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11 これからも、いつまでも

「初めてグレース閣下にお会いしたのは、あの方が司法省副大臣だったときだ」


 アディントン大佐が小声でそう言ったのは、シャーロットがあらためて順を追い、あらかたの経緯を二人に話し終え、ランフランク中佐があらためて、彼の魔精――オンルといった――に、精霊を使って彼らの麾下の捜索をするよう命じたあとだった。


 ようやく軍省省舎の地上階に出て、足早に進みながらも、シャーロットが尋ねたことに返答してくれたのだ。


「軍省と司法省は仲が悪かったんだが、ちょうどそのとき軍人の裁判があってな。そのときに私も証人として出廷することになり、そのときにあの方にお会いした」


 大佐は懐かしむような目をして、小声ながらもきっぱりと言う。


「当時から変人として有名だった」


 そう言いながらも、彼は油断なく廊下を見渡していた――ガス灯が照らす廊下には、相も変わらず人影はない。

 辺りは静まり返っている。



 三人の人間の後ろでは、二人の魔神が並んで歩き、二人してフクロウの魔精の翼を持ち上げてみたり、ひっくり返して脚を掴んでみたりと、好き放題に遊んでいた。


 オンルはめそめそした声を上げていたが、主人であるランフランク中佐がそちらを助けに行く様子はない。



「あの方は――きみは知っているかな――非常に由緒ある伯爵家のご出身でね。庶民の暮らしなどまるでご存じではなかったはずなんだが、あるときふと、汽車から見えた炭鉱の様子が気になられた様子で――炭鉱夫の給料だとかその安全だとか、そういったことを議会に上げようとしてね。

 それは司法省の管轄ではないから、内務省の方に根回ししようとしたんだが、根回しした先から、それは司法省の管轄ではないと大顰蹙を買っていた」


 シャーロットは微笑んだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、と思って胸が痛んだ。


 アディントン大佐は、人影がないことをいちいち確認しながら廊下を進んでいき、呆れたように首を振る。


「あの方が大臣に昇格なさったときに、私は結婚したんだが――いやはや、あの恨みは忘れられん」


 シャーロットは瞬きする。


「何があったんですか?」


 一方、ランフランク中佐はよく知る話なのだろう――すでに彼は笑っていた。


 アディントン大佐は憤然とした小声で続ける。

 その顰めた顔のしわ一本一本に、チャールズ・グレースへの敬愛があふれていた。


「私の妻になりたての彼女の目の前で、真顔で、私に向かって、『幸せになるように、私はきみを愛しているんだから』とのたまわれた。あのとき噴き出したワインの味――忘れられん。あのとき、私は少尉になったばかりだったんだが、あやうく徽章にワインのしみがつくところだった」


 ランフランク中佐が咳払いして、笑いを堪えた震え声で、取り成すように言った。


「あの方、そういうところがありますからね……。事あるごとに、『私はきみたちを愛しているよ』だの、『きみの幸福以上に大切なことがあるものか』だの……」


 大佐が溜息を吐く。


「妻は凄まじい目で私を見ていたな。誤解が解けるまで、私が閣下の愛人だったのではないかと疑っていたらしい」


「新婚初夜から浮気の言い訳でしたか」


 中佐が笑い含みに言って、ちょうどそのとき曲がり角に差し掛かり、大佐が手を伸べて二人の足を止めさせる。


 後ろからストラスの舌打ちが聞こえてきた。


「誰もいねぇって言ってんだろ」


 大佐は肩を竦めた。


 悪魔の言うことを妄信しないこと、これは軍人の鉄則である。

 しかもストラスは麾下に仕える悪魔でもないのだから、なおのことそうだ。


「いや、あの夜ほど冷や汗を覚えたことはないな。最後には――あのとき、私は士官宿舎にいたんだが――他の部屋の連中も引っ張ってきて、いかにあの方が変人か、妻に言い聞かせてもらってだな。

