07 形勢は決まり
マルコシアスがフォルネウスに歩み寄ったのを合図に、シャーロットとオリヴァーは同時に呪文を唱え始めていた。
シャーロットは序列二十六番ブネから、オリヴァーは序列二十三番アイムから力を借り受けるための呪文を。
シャーロットが祈ったのはただ一つ、どうかかれらがどこかで召喚されたりしていませんよう。
だが、心配は杞憂だった。
シャーロットが内心で悔しい思いをしたことに、呪文を正確にすばやく唱え終わったのはオリヴァーが先だった。
彼がアイムに要請したいかづちがフォルネウスを打った三秒後、シャーロットがブネに要請した魔法が顕れた。
いかづちに打たれたフォルネウスの馬の身体を、真下から突き出した灰色の骸骨の腕が掴んだ。
そのまま、フォルネウスの身体を這い上がるようにして、滲むような燐光を放つ灰色の骸骨が現れる。
骸骨が力を籠めてフォルネウスの身体をへし折ろうとしている。
「呪文でお願いできることとしては、かなりいいほうじゃない?」
シャーロットは半ば以上を独り言としてつぶやいた。
「そのせいで、呪文が一言か二言ぶん長くなったとしてもよ」
「そんなことはどうでもいい」
オリヴァーがきっぱりと言った。
「ふいは打ったか?」
シャーロットは、ストラスが開けた大穴から外を覗こうとするオリヴァーを、逆に奥へと押し遣った。
「ふいは突けましたとも。それで、私たちが近くにいることも知られました。しかるべきときまで隠れていないと」
オリヴァーは訝しげにシャーロットを見た。
「精霊に探られたら隠れようもないだろう?」
「いいえ――」
シャーロットは息を引く。
「いいえ、エムの精霊が守ってくれています。それに、かれが精霊を動かしてくれれば御の字です――それが私たちの目的ですよ」
いかづちに打ち据えられ、巻き上がった噴煙が徐々に晴れようとしていた。
フォルネウスのそばにいたショーンは傷ひとつないものの、ショックで大きく目を見開いている。
フォルネウスは確かにその瞬間、あっけにとられたようだった。
その隙を捉えて、疲れ切ったストラスがふたたび、ここぞとばかりに宝石の雨を降らせる。
弾丸のように降り注ぐ驟雨に、つかの間、フォルネウスとショーンの姿が霞む。
足許の地面が砕け、残った瓦礫が粉々になり、もうもうと粉塵が上がる。
フォルネウスが粉塵の中で大きく手を振る輪郭が、霞んで見えた。
壁の大穴から顔を出したシャーロットはその瞬間、飛びすさったマルコシアスがちらりと微笑むのを見た。
――この事態に対処するために、フォルネウスが相当数の数の精霊に何かを命じたのだ。
おそらくは、身を守ることを命じるとともに、近くにいる魔術師を捜させている。
シャーロットは思わず、自画自賛の大きな微笑を浮かべてしまった。
魔術師である彼女みずから、対フォルネウス戦に出ると言ったのは、単純にこちら側の戦力的な火力不足を補うためだったが、ここへきてそれが二重の意味を持った。
フォルネウスは、ここでマルコシアスに手を貸した魔術師を捜さずにはいられない。
その魔術師を、マルコシアスが精霊を使って守っていれば、むろん、かれには見つけられないが――それでも、ストラスの主人もこれに一枚噛んでいるのか、それを気にせずにはいられないはずだ。
つまり、精霊を使う。
「完璧よ」
シャーロットは自分を鼓舞するためにつぶやいた。
思わず、ぎゅっと力を入れて尖晶石を握りしめてしまう。
「本当に完璧。――お願いよ、フォルネウス、精霊をいっぱい使ってちょうだい――」
しかし希望に反して、マルコシアスからの合図がない。
目的を達したことが判明した時点で、マルコシアスが何かの合図をくれるはずだ。
シャーロットは思わず爪を噛んだ。
「ああ、もうっ、じゃあここでの作戦成就は駄目ね」
宝石の驟雨で巻き上がった粉塵が、風に流されてゆっくりと晴れつつあった。
ストラスは早くも逃げ出したそうにうずうずしている。
フォルネウスはいまだに下半身に骸骨をまとわりつかせたままだったが、いたって元気そうにけろりとしていた。
これでは、グラシャ=ラボラスに勝利した直後のマルコシアスの方が不調そうだ。
「――いや、驚いた」
フォルネウスが顔を上げ、めりめりと音を立てて骸骨を振り払い、あっという間に自由を獲得した。
かれが、心底驚いたように周囲を見渡す。
「なんだこれは? どういう冗談だ?
