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21 この暗い時期にも

 列柱郭から省舎の中へと続く長い階段を駆け上るのは、アーノルドにとっては困難きわまることだった。

 何しろ人一人を抱えている。


 後ろから絶えず見られ、追われているのではないかという恐怖もあって、脚は震えんばかりだった。


 その状況で階段を休むことも足をゆるめることもなく駆け上がることが出来たのは、ひとえに彼の尻に火をつけた、命の懸かった焦燥のゆえだった。



 階段を昇り切っても油断はできない。


 アーノルドはここまで連れて来られたときの記憶を頼りに、息を切らせ、しっかりとシャーロットを抱きかかえたまま、省舎の外へとまっしぐらに走った。


 途中で勢いあまって花台にぶつかって痣をこしらえ、急ぐがあまりに角を上手く曲がり切れず、壁際の電話機に衝突して受話器が本体からがちゃんと外れてしまったりはしたものの、転んで時間を無駄にすることはなかった。


 脇腹に刺し込まれるような鋭い痛みがあって、心臓はばくばくと打っていた。


 あわただしく辺りを見渡しても、二人の軍人はおらず、いわんや先に法廷から脱出していた面々の姿もない。


「どこにいるんだよ……!」


 恐怖に近い不安を覚えながらも走り、階段を駆け下り、やっとの思いでアーノルドは、今夜この建物に入ってきたときに使った裏口のひとつに辿りついた。

 おのれに喝采する思いで、ぐったりしているシャーロットをかかえていることで手間取りながらも、その扉を引き開け、外へ飛び出す。


 足で蹴って扉を閉め、ほう、と息を吐く。


 今のところ、悪魔であれ人間であれ、目に見える形で彼を追って来ている者はなかった。


 アットイのことを少しばかり案じつつ、彼は外を振り返り――そしてぎょっとして叫んだが、それは裏口から数ヤードのところに、軍人がびっしりと立ち並んでいたからだった。


「何者だ!」


「手を上げて膝を突け!」


「誰を連れている!」


 無数の誰何の声が一気に上がり、アーノルドは思わず一歩下がったが、そのとき別の声が割り込んだ。


「無事か!!」


 アーノルドはほっとして、声の方を振り返った。


 そして、足早に歩み寄ってくる赤い髪の士官と金髪の士官を認めて、身体中から力が抜ける思いで、その場に座り込む。



 ぱち、と()()()()()()()()()()()が、「もう動いていいのね?」と言いながら、自力で地面に立ち上がった。


 そして、なんともいえぬ泣きそうな顔で、ぎゅっとアーノルドを抱き締める。

 その全身が震えているのを感じて、アーノルドはたまらなくなった。


 怖い目に遭ってかわいそうに、と、そのとき彼は思ったのだった。



 アーノルドは肩を叩いてシャーロットをなだめ、自分から離すと、地面に手を突いて立ち上がった。


 そしてよろめきながらも、手にしていた小銃の銃身を持ち、銃把を金髪の軍人に差し出す。


「足速いんだね。もう外にいたんだ。はいこれ――返す」


「きみとは別の道を通ったと思うよ。別の扉から出てきたから。――見事だった」


 金髪の軍人が言って、銃を受け取った。

 彼の肩に、フクロウの姿の悪魔が止まっている。


 金髪の軍人は銃を腰に吊るすと、当然のようにふたたび手を差し出した。


「名乗るのが遅れた。――アベル・ランフランクだ。階級は中佐」


