表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤龍戦で対局した女流棋士が消失したら、次次と死体が現れた  作者: lavie800


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/60

第四十三話

挿絵(By みてみん)

救急車が山口総合十字病院に横付けされたのを後ろからレクサスNXで追いかけていた吉川の目に見えた。


救急窓口の書類に美都留の関係者であることを記入し、吉川は係りの人に案内された処置室に向かった。

そこで、CTと当面の応急措置をして、ICUに行くか病棟に行くか決まるらしい。


吉川は処置室の前に待機していたが全身から血の気が引き、足の震えが止まらない。


美都留大丈夫か、ホテルに連れ帰れば良かった。

躊躇したばかりに。


頭の中が堂々巡りになっている。


処置室から医師が出てきた。

「三島さんの関係者の方ですか」

「はい。そうです」

「脳のCTの結果、幸いなことに内部迄は傷が到達しておりませんでした。脳波も心電図も正常です。

一時的に打撲で脳震盪を起こしていたようです。しばらくして傷が深まることも想定されますので、今日は一般病棟で様子を見ます。

それから先程、意識は戻っており、瞳孔も問題ありません」


吉川の全身から緊張が和らいだ。


山口県警の本部長に電話で状況を報告した。


処置室から美都留が頭にガーゼをされて、横たわり運ばれてきた。

一般病棟に運ばれる美都留の後を吉川はついて行く。

事務員に聞かれる。


「A個室でいいですか」

「はい。支払いも私で」

「退院されるまでにこちらに三島美都留さんとの関係等記入お願いします。

ご親族様はこのA個室で付添可能です」


病室に着いた。

「大丈夫か。美都留」

「ピンピンしているわ。私は不死身よ。

でも塚本さんが殺されたのと同じ手口かも。

羽音のようなものが聞こえたの。

咄嗟に高嶺城の塚本さんを思い出し、頭に手をやり、体を左横にかわして、後ろを振り向こうとしたら、右側の頭に衝撃を感じて意識を失ったの。失う直前に吉川さんの声が聞こえたわ。

だから私を傷つけようとした正体から次の攻撃がなかったの。

吉川さんが来てくれて、私も少し左側に逸したから、致命傷にはならなかったのよ」


「もう金輪際無茶な一人で怪しい所に行かないと約束してくれ」


「私の関係者と書かず言わず、配偶者または夫。百歩譲って婚約者、許嫁と書くなら良いわよ」

美都留の笑顔がもどってきた。いつもの美都留だ。


今日だけは笑顔でいられるな。


「大丈夫のようだな。安心した。まだ安心は早いか」

「今日はホテルに行かないで。

ここに居て!

また何かが起きるかも」

「わかったよ。寝ずの看病をするよ。

それより、悪化しないように、もう喋らず安静にして寝てくれ」

吉川は頬をふくらませている美都留を眺めていた。


個室で朝方、美都留が目を瞑り額に汗をかいて両手で掛け布団を捲し上げ、胸を反らして吐息をもらしながら何か言っていた。


美都留が瞳を大きく開けたかと思うと吉川に向かって言った。

「わかったかもしれない。もう少し情報は必要だけれども」


美都留の顔が上気している。 


吉川はデジャヴを感じた。

「ナースコールを呼ぼうか?」


「大丈夫よ。自分の身体はよくわかっているから、問題ないわ。

それより、手を繋いで」

美都留の顔が更に更に赤くなっている。


そっと美都留の手を握った。

美都留は、安心したかのように再び眠りに着いた。


何がわかったかもしれないのか。


しばらく手を握ったまま吉川もウトウトしていたら、雀の囀りが聞こえてきた。

夜が明けたようだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