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最終章:みんな仲良しだね~♪ -あざとかわいい私、VR世界で守られまくるフィナーレ-

 VRMMORPG《Twilight Fantasia》正式サービス開始から、1クール分の日々が経過した。その中で、小妖精族の少女・シフォン(Ciffon)は、あざとかわいい行動と言葉で、無自覚に数多の男性プレイヤーたちを虜にしてきた。

 彼女は戦闘に弱く、単なる可愛い装備集めを楽しむだけの存在。しかし、天性の魅了スキルと、あざとかわいい仕草が彼女を取り囲む男たちの心をがっちり掴み、彼らを“推しメン”としてハーレム状態を築き上げてしまった。

 無骨な戦士グラント、クールなアサシンのカイ、寂しがり屋ヒーラーのエルネスト、カリスマギルドマスターのレオンハルト、頑固なNPC鍛冶屋ロジャー、黄金王アッシュ、中二病科学者キョーマ、新世界の神志望クロウ、DIO的支配者ディオン、冷酷戦略家トネガワ、そしてラオウ的拳王ラオ・ウ。

 これら11名がシフォンの傍にいると知ったら、世間は驚愕するだろう。彼らは個々に絶大な力や知恵、権勢を持ち、下手すればライバル同士で対立してもおかしくない性格のオンパレード。それでも、シフォンは皆から愛され、守られ、特別扱いされていた。


 そんなある日、世界に巨大な混沌の気配が立ち込め始めた。

 《Twilight Fantasia》では、正式サービス開始から一定期間が経過すると、大規模なワールドイベントが発生することが予告されていた。それは、「終焉の讃歌(ラグナロク・カンタータ)」と呼ばれる極大スケールの侵攻イベント。

 闇の深淵より無数の怪物が溢れ出し、都市や村を侵し、プレイヤーたちは総力戦でこれに立ち向かう。その中で、特定の“キーキャラクター”を守り抜くと、特別な報酬やストーリーが展開される……そんな噂が囁かれていた。


 誰がキーキャラなのか、誰も正確には知らない。しかし、実はシフォンこそが隠されたキーキャラだった。

 シフォンはベータテスト参加者限定種族であり、その存在自体に世界樹の精気が宿っている。イベント進行上、彼女が生き残ることで世界が救われるトリガーとなる――彼女自身はその事実を露ほども知らずに「かわいい羽飾りほしいな~♪」と、のんきに行動していた。