「はあ……」


 つぶやき、アーノルドは差し出された手を握る。

 続いて赤い髪の士官が、彼の肩を軽く叩いた。


「本当に見事だった。こちらもひやりとした。

 ――私も申し遅れた、ファーガス・アディントンだ。階級は大佐」


「……アーノルドです」


 アーノルドはつぶやいたが、「知っている」と複数人から返され、居心地の悪さでうつむくことになった。



 シャーロットが手を叩き、短い呪文を唱えた。


 とたん、そのそばに、大き過ぎる目玉の犬の格好をした魔精が現れる。

 かれが呻いた。


「逃げおおせるとは悪運の強い……」


「ああ、来てくれてよかった」


 シャーロットは本音の口調で言った。


「あなたは人気者だから、ちょっとでも帰っているあいだに、他の人に呼ばれたらどうしようと思っていたの」


「ああ、夜中でさえなければ、誰かが僕を呼んでくれたかもしれないのに」


 リンキーズがうめいたところで、複数の軍人が進み出てきて、「のんびりしている時間はない」と、シャーロットとアーノルドの腕を掴み、アーノルドが内心で、「うじゃうじゃいる……」と思ったほどの数の軍人がひしめく軍隊の中に連れて行こうとした。


 実際にシャーロットはそうやって、あれよあれよという間に周囲を厳重に軍人に囲まれたが、アーノルドは違った。

 アディントン大佐が、アーノルドの腕を掴んだ軍人に低く命じてその手を離させ、一切彼に触れず、手振りでうながして彼を進ませたのだ。


 その気遣いが何に起因するかを敏感に感じ取って、アーノルドは顔を顰めた。


 そうしているうちにアーノルドも軍の中心にいた――どこかで合図があったのか、ものものしい靴音とともに、軍隊は動き始めた。

 自然、アーノルドもシャーロットも、その中で歩き出すことになる。


 シャーロットはじゃっかん、足許につまずくような様子を見せた。

 腰が抜けそうになっているらしい。


 彼女が大きな橄欖石の色の瞳でアーノルドを見て、その表情が相変わらず泣きそうなので、アーノルドはまごついた。


「ごめん、痛くするつもりはなかったんだけど」


 シャーロットは首を振った。


 それから息を吸い込むと、また呪文を唱えた。

 今度、シャーロットのそばに現れたのは、十四歳程度の灰色の髪をした少年――魔神マルコシアスだった。


 かれは背中から巨大なコウモリの姿を生やしており、その姿はいやがおうにもアーノルドに、十四歳のときにかれを見たときの記憶を想起させたが、マルコシアスは周囲にひしめくほどの人間がいることを見てとって、すばやくその翼をしまい込んだ。


 そして、珍しいほどに熱烈な調子でシャーロットを抱き締める。


「やられるかと思ったよ。レディ、会いたかった」


「私もよ」


 素直にそう応じて、シャーロットはマルコシアスをうながして手を離させると、並んで歩き続けながらもよろめきそうになりつつ、かれの腕に手を置いた。


「エム、本当にありがとう。一か八かの賭けのとき、お前ほど頼りになるひとを知らないわ――自分のことだってお前を信じるようには信じられないくらいよ」


 マルコシアスはにやっと笑った。


「あんたの心臓でも、いつでも預ってあげるよ」


 アーノルドの足許で、ほんものの犬のように彼にじゃれついていたリンキーズが顔を上げ、「残念ながら、頭蓋骨以外は僕のもの」と歌うように言って、ためらいなくマルコシアスに蹴りつけられ、きゃん! と小さく悲鳴を上げた。


