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10 来訪続々

「そりゃまたすごい」


 と、シャーロットの()()()()()()()()は言った。



 時刻は深夜の一時を回っている。

 こんな日であっても、シャーロットを深夜まで執務室に閉じ込める書類の山は健在だったのだ。


 とはいえ、かりにネイサンが気を回さず、シャーロットをはだかで(というのはもちろん比喩だが)維持室に送り返していた場合、シャーロットが仕事に取り掛かることが出来たのは、維持室の他の面々がみな帰宅したあとになっていたことだろう。


 維持室に戻ったあとのシャーロットは、確かに今や遅しと待っていた同僚たちの、熱狂的な視線に迎えられはしたものの、そばについていてくれた護衛二人のために、誰にも捉まらずにおのれの執務室に逃れることが出来たのだった。


 そしてそのあとは、護衛がずっと扉の前に立ち、シャーロットに声を掛けようとする者たちに睨みを利かせてくれていた。


 とはいえ、シャーロットがいざ帰るときに礼を言おうとすると、護衛は途中で交替していたらしく、別人になっていたのだが。

 シャーロットがそのことにびっくりした表情を見せると、護衛のうちの一人が苦笑して、声を低めて申し立てた――「いや、さすがに、この時間まで立ってはいられませんよ」。



 ともかく、そうしてシャーロットは質問攻めから守られて、無事に自宅に送り届けられた。



 そうして戻った自分のアパートメントで、シャーロットは浮かない顔で、浴室にも入らずにベッドの上に座り、床に脚を伸ばしていた。


 汗でワンピースが肌に張りつくような感覚がある。

 夜であっても、辺りには昼間の太陽の亡霊が漂っているようで、暑さは引いていなかった。

 彼女はストッキングだけは脱ぎ捨てて、わきに放っていた。


 シャーロットはぼそぼそとした小声で、その日のことを、マルコシアスの出番を全て省いて、独り言のようにして彼女のささやかな同居人に伝えたところだった。



 かれが素直に感心した様子で返したことが、冒頭の感想である。

 かれは続けて言った。


「いいじゃないか。えーっと、なんて言うんだっけ。きみたち人間の言い方があるよね、あー、そうそう、『玉の輿』だ。いいじゃん」


 シャーロットは、手に持っているものがあれば投げつけていたのに、という顔をした。


「いいわけないでしょ。誰よ、オーガストって」


「これから知っていけば」


「黙って」


「案外いいやつかもしれないだろ」


「黙りなさいってば!」


 シャーロットのささやかな同居人は口をつぐんだ。


 荒々しく息を吐いてから、シャーロットは自分の顎をとんとんと叩いて、考え込んだ。

 どうしてネイサンが唐突にあんなことを言い出したのか――


 ――『きみと仲良くしたいと思っているから』



 時機ではないはずだ――



「――ねぇ、きみ、ご主人」


 シャーロットのささやかな同居人が、一度はつぐんだ口を開いた。


「きみはいつも、とにかく自分の身の振り方に臆病だけど、もういいんじゃない」


 シャーロットが顔を顰めたのが見えたのか、かれは投げ遣りな口調で続けた。


「別に、もういいんじゃない。たまには目をつむって耳をふさいで、とりあえずやって来た船に乗ってもいいんじゃないの。

 そっちの方が、むしろ幸せかもしれないよ」


「――――」


 シャーロットは虚を突かれて瞬きした。


 臆病、という言葉が、妙に胸に刺さるような気がした。

 “()()()()()()()()()()()()()()”、と、過日の彼女を評した悪魔の言葉の記憶を、まるで引力のように感じる。


 だがすぐに首を振り、それからシャーロットは大きく息を吸い込んだ。

 吸い込んだ息を肺の中に溜めて一拍を置いてから、彼女は皮肉っぽくつぶやく。


「――あら、悪魔が幸せについて考えるなんて、奇妙なこともあったものね」


「まあ、うん」


 かれは元気なく言った。


「前はまだマシだったけど、この二年というもの、来る日も来る日もこの陰気くさい()()()()に缶詰めで、そりゃあ幸せについて考えたくもなるってもんでさ……」


「どこがごみだめですって」


 シャーロットは肩を怒らせたが、周囲を見渡して反論の気勢を削がれた。

 気まずそうに咳払いしてから、彼女は言い訳がましく言った。


「少なくとも、ちょっと散らかっているだけで、清潔よ――」


 シャーロットのささやかな同居人は、悲しそうなうんざりしたような声音でそれを否定した。


「いや、けっこう、ほこりがひどかったりする」


「もうっ」


 シャーロットはベッドを叩いた。


