しょこうのとき
十三歳の少年・リード=リルン。
彼はある日、わずか十秒で二人の大人を打ち倒し、その力を〈神妖軍団〉に見出される!
突然の勧誘。突如訪れた、夢にまで見た宇宙への旅立ち。
そして、彼の人生初めての大冒険が幕を開ける――!
飛行船の中で出会ったのは、個性豊かな仲間たち。
笑い合い、食卓を囲み、そしていつか肩を並べて戦うであろう大切な仲間たち。
だが、リルンに休む暇はなかった。
初任務の地は、伝説の剣〈覚醒の剣〉が眠る惑星・ポクウォク星。
胸を高鳴らせながらも震える手を握りしめ、リルンは心の中で叫ぶ。
――「今こそ、オレの力を証明する時だ!」
仲間に認められるため。
夢を現実に変えるため。
少年は星の海を駆け抜け、最初の戦いへと飛び込んでいく!
――アシタ星・ラブラ島・バルンの街。
1156年12月10日。冬の冷たい朝。
けれど、その街角には妙に明るい活気があった。
子供たちの笑い声、大人たちの威勢のいい掛け声、どこかお祭りのような空気が漂っている。
そんな人混みを駆け抜けるひとりの少年。
名前はリード・リルン。今日で十三歳になる、ごく普通の少年――のはずだった。
「よっしゃ! 今日こそは最高の一日にするぞ!」
彼はいつもより早起きし、胸を躍らせながら家を飛び出していた。
笑顔で近所の人々に挨拶を交わし、軽やかに街角を走り抜ける。
そう、本人にとっては――この日が、人生の大きな転機になるなんて知る由もなかった。
「おい、ガキ……運が悪かったな!」
突然、荒々しい手が彼の腕を掴んだ。
現れたのは二人のごろつき。横顔は醜く歪み、獲物を見つけた猛獣のように牙をむく。
リルンは驚きのあまり声も出せず、必死に暴れた。
しかしその瞬間――
ふっと、体が軽くなり、ごろつきの手が空を掴む。
「な、なにっ!? 消えた……!?」
次に視線を向けたとき、そこに立っていたのは震えながらも目を強く見開くリルンの姿。
彼の体からは、今にも爆発しそうな力が溢れ出していた。
「うああああああっ!」
足元から稲妻のような衝撃。
次の瞬間、リルンの小さな体は矢のごとく突進し、ごろつきの腹に直撃する!
「ぐぼっ!?」
「わあああっ!?」
二人は麻袋のように吹き飛ばされ、地面を転がりながら悲鳴を上げる。
「ば、化け物だぁあああ!!」
彼らは蜘蛛の子を散らすように逃げ去り、路地に残されたのは荒い息をする少年ひとり。
自分の震える手を見つめ、呟いた。
「い、今の……本当に……オレの力……?」
その時だった。
ざわめく人波が割れ、一人の巨漢が静かに歩み出る。
街全体を圧するような存在感。
リルンの瞳が大きく見開かれる。
――九王軍の一角、〈神妖軍団〉団長、キースア・ポン!
「な、なんで……本物!?」
雑誌で何度も見た顔。その男は目の前でしゃがみ込み、少年に問いかけた。
「小僧。オレたち〈神妖軍団〉に来る気はあるか?」
その声は重く、だが不思議なほどに心を揺さぶった。
リルンは呆然とする。自分のような小さなガキが……九王軍に?
だが、ポンの目には一切の冗談がない。
心の奥底に眠っていた夢が浮かび上がる。
――この星を飛び出し、広い宇宙を冒険したい。
その憧れが、今、現実と重なった。
「……オレ……行きます!」
少年はついにうなずいた。
ポンの口元がわずかに笑みを刻む。
そして彼を連れ、神妖軍団の仲間たちが待つ市場へ。
「団長、それ……本気ですか? ただの子供じゃ……」
「買い物が終わったら、飛行船に戻るぞ。」
冷ややかに返すと同時に、巨大な飛空艇が咆哮を上げ、空を裂いて宇宙へと上昇していく。
胸を高鳴らせるリルンは、不安と期待に挟まれながら小さく呟いた。
「……宇宙で、息……できるのかな……」
そんな彼に声をかけたのは、眼鏡をかけた知性の男――〈世界教授〉モディアク。
「心配いらんよ。これはアシタ星最高の技術の結晶さ。」
やがてポンは仲間たちを前に、堂々と告げた。
「次の目的地――ポクウォク星。目標――神剣〈覚醒の剣〉の奪取だ。」
その名に場の空気が一変する。
伝説級の聖剣、選ばれし者のみが扱える究極の刃。
リルンの胸は再び高鳴る。
「これが……オレの冒険の始まりなんだ……!」
船内で、彼は仲間たちと出会う。
万物を知る知恵者――〈世界教授〉モディアク。
その拳ひとつで戦局を覆す男――〈神の一拳〉キースア・ポン。
「宇宙一」を夢見る雷鳴の狂戦士――〈雷神〉シンジラン。
豪快な料理で仲間を支える炎の料理人――〈炎帝〉ロック。
サポートの達人――〈大助〉カイ。
どんな機械も修復する天才工匠――ビリー・ヴァルクシア。
皆の癒しであり、治癒を担う団のマスコット――トスカイ・ドメグ。
夜になると、ロックが渾身の料理を振る舞う。
「今日は特別だ! 俺の最高のステーキだぞ!」
肉汁が滴る一口を頬張った瞬間――
「う、うまっ!!!」
リルンは思わず声を張り上げ、笑顔で何度も叫んだ。
ロックは鼻を鳴らし、誇らしげに笑う。
「はっはっは! もっと食え、坊主!」
そうして賑やかな夜が過ぎる。
十三歳の少年、リード・リルン。
心臓がこれまでにないほど大きく打ち鳴らす。
――彼の宇宙冒険は、ここから始まったのだ。
第一章を書いているとき、ワクワクする気持ちと同時に、不安な気持ちもありました。
ワクワクするのは、自分で作り上げた小さな宇宙がすごく気に入っているからです。
不安なのは、その中のストーリーが皆さんの好みに合わなかったらどうしようと思うからです。