 あの夜のことは未だに物笑いの種になっている」


 シャーロットは思わず笑い出し、声を抑えるために口に手を押し当てた。


「閣下は罪滅ぼしとおっしゃって、われわれの初めての結婚記念日にワインを贈ってくださったんだが、あの味も忘れられん。二度と飲むことはなかろう高い酒だった。そう申し上げると拗ねてしまわれて、ブドウの品種だなんだとお話しされたが、そちらは全く覚えておらん」


「覚えていらしたら、さぞかしワイン通になれたでしょうに」


「この俺がか? 冗談を言うな、ランフランク」



 省舎の裏口が見えた。


 シャーロットはてっきりそちらに向かうものと思い込んでいたが、二人の軍人は違う方向へ進もうとしていた。


 シャーロットは目をしばたたき、「あの」と控えめに声を上げる。


「うん?」


 アディントン大佐がシャーロットを振り返る。

 彼の足取りに迷いはない。


 シャーロットはおずおずと指を上げて、裏口を示した。


「あの――外に出るのでは?」


 アディントン大佐もランフランク中佐も、逆に驚いたようだった。

 大佐がちらりと中佐を見遣る。


「お前、武器は」


「取り上げられました」


「私もだ」


 すばやい遣り取りののち、大佐がシャーロットを見下ろして苦笑する。


「この愚図な部下の悪魔は、まだわれわれの麾下がどこにいるのかを探れていない。われわれとしても、丸腰でネイサンのところに乗り込む気はない。武器の調達が必要なんだよ」


 シャーロットは恥じ入ってうつむいた。


「……申し訳ありません」


 それから彼女は振り返り、彼女の悪魔を叱りつけた。


「こら、エム。オンルの邪魔をしちゃ駄目でしょ」


「働いてるのはこいつの精霊だよ、こいつじゃなくて」


 ふてぶてしくそう言いながらも、マルコシアスはさっとオンルから手を離して、両手を挙げて肩を竦めてみせた。


 ストラスが嬉しそうに、オンルを独占して遊び始める。

 オンルはあわれっぽく泣いていたが、中佐がそれを助ける様子は相変わらずなかった。



 大佐と中佐は、迷う様子もなく階段に行き着き、階段の上と下を等しく警戒しながら、つねにシャーロットを真ん中に置く形で階段を駆け上がった。


 二階もまた静まり返っている。


 ――だが、どこかで、硬い靴底が大理石の床に当たる、かつん、という音が聞こえてきた。


 たちまち、大佐と中佐の表情に緊張が昇る。



 シャーロットの知る限り、ネイサンが最後にいたのはこの軍省の省舎だ。


 それはすでに二人の軍人にも共有している。

 だが、ネイサンがあのままこの省舎に留まっているとは、大佐も中佐も考えていないようだった。


「将軍を押さえたなら、将軍だけで軍省の面倒は見られるからな」


 とは大佐の言。


「やつ本人は他の省の掌握に動くはずだ。それこそ司法省――」



 こつこつ、と、靴音が廊下に反響している。

 続いて、低い――何を言っているのかまでは聞き取れない――声。


 一人ではないだろう――二人か、三人か。


 中佐が、足音が響くことを嫌ったのだろう、シャーロットに向かって、「静かに歩いて」と合図する。

 大佐も中佐も、軍靴を履いているはずなのだが、驚くほど静かに足を運んでいた。


 シャーロットはあわてて頷き、もういっそ靴を脱いでしまおうかと検討する。


 そのとき、ふわっと彼女の足が宙に浮いた。


「――――!」


 驚いて見ると、いつの間にかすぐそばに来ていたマルコシアスが、当然のように片手で彼女を抱き上げていた。


 かれが微笑んで、口を開いた。

 声はきわめてひそやかで、反響する気配すらなかった。


「――えーっと、なんだっけ。

 そうそう、スカートを押さえてて、レディ」


 シャーロットは微笑んで、マルコシアスの肩に肘を預けることにした。



 大佐と中佐は、驚くほどすばやく静かに廊下を進んだ。


 シャーロットが気をつけたことといえば、緊張で息の音が大きくならないようにすることだけだった。


 シャーロットからすれば、先ほどの靴音がどこから聞こえてきたかすらもさだかではなかったのだが、大佐も中佐も、悪魔から指摘が入らずとも、そのおおよその位置を把握していたらしい。