 シャーロットはじゃっかん目が回っており、悪魔どうしのそのやりとりには注意を割けなかった。

 ただ、当然とばかりに頷いた。


「ええ、預けるとすればお前に預けるわ。だってお前は返してくれるもの」


 ためらいなくそう断言したシャーロットは、今になって緊張が解け、安堵が津波のように押し寄せてきて、いよいよ足腰が怪しくなっていた。


 それを察して、マルコシアスが主人の腕を取って支える。


「おやおや、悪魔に対して、魔術師らしくないね、あんた」


 笑ったマルコシアスに、シャーロットは真面目に返した。


「お前に対してだけは、魔術師でいる必要はないと思ってるの。

 ――それで、」


 震える息を吸い込む。


「念のために訊くんだけど、二回目の銃の音で――本当に無理させてごめんね――お前の領域に戻ってくれていたのよね?」


 マルコシアスは誇らしげに頷いた。


「うん、あんたの得意そうな声は聞こえてたからね。

 ロッテ、あんたはもっと僕に感謝するべきだよ。アモンに追い詰められてるのに主人のそばに精霊を残す魔神なんて、僕くらいだぜ」


 シャーロットは熱心に頷いた。


「ええ、本当にありがとう。

 ――でも、少なくともこれで……」


 アディントン大佐と目を合わせる。


「ネイサンさまはしばらく、私が死んでいるものと判断するはずです。

 少なくとも、アモンを悪魔の(せかい)に帰して、かれにエムを捜させるはず」


「アモンの精霊に、きみを見張らせているということもあるだろうが」


 ランフランク中佐が暗い顔で言ったが、シャーロットは少し考えて、首を振った。


「どうでしょう、それよりもエムを優先すると思います。

 なにしろ、エムを見失ってしまうと――それも、悪魔の(せかい)で――()()()()ですもの。

 それに対して私は、アモンがその気になれば力技で見つけ出せます。そう考えると、一刻も早くエムの行方を追わせるはず――アモンが悪魔の(せかい)に帰れば、精霊もそれに従うはずです。

 しばらくは、精霊の監視はないと思います」


 アディントン大佐が、この分野での無知を認めるように、軽く両手を挙げてみせる。

 一方のランフランク中佐は、少しばかり危ぶむ様子ながらも、小さく頷いた。


 シャーロットはつぶやく。


「つまり、ちょっとは時間が出来ました」





 ――つまるところ、シャーロットの立てた計画は単純明快――シャーロットが殺されたように見せかけてネイサンの不意をつき、少なくともあの場から脱出する時間を稼ぐことだった。


 そのために、一度目の銃声でリンキーズが、()()()()銃声でマルコシアスが姿を消さねばならなかった。


 シャーロットとマルコシアスのあいだに〈身代わりの契約〉がないのはネイサンも知るところであり、ならばマルコシアスが強制的に悪魔の(せかい)に送還されるのは、召喚主の絶命のタイミングだけだからだ。


 マルコシアスがそれに合わせて動いてくれるかどうかは賭けだったが――なにしろ、かれも追い詰められていたのである――、どうやらその賭けには勝てたらしい。


 発砲に際して小細工したのはオンルで、かれは心持ち誇らしそうに、ランフランク中佐の肩で胸を張っている。





「まあ、たかが銃の一発で僕がやられるはずないって、あっちがすぐに気づいてたら、きみの考えは水の泡だけどね」


 リンキーズがおどけて言ったが、今ばかりはシャーロットはそれを無視した。


「オリヴァーさん――オリヴァーさんとストラスは無事?」


「無事じゃない?」


 リンキーズがあっさりと無視されたのをせせら笑い、マルコシアスが機嫌よく答える。


「僕が向こうに戻ったとき、あのワタリガラスめ、さすがにびっくりしただろうからね。いったんは僕の()ご主人さまのそばに戻ったはずだ。

 ストラスも馬鹿じゃないから、そのあいだに逃げたはずで――あんたのお友だちがしっかりしてれば、この目立つ大集団に合流させようとするはずだよ」


 シャーロットはほっと息を吐く。


 そして、またアーノルドに目を向けた。

 何か言おうとして口をつぐみ、言葉に詰まってもどかしそうにする。


 アーノルドがそれに気づいて、顔を顰めた。


「シャーロット、変に気を回さないで」


 彼がそう言って、ごしごしと目をこすった。


「悪いけどきみの演技を信じられなかったから、きみがびっくりするようなことを言えば、きみも真に迫った顔をしてくれると思っただけなんだ。まさかそんなに気にされるとは――」


