電を進めるが、時間はない。ようやく一撃分のエネルギーが溜まったその瞬間、センゼは叫ぶ。
「撃てぇぇぇ!!!」
轟音とともに放たれた衝撃波は、艦隊を覆っていた防御フィールドを一撃で粉砕した。しかし――戦艦自体には傷一つない。
「……嘘だろ……」
充電する時間など残っていない。センゼは全兵器に総攻撃を命じる。再び数千発の核弾頭が宇宙を赤く染めた。艦隊の数は減っていく――しかし。
市街地上空。
残された二千隻以上の艦隊が、炎をまといながら急降下する。
「――まずい!」
誰も止められない。次の瞬間、鬼襲賽龐星の都市中央に、轟音と共に爆発が走った。
だが驚くべきことに――建物は一つも崩れなかった。この星の建築強度は、まさに桁外れだった。
だが、艦内の生存者たちは、次々と這い出してくる。そして――街の破壊を開始した。
「止めろぉぉぉ!!!」
住民たちは備蓄していた武器を手に立ち上がる。しかし、敵の力は圧倒的。一撃で鬼襲賽龐星人が吹き飛ぶ。銃を撃つ暇すらない――。
その時、空を切り裂いて戦闘機部隊が到着した!
「星河軍だ!」
住民の歓声が上がる。鬼襲賽龐星の精鋭部隊――彼らの戦闘機には「鬼麻砲」が搭載されており、命中すれば即座に相手の神経を麻痺させる。
一人、また一人と敵が地面に倒れていく――。
だが、その光景を冷ややかに見下ろす影があった。
「――終わりだ。」
陳桔韓が姿を現し、戦闘機に向かって手をかざす。そして――拳を握りしめた瞬間、空の戦闘機が煙と共に消え去った。
「……な、何だと!?」
神妖軍団の仲間たちは息を呑む。
「これが……俺の新しい力、『暫時殲滅』だ。」
陳桔韓は不敵に笑いながら、次々と戦闘機を消し去っていく。
「ふざけんな!!!」
龐が怒りに震え、全力で殴りかかる。しかし――その姿は、次の瞬間、跡形もなく消えた。
「……龐が……消えた……!?」
仲間たちに衝撃と絶望が走る。陳桔韓は狂ったように嘲笑し、挑発を続ける。
その時――。
「諦めるなぁぁぁ!!!」
一人の鬼襲賽龐星の住民が、銃を手に陳桔韓へ突進した。しかし、次の瞬間、無残にも命を落とす。
だが――彼の叫びは、確かに響いた。
「そうだ……諦めない……!」
新吉蘭の瞳に炎が宿る。
「行くぞ!!」
七人の神人が立ち上がった。彼らは敵軍十万に対し、己の誇りを賭けて立ち向かう覚悟を決める。
「外部の援軍は呼ぶな!」
新吉蘭が叫ぶ。
「これは――俺たちの戦いだ!」
仙澤は唇を噛み、頷いた。住民たちは避難させる。戦場は、いよいよ―。
戦場は轟音とともに幕を開けた。
敵も味方も関係なく、全員が前へ――ただひたすら前へ突き進む。
華民の弱き者たちは、死を覚悟し、前線へと飛び出した。
それは後方にいる仲間たちに、少しでも有利な布陣を作るため。
――だが、「龐」の姿が見えない。
その事実が神妖軍団の心を大きく揺らし、誰もが胸の奥
「……この戦、もう負けるんじゃないか」
だが、その空気を切り裂いたのは、新吉蘭の不屈の心だった。
――「諦めるな!生き延びて、全員で勝つんだ!」
その言葉に呼応するよ
臨時隊長となった新吉蘭は、冷静に戦況を読み取ると、
兵を七手に分ける決断を下した。
「一網打尽だけは避けろ!」
そう叫び、自らは最も危険な中央ルー
彼は刀の柄を強く握り――
「N角星!」
瞬間、雷光が星の形を描き、前線の敵は一瞬で屍と化した。
「動けば……殺される」
恐怖に凍り付き、誰一人として近づこうとしなかった。
新吉蘭はそれに気付き、逆に一歩、また一歩と前進する。
そして、さらに巨大な**「N角星」**を発動。
