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これは誰にも言えない恋です。
「おはようございます」
いつものように挨拶を交わす相手は担任の佐伯。周りの人間は皆彼のことをさえ先と呼ぶ。
「おはよう」
軽そうなニットに黒暗のズボンを身につけていた。私は灰色によく似合う緑のリボンを身につけていた。季節は冬。十二月四日。
「出欠取りまーす。青木、井口、榎本‥‥」クラスの子たちが次々と呼ばれ返事を返した。
「中野」
私の苗字が読み上げられ、声で返事をした。
「さえ先クリスマス暇ー?うちらと遊ばん?」クラスの一軍陽キャ達が佐伯をクリスマスデートに誘っている。無論、ネタ混じりな行為なんだろうけど。
「俺もさー遊びたいんだよ?だけど先約あるんだわ」そうなんだ。別に悔しくない。たまたま片耳に聞こえてきただけだから。
「えー!彼女彼女?!」
「教えるわけないじゃん!もう授業始まるからっ」佐伯はそう言いって教室を後にした。私は何とも思わない。一限目は数学。朝から憂鬱な気分だ。