 大佐が、シャーロットには見慣れない身振りをして、中佐がさっと左側の壁に寄る。


 同じようにするべきだということは分かったので、シャーロットはマルコシアスの肩を叩いた。

 仕方がなさそうに肩を竦めて、マルコシアスが軽々と足を運んでいく。


 ストラスはオンルを掴んだまま、さらに仕方がなさそうにマルコシアスに続いた。


(何をするべきか言ってくだされば、)


 シャーロットはやきもきしながら考えた。


(エムにその手伝いを頼めるんだけど……)


 だが、アディントン大佐もランフランク中佐も、悪魔を頼る考えは頭からないようだった。



 それは当然ともいえた――この国が七十年かけて築いてきた精神、争いごとに悪魔の力はご法度という考え方、その発露だ。


 そして加えて、ランフランク中佐は魔術師だ――悪魔を過信することの恐ろしさは知っているはずだ。


 この、綱渡りをしているような局面において、悪魔を戦力に数えるはずがない。



 大佐と中佐は、ほとんど音を立てず、壁際を疾走するように進んだ。


 シャーロットがマルコシアスに、「追いかけて」と合図をすると同時に、大佐がこの廊下と他の廊下が行きあう角に辿り着いている。

 大佐に続いて、中佐がその角に飛び込んでいく。


 ガス灯の明かりに影が踊り、シャーロットはつかの間、演劇を観ているかのような場違いな感覚に捕らわれる。


 マルコシアスが、不承不承といった様子で足を速めると同時に、角の向こうに消えたランフランク中佐が、ふたたび顔を出した。

 ガス灯の明かりに、彼の金髪が赤みを帯びて見えている。


 彼はひらりと手を振って、唇に指を当て、シャーロットを手招きした。


 手招きされたのはシャーロットであっても、彼女を運んだのはマルコシアスだった。


 シャーロットはふと、客観的に見ればこの状況は、十四歳の少年が二十一歳の女性を運んでいる図であって、あまりよろしくないなということに思い至ったものの、思い至ったからどうするという話でもなかった。


 マルコシアスに抱えられたまま、シャーロットが廊下の角の向こうを覗く。


 そこに、見事に昏倒して床にひっくり返った二人の衛兵を見て、シャーロットは目を丸くした。

 衛兵は二人とも目を回しており、一人は完全に床に倒れ、もう一人は壁をずり下がったような格好になっていた。

 床に倒れた一人の顎に、あかあかと痣が出来ている。


 アディントン大佐もランフランク中佐も、この二人を素手で無力化したことに疑いはないが、息ひとつ乱していなかった。


 大佐が屈んで、衛兵の持ち物を探ろうとしている。

 中佐がそれを止め、「自分が」と申し出て、すばやく衛兵のそばに膝を突いて、手早くその持ち物をあらため始めた。


 数秒を待たずして、ナイフ、拳銃、棍棒などが取り上げられていく。


 中佐がそれらを、取り上げるそばから大佐に手渡していき、大佐はすばやく武器をあらため、拳銃のうち一丁を自分の腰の革袋へ収め、もう一丁を、銃身を持って銃把を中佐に向けることで、彼に手渡した。