 そして、世界が暗転する。

 ある夜、プレリュードタウンの空が赤黒く染まり、深遠なる闇がフィールド各地を覆う。システムメッセージが流れ、プレイヤー全員に告知される。

 《世界イベント:“終焉の讃歌”が発生。深淵の魔物が各地に侵攻開始! 特定NPCおよび特定プレイヤーを守り抜け!》


 街は混乱し、冒険者たちは武器を取り、NPC商人や生産者は必死で避難する。そんな中、シフォンはいつも通りフリル魔導服で「うわぁ、真っ暗で怖いなぁ……」と困り顔。

 しかし、彼女が不安顔で路地を歩いた瞬間、影からぬるりと現れたのはクールなアサシン、カイだった。

 「シフォン、ここは危険だ。俺がついていく」

 その声は相変わらずクールだが、いつも以上に真剣だ。シフォンは「カイさん、ありがとう♪」と無邪気に笑う。


 さらに無骨な戦士グラントが現れ、巨大な剣を抜いて周囲を警戒する。

 「シフォン、俺が前に立つ。俺が盾となろう」

 シフォンは「あ、グラントさん! 今日も頼りになるね♪」と嬉しそうに言う。


 そこへ寂しがり屋ヒーラーエルネストが駆け寄り、「シフォンさん、僕が回復するから安心してね!」と、目を潤ませて必死の声。

 「エルネストさん、ありがとう、いつも助かるなぁ♪」


 カリスマギルドマスターレオンハルトは部下を率いて登場。

 「シフォン、君を狙う闇の勢力がいるらしい。俺のギルドが守ってやる!」

 「わぁ、レオンハルトさん、すごく頼もしい♪」


 NPC鍛冶屋ロジャーは鍛え直した特別な装備を差し出す。

 「お前、これを付けろ。軽くて丈夫な小型防具だ。俺にしか作れん一品だぞ」

 「わぁ、ロジャーさん、この装備かわいいし、しかも丈夫そう! ありがとう~♪」


 黄金王アッシュは宝石のように輝くレアアイテムをばらまき、

 「ふん、俺の宝物庫から選りすぐりのポーションと護符を用意した。これでお前を守る戦力がさらに高まるだろう」

 「アッシュさん、やっぱり豪華! 宝物いっぱいだね~♪」


 中二病科学者キョーマは奇妙な装置を取り出し、

 「ふははは! エル・プサイ・コングルゥ! シフォンよ、この時空干渉装置で魔物の奇襲を無効化してやろう! 君は俺が導く!」

 「キョーマさん、難しそうだけどかっこいい~♪ ありがとう!」


 新世界の神志望クロウは理詰めの策略を提示し、

 「シフォン、俺はこの闇の発生源を特定した。君が生き延びれば、合理的にこの世界は救える。俺を信じろ」

 「クロウさん、すごい頭脳だね! 助かるなぁ♪」


 DIO的支配者ディオンは影から不敵な笑みを浮かべ、

 「フハハハ、雑種どもめ、このディオンがいる限り、シフォンは指一本触れさせん! 我が時を操る力で敵を無力化してくれよう」

 「ディオンさん、相変わらずすごい威圧感! でも頼もしい~♪」


 冷酷戦略家トネガワは、

 「フン、君を守ることが最適解だと判断した。これより我々は効率的に防衛線を構築する。弱い君でも、この中枢にいる限り安全だ」

 「トネガワさん、ありがとう! 効率的って難しそうだけど、私を守るために考えてくれてるんだね♪」


 ラオウ的拳王ラオ・ウは静かに荒野から現れ、

 「フッ、弱者たるおまえをここで失うのは面白くない。我が拳がある限り、おまえを潰そうとする愚か者はすでに死んでいる。天をも掴む我が覇道の証人として、生き残るがよい」