「反撃だ!!」
――だが、全てが遅すぎた。
神妖軍団の仲間たちも次々と敵を薙ぎ倒していく。
その様子を見て、ある女がついに前に出た。
彼女の名は――楊卉美。
華民最強十二人の一角、その唯一の女性であり、
その容姿は誰もが振り返るほど可憐で、気品さえ漂う。
だが、その力は――容姿に決して見合わぬ恐
入団当初は「花瓶」などと侮られてい
次
楊卉美が得意とするのは――“転送流能”。
絶え間なく空間を跳び回り、敵を翻弄しながら長槍で仕留める。
その彼女に、真っ先に挑んだのは――ロックだった。
「俺がやる。お前たちは他を頼む!」
ロックは火球を放ち、まずは様子を見る。
だが――
「そこだ!」
――そして、激しい攻防が始まった。
四方八方から現れる楊卉美に、ロックは防戦一方。
己の体を炎
そして、ついにチャンスが訪れた。
ロックは巨大な火球を召喚し、自らを包み込む防御を展開。
その瞬間を狙っていた楊卉美が飛び込んだ時――
だが、彼女も即座に転送で回避。
……しかし、
「――っ!」
激
その時のロックの瞳は、氷のように冷たく、
まるで処刑人のようだった。
炎を纏った武士刀を抜き――
ロックは跳ねるように加速する。
「終わらせる……!」
その殺気に、楊卉美の背筋を凍らせる恐怖が走る
――「負けない!」
彼女も必死で自分を奮い立たせ、長槍を構えた。
空間を跳び、ロックの頭上に現れ――
「死ねぇぇ!!」
だが、その一撃はロックの手で受け止めら
――そして発動する奥義。
「旅する槍」
長槍を投げ放ち、それを転送で戻す必殺の一撃!
しかし、間合いは――近すぎた。
ロックは死を覚悟するが、その時――
「ロック!」
凱伊の分身が身を挺し、槍を弾き飛ばした。
「助かった……!」
ロックは短く礼を言う。
だが、楊
彼女の子飼いの兵士たちが一斉に襲いかかってきた。
ロックは次々と薙ぎ倒すが、彼女はなおも立ち上がる。
それは――龍の顎。
次の瞬間、炎の龍が現れ、
ロックは、ただ静かに立っていた。
彼は彼女の亡骸を抱きしめ、涙を止められなかった。
やがて、怒りに震え、ロックに刃を向ける。
「これが……戦場だ」
林聖瀚はその場に崩れ落ち、
そのとき、モディアクはチャン・ジェアンと白熱の一騎打ちを繰り広げていた。
相手が使うのは「呼吸流能」。呼吸によって自らを治癒し、肉体を強化する――そんな異質な流能だ。また、彼が振るう日本刀は特注の一振り。銃も刀も同時に扱うチャンの戦法は、モディアクにとって頭の痛い相手だった。
一度傷を負えば即座に回復し、こちらの出方を見透かすように攻撃を予測してくるチャン。モディアクは銃と刀を素早く切り替え、あらゆる角度から挑むが、チャンは微塵も崩れない。状況は膠着し、歯がゆさだけが募っていった。
そこでモディアクはひらめく。――彼の技を“盗む”のだ。
チャンが毎回繰り出す型を、目で追い、身体で記憶する。出招の直前に対応する防御を挟み、そのまま反撃に転じる。そんな泥臭い作戦を、モディアクはひたすらに繰り返した。
ついに隙が来た。チャンがいつもと同じ連続技を使った瞬間、モディアクは先読みして刃を滑らせ、完璧な弧を描くように斬り返した――はずだった。だが、チャンも一枚上手だった。空中で二段跳びを見せ、呼吸を一点に集中させると、右太腿に気を満たして――音速の蹴りがモディアクの面を正確に捉えた。
その衝撃は凄まじく、モディアクは体ごと五百メートルも吹き飛ばされる。血が口から溢れ、顔には大きなアザが広がっている。それでも彼は這い上がった。重みを感じる体を必死に支え、前を見ると――チャンがゆっくりと歩み寄り、嘲るような目で一言つぶやいた。