マルコシアス、まさかきみが――」
フォルネウスは失望したように首を振った。
「こんな茶番に私を誘うとは思わなかった。魔術師が呪文で力を借りる程度のもの、実際のわれわれには大した害はないと知っているはずだ」
「うん、そりゃ知ってるけど」
マルコシアスは真顔だった。
「僕の計画では、ストラスがもうちょっと頑張ってるはずだったんだ」
「計画?」
フォルネウスは声を大きくした。
その声の調子が不穏だ。
いつの間にか、かれの頭上六フィートのところに、小さな黒雲が渦を巻き、雷光の欠片をきらめかせていた。
「おいおい、マルコシアス――きみは優秀な護衛だが、私はきみの、計画を立てられない、立てたところで一時間ほど先のところまで、という単純さが好きなんだよ」
「へえ、光栄だな」
マルコシアスは平然と言いながら、ストラスに向かって、本棟とは反対側の方を示しながら言った。
「行って、あんたの主人を守っていいよ、ストラス」
ストラスは一瞬ためらったが、すぐに、マルコシアスが示した方向に、文字通り飛んでいった。
ショーンがその動きを目で追う。
あきらかに策を弄されていることを疑う眼差しだったが、フォルネウスは念のためにも、精霊を少しばかりストラスにつけたようだった。
「でも、いや、まあ、そうかも」
マルコシアスは真面目に頷いた。
「僕はあんたみたいに、次の満月のときの天気を考えながら、右へ行くか左へ行くかを選ぶタイプじゃないからね」
「きみの愚かさは愛すべき欠点だ」
フォルネウスはおだやかに言って、軽く馬の前脚を折ってマルコシアスと目を合わせた。
その銀の瞳に、頭上の雷光が映り込んできらめいている。
「さあ、教えてくれ。実際にその計画を立てた、きみの主はどこにいるんだ?」
マルコシアスは微笑んだ。
「僕の相棒? ――あんたの手を尽くして見つけてみるんだね」
▷○◁
「おい!」
後ろから雷鳴のような声で囁き呼ばれ、シャーロットは飛び上がった。
竦み上がって振り返ると、そこに浅黒い肌の筋骨隆々の男が立っている。
生成り色のチュニックとシャルワールを身に着け、足首には金の棘の意匠の足環。
「ストラス」
オリヴァーが上擦った声で呼ぶまで、シャーロットはそれがだれなのか、すっかり見失いかけていた。
なにしろ、この姿を正面からきちんと見るのはこれが初めてだ。
「わあ……」
感心したような声を漏らすシャーロットを睨んで、ストラスは苦虫を噛み潰したような顔で言う。
「いいか、わざわざ別の方向に飛んでから、やつの精霊を撒いて、ここまでこっそり来たんだ。こんな屈辱的な扱いは初めてだ」
「ごめんなさい、ありがとう」
シャーロットはすばやく言って、オリヴァーに向き直った。
「オリヴァーさん、言ってたように、ここでフォルネウスの精霊全部を動員させるのは無理みたいです。ここから離れないと」
医務室からここへ至るまでの道中で、あらかたのことは打ち合わせてあった。
ストラスがフォルネウスの精霊を学院の境界から引きはがすことに成功すれば最上だが、そうは出来なかった場合のことを。
その場合、ストラスは主人を連れて、この場を離れることになっている。
呪文で一撃を打ち込んだあとなら、フォルネウスは魔術師の行方を気にかけてくれるはずだ。
完全に姿をくらませてしまえば、フォルネウスはいよいよ学院の境界の守りを厚くしてしまうだろうが、フォルネウスが見失わないぎりぎりのところでその指先を逃れれば、逆にフォルネウスが全ての精霊を追跡に充ててくれることすら期待できる。