 「ラオ・ウ様、なんだか怖いけど頼れる! ありがとう♪」


 こうして、シフォンを取り巻く11人の“推しメン”が奇跡的に同じ場所に集結した。みんなシフォンを守りたくて仕方がない。

 その時、空が裂け、闇色のドラゴンや悪魔じみた騎士モンスターの大軍が押し寄せてくる。地鳴りが響き、建物が砕け、NPCたちが悲鳴を上げて逃げ惑う。

 シフォンは思わず「わぁぁ、怖いよ!」と背中を丸める。


 カイは何の躊躇もなく影のように敵陣へ飛び込み、暗殺スキルで魔物を次々と仕留める。

 グラントは巨大剣で前線を支え、モンスターの突撃を受け止める頑丈な壁となる。

 エルネストは後方でヒールを連発し、シフォンだけでなく他の“推しメン”たちも傷つけまいと必死だ。

 レオンハルトはギルドの精鋭を率いて陣形を整え、前衛を支え、強力なスキルで軍勢を蹴散らす。

 ロジャーは鍛えた特別武器でサポート役を買い、可愛いが頑丈なシフォン用護符を再調整し続ける。

 アッシュは財宝から取り出した強力なレアアイテムを惜しみなく使い、敵モンスターを束縛する。

 キョーマは奇妙な機械で時空干渉し、モンスターの動きを阻害、カイやグラントが攻めやすいよう支援する。

 クロウは情報解析で敵の弱点を瞬時に見抜き、指示を飛ばし、皆を合理的に動かす。

 ディオンは「時よ止まれ!」とばかりに場を支配し、圧倒的パワーでモンスター精鋭を粉砕する。

 トネガワは状況を冷静に見定め、最適な配置を命じ、無駄な労力なくシフォンの安全圏を維持する。

 ラオ・ウは圧倒的な拳の一撃で、ドラゴン級の巨大モンスターすら一撃で屠り、あまりに強大な存在感で周囲の敵を恐慌に陥れる。


 こうした超豪華な守護陣がシフォンを中心に円を描くように並び、いかなる敵も近寄れない。

 しかし、イベントはそれほど甘くない。

 世界の深淵から、超巨大な魔竜王が降臨する。全長数百メートルの黒き翼、炎の息でフィールド全域を焼き尽くそうとする絶望的な存在。

 「きゃぁぁぁぁ!」

 シフォンは悲鳴を上げ、ウサギ耳アクセが震える。

 彼女は戦闘が苦手、逃げ足も遅い。この巨大魔竜王が一声吼えれば、たちまち炎で炙られかねない。


 「貴様ら、散開せよ!」

 トネガワが即座に指示。戦略的に配置し、竜のブレスに直撃しない位置を取る。

 「フハハハ、雑種の群れよ、俺の時の支配でその炎を無力化してくれるわ!」

 ディオンが一瞬時を捻じ曲げ、炎のブレスを回避可能なタイミングを作り出す。

 「エル・プサイ・コングルゥ! シフォン、今だ、ここから少し後退せよ!」

 キョーマが機械で足元の時空をねじり、シフォンを安全域へ移動させる。


 しかし魔竜王は賢く、ディオンの時操作に慣れていないのか、隙をついてシフォンを捕捉しようとする。鋭い爪がシフォンを狙い、巨大な影が彼女を包み込む。

 「ひっ…こわいよ~!」

 シフォンは泣きそうな声。だが、その刹那、アサシンのカイが影から跳び、魔竜王の目を暗器で刺し、動きをほんの一瞬止める。

 続けてグラントが剣を振り上げ、魔竜王の顎を斬り裂く。

 エルネストは緊急回復でシフォンのHPを上限まで引き上げる。

 レオンハルトはギルド総出で魔力砲撃を放ち、魔竜王の翼を傷つける。

 ロジャーは、シフォンに特製防御結界アイテムを手渡し、彼女の周囲に光の膜を張る。

 アッシュは宝物庫から取り出した伝説の鎖で魔竜王の脚を拘束し、動きを鈍らせる。


 「シフォン、よく聞け! 敵の魔力核は胸部付近だ。そこを狙えば倒せる」

 クロウが弱点を看破し、皆に共有する。

 「すばらしい分析力だ。今が好機である」

 トネガワがその情報を元に効率的な攻撃順を指定。

 「フン、敵が太陽の如き巨躯であろうと、我が拳があれば不可能はない」

 ラオ・ウが拳を天高く突き上げ、覇道の力で竜を屈服させるべく一気に拳撃を叩き込む。


 これだけの最強メンバーが力を合わせれば、たとえ超大規模イベントのラスボス級魔竜王も押し返せる。

 濁った世界が、必死の応酬で揺らめく。魔竜王の咆哮と光弾が降り注ぐが、キョーマが時空歪曲で弾道を曲げ、ディオンが時を止め、グラントが盾となり、カイが弱点を突き、エルネストが回復し、レオンハルトが指揮、ロジャーが装備強化、アッシュがアイテム提供、クロウが戦略策定、トネガワが最適解、ラオ・ウが止めを刺す。

 これ以上ない完璧な連携。まるで彼らは、目指すものは違えど、今だけはシフォンを守るという目的で一致団結している。


 シフォンは後ろから見ていて、「みんな、すごいねぇ……」と感嘆しながら、「頑張れ~!」と手を振る。その素朴な応援が不思議な加護となったのか、11人とその配下の戦士たちの士気は最高潮に達する。