「うるさいわね、病気になるわけじゃないんだから我慢なさい。

 ――私の出す報酬は()()でしょう?」


 彼女のささやかな同居人は少し考え込み、そして認めた。


「――まあ、そうだね」





▷○◁





 明けて十四日、シャーロットはまんじりともせずに夜を過ごしたがために、いつも以上に寝不足を訴える頭痛を抱えて登省した。


 維持室の自分の小さな執務室に入るなり、シャーロットは鞄を放り出して椅子に座り込み、天井を仰いでじっと考えに耽り始めたが、その時間も長くは続かなかった。


 まもなくして、シャーロットはいや増す頭痛に呻き声を上げることとなった。



 登省者が多くなるにつれ、来客が湧き始めたのである。



 自分を衆目から守るネイサンの采配も、今日には及んでいないということを、シャーロットは遅まきながら思い出した。


 まず最初にシャーロットの執務室に踏み込んできたのはフラナガン助官で、シャーロットは明日が期限の稟議を思い出して胃が痛くなった。

 フラナガン助官は、例の小切手の金額を推し量るような目でシャーロットを見ながら、まずは明日が期限の稟議について進捗をねちっこく尋ね、そしてそれは口実だったと自白するかのごとく、「昨日の参考役との話だがね……」と切り出した。


 シャーロットがどうでもいい話でお茶を濁し、とぼけ抜いてようやくフラナガン助官を自分の小さな執務室から押し出すころには、フラナガン助官の機嫌は最低を突破して悪くなっており、そして彼女の執務室の前には、聞き耳を立てる野次馬が黒山の人だかりを作っていた。


 とはいえその全員が、自尊心から聞き耳を立てていたとは認められなかったのか、扉が開くと同時に、不自然極まりなく手許の資料に没頭し始めたのだが。

 だが、どうして自分の机ではなく、その場に立ちながら資料のページをめくっているのかを考えてみれば、彼らの直前の行動は察するにあまりあった。


 フラナガン助官は不機嫌ついでに、そういった立ったまま資料を読みふける数人を、がみがみと怒鳴りつけてからおのれの執務室に戻っていった。



 ぐったりしたシャーロットがすばやく扉を閉め、立てこもる意思を固めているうちに、また別の人間が扉を開けた。


 それはザカライアス・リーで、シャーロットは声を荒らげそうになったのを堪えた。


「ねぇねぇ」


 と、彼はやはり年齢不相応の、無邪気な声音で言って机に近づき、両手で額を押さえてうなだれるシャーロットの顔を覗き込んだ。


「昨日、何がどうしたの? 僕が見たのは、きみが室長助官に連れて行かれるところだけだったんだけど、あれは実は参考役に呼ばれてたんだって噂になってるよ」


 シャーロットは大急ぎで頭の中で筋書きを作り、呻くように言った。


「騒ぐほどのことじゃないんです――私が以前にまとめた報告書で、参考役さまが気になる点があったということで、呼ばれて報告してたんです。それだけです」


「そうなの」


 リーは素直に目を見開いて納得を籠めて頷き、そしてちらっと扉を振り返った。


 扉の上部の硝子越しに、こちらを興味津々で眺めている役人たちが見える。


「うーん、早いとこそう説明した方がいいかも。みんな、好き勝手に自分の推測をしゃべっててさ――きみ、聞いたらびっくりするんじゃないかな」


 シャーロットは両手で顔をぬぐった。

 深呼吸して、彼女は尋ねた。


「――たとえば、どんな?」


「えーっとね」


 リーは真面目に記憶を呼び起こした様子で、指折り数え始めた。


「やっぱりきみの好待遇は参考役の七光りだったんだ、って確信を深めた人と、」


()待遇!」


 思わず声を高くして、シャーロットは自分を取り囲む書類を眺めた。

 リーは肩を竦める。


「あと、きみの報告書にミスがあったから、参考役がきみを叱りつけたに違いない、って言ってる人と、」


「――――」


 シャーロットは無言で顔を顰めた。

 十四歳のときならば、「あら、嫉妬で忙しい人もいるものですね」くらいのことは言っていたところだ。


「あと、これが傑作。参考役がきみに求婚したって噂まであるよ」


 リーが愉快そうに言って、「参考役って言っても、もうおじさんなのにねぇ」とおかしげにつぶやく。


 ごん、と、シャーロットは机に額をぶつけた。


「馬鹿馬鹿しくて話にならない」


 シャーロットはつぶやいたものの、顔を上げ、額をさすりながらも、ふと真剣な顔になって言った。


「その噂、どのくらい広まってます?」


「え、分かんない」


 リーは素直に応じた。


「だって僕も、登省してから執務室に缶詰めだもん」


「まあ、そうですよね」


 シャーロットはつぶやきつつ、顔を顰めた。


(――もしお耳に入ったら、閣下はどう思われるかしら……)