 ナイフも一丁をベルトに挟み、一丁を中佐へ渡す。


 棍棒については見向きもせず、大佐が中佐に身振りで指示を下さすと、中佐がオンルに命令の声を発した。


 他の悪魔――主人どうしも敵対関係にはない悪魔――の務めを邪魔するのは無粋と判断したのか、ストラスがかれからぱっと手を離す。

 その拍子に床に落ちそうになりながらもなんとか体勢を立て直し、オンルは這う這うの体で主人の下へぱたぱたと向かった。


 もごもごと文句をつぶやきながらも、中佐が伸ばした腕に止まったオンルが、身ぶるいの仕草で魔法を使う。


 たちまちのうちに、棍棒が三つに折れて転がった。


 中佐は満足を示して頷くと、そっけなくオンルを腕から払い落とす。

 オンルは慣れているのか、危なげなく宙に舞い上がって事なきを得た。



 マルコシアスが喉の奥で狼じみた声を上げたので、シャーロットはぎょっとした。


「エム?」


 声をひそめて呼び掛けると、マルコシアスはほとんど羨ましそうな目で中佐を見ながら応じた。


「――言っただろ。僕、荒事で召し出されることが多かったんだよ。

 だからこういうのを見ると、血が騒ぐというか、わくわくするというか」


 シャーロットは息を吸い込んだ。


「騒ぐ血もないでしょ。落ち着いてよ。――いい、」


()()()()()()()()()()()()()()、だろ。分かってるよ、もう」


 マルコシアスは拗ねた様子でそっぽを向いた。



 中佐が、手際よく衛兵の上着を脱がせ、それを使って後ろ手に衛兵を縛り上げている。


 大佐ももう一人を同じようにし、ためらいなく衛兵に即席の猿轡を噛ませることまでした。

 そして、手に入れたばかりの拳銃を確認し、ひとつ頷く。


「いいだろう、行こう」


 中佐がシャーロットを振り返り、顔を顰めた。


「すまないね、怖い思いをさせて」


「いえ」


 シャーロットは真面目に答えた。


「郵便馬車の事故を聞いたときよりはるかにマシです」


 中佐は意味が分からなかった様子で首を傾げたが、拘泥することはなかった。





 一行はさらに進み、四階に達するまでのあいだに三度、同じように衛兵に行き当たり、それを無力化した。


 シャーロットは、大佐と中佐の身ごなしと手際の良さに、ただただ目を丸くするばかりだった。

 二人は、手に入れた銃もナイフも使わず、淡々と徒手で衛兵を無力化してのけた。


 目を瞠るシャーロットに、中佐が顔を顰めてみせる。


「これが仕事だからね。最近は一線に出ることはなかったから鈍ったかと思っていたが、案外身体は動くね」


 それを聞いた大佐が、軽蔑の眼差しで中佐を睨んだ。


「日ごろから鍛えていろ、馬鹿者が」


 中佐は小さくなって頭を下げた。


 大佐は舌打ちしてから、周囲を見渡す。


「――しかし静かだな。こいつらも、巡回しているという風ではなかった――念のための見回りといったところだな。

 ミズ、きみの話では、四階の広間に文官が集められたということだったが」


「そうです」


 シャーロットはすかさず答えた。


「武官は別の場所にいると考えるべきかな――静か過ぎる。

 ミズ、広間に来た裏切り者の将軍は、カヴァデールだと言っていたね?」


 シャーロットは頷く。

 大佐は冷静な口調でつぶやいた。


「あの馬糞にも劣るくそやろうが」


 中佐が、すばやく註釈を入れるように言った。


「衛兵隊はね、武官の中でも特殊な指揮命令系統に属しているんだ。彼らはいちおう、建前上は、国王陛下の直轄ということになっている。だが、国王陛下からその指揮を委任されているのが、くだんの()()……失礼、カヴァデール将軍なんだよ」