 「これで終わりだ!」

 ラオ・ウが覇道の拳で魔竜王の胸部を貫き、内部の魔力核を砕く。

 「フハハハ、雑種の竜め、このディオンの前に沈め!」

 「合理的な選択だ。素晴らしいフィニッシュ」

 「はは、俺たちの勝利だ!」

 「シフォン、ほら、無事だろう!」

 「すごーい! みんなありがとう~♪」


 魔竜王が絶命し、闇が消えていく。世界イベントは終わりを迎え、システムログが流れる。

 《イベントクリア! 特定プレイヤー“Ciffon”の生存確認! 世界は救われた! 全参加者に報酬配布!》


 周囲がざわめき、プレイヤーやNPCは一様に安堵の息をつく。

 シフォンはまばゆい光の中、受け取った報酬アイテムの数々に目を輝かせる。可愛い装備がもらえたらしい。

 「あっ、かわいいリボンゲット~♪」と無邪気にはしゃぐ。


 その背後で11人の男たちは、ほっとしたような顔(あるいは仮面越しの微笑、あるいは不敵な笑み)でシフォンを見ている。

 しかし、ここで彼らは互いを睨み合う。

 「ふん、シフォンを守ったのは俺の力だ」グラントが鼻を鳴らす。

 「違う、俺が時を止めたからだろう」ディオンが譲らない。

 「いや、俺の宝物なしでは無理だった」アッシュも言う。

 「待て、俺のヒールがなければ……」エルネストが涙目で主張。

 「作戦は俺の分析の賜物だ」クロウが冷静に。

 「そもそも指揮は俺がとっていたぞ」トネガワが口を挟む。

 「フハハハ、戯れ言を…俺がいなければ…」キョーマが中二じみた笑み。

 「ギルド軍の火力を忘れるな」レオンハルトが胸を張る。

 「装備強化なくして勝利はない」ロジャーが頑なに言い張る。

 「弱き者を圧する拳、我が覇道なくして…」ラオ・ウは腕組みで睨む。

 「カイは言葉少なに目を細め、刃先を拭っているだけだが、目が『俺が止めを指した部分もあった』と言わんばかり。


 再び彼らの中で火花が散る。誰が一番シフォンのために活躍したかを巡る無言のバチバチだ。

 しかし、そんな空気を感じないシフォンは、嬉しそうにみんなの方を振り向き、

 「わぁ、みんな仲良しだね~♪」とニコニコ笑う。


 彼らはその笑顔を見て、言葉を失う。先ほどまでギスギスしかけていたが、シフォンの無邪気な一言で毒気を抜かれ、ため息をつく。

 彼らは競合関係にあるはずの超強者同士。しかしシフォンの前では、争う気もなえてしまう。

 「はは……そうだな、仲良し……」グラントが苦笑。

 「ふん、仕方ない…今日はこのぐらいにしてやろう」ディオンが妥協する。

 「まあ、シフォンが笑っているならよかろう」とラオ・ウが低く呟く。

 他の面々も、なんだかんだシフォンが笑顔なら許せてしまう不思議な気持ちを共有する。


 こうして、世界を震撼させた終焉イベントは、シフォンが守られ、各強者たちが共闘するという奇跡的展開で乗り越えられた。

 報酬は潤沢で、シフォンはかわいい羽飾りやフリル付き高級魔導服、甘い香りのポーション、きらびやかなアクセサリなどを手に入れ大喜び。

 男たちは彼女が喜ぶ顔を見て、胸が温かくなるのを感じている。強さや野望、策謀に明け暮れてきた彼らだが、この瞬間だけはシフォンの存在が、彼らの心を潤す清涼剤のようだった。


 シフォンはぴょこんと跳ねて言う。

 「みんな、本当にありがとうね! おかげで怖かったけど、今は安心だよ♪ これからもよろしくお願いします!」

 彼女は11人の視線に気づかず、楽しそうに笑う。みんなが「えへへ、頼りになるなぁ」と言う彼女の素直さにほだされている。


 男たちは心の中で各々思う。


 グラント:「やはりシフォンが一番だ。俺が守らなければ」

 カイ:「シフォン……君が笑うなら俺は背後から何度でも守ろう」

 エルネスト:「シフォンさんの笑顔…それが僕の生きる理由」

 レオンハルト:「純粋に俺を崇めてくれる娘は初めてだ…この子にはレアアイテムをもっと贈ろう」

 ロジャー:「この武具で喜ぶ顔、悪くないな」

 アッシュ:「この無垢な娘が俺の宝を素直に喜ぶ…悪くない」

 キョーマ:「エル・プサイ…いや、シフォンのためなら更なる発明をしよう」

 クロウ:「合理的判断だが…なぜかこの笑顔を守りたいと思ってしまう」

 ディオン:「こんな純真な子がいるとは…時を止めてでも守ってやろう」

 トネガワ:「計画外だが、この存在は効率や合理性を超えた価値がある…」

 ラオ・ウ:「弱者ながら天を仰ぎ、我を信じる…面白い。生かしておこう」


 競い合う彼らだが、この時だけは奇妙な統一感があった。


 こうして、1クール分の冒険を締めくくる壮大なフィナーレは幕を下ろした。

 シフォンは、ログインするたび増え続けた“推しメン”達に囲まれ、恐るべき世界イベントすら乗り越え、さらなる日常へと戻っていく。

 「みんな仲良しだね~♪」

 彼女の無自覚な一言が、彼らをこれからも結びつける不思議な絆のようだった。


 世界は救われた。

 かわいい装備も手に入った。

 愛され、守られ、シフォンは笑顔で次の冒険へ踏み出すのだ。


 ――“あざとかわいい私、VR世界で毎話男心を攻略中! ~ログインするたび増える推しメン達~”

 この物語はまだ続くかもしれない。だが、一旦ここで区切りをつけよう。

 読者は微笑ましいハーレムの行方を想像しながら、シフォンの穏やかな笑顔を胸に、物語の余韻を味わうことだろう。


―― 終わり ――

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