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第10章:冷酷な“企業の黒幕”を懐柔!

 VRMMORPG《Twilight Fantasia》の世界で、シフォン(Ciffon)はすでに多種多様な男性キャラを攻略してきた。タンク戦士、アサシン、ヒーラー、ギルドマスター、NPC鍛冶屋、黄金王、中二科学者、新世界の神志望、そして傲慢な支配者DIO風プレイヤー……あらゆるタイプの男たちが、彼女のあざとかわいさと純粋な賞賛に骨抜きにされている。


 しかし、まだ狙えるターゲットはいる。

 今回彼女が目をつけたのは、大企業的な組織に属し、プレイヤーやNPCを使い捨ての駒として扱う冷徹な男。賭博のような心理戦や酷薄な試練を仕掛け、弱者を嘲笑い、強者を試す。その名はトネガワ(Tonegawa)。

 彼はこの世界で巨大商会「フォーチュン・カンパニー」の幹部クラスプレイヤーとして振る舞い、資金や情報を駆使して巧妙なゲームを仕掛けている。多くのプレイヤーが彼の談合や心理誘導に陥り、貢ぎ物のようにレアアイテムを奪われているらしい。


 シフォンはウサギ耳アクセを揺らし、可憐な魔導服姿で、その商会の本拠地へ足を運ぶ。

 そこは黒々とした金属装飾が施された高級なビル。受付NPCに話しかけると、薄暗い特別室へ通される。

 室内は重厚な机と革張りの椅子、その向こう側で、キラリと冷たい光を放つ眼差しがこちらを睨んでいた。

 男はスーツ風の衣装を身につけ、腕組みをしながら「ざわ…ざわ…」と静かな息遣いを感じさせる不穏な空気を漂わせる。


 その男こそ、トネガワ。

 彼は表情を崩さず、淡々と問いかける。

「君は……誰かな? ここは簡単に入れる場所ではないんだが?」


 (来たわね、冷徹な幹部。こういう人は rationality と思考力を重視するから、媚びるだけでなく、少しだけ頭があるところを見せ、なおかつ相手を称賛すべき)


「はじめまして、トネガワさん……ですよね? 私、シフォンっていいます♪ フォーチュン・カンパニーがこの世界で資源やアイテムを独占し、多くのプレイヤー経済を握っていると聞いて、お話を伺いたくて来ました!」

 シフォンはほんのり恭順な笑みを浮かべる。ここは強引に距離を詰めない。相手は疑り深く、打算的だと踏んで。


「ほう……わざわざこの俺に会いに来るとは。妙な女だな。大抵の連中は尻込みして逃げ出すか、逆に強請ろうと必死になる。それを君は穏やかに声をかけてくるとは……」

 トネガワは疑念を含んだ視線を向ける。精悍な顔立ちと静かな眼差し、その下には油断ない理知が感じ取れる。


「私、戦闘は苦手で、ただ可愛い装備や温かい人たちに囲まれたいと思ってるんです。でも、フォーチュン・カンパニーが裏で取引をコントロールしていると聞いたら、興味が湧いちゃって。だって、そんな大規模なこと、普通の人にはできないでしょ? トネガワさんって、すごく頭が良くて、冷静な判断を下せる方なんですね♪」

 彼を直接的に持ち上げる。「頭が良い」「冷静な判断」。利根川的キャラは知性と理性を讃えられると心地よいはずだ。


「ほう……君は俺を褒める。頭がいいかどうかはともかく、俺たちフォーチュン・カンパニーは合理性を重視し、無駄を排除する。その結果として、この世界の経済を一部支配しているに過ぎない」

 トネガワは謙虚を装うが、口元はわずかに釣り上がっている。やはり称賛は効果的だ。


(いい感じ。ここで、彼のやり方を批判せず「すごい!」と純粋に感動すれば、彼のプライドをくすぐれる)


「でも、それって簡単じゃないですよね。みんな自分の利益ばかり考えて混乱してる中で、トネガワさんたちは冷静に状況を分析して、一歩先を行く戦略を立てている。私、それって本当にすごいと思うんです。まるで、大人が子供をあやすように、世界をコントロールしてるみたい♪」

 「大人」「子供をあやす」といった比喩で、彼らが一段上の存在であると認める。この上から目線が彼の悦びになる。


「ふ、君はなかなか物分りがいいな。大半の連中は強者を妬むか、悪役扱いする。だが、強者に非はない。弱者が弱いままでぬるま湯に浸かり、考えず、努力を怠るからこそ、強者に支配される。これは当然の理だ」

 トネガワは持論を展開する。弱者を軽蔑する口調は原作通りで、そこにシフォンが同意すれば彼はさらに気分を良くするだろう。


(ここは同調の一手。「そうですよね、弱い私が言うのもなんだけど……」と弱者ポジションから素直に頷けばいい)


「うん……私みたいな弱い存在は、強く賢い人たちに導かれなきゃ、生きていけないかもしれません。トネガワさんがいるから、この世界はある意味で秩序が保たれてるんですよね! 私、そういう現実をちゃんと受け止める人が賢いと思います♪」