「じゃあ、あれ、嘘なの?」


 シャーロットがつぶやいた。

 アーノルドはあいまいに肩を竦めてごまかそうとする。


 シャーロットが息を吸い込んだそのとき、そばの兵卒から何かを受け取って、アディントン大佐がシャーロットとアーノルドにそれを差し出した。


「腹に入れておけ。味は悪いが」


 保存食として用いられる乾パンだった。


 シャーロットは食べものを目にして急に空腹を自覚し、ありがたくそれを受け取って、歩きながら頬張った。

 マルコシアスがそれを呆れたように眺めて、「おいしい?」と儀礼的に尋ねている。


 一方、アーノルドは面喰らったような、戸惑ったような顔で、まず乾パンを、それからアディントン大佐の顔を見た。


「いや――おれ、金がないんだ」


「いいから受け取って、食え。今日の礼だ。

 きみの迫真の演技がなければ、われわれは詰んでいた」


 アディントン大佐がなおも乾パンを押しつけ、アーノルドが困惑した様子ながらもそれを受け取る。


 その様子をなんともいえぬ目で見つめて、アディントン大佐がつぶやいた。


「――すまない」


 アーノルドが瞬きして目を上げ、首を傾げる。


「なにが? ――何がですか?」


「閣下――グレース首相から、」


 大佐はつぶやき、恥じるように息を吸い込んだ。


「もうかなり以前から、きみを助けるよう命令されていた――だが、助けられなかった。

 われわれの無力が、きみを長いあいだ辛い境遇に置いたのだ」


 アーノルドはきょとんとした様子を見せた。

 しきりに瞬きし、目を泳がせる。


「いや――」


「アーノルド、きみは、」


 大佐が続けて低い声で言い、アーノルドは言葉を呑み込む。


「あのネイサンのくそやろうと憎むべきだ。あいつがこれまでの()()を払ったときには、誰よりも喝采する権利がきみにある。そしてさっさとやつのことを軽蔑して、忘れる権利が。

 ――そして、われわれを、私を、じゅうぶんに恨んで怒るべきだ」


 アーノルドがあわてて口を開こうとしたのをてのひらで止めて、大佐は淡々と続ける。


「われわれが優秀でさえあれば、きみはもっと早くに自由になっていた。

 きみが受けた仕打ち、あるいはきみが命令に従ってやったことに、きみ自身の責であるところはひとつもない。

 いいか、()()()()だ」


 アーノルドの唇が薄く開いた。

 長い睫毛が震えて、瞬きする。


「――――」


「きみはこれから、今までのことを思い出してつらくなることもあるだろう――そんなときは、この私を刺しに来て構わないんだよ。

 ――だから、いいか、きみの責であることはひとつもないんだから、どうかきみの人生を罵らないでくれ」


「――――」


 アーノルドの唇が震える。


「われわれは、私は、全力できみを明日に生かせる。

 だからきみは、過去に遠慮して不幸になろうとはせず――きみの人生の明るい面が、明日から始まったのだということを忘れないようにしてくれ。それだけは頼む」


「――――」


 アーノルドは黙っていた。

 青灰色の瞳が食い入るようにアディントン大佐を見つめている。


 やがて彼は大きく息を吸って、大佐から目を逸らせた。


 乾パンにかぶりついたとき、彼の瞳から涙がこぼれたが、大佐はそのときには夜空を見上げていた。



 そのとき、軍人をかき分けて、顔を真っ赤にして汗をかいたウィリアム・グレイが、息せききって駆けつけてきた。


 彼がアーノルドを見つけて、「おお、神よ!」と、恥ずかしげもなく叫び、まさに乾パンを一口飲み込んだところだった彼に駆け寄り、抱き締める。


 アーノルドは目を白黒させてむせた。


「ミスター・グレイ――彼が窒息してしまう」


 ランフランク中佐が控えめに注意したが、グレイは聞いていなかった。


 ぱっとアーノルドを離すと、みるみるうちに目に涙を溜めながら、どもるようにして尋ねている。


「大丈夫かね? 怪我はないかね? 病気は? 食事はちゃんと――どこにいたんだね?