 そしてふいに、今の状況を外形的にみればどう映るのかしら、と、ひやりとする心地で考えた。





▷○◁





 昼を告げる鐘が鳴るや否や、マーガレット・フォレスターがシャーロットの小さな執務室の扉を、こんこんこんっ、とキツツキのようなノックで鳴らした上で乗り込んできた。


 シャーロットは顔を上げて彼女を認めると、明日が期限の稟議、しかも気が散っていっこうに検証が進まない稟議を、清々した気分でいったん横に置いた。


「ペグ! ありがとう――今日は本当に眠くて」


「そんなあなたにペグ印のコーヒーです」


 マーガレットはおどけて言って、塞がった両手の代わりに足で扉を閉めた。


 ちなみにそのころになるともう、シャーロットに向かって野次馬根性を燃やすような暇な人間はいなくなっていた。


 マーガレットはてきぱきとした動きで、コーヒーのカップをシャーロットの前に置き、その隣に、いつものように紙袋を置いてやった。


 シャーロットは代金相当の紙幣を引っ張り出してマーガレットのポケットに押し込んでから、嬉しそうにコーヒーのカップを両手で包むようにして持ち上げると、ちびちびとコーヒーをすすった。


 このコーヒーはマーガレットがどこからか調達してくれるものだったが、淹れたコーヒーを氷で冷やしてあって、今日のような暑い日には特にありがたい。

 冷たい苦みが喉を通っていって、ぼやけた頭を鮮明にしてくれるようだった。シャーロットは溜息を吐いた。


 カップを置いて、紙袋を開ける。


 それをきらきらした目で見守りながら、マーガレットは勢い込んで言った。


「ね、ロッテ。昨日、軍省の参考役さまにお呼ばれしていたというのはほんとう?」


 シャーロットは渋面を作った。



 これまで、茶会に呼ばれるときも晩餐に呼ばれるときも、ネイサンは私的な形で使いを寄越していたし、シャーロットがそそくさとその場に向かうときも、誰も彼女の行方を気にかけたりはしなかった。


 そしてもちろん、ネイサンがそうやって呼び集める面々が、他の場所で参加者についておおっぴらに話すわけもない。

 さらにいえば、ネイサン主催のそういった場に参加する他の人々とシャーロットは、その他の場では一度も顔を合わせたことはなかった――立場が違い過ぎるがゆえに。


 もちろん、入省式の直後にシャーロットがネイサンから声をかけられていたことは広く知られているし、それがゆえにシャーロットは、参考役の七光りという、不名誉なラベルを貼られて維持室に執務室を与えられることになっている。

 そのこともあり、「リクニス学院卒の、参考役の後輩というだけで執務室を得た、七光りの世間知らず」としてシャーロットを見る維持室の面々が、ときどきシャーロットが席を外している理由、そそくさと早めに帰る理由を、参考役に見ていたかもしれない。