あるいは、もっと思い切ったことをすれば――
オリヴァーが、もの問いたげにシャーロットを見ていた。
シャーロットは肩を竦めて一歩下がる。
「私は、エムを待たなきゃ」
「そのとおり、そのとおり」
ストラスが短気に言って、手を伸ばしていともたやすくオリヴァーをかつぎ上げた。
シャーロットはその扱いに少なからず同情した。
マルコシアスでさえ、シャーロットをかかえ上げるときはもう少し気を遣う。
ストラスのかつぎ方は、完全に荷物を抱えるときの手つきだ。
頭を後ろに脚を前にして、肩の上にかつぎ上げられたオリヴァーが、顔を真っ赤にして怒っている。
「ストラス――ストラス!」
「ああもう、うるせぇな」
ストラスがぼやいた。
女性の姿をとっていたときとは対照的な、あらっぽい口調だ。
「いいか、お前が出した報酬は、俺がこんなことをするに値するものの半分にも満たないんだぞ。いや、三分の一――四分の一以下だ!
俺はマルコシアスのくそやろうに脅されて、仕方なくこうしてやってるんだ。このどんちゃん騒ぎが収まるまで、お前が俺に命令の一つも下せると思うなよ」
マルコシアスの主人かつ、かれにストラスを脅しつけるよう命じたシャーロットは目を閉じた。
「本当にごめんなさい、オリヴァーさん」
オリヴァーはうめいた。
「お前の魔神の忠実さがうらやましいよ」
その語尾も半ばで、ストラスがすばやく身を翻し、塔の奥の階段へ向かった。
駆け上がるというよりは浮き上がるようにその階段を駆け抜けて、天井を失った上階へ向かう。
悲鳴を堪えたオリヴァーに、シャーロットは尊敬の念を禁じ得なかった。
ストラスはそこからオリヴァーを連れて、フォルネウスの精霊を引きつけながら、学院の外縁をなぞっての逃走劇を開始してくれるはずだ。
一人きりになったシャーロットは息を吸い込み、そろそろと壁に開いた大穴に近づき、膝を折ってそこを覗き込んだ。
フォルネウスはもちろん、折れた尖塔の根元からストラスが這い出し、魔術師をかついで逃走を開始したことに気づいている。
わざとらしくもそちらを振り仰ぎ、眉を上げてマルコシアスを見遣った。
その瞳で雷光がきらめくのに目を細めながら、マルコシアスは肩を竦めた。
「おっと、ばれたか」
「マルコシアス、冗談はよせ」
フォルネウスは呆れたように首を振り、たくましい腕を組んだ。
「ストラスが連れていた魔術師は一人だ――そして、私に加えられた無礼は二度あった。つまり、二人の魔術師がいたんだ。もちろん、二人とも逃がすわけにはいかないよ。
片方はストラスの主人、もう片方はきみの主人――」
ちら、とショーンを振り返って、フォルネウスは大仰に言葉を締めくくる。
「――つまり、わが主人の尋ね人だ」
マルコシアスは動かなかった。
なにも言わず、フォルネウスの目をじっと見つめる。
フォルネウスはゆっくりと手を伸ばし、つい先ほどストラスが脱出したばかりの塔を指差した。
壁の大穴からそれを覗いているシャーロットは、さながら自分をこそ、まっすぐに指差されたように感じていた。
フォルネウスの頭上でねじれて渦を巻く黒雲から、真上に向かって雷光が突き立った。
かがやいた白光のために、つかのま周囲が色褪せて見える。
ショーンが塔を見た。
彼としても、ここ一時間ほどのあいだ、自分が壊れたオルゴールのように同じ命令だけを繰り返しているのは意識していただろう。