 シフォンは自分を弱者と認めつつ、トネガワを世の中を“導く賢人”と評価する。弱さを認めて相手を頼ることで、彼の優越感を満たす。


「フフ……君、なかなか面白い考えを持っているな。そうだ、人間は愚かで怠惰だ。俺たちはそれを利用し、効率的に利益を得る。嫌なら奴らが強く賢くなればいいのだが、ほとんど不可能。だからこそ俺たちが存在する意義がある」

 トネガワは満足そうだ。プライドをくすぐられ、彼女を見下すというよりは、可愛い駒として愛でる気になっているかもしれない。


(ここで、「トネガワさんが指揮する場面を見てみたい」などと興味を示せば、彼は自分の手腕を見せつけたくなるはず)


「トネガワさん……もし可能なら、どんな風に取引や心理戦を進めているのか、ちょっと見学させてもらえたりしますか? 私、強者がどうやって弱者を制御し、ルールを作るのか勉強してみたいな……って」

 素直な興味を示すことで、彼に「この子は理解者、見込みがある」と思わせる。


「見学、か。なるほど。君がただの甘えた娘ではなく、理解力のある“見込みある”存在だとわかれば、構わんだろう。むしろ、俺が演出するゲームを見れば、弱者と強者の明確な差が理解できる。学びになるはずだ」

 トネガワはあっさり承諾。もともと優越感のために観客を求めるタイプだ。


(よし、さらに感激を示して押し込む)


「本当ですか? わぁ、嬉しい! トネガワさんが私なんかに貴重な現場を見せてくれるなんて……優しいんですね♪」

 ここで「優しい」と言うのがお約束。カイジの利根川は常に冷酷だが、ここで「優しい」と言われると微妙に嬉しく感じるはず。

 もちろん、彼は優しいと認めないだろうが、少なくとも心地よさは感じる。


「な……優しい? 馬鹿を言うな。これは俺の慈悲ではなく、合理的判断だ。君が理解力ある人材なら、将来何らかの形で役に立つかもしれない。俺はそう考えただけだ」

 トネガワは強がるが、拒絶はしない。むしろ彼女への評価が上がった証拠だ。


(もう一押し。「私、トネガワさんに認められるよう頑張りたい」と健気さを見せれば勝ち)


「うふふ……私、頑張ります! トネガワさんに認めてもらえるように、何かお手伝いできることがあったら遠慮なく言ってくださいね。まだ弱くて頼りないかもしれないけど、私なりに努力したいです♪」

 シフォンはあざとく微笑み、少しうつむき加減で健気さをアピール。


「フン……そこまで言うなら、君が本当に使い物になるか見極めてやろう。近々、俺たちはまた新たな“試練”をプレイヤーたちに課す予定だ。その際、君には雑用程度の任務を与えるかもしれない。覚悟しておけ」

 トネガワは完全に試してみる気になった。シフォンを無能な下僕から、有益な駒へと育てようとしている。


(やった! もう陥落寸前だわ。締めに「トネガワさん、本当に頼もしい」とさらなる賛辞で決めよう)


「はい、覚悟します! トネガワさんが作り出す試練、きっと厳しくて深い意味があるんですね。そんな場面に関われるだけで私、幸せかも……トネガワさんって、やっぱり頼もしい存在だなぁ♪」

 「頼もしい」と言えば、彼は心地よく感じる。カイジ世界の利根川は恐怖で支配するが、このVR世界ではシフォンの無邪気な称賛が効く。


「……フフ、頼もしい、か。君も面白いことを言う。まあいい、これからも君の様子を見てやろう。下手な行動は慎むんだな。俺は甘くない、だが有能な味方は決して排除しない」

 トネガワは微笑むような、していないような微妙な表情だが、少なくともシフォンに対して悪い印象はない。


 こうして第10の“推しメン”、カイジの利根川を彷彿とさせる冷酷なビジネス戦略家・トネガワを攻略したシフォン。

 この男は知能と計略で人心を操り、経済や心理戦を左右する存在だ。彼を手中に収めることで、今後の交易や心理的駆け引きで大いに有利になるに違いない。


 シフォンは部屋を出る前に、あざとくウサギ耳アクセを揺らし、ペコリと可愛く頭を下げる。

「トネガワさん、今日は本当にありがとうございました♪ お話できて嬉しかったです! これからもご迷惑にならないよう、頑張りますね♪」

 彼女は明るい声で挨拶する。


 トネガワは「ふん、礼なら要らん。俺は常に合理的に動いているだけだ……君が本当に役に立つかどうか、楽しみにしているよ、シフォン」と言葉を返すが、その目にはわずかな期待と親和性が滲んでいる。


 こうして、冷酷な企業系戦略家もシフォンの魅力に屈し、彼女のために知恵を貸し、サポートする存在となった。

 シフォンは心の中でガッツポーズ。「みんな仲良しだね~♪」と無自覚なフリを続けつつ、あざとかわいい微笑みを浮かべ、このVR世界でのハーレム計画をさらに拡大していくのであった。

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