 だが、さすがに推測の域を出ないことで大騒ぎするほど維持室の仕事は暇ではない。


 ――そんなわけで、これまでシャーロットは、参考役の秘蔵っ子として注目を浴びることはなく過ごすことが出来ていた。



 ところが、今になって、ネイサンが上司を通してシャーロットを呼びつけてしまったのである。

 これでは噂にするなという方が無理がある。



 シャーロットは渋面から溜息を絞り出し、目をこすった。


「――それ、どのくらい噂になってるの?」


 マーガレットは好奇心できらめく瞳で、しかしシャーロットの顔を見て、じゃっかんのあわれは催したらしい。

 慰めるように言った。


「そんな、グレートヒル中に広まっちゃった、みたいな悲しそうな顔しないでよ。――うーん、私の見たところ、軍省でかなり噂になっていたくらいかしら。

 司法省の知り合いは、別になんとも言ってなかったから」


 シャーロットはうんざりして息を吸い込んだ。


 マーガレットはそんな彼女を、きらきらした眼差しで見つめている。


「いろんな説が錯綜してるわよ、シャーロット。

 あなたがクビになるだの、出世するだの、参考役さまと結婚するだの、参考役さまの養女になるだの、牢屋に入るだの――」


「よくまあ、そこまで想像をはばたかせる余地があるわね」


 シャーロットは辛辣に言って、紙袋からチーズとピクルスのサンドウィッチをがさがさと取り出した。


「実際のところ、以前に私が書いた報告書について、参考役さまが直接報告に来るようにとおっしゃった事項が少しあっただけよ。

 出世もしないしクビにもなりません、誰の養女にもならないし、結婚もしないし、牢屋にも――」


 ふいにネイサンの灰色の目を思い出し、シャーロットは次に口に出した言葉を、心の底ではあやふやに思った。


「――入りません。分かった?」


 マーガレットは見るからにがっかりした。


「そうなの? まあ、残念」


 シャーロットは胡乱そうに眉を寄せた。


「どうして?」


「だって、」


 マーガレットは素直に答えた。


「あなたがもし参考役さまの養女にでもなってみなさいよ、これまであなたをぞんざいに扱ってきた連中が泡を吹くわよ」


 シャーロットは目を丸くしたが、マーガレットにそんなことを言わせた動機が友情に由来するということは理解して、ぎこちなく微笑んだ。


「まあ……そうかもね……?」


「それに、」


 と、マーガレットは少々素直すぎる調子で言葉を継いだ。


「そんな大ニュース、最初に持ち帰ったのが私だったら、私、明日からちやほやしてもらえるに違いないもの」


 シャーロットは大声で呻いて、サンドウィッチにかぶりついた。


「ああもう、そういうことなら、もう一切なにも話しません」





 マーガレットはあれこれと可愛らしくねだって、シャーロットからネイサンとの詳細な会話の内容を引き出そうとしたが、これはもちろん徒労に終わった。


 シャーロットとしても、話せる内容は一言もなかったのである。


 マーガレットは女優も顔負けの演技でしょげた様子を装って紙袋をたたみ、「明日から、ペグ印のコーヒーはなしよ」と、おどけた捨て台詞とともにシャーロットの小さな執務室を出ていった。



 シャーロットは、ともかくも期限が明日に迫った、作成途中の稟議資料を目の前に広げ直した。進捗は八割といったところで、残り二割をなんとかして片づけなければならない。


 残り二割――


 だが、じっと書類を眺めていても、文字が頭の中からぽろぽろとこぼれ落ちていくような感覚に見舞われた。


 シャーロットは溜息を吐いて、目をこすった。


「……明日……」


 つぶやく。


 ふと身体が動いて、床の鞄の中から、ハンカチの包みを取り出して、開く――中に収まっていた青い尖晶石の欠片を、ころりとてのひらの上で転がす。


 ――この感傷的な()()を、かれが知ったら笑うだろうか、いや、笑う以前に、かれはもうこの尖晶石のことなど覚えてはいないだろう――



 そのとき、小部屋の外、維持室の大部屋で、戸惑ったような声が上がった。

 だがすぐに静まり返り――そう、不自然なほどに大部屋が静まり返った。


 あわてて立ち上がった誰かの椅子が床をこする音、複数のペンが床に落ちる音だけが響く。


 シャーロットはそれには気づかず、頬杖をついて、てのひらの上で宝石を転がし続けていた。



 だが、彼女が事態にわれ関せずを貫けた時間はものの数秒だけだった。



 こんこん、と、扉がノックされ、そして返答を待たずに押し開けられた。


 シャーロットは返答しようと開いた口で、そのまま思い込みを口走った。

 てっきり、マーガレットが戻ってきたものと思ったのである。


「もう、ペグ、今度はなに――」


 そして、シャーロットは唖然と口を開けて凍りついた。


 そのてのひらから、ころころと尖晶石の欠片が転がっていった。


「は、え、は――?」


 さすがに茫然として言葉にならない驚きを口走りながら、シャーロットはあわてて、痙攣するような動きで立ち上がる。


 その拍子に椅子をひっくり返しそうになったのはご愛敬で、椅子は自重で持ち堪えてくれたが、代わりに膝裏をぶつけたシャーロットはよろめいた。



 目の前には、ざっと見て三人の人間が立っていた。

 扉の外にはさらに三人ばかりが控えている。


 一人を除いて軍人で、目の前にいる二人の軍人に関しては、シャーロットも彼らの顔に見覚えがあった――忘れもしないあの日、十四歳のシャーロットがはじめて()()()()()()()()を知ったあの日に、首相のそばに控えていた――つまりは首相の護衛としての地位のある軍人、()()()()()()()()を知る軍人のうち二人だ。


 あのときよりも年齢を重ね、茶色い軍服の肩章がいっそう華やかになっているが、間違いない。



 そして、その二人に挟まれて立っているのは――



「――返事も待たずに失礼、シャーロット」



 柔和に微笑んでそう言われて、シャーロットは自分の頭に雷が落ちたに違いないと思った。


 それほどの衝撃に目を見開いて、シャーロットはどもりながら、やっとの思いで応じた。



「……そんな――とんでもないことです、()()



 それは良かった、と微笑んで、シャーロットの目の前に立つチャールズ・グレース首席宰相は、外に控える衛兵の一人に扉を閉めるよう合図した。


 扉が閉められ、小さな執務室の中は、首相とシャーロット、そして二人の軍人だけになる。



 ――まさにあの日、シャーロット十四歳の春の日に、議事堂で向かい合っていたのと同じ面々。



 そして首相は、シャーロットに向き直って、言った。


「――少し話せるかな、シャーロット?」


 シャーロットは息を吸い込み、面と向かって言葉を交わすのは実に十七歳のとき以来となる首相と目を合わせた。


「もちろんです、閣下。仰せのとおりに」


 否やはあるはずもなかった。


























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