だが、どうやらその認識も、彼の怒鳴り声を留める理由にはならなかったらしい。
「――やれ!」
フォルネウスは肩を竦めた。
すかさずマルコシアスが地面を蹴って、次の瞬間には巨大なコウモリの翼を得て、宙へ舞い上がる。
そして、一直線に塔の方へ突っ込んだ。
それを見て、フォルネウスの瞳にわずかばかりの疑念が走った。
「――まあ、その価値はあるか」
かれがつぶやき、そしてその二秒後、かれの頭上の雷雲が大きく広がった。
ごろごろと無数の獣がのどを鳴らすような音が響く。
真っ白な雷光が炸裂した。
その雷光の激しさたるや、呪文で呼び起こされたものの比ではない。
その雷光に打ち据えられた石の塔が砕け、放射される光の中で、塔が崩れるさまがその瞬間、静止画のように目に映り――
砕けた石のブロックが崩れ落ち、ぶつかり合ってさらに砕けては灰色の粉塵を巻き上げ、破壊音が耳を聾するなか、シャーロットは自分の足許が崩れ、宙に投げ出される浮遊感をはっきりと知覚していた。
割れて落ちていくブロックが肩や背中、とっさに頭を庇った腕にぶつかり、打ち身と切傷を無数にこしらえる。
全身の神経が痛みと危機感に悲鳴を上げ、押し寄せて倒れ掛かってくる無数の石の破片に溺れそうになり――
間一髪のところで、伸びてきた魔神の腕にすくい上げられた。
息を上げ、はっと顔を上げたシャーロットをかかえ上げ、翼を得た魔神はぐんぐん空中を上昇していた。
シャーロットはかれの首にしがみついて悲鳴を堪えた。
マルコシアスが自分を落とすことはないだろうと分かってはいるが、それでも急上昇に耐えかねて、彼女の腹の中の臓器が三つか四つ、盛大にでんぐり返って不平を表明している。
ようやくマルコシアスが落ち着いて滞空したのは、もともと尖塔がそびえていた辺りの高所に至ってのことだった。
シャーロットはかれの肩に向かってぜぇぜぇと息をこぼしてから、思いきりかれの胸の辺りを叩く。
「――だから言ったでしょ! 言ったでしょ! 近くにいてって言ったでしょ!」
「まあ、うん。――ああ、そういえば、僕が届けさせたあの宝石、どう?」
シャーロットは激しく瞬きして、奇跡的にまだ握ったままだった尖晶石を確認した。
「“どう”って?」
マルコシアスはかすかにがっかりしたような顔を見せた。
「なんだよ、喜ぶかと思ったのに」
シャーロットは悪態を呑みこみ、この状況では最大限におだやかな口調で指摘した。
「うん、とっても綺麗ね、エム。消えていかない限りは大事にするわ。
でも、この状況で暢気に喜べると思う?」
「消えていくって、それが? そんなことにはならないよ。ストラスはそのへん、妥協しないから。
――喜べるかって? あんたは図太いから、大丈夫かと」
マルコシアスは悪びれなかった。
ばさり、ばさりと、そのコウモリの翼がはためく。
シャーロットは十ほどもあふれ出てきた言いたいことを呑み込んで、声をひそめる。
「そんなことより、ストラスとオリヴァーさんの方は?」
マルコシアスは肩を竦めた。
「山ほどフォルネウスの精霊を連れてってくれたよ。ここまではあんたの考えは当たってるわけ。意外なことに」
「意外!」
シャーロットは噛みついた。
「お前と会ってからこれまで、私が大きく考えを外したことといえば、お前が思ったよりも皮肉屋で面倒くさがりだってことだけだわ」
「ああ、はいはい」
マルコシアスはうるさそうにあしらった。
粉塵を上げながら大音響とともに倒れていく塔を見て、かれは首をひねっている。