「さよならだ。」
チャンは鞘に手をかけ、抜刀の体勢に入った――その瞬間、胸のあたりに鋭い痛みが走り、動きがピタリと止まる。数秒ののち、チャンは真っ直ぐに倒れた。
モディアクが視線を遠くに向けると、そこにはケイが立っていた。手にはあの“毒の銃”が握られている。あの銃は――そう、モディアクが吹き飛ばされたときにうっかり落としたものだった。その小さなミスが、今、命を救ったのだ。
モディアクは冷静に状況を計算する。ケイの銃が入れたウイルスは致死性を持ち、発症すれば全身に広がり、極度の苦痛とともに十数分のうちに生命を奪う。彼の計算では、チャンは――あと十分もすれば完全に病に囚われ、もはや手の施しようがない。
胸の内で複雑な感情が交差する。勝利の余韻すら許されない、戦場の冷たい現実。だが今はただ、倒れた相手と、自らの仲間たちを見据える時間だった。
その瞬間、天から一つの影が落ちてきて、真っ直ぐモディアクの胸めがけて着地した。妹のドメグだった。体は傷だらけで、見るに堪えない――モディアクは、傷ついた妹を抱き上げて言葉を失う。
そしてもう一人が地面に降り立った。ワン・フェイチ――金の球を二つ携えた男だ。その球は壊れず、命中率はほぼ百パーセント。弱い者を弄ぶのが趣味らしく、致命には至らない“苦しみ”を与えることを楽しむ性質を持っていた。隣でいつでも救いの手を差し伸べようとしていたドメグが、すぐに彼の玩具になってしまったのも当然の流れだった。
ワン・フェイチはモディアクの胸元で妹を抱く彼を見て、牙を剥くような目を向ける。「手放さなければ、思い知らせてやる」と脅しを放つ。モディアクは静かに無視し、傷だらけの妹を懸命に慰めるだけだった。憎むべきクズを片付けるのはたやすい、とでも言わんばかりだった。
だがワン・フェイチは待たない。二つの金球を振り下ろし、モディアクの頭部めがけて重くぶつける。モディアクは咄嗟にドメグを抱き締め、球の直撃を己の身体で受け止める。球が何度も肉体を叩きつけるたび、鈍い衝撃が全身に走る。しかしモディアクの内には、既に一つの策がめぐっていた。
仲間のケイが割って入ろうとした瞬間、モディアクは制した。「兄妹の事には口を出すな」と短く命じる。その一瞬の隙を突いて、モディアクは全身の力を一点に集めた。刃を構え、わずか0.1秒にも満たない速度で突き出す――刃はワン・フェイチの腹を貫き、血が噴き出した。攻撃の勢いが弱まったところへ、さらに全エネルギーを腕に送り込む。ワン・フェイチの上半身は無情にも真っ二つに裂け、その場で絶命した。妹を傷つける者に、モディアクは容赦しなかった。死に様は無慈悲で、しかし確かに答えは出された。
モディアクは遠くを見据える。十本ほどの巨大な雷柱が地面を打ち砕くように落ちていた。そこに立つのは――シンジランだ。天から降り立ったかのように、誰もが動けないほどの圧倒的な威容で、誰にも止められぬ様相をしている。対峙するは華民軍団の団長、チェン・ジエハン。チェンの弱点は電流だ。体内の術力が電流で攪乱されるため、シンジランの雷は最大の脅威となる。
シンジランは勝ちを信じているわけではない。時間を稼ぎ、パン(龐)が現れるのを待っているのだ。だが巨石が降り注ぎ、シンジランも徐々に追い詰められていた。だが――天は味方した。空に黒い稲妻が閃き、それは消えたはずの戦闘機たちと、パンの在処を示したのだ。シンジランはほっと息を吐いた。チェンは狼狽し、必死に石で押さえつけようとする。さらに隕石を呼び寄せ、決定打を狙うつもりだ。
そのとき、消えたはずの姿が再び現れる。黒い稲妻の中、パンが輝きをまとって舞い降りた。彼の拳が大地を砕く。パンの拳が地面に叩きつけられた瞬間、天地が揺れ、十メートル級の裂け目が走る。多くの者がその亀裂へと吸い込まれ、戦場は混乱に陥る。神妖軍は即座に撤退を命じられ、居合わせた隕石群も、その凄まじい振動の前に粉々に砕け散った。
チェンは狼狽して逃げ出したが、逃げ切れるほど幸運ではない。飛行機の“鬼麻砲”が正確に彼を捉え、彼は地に倒れた。パンはそれ以上の追撃をしない。彼の拳の一撃で、チェンの大兵団は一夜にして崩れ去ったのだ。チェンは、築き上げた大軍団が消え去るのを見て、悔恨の涙を流す。しかしその涙も、己が犯した悪と結びつく。高位者たちの手先となり、罪ある行いを働いた代償は避けられない。
――戦いは終わらない。だが、今宵は確かに一つの区切りを迎えたのだ。
最大の団長が「鬼麻砲」に制裁されると、華民の戦闘力は一気に麻痺した。強者たちが戦場で次々と倒れ、士気は地に落ちた。鬼襲賽龐星側はさらに無敵の手錠を取り出し、その瞬間を以て――華民大軍団の滅隊が正式に宣告された。
彼らは鬼襲賽龐星が管轄する巨大な監獄星「羅網星」に投獄された。ここは銀河中の罪人が収容される場所で、侵略に失敗して囚われたアシータ星の人々も多く閉じ込められている。華民軍団は、九王軍の中で最初にこの羅網星へ送り込まれた一団だった。
団員たちの多くは第二層の「火燒樓」に押し込められた。そこは牢獄の壁が常に灼熱の炎に包まれており、そこにいることは焼却炉の中に住まわされるのと同義である。だが、それでもまだマシな扱いだとさえ言える者たちもいた。最も罪深い首謀者、陳桔韓は地下二十層にあるという「黒洞楼」へ送られたのだ。そこへ入れられるのは、星際で極めて悪質な犯罪を犯した者だけである。
陳桔韓は自分の独房へ向かう途中、囚人たちの無残な姿を見た。腕や脚が欠けている者、欠損だらけの者ばかりだ。ここでは罪人たちが非人道的な扱いを受けている。やがて彼は専用の独房に連れ込まれる。手足は見えない力で拘束され、ちょっと動こうとするだけでも申請が必要だ。逃走を防ぐため、監獄側は囚人の弱点を狙った制裁を用いるという。陳桔韓に課されたのは生涯にわたる「血電」という処罰だった。
血電とは、人体の血管に沿って電流が流れ続ける仕組みだ。その電撃は魔力の発動を根本から断つことを目的としており、陳桔韓は永遠に魔法を使えなくされる運命にある。
隣の独房には、かつての彼の首領ハタス・羅兆がいた。彼はかつての蛇強軍団の団長であり、陳桔韓はかつてその配下だった。だが、ある極めて危険な任務が舞い込み、羅兆は当初それを拒否した。しかし成功報酬の額を聞くと考えを変え、若き日の陳桔韓を含む五人の十代未満の子供たちを基地に残して出征した。残された子供たちは、その任務が「最後の別れ」になるとは夢にも思わなかった。数日後、彼らは仲間たちが二度と戻らないことを知り、深く傷ついた。
泣き暮らす日々の中で、最も幼かった陳桔韓だけが現実を受け入れた。彼は新しい軍団を立ち上げる決意を固める。羅兆の意志を引き継ぎ、やがて宇宙で最強の軍団となることを夢見た。残された六人はすべて華人だったため、彼はその名を「華民軍団」と名付けた――その名はやがて銀河に轟くことになるだろう。だが同時に、永遠に消えない汚名を背負うことにもなるのだ。
自分の物語のテンポ、どんどん速くなってきてる気がする : )