 つらかっただろう――疲れただろう」


 アーノルドはぽかんとして、目の前の初老の男性を眺めていたが、ごしごしと目をこすると、小さな声で答えた。


「グレイさん……だよな? 久しぶり、おれは、その……」


 口籠り、うつむいたあと、アーノルドは顔を上げた。


 彼が小さく微笑んだ。

 透き通るような明るい微笑で、内側から輝くかのようだった。


「――大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。

 あと、……おれが十四歳のときに、あんたの分のサンドウィッチを分けてくれてありがとう」


 グレイは困惑した様子で瞬きした。

 そして、何よりも深い安堵に、彼の膝は折れそうになっていた。


「そんなことがあったかな? ――無事ならいいんだ、本当にいいんだ、良かった……」


 グレイの耳許から、魔精のエセラが顔を覗かせている。

 アーノルドはかの(じょ)にも微笑みかけた。


「妖精みたいでかわいいね――はじめまして」


 エセラが驚いたように目を見開き、くるっとその場で宙返りしてから、はにかんだ様子でアーノルドに手を振る。


 アーノルドも手を振り返した。



 そのときには、この大隊全体に、「人質の奪還成功」の報が伝わっていた。兵卒たちの士気が目に見えて上がっている。


 とはいえ、事態は楽観できるものではなかった。


「――アモンがまさか、悪魔の(せかい)でまでくそやろうの命令に従うとは」


 ランフランク中佐が毒づき、アディントン大佐が眉を寄せる。


「俺には分からないが――それはそんなに大したことなのか」


「大したことなんてものじゃないですよ。それこそ歴史に残りますよ。

 後世の学生は、歴史上の重大事が起こった日を答えよと言われたときに、山勘で今日の日付を書けば、けっこうな確率で正答するでしょうな」


 応じながら、ランフランク中佐は、グレイが愕然とした顔で、「悪魔が自分の(せかい)で主人の命令に従っただって?」と、シャーロットに向かって訊き返しているさまを示した。


「ね?」


「だから、エムは安全だと信じていたんですが……」


 シャーロットが慙愧に耐えない小声でつぶやいて、マルコシアスを見遣る。


 マルコシアスは苦虫をかみつぶしたような顔をした。


「アモンの馬鹿やろう」


「ネイサンがそれだけの忠誠を買ったというよりは――」


 中佐がつぶやき、足早に進みながらもシャーロットを見遣る。


「“気高きスー”が、当時それだけの忠誠を買っていたように聞こえましたね。それはそれで信じられないことですが。

 ――まったく、悪魔をたらしこむのは血筋かな」


 冗談めかせてそう言われ、シャーロットはたじろいだ。



 シャーロット自身は曾祖母のことは知らず、曾祖父にも会ったこともない。

 亡祖父にあったことすら数えるほどで、いずれも幼いときであり、顔すら覚えてはいない。


 だからか、スーザン・ベイリーと自分の血のつながりを、強く意識したことなどはなかった。


 だが、唐突に、その血を引いていることに猛烈な羞恥を覚えたのだ。



「それは……」


 シャーロットは眉を寄せる。


 そんな彼女の眉間をつついて、マルコシアスが呆れたように言った。


「どこで誰のところに生まれていようが、あんたはあんたでしょ。拗ねないで。

 ほら、次のご命令はなんでしょう、ご主人様?」


 かれはかれで、実のところかなり焦っているようだった。


「自分の領域に回れ右して逃げるっていう選択肢がなくなったのは初めてだよ。ロッテ、今度ばかりは、僕はあんたと一蓮托生だ。

 僕はどうしたらいいのかな、レディ」


















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