「おかしいな。僕、今度ばかりはあんたの考えが外れると思ったんだけど。
フォルネウスって、無駄だと思ったことはしないたちだからさ。てっきり、あんたがいるとあたりをつけても、どうせ無駄になるからって塔を崩したりはしないと思ってた」
「無駄だと思えばね」
すぐ近くで声がした。
マルコシアスにかかえられたシャーロットが首だけで振り返ると、そこに、マルコシアスと同じ高さに滞空するフォルネウスがいた。
翼もなにもないが、当然のように空中に立っているので、まるでその足許に見えない床があるかのように落ち着いてみえた。
その後ろに魔精もいる――こちらは、フォルネウスに無理やり空中に向かって投げられたかのようだった。
頭が異様に大きな小人は、頭を下にして宙に浮いており、手足をばたばたさせて身体の均衡を取り戻そうとしている。
フォルネウスはマルコシアスではなく、かれにかかえられたシャーロットを、興味深そうにまじまじと観察していた。
午後の陽光が遮られることなく降り注ぎ、淡いはちみつ色の光で彼女を照らし出している。
その光のために、シャーロットの金色の髪の乱れ、頬にできた大きな打ち身、裂けた袖から覗く切傷がはっきりと見えていた。
風が吹いて、シャーロットの丈の長いスカードの裾がめくれ、白いすねが覗いた。
そのすねにも、こぶし大の青黒いあざ、赤い打ち身、そして石材で切った真新しい切傷が見えている。
シャーロットは黙り込み、マルコシアスにしがみつく腕にいっそう力を籠めた。
フォルネウスは瞬きし、シャーロットから数インチ視線をずらして、マルコシアスをまじまじと見つめた。
マルコシアスはめずらしく、どういう表情を作ろうか迷った様子だった。
結果として、かれは小さくにやっと笑った。
フォルネウスは銀色の目を大きく見開き、両手をわざとらしくもみ合わせた。
そして、心底から――これは本心だろう――驚いた声で、辺りをはばかるかのように、言った。
「――これはこれは! 驚いた――順当に考えれば、彼女はきみの主ではないんだろうね、マルコシアス!」
マルコシアスは首を傾げ、シャーロットをかかえ直した。
「僕のレディになんてことを言うのさ」
「きみのレディ。きみのレディ――なるほどね」
フォルネウスはシャーロットを一瞥して、またマルコシアスに視線を戻した。
その瞳が、勝利を確信してきらきらと輝いている。
「一世一代の間抜けに仕えることになったきみがうらやましいくらいだ、マルコシアス。でも――これで形勢は決まったね」
フォルネウスが指を鳴らす。
とたん、かれの周囲で無数の星がきらめいた。
一つ一つが銀に輝くこぶし大の光点が、きらきらとかれを取り囲んでいる。
「よりにもよって〈身代わりの契約〉を忘れるとは、きみのレディは魔術師に向いていないみたいだね。
きみが、〈身代わりの契約〉のない相手を、そうして庇っていることに疑問は募るが、まあいいだろう」
フォルネウスがにっこりと微笑む。
「きみに手を出すことにならないなら、私が遠慮する理由もない」
マルコシアスは肩を竦め、間近にあるシャーロットの瞳を見つめた。
かれの淡い黄金の瞳が、瞬きのあいだだけ隠れた。
そして、マルコシアスは囁いた。
「こういうとき、先になんて言えって言われてたかな、ロッテ。
――ああ、そうそう、」
好戦的な瞳をフォルネウスに向けて、マルコシアスが号令をかける。
「――スカートを押さえてて、レディ・ロッテ」