「逆にいえば、カヴァデールのくそやろうを抱き込んだところで、掌握できるのは衛兵だけだ」


 大佐が苛立ちを籠めて言い、さらに足を進め始める。


「やつになびいたくそやろうは、もう分かっている――臆病者のイーデンだ」


「――その方も将軍ですか?」


 シャーロットがこっそりと中佐に尋ね、彼が頷く。


「そうだ。ちなみに魔術師だ」


「バイロン将軍がご無事なら、まだ希望はあるが……」


 大佐がつぶやき、軍省にいながら軍にはまったく明るくないシャーロットは、あわててその名前も記憶の中に刻みつけた。

 マルコシアスはあらゆる点で頼りになるが、人の名前を覚えることはしない。


「バイロン閣下は」


 中佐が言い添えた。


「アディントン大佐の直属の上官に当たる。われわれをグレースさまに貸しつけてくださっている方だといえば早いだろうか」


 シャーロットは囁いた。


「私がいた時点では、四階の広間にいらした武官の方は、衛兵の皆さまだけでした」


「それでもいいんだ。四階には魔術師もいるということだろう。これまでなら考えに入れなくて良かったが、ネイサンの考えは異常だ――魔術師を、対人の武力に数えかねない。

 唐突にネイサンに感化されて権力欲に憑りつかれた魔術師が、悪魔を召喚して暴力をふるわせるような事態は止めなければ。脅されてそんなことをするならば、なおさら止めなければ」


 大佐が恬淡と言って、シャーロットは息が苦しくなる。


「技術省の方が、抱えている魔術師は多いと思いますが――」


「そうだ、だからこそ、ネイサンに賛同する連中も多いと踏んで、ネイサンはそこを後に回すだろう。やつにとって、喫緊の課題は司法省の掌握のはずだ」


 シャーロットも、オリヴァーに電話をかけた辺りでは、そう思っていた。

 だが、不安のあまりに考えがぐるりと変わった。


「でも、ネイサンさまなら、司法省を力づくで黙らせることも視野に入れて、先に技術省に乗り込むこともあるのでは――」


 かすれた声でそう訴える。

 大佐は即座に首を振った。


「少なくとも()()()()、司法省は行為の是非を判断する権限を持っているんだ。

 司法省が国王陛下にこの事態を伝え、やつを非であると断じれば、国王陛下が直接衛兵に命令を下すことになる――ネイサンは衛兵の指揮権を失う。衛兵の正当な主君は国王陛下ただ一人だからね」


 そのとき唐突に、シャーロットは、ネイサンが長年に亘って司法省と反目してきた意図を悟った。



 ――司法省の権力をあらかじめ削り、たやすく制圧し口を塞ぐことが可能になるよう、ずいぶん前から準備していたに違いない。


 そしてそれを水際で押しとどめていたのが、チャールズ・グレース――司法省出身の首席宰相だったのだ。



「そ――そうですか」


 シャーロットはこくこくと頷いた。


 決して頭は悪くないつもりだが、グレートヒルの権力構造をよく知っているのは、ここにいる二人の軍人の方だ。

 シャーロットには立てない視座に立って、二人が下した判断に従うことは正しい。


 だが、事態が切迫していることも確かだ。


「それに、衛兵を締め上げて他の連中の居所を吐かせられる」


 中佐が事も無げに言って、オンルをちらりと見た。


「この役立たずは、まだ麾下たちの居所を見つけられていないし――」


「精霊もそう無尽蔵にいるわけではないんですよ」


 オンルが不満そうに言って、シャーロットは思わずマルコシアスを見た。


 マルコシアスが微笑む。


「ああ、ロッテ。あんたからのお願いなら聞いてあげたいところだが、僕は肝心の、こいつらの味方の顔を知らない」


「もう」


 シャーロットは思わずつぶやいた。


「リンキーズをこっちに戻すべきかしら。かれならあれこれ聞き耳を立てて、情報を集めて、顔を知らなくても捜してくれるわ。気の回る子だから」


「四六時中ほいほい呼ばれる雑魚でも、こっちに慣れればそんなことも出来るようになるんだね」


 マルコシアスが嫌味っぽくつぶやいた。


「僕は高尚な魔神だからね。召し出されることも稀だから」


「頻繁に私に召喚されてくれてありがとう」


 シャーロットが返すと、マルコシアスは魅力的な笑顔で応じた。


「これからも、いつまでも。僕のレディ(マイ・レディ)